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株式譲渡制限設定決議の件

こんにちは、今回は、株式会社の株式の譲渡制限の設定に関する株主総会の決議のことを記します。

公開会社が、改めて株式の譲渡制限を設定する場合、定款変更の特別決議では要件を満たさず、会社法第309条第3項の規定の決議(いわゆる特殊決議)によって、承認可決する必要があります。

さて、ここまでの記載だと、巷の書籍の内容やwebページで記載されている内容とそれほど変わらないと言えるのですが、他の株主総会と決議要件をよくよく見てみると規定の振りが違うのです。丁寧に見ていきましょう。E-Gov法令検索から引用します。

(株主総会の決議)

第三百九条 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。

 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。

【各号省略】

 前二項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会(種類株式発行会社の株主総会を除く。)の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。

 その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款の変更を行う株主総会

 第七百八十三条第一項の株主総会(合併により消滅する株式会社又は株式交換をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等(同条第三項に規定する譲渡制限株式等をいう。次号において同じ。)である場合における当該株主総会に限る。)

 第八百四条第一項の株主総会(合併又は株式移転をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合における当該株主総会に限る。)

 前三項の規定にかかわらず、第百九条第二項の規定による定款の定めについての定款の変更(当該定款の定めを廃止するものを除く。)を行う株主総会の決議は、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、総株主の議決権の四分の三(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。

【第5項省略】

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086_20230614_505AC0000000053&keyword=会社法#Mp-At_309

さて、ざっとコピーペーストによって引用しましたが、この会社法第309条第三項が、株式の譲渡制限に関する規定です。わかりやすくするため、括弧書きを一旦無視します。その上で、第3項だけ見てみましょう。

(途中省略)…総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(括弧書省略)であって、当該株主の議決権の三分の二(括弧書省略)以上に当たる多数…(以下省略)。

とあるわけです。この規定の「当該株主」の文言がどう掛かっているのかが問題です。

発行済株式が普通株式のみのとき

発行済株式について自己株式以外の株式全部が普通株式のみであるとき、この「当該株主」という文言が、ふと悩ましく感じるものです。あたかも「出席株主の3分の2以上に当たる多数」と読んでしまいそうになるわけですが、そうではありません。議決権のある株主の議決権の3分の2以上に当たる多数という意味です。即ち実質総株主の議決権の3分の2に当たる多数ということになります。

他の株主総会決議要件を確認

ところで、他の株主総会の決議要件も確認してみます。

まず第309条第1項の「普通決議」は、「…議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数…」とあります。「(定足数は、)議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主の出席」が必要、そして「出席した当該株主の議決権の過半数」の賛成でもって承認可決する仕組みです(定款の別段の定めは、話をわかりやすくするため、今の段階では無視しています)。決議要件をよくみると「出席した当該株主の議決権の…」とあります。

次に、定款変更で多く活躍する第309条第2項の「特別決議」ですが、「…総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(括弧書省略)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(括弧書省略)以上に当たる多数…」とあります。定足数は、普通決議と同じで、決議要件が普通決議よりも厳しい規定となっておりますが、よくみると「出席した当該株主の議決権の三分の二以上」とあります。

さらに、株主の平等原則を部分的に抵触するといっても良いくらいの定款を変更する場合に用いる会社法第309条第4条の特殊決議では、「…総株主の半数以上(括弧書省略)であって、総株主の議決権の四分の三(括弧書き省略)以上に当たる多数…」とあり、こちらは「総株主の」が使用されています。

翻って各項をみると普通決議、特別決議は「出席株主の…」という要件、第4項の特殊決議は「総株主の…」とあります。では、第3項の決議は「当該株主の…」とあるのです。なんだかこの違いが、もやもやするものです。このことは会社法施行から、学び始めた方にとって、なんだかよくわからなくなるのかもしれないと感じます。なぜ、この第3項の規定だけが、「当該株主の…」なのか?よくわからなくなると思います。

第4項の決議のときは、「総株主の」とありますので、出席の用件は、議決権がない株主においても、カウントに入れるという扱いになります。その上で、議決権を有する総株主の4分の3の承認が必要ということです。

第3項の当該株主とは?

では、第3項の規定について、括弧書きも考慮して、条文を見てみましょう。括弧書きは定足数の割合を加重する、要件を加重することができるわけですが、この「当該」といっているのは、まさに「株主総会において議決権を行使することができる株主」のことを言っています。頭数の判断のときに、記されている記載と同じということになります。そして出席要件、決議要件が加重した場合のことも考慮すると、このような記載にならざるをえなかったのかなと思いたくなります。ただ、このことも、他の同業者または他の士業の先生のWebサイトを見ていると、誤解して記載していることが垣間見れます。なぜ誤った記載が散見されるのか、実はそれなりの理由が考えられます。

今更ですが、旧商法より緩和されました

この第3項の規定、実は、旧商法の時代と比べると、ほんの少しだけ緩和されました。旧商法の時代は、出席数要件が、「総株主(頭数)の過半数」、決議要件は「総株主の3分の2」だったのですが、会社法では出席要件が「株主総会において議決権を行使することができる株主の半数」となっています。このことだけでも、緩和されています。また決議要件にしても、第3項の場合は「総株主」ではなく、「…総会において議決権を行使することができる株主」となっています。他の事務所、他の士業のwebサイトを見てみると、旧法時代の規定のままになっている記載が見受けられます。

実務で扱う事案は、議決権が付与された株式が殆ど

気難しく記していますが、実務上は、議決権が行使できない株式は、まず存在しません。まず絶対的に議決権がない株式として「自己株式」や「相互保有株式」がありますし、それから基準日経過後の株式譲受人も議決権はないと考えられますが、そのような状況にあるのでしょうか? 99パーセントが同族会社と言われ、あまねく会社にとって、まず先に記した株主構成は存在しないと言っても良いと思います。

株式の譲渡制限の規定に関することは、いろいろ気をつけなければならないことが随分あります。次回以降にまた取り上げようと思います。

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YouTube 動画の公開

こんばんは、相続登記申請義務化のことを、YouTube に、動画を公開しましたので、ご覧ください。

相続に関する相談を承ります。

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相続対策よりも考えること

こんにちは、今回は、相続対策よりも考えておくべきことを記します。

唐突ですが、一番の対策は、ご自身の判断能力が低下したときのことを、どれくらい気になさっているのか。それが老後の一番大事なことであり相続対策にもつながると考えます。以下にその理由を記したいと思います。

認知症は他人事ではなく、未来のことかも

ところで認知症の問題は、もはや他人事ではなく、「未来のこと」かも知れないほど、身近な存在となったように思います。

今日においては、もはや割合にして二人に一人は認知症を発症するであろう、と言われています。

こう記している 当職でさえ、自身が高齢者となった場合、そうかも知れないと思ったりしています。

考えなくてはいけないこと

相談で持ち込まれる議題として、相続の問題は確かにあります。確かにご自身亡き後のご家族や事業者であれば、従業員について按ずるお気持ちは、よくわかります。ただその気持ちは、今現在の判断能力がしっかりしている現れなのだろうと思います。しかしながら、その対策は、いわばご自身が他界した後の事であって、ご自身の判断能力が低下し、もはや大きな財産を処分したりする際の意思表示さえもできないことが、相続の問題よりも前に訪れることが多くなってきたように思います。

先日、事業の承継は済んだから、悠々過ごそうと思っているとおっしゃっていた元経営者がいらっしゃいましたが、その後、容体が急変し、病院に入院する運びとなり、その手続きについて、立ち往生したとのことでした。その方は、すでに判断能力が低下し、認知症を患っていたとのことです。

事業承継者は自動的に後見人とはなりません

付き添いで来られた方は、ご親族ではないようで、後見人と語っていたようですが、民法上の法定後見人等でもなければ、任意後見人でもなく、事業においては後継者だったようですが、元経営者の財産を管理したり身上監護する権限も与えられていない、元経営者の事業の元番頭さんだったようです。もちろんその方には、正当な権限がないため、民法上の事務管理(人)になりえますが、あくまで緊急避難的な対応しか許されず、入院契約等の事務処理に時間がかかったようです。

問題とすべきは、他界後ではなく、生存中のこと

先の事例では、事業の引継ぎという観点では、成功されたと思えます。

もっとも相続対策は、何も事業のことだけではなく、ご自身のこと、ご自身が認知症を患い、判断能力が低下し、したいと思っていたことができなくなることだと思います。

人生100年時代と言われる今の時代、晩年に判断能力が低下してしまい認知症を患い、結果的に思ったような暮らしができていないのではないか、そう思える方が、相当数いらっしゃるように思います。

次回以降、ご自身の認知症に備えるための対策、方法について記そうと思います。

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相続登記義務化のこと2

こんにちは、今回は、前回の「相続登記の義務化のこと」の続編を記そうと思います。

前回は、相続登記申請の義務が顕在化する事象について、遺産の分割が成立し相続により不動産を取得した場合、唯一の相続人が単純承認した場合を取り上げました。詳細は、前回の記事をご覧ください。

相続人が「遺贈」により、不動産を取得したとき

それ以外に、相続登記の申請について、義務が顕在化する事象ですが、相続人が「遺贈により不動産を取得した」場合も、該当します。
簡単に記すと、遺言により相続人が不動産を取得した場合のことです。遺贈と相続は、法律上の効果はやや違う場合もありますが、相続人が取得する事象であれば、純粋な「相続」による法律上の効果とほぼ変わらないため、相続登記申請の義務が顕在化することになります。

相続人である旨の申出

相続登記の申請が難航する事象

さて、確かに、今度の4月1日に、相続登記申請が義務化されるのですが、諸事情により、登記申請が難航する場合もあります。

諸事情と記しましたが、実体上の所有者の帰属が定まっていない場合や、経済的理由により登録免許税を納税することができないため登記申請することができないなどが、主な理由として考えられます。

登記申請はできないが…

不動産の所有権を確定的に取得した相続人は、不動産登記の申請をする義務を負いますが、先にも記したとおり、登記申請をするにも難航している場合があります。そんな諸事情に対応するかたちで、「相続人である旨の申出」を登記所に申し出ることができます。

申出により、相続登記申請の義務を脱がれる?

メディア等で騒がれましたが、この申出の制度を利用するにあたって、留意しなければならないことがあります。

民法第177条の対抗要件は付与されない

まず、一般の方には、馴染みのないことであり、紛争に巻き込まれないと、民法第177条のことが臨場感がわかないのですが、不動産登記法では、申出を受けたことにより、「登記官は、付記登記をすることができる。」とあります。付記登記であるので、所有権移転の登記とは違うため、民法第177条によって、不動産の所有権について、確定的に主張することができません。登記上の所有者、所有権登記名義人は、相変わらず「被相続人」のままであることは変わらないのです。

文面が長くなりそうなので、次回にもう少し掘り下げたものを、記そうと思います。

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相続登記の義務化のこと

こんにちは

2024年、令和6年になりました。元旦から、大変なことが起きて、とても正月気分では過ごせない期間となりました。

この場を借りて、能登地震により被災された方へ、お見舞い申し上げます。

さて、今年の4月から大きく変わることがあります。相続により不動産を取得した場合、その登記申請が義務化されます。

施行日前の相続にも適応される

さて、この相続登記の義務化のことですが、法律施行日前の開始した相続についても、適応を受けます。

法律施行日前に開始した相続についての申請期限

気になることとして、法律施行前に開始した相続について、いつまでに登記申請をしなければならないのか?ですが、法律施行日(令和6年4月1日)から3年内に、登記申請をしなければならないこととなります。このことから法律不遡及効の原則にも抵触しない形をなっています。

相続登記申請の義務が顕在化する時期

ところで、これまで相続登記がされる場合ですが、大きく二つの事象がありました。

法定相続分に基づく登記申請

ひとつは、法定相続に基づく登記申請の場合です。この場合は、何らかの事情で、法定相続によって登記申請がなされたました。相続人以外の第三者からは、登記簿を見ただけでは判然としません。考えられることとして、

  • 法定相続分に基づいて、遺産の分割が成立した
  • 遺産の分割は成立はしていないが、登記申請がなされた

の二つの事象があります。

この法定相続分に基づく登記申請は、実は、共同相続人の一人からの申請行為で、登記所(法務局)は応答、審査、登記します。別に遺産の分割が成立していようとしていなくとも、申請は可能であり、登記されます。

話がやや脱線しましたが、この法定相続分に基づく登記の申請においても、登記申請の義務が健在される事象は、まさに、法定相続分に基づいて遺産の分割が成立し、不動産を取得した場合です。

遺産分割成立後、不動産を取得した相続人に申請義務が課される

今回の相続登記申請の義務化について、特に注意しなくてはいけない事象の一つで、遺産の分割が成立し、不動産を取得した相続人です。この事象は、まさに不動産登記法の条文の文言に沿うものであり、取得した時点(協議によって取得したときは、協議成立日、調停によって成立し取得したときは、調停成立日)から、3年内に登記申請をしなければならないこととなりました。

相続人が一人、単純承認した場合も申請義務が課される

相続人が一人で、単純承認した場合も、登記申請義務が課されます。この場合は、相続があったこと知り、単純承認したとき、遅くとも、相続があったことを知ってから3ヶ月経過した時点から、登記申請の義務が課されます。

結語

以上、相続登記申請の義務が課される方を見てきました。次回は、申出制度を用いれば、登記申請の義務が免れるのか、過料の制裁のこと、相続登記の申請と申出制度の違いを見ていこうと思います。

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