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竹木の枝の切除・根の切り取り(相隣関係)

こんにちは、今回は、「竹木の枝・根の切除のこと(相隣関係)」のことを取り上げます。質問がありましたし、少し前に改正もありましたので、テーマとして取り上げていきたいと思います。

早速、条文を確認してみましょう。引用元は、e-Govの法令検索の民法からです。

民法第233条「竹木の枝の切除・根の切り取り

現行(令和4年9月2日現在)は以下のとおりで、

第二百三十三条 隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

e-Gov 法令検索 民法第233条(令和4年4月25日施行日)より

念のため、参照したURLを記します。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20220525_504AC0000000048&keyword=民法#Mp-At_233

とあります。

改正後の民法第233条

来年の令和5年4月1日から、民法233条は、以下のようになります。

第二百三十三条 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。

 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。

 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。

 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

 急迫の事情があるとき。

 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

こちらも、念の為、引用元のページをURLを記します。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20230401_503AC0000000024&keyword=民法#Mp-At_233

となっています。

現時点では、旧来の取り扱いと同じですが、来年の令和5年4月1日以降では、同条第2,3項が追加されるため、留意が必要です。

改正後民法第233条第2項のこと

もっとも第2項のことは、竹木そのものの共有関係における枝の切除のことを記しています。もちろんこのことは、あくまで権原でもって生息している地から隣地へ越境してしまった枝に対して、他の共有者の同意承諾なしに、一部の共有者から切除して良いことが記されています。

改正後の民法第233条第3項のこと

では、3項を見ていきましょう。確かに第一項で、竹林の所有者に枝の切除を請求することができるとあります。そのことが前提なのですが、同項各号の場合であれば、隣地所有者が自ら枝の切除をすることができます。

竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。

この催告とは、「枝が土地の境界を越境し、こちらの敷地内に入り込んでいるため切除せよと書面等で請求すること」です。催告をし、切除するための相当な期間が経過したが、竹木所有者が当該枝を切除しなかった場合に、隣地所有者が自ら、枝を切除することができます。

竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

前号の催告をしようにも居場所がわからない、そもそも竹木の所有者が知ることができないならば、催告どころか、第一項の請求もできないことが明白なため、隣地所有者は自ら、越境した竹木の枝の切除をすることができます。

急迫の事情があるとき。

催告から実行してもらうまでに、また請求しても対応してもらうまでに相当な時間を要し、実行されるまで待っていては、隣地所有者にとって損害が生じてしまうような場合、隣地所有者自ら、越境した竹木の枝の切除をすることができます。

費用負担は?

枝を切除することが、令和5年4月1日より、状況によって、隣地所有者自らができるようになったことはわかりました。

ところで大事な論点として、費用負担はどうなるのだろうと疑問があるにはあります。丁寧に見ていきましょう。

第一項が大前提 権利義務に関する規定

第一項が大前提の権利義務のことが記されています。

すなわち、「隣地所有者が、竹木の所有者に、(中略)請求することができる。」とあります。これが大前提です。

催告したが、枝と切除してくれず、隣地所有者が切除した場合

では、第三項第一号に至った場合は、生じた費用は、隣地所有者が立替て、竹木所有者に請求することとなると考えられます(民法第703条)。

急迫の事情により、隣地所有者が枝を切り取った場合

第三項第三号の急迫の事情があるときは、事実認定を考えると請求できるものと考えられなくもないですが、竹木所有者にとって、越境している竹木の枝の切除をする機会を設けてくれれば対処できたにも関わらず、その機会を奪うかのように、急迫な事情が生じることに乗じて、枝を切除されたとなると、あとは事実認定の問題といえ、厳密な費用の請求や切除したことによって生じた損害について、司法の判断を仰ぐ必要が生じる可能性があると思われます。

竹木所有者の住所不明、そもそも竹木所有者自体が不明の場合

第三項第二号ですが、そもそも 、所有者がどこに住んでいるのか、尋ね当たらず、むしろ所有者の存在すらわからない場合を意味しています。この場合、事実上、費用は、隣地所有者が負担することになるように思われます。もっともその後、請求権に基づいて、住所や、竹木所有者が確定できれば請求できる可能性がありうるのかもしれません。

越境してしまった根っこの切り取りのこと

確かに、ないわけではない問題です。条文上は、隣地所有者が、竹木所有者の承諾なしに、切り取ることができると読めます。

ただ、越境してきた根っこを切り取ってしまったことによって、その竹木が枯れてしまう話もあり得ます。お隣り同士という関係は、どちらかがその地から離れない限り継続するため、もしも気がついた場合は、双方話し合い、場合によっては造園業等の方からの助言を受けながら、お互いに協力して解決する必要があるように思われます。

終わりに

相隣関係という特別な事情を熟慮すると、先に記したように、当事者の一方がその地から離れるか、解決しない限り、関係は解消もしませんし、相隣関係の問題を放置すると、新たなる当事者とも問題は継続することも考えられます。

債務名義を取って対応することは、できなくはありません。民事執行による強制執行や間接強制の制度を利用することも考えられなくもありませんが、実務上、事実上、費用は債権者負担となることも多いにしてありえます。

もちろん、民法の規定により、双方の権利義務が明確となり、その上で民事訴訟・民事執行・民事保全の制度の存在があり、それは並行して、当事者同士によって話し合いで解決することが、もしかしたら、お互いに一番経費をかけずに、問題を解決できる可能性もあると、意識の片隅に置いた上で、問題解決に当たられることを切に願うものです。

長文をご覧になっていただきありがとうございました。

季節の花
季節の花

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司法書士 大山 真 事務所
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法律問題より「あり方」の問題

こんにちは、本当に暑い日が続いています。ご自愛ください。
 さて、時々ですが結論を言うと表題のとおり「あり方」の問題であると回答をせざるを得ない問い合わせが、時折あります。

不動産売買契約のこと

不動産売買に関する問い合わせであり、しかも売主からもの。中古建物付きの土地不動産売買契約に関することでした。

内容をよく聞くと、どうも仲介業者から、「(建物を)リフォームした方が、もっとよく売れる。」と説明を受け、その数週間後、見積書を見てみると、専任媒介契約締結時に、申し出た希望価格から大幅に減額され、約6割りにしかならない、とのことでした。

売買に関する費用と不動産価格について

売買費用について民法は、当事者間で特約の定めがなければ、折半で負担することとなりますが、不動産そのもののリフォーム代(修繕費)についても、当事者間の約束事で、売主負担とするのか、それとも買主負担とするのかを決めることはできます。

ただ上記に記したとおり、売主負担でリフォームした方が、建物付き土地売買の成立はし易いのかもしれません。

契約が成立するための要素

契約を締結するにあたり、その法律行為が伴っていなければなりません。その法律行為の前提として、

信義則に反しないこと

強行規定に違反しないこと

公序良俗に違反しないこと

の三つの要素が挙げられます。その上で、能力に制限がない方からの契約締結について相手方への意思表示がなくてはなりません。

売買価格等について納得がいかないのなら

契約内容に納得がいかないならば、契約書の署名押印が揃う前に、仲介業者に問い合わせるなり、保留にするなり、一度立ち止まって、よく考える必要があります。そうすれば、契約成立前の意思表示の留保となります。その際に、契約成立に向け進行状況により、具体的に相手方が負担した経費(例えば、打ち合わせの席に出向いた移動費等)を賠償する義務を負う可能性は無いわけではありませんが、契約解除に伴う相手方の賠償を真正面に負うこととなならないので、意思表示をする前に、留保して立ち止まることが大事です。

法律問題というよりその契約について、ご自身の「あり方」は?

その売買契約についてよく考えることとは、ご自身にとって、この不動産の売買をどのような「あり方」で以って挑まれるのかが重要なことであり、法律問題というよりご自身のあり方が問われていると考えます。

ご自身の「あり方」をよく考え、熟慮した上で、契約に望むことを 切に願うばかりです。

2018年7月24日 に投稿したものですが、内容を再構成しました。

不動産の個人間売買についての相談を承ります。
当事務所の詳細は、事務所Webページもご参照ください。
司法書士 大山 真

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事務所より 民事信託・遺言・後見・相続 法教育

相続登記の主登記,付記登記

こんにちは、今回は、不動産登記、特に相続登記の主登記と付記登記のことを記します。

なんだか、マニアックな題名だなと思いながら、投稿を記している段階では、適切な題名が浮かばないので、そのまま記しました。実は、相続のことと改正後の不動産登記の実務に大きく影響するので、おさらい・確認の意味を込めて、記そうと思います。

まずは条文を当たる

まず条文を当たります。引用元は、E-Gov からです。不動産登記法の第4条および第66条の規定です。

驚いたことに主登記と付記登記の定義は、第2条の定義規定の中にはありませんでした。そうすると、直接記載されている規定を当たったところ、以下の2か条にその記載があります。

詳しく見ていきましょう。まず第4条から

(権利の順位)
第四条 同一の不動産について登記した権利の順位は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記の前後による。
 付記登記(権利に関する登記のうち、既にされた権利に関する登記についてする登記であって、当該既にされた権利に関する登記を変更し、若しくは更正し、又は所有権以外の権利にあってはこれを移転し、若しくはこれを目的とする権利の保存等をするもので当該既にされた権利に関する登記と一体のものとして公示する必要があるものをいう。以下この項及び第六十六条において同じ。)の順位は主登記(付記登記の対象となる既にされた権利に関する登記をいう。以下この項において同じ。)の順位により、同一の主登記に係る付記登記の順位はその前後による。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123_20210428_503AC0000000024&keyword=不動産登記法

(権利の変更の登記又は更正の登記)
第六十六条 権利の変更の登記又は更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者(権利の変更の登記又は更正の登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)の承諾がある場合及び当該第三者がない場合に限り、付記登記によってすることができる。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123_20210428_503AC0000000024&keyword=不動産登記法

不動産登記法第4条をよく見てみる

どうやら第4条の第二項の括弧書きに、その記載がありますね。
以下は、その括弧書きを抜きだしてみたものです。

「権利に関する登記のうち、既にされた権利に関する登記についてする登記であって、当該既にされた権利に関する登記を変更し、若しくは更正し、又は所有権以外の権利にあってはこれを移転し、若しくはこれを目的とする権利の保存等をするもので当該既にされた権利に関する登記と一体のものとして公示する必要があるものをいう。以下(省略)。」

とあります。

まず、前提として権利に関する登記であること。

次に所有権に関する登記と所有権以外の権利に関する登記について、意義づけが分かれます。

所有権に関する登記について注目してみると、以下のことが読み取れます。

  1. 既にされた登記についてする登記
  2. 当該既にされた登記を変更し、もしくは更正する

ここで、留意しなければならないのは、条文には、謳っていませんが、権利の主体に完全な変更はないことです。例えば、「法務太郎」さんが不動産の所有者として登記されていたところ、結婚を機に、「民事太郎」さんに名前が変わったとしても、それは、「氏」苗字が変わっただけで、所有者が別人になったわけではなく、登記名義人の氏に変更があったので、その変更登記申請をすると付記登記がなされます。
 詳細は別の機会にしますが、権利の主体が完全に変わってしまう場合や先に引用した第66条の規定のとおり、登記上の利害関係を有する者からの承諾がなければ、更正・変更登記申請による付記登記はすることはできない事案もあるにはあります。

念のため、所有権以外の権利についても、その付記登記の運用の仕方を確認しておきます。もう一度第4条の規定をみて、括弧書きの、「又は」以下の記載の抜粋を以下に記します。

又は所有権以外の権利にあってはこれを移転し、若しくはこれを目的とする権利の保存等をするもので当該既にされた権利に関する登記と一体のものとして公示する必要があるものをいう。」

とあります。所有権以外の権利というとなんだかいっぱいありそうな気がしますが、実は9種類しかありません。それらの9種類の権利は、乙区に記載されるわけですが、その保存、設定された権利の登記について、権利の移転があった場合、その権利の上に設定したまたは保存した場合は、所有権に関する登記とは違い、付記登記によって公示されます。もちろん登記された所有権以外の権利に関する登記についても、変更・更正し一体として公示する必要があるものは、付記登記でなされます。

変更更正の登記について詳細を確認するなら、第66条もしっかり見なけければならないのですが、今回は、相続により所有権を取得した際の登記に関することを記そうとしているので、第66条の規定の解説は、別の機会にしたいと思います。

改めて不動産登記法第76条の3を見てみましょう

以上のことを踏まえて、不動産登記法第76条の3を見てみましょう。引用は、E-Govからです。

(相続人である旨の申出等)
第七十六条の三 前条第一項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
 前条第一項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第一項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。
 登記官は、第一項の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる。
 第一項の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前条第一項前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
 前項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、同項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
 第一項の規定による申出の手続及び第三項の規定による登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123_20240401_503AC0000000024&keyword=不動産登記法#Mp-Ch_4-Se_3-Ss_2

さて相続登記が義務化されたのですが、遺産の分割協議がまとまらず、立ち往生する事案も確かにあるにはあります。そうすると相続による共有状態が生じるわけですが、最終的に誰に帰属するのか判らないため、登記申請ができないという事態も生じます。
それでは登記申請をしなくて良いのかというと、それを認めてしまうと、元の木阿弥となってしまい、政策的に目指したにも関わらず法の抜け穴となりうるため、現在、その相続による共有状態が生じていて確定的ではないにしろ、その不動産(正確に言うと相続分に基づく持分)の権利を保有している人物が誰なのかを登記簿上把握させるための制度として、第76条の3が新設されました。申出をすると、登記官は同条第3項を根拠に「『付記する』ことができる。」とあります。

付記登記の意義づけを再確認する。

さて、ここで「付記」という言葉が出てきました。その内容は、第4条と類似します。ただ相続があったということは、権利義務を包括承継し、主体も相続人に移っているはずですが、後に遺産の分割により、第三者の権利を害さない程度に、相続の時まで効力が遡り、結果的に協議により不動産を取得(承継)した相続人が、相続によって取得し、その不動産の相続人となるわけです。換言すると「付記」のままでは、完全に権利の主体が変わったことを公示しておらず、相続によって権利を取得した登記をしたことにはならないのです。

さて冒頭に記した付記登記の仕組みを見た上で、法第76条の3を再度よく見ると、法第76条の3の規定に基づいた申し出をしたのちに、相続人間で協議がまとまったときから3年以内に相続の登記申請をしなくてはいけないことがよくわかると思います。

申出をしただけで、相続登記をする義務は、最終的に免れるか?

 ところで第76条の3第2項のみなし規定は、「第76条の2第1項の規定に基づく登記の申請する義務を履行したものとみなす。」とあります。この規定は、第76条の2第1項の登記を受けたいと考える相続人もいれば、そうでない相続人もいるかもしれません。
そもそも第76条の2第1項の登記は、単有もしくは一部の共同相続人で不動産を取得した相続人がする登記申請の義務を負うことを指すこともあれば、法定相続人全員が登記名義人として登記を受ける保存行為としての登記の性格の規定であるようにも見えます。ただし、後者の取り敢えず法定相続に基づく登記申請だけしておく場合でも、当該登記申請だけでは、その後、共同相続人全員で売却し、金員を受けるのか、それとも協議が整わず相続人間で紛争が生じている過程で、一共同相続人の権利を保全するために登記を受けたのか判然としないため、登録免許税は租特法の適用を受けることなく、本則で課税されます。
そうすると事案によって多少の違いはあるにせよ、一回で済ませられる登記を複数回に分けて行う登記申請手続である以上、登録免許税は結果的にほぼ同額となり得ますが、添付しなければならない書面の準備負担が大きく異なってきます。そのことを考慮に入れると安易に法定相続に基づく登記申請をすることを敬遠する事案もあると思います。

実体上、遺産分割協議が争っているため長期化している事案もある最中、法定相続に基づく相続登記は抵抗感を覚える事案もある

もっともその時点で相続により不動産を取得する相続人が確定していないにも関わらず、事情を知らない法務局では、法第76条の2第1項を根拠に過料の制裁の手続きせざるを得ない事態となります。そこで、この申出をすることにより、「申請する義務を履行したものとみなす。」の規定により、当該制裁を回避できると考えられます。後の通達等で解釈が明らかにされると思いますが、この規定の効果は、申出をしてもらえれば、過料の制裁から回避することを意味しているに過ぎないと考えられます。

昨今の市区町村の固定資産税課の対応を見ていて

相続手続きは千差万別ですが、登記申請を始め、相続手続きの経費は、抑えたいという心理が働くようです。そう考えてみると、早期にしなくても問題ないですよ、いつでもいいですよ、と言っていた某市区町村の固定資産税課の職員の言葉と、その言葉を聞いた相続人であろう来庁者の安堵した顔を私はよく覚えていますが、今時は、そのようなセリフは聞かなくなりました。現時点で、国土に換算すると、九州分の土地が、所在者が不明または誰と交渉して良いのか判らないくらいの広さまでになるそうです。

不動産登記法の改正の報道を見ていて

不動産登記の改正を受け、浮き足立つ報道機関、SNSで「それは誤解だ」と豪語する同業者等を見てきましたが、現場(法務局)でどれほど説明をしなければならないのか、これから骨が折れる作業がありそうだと思われます。もっとも今の社会は、冷静に細かく取り上げても、皆さん時間がないのでしょうね、しっかりご覧になってくれることはあまりないのかもしれませんし、丁寧に対応しようとすればするほど、煙たがられる傾向もあるようです。それほど慌てても、苦労することは落ち着いて取り組んでも同じですよと言いたいのですが、それだとだれも(法務局に)来てくれないと行政は考えたのかなと感じました。

いろいろ記しました。機会を設けて、もう少し整理して発信していこうと思います。

長文をご覧になっていただいてありがとうございました。

相続手続きについての概要は、当事務所ホームページをご覧ください。
なお、相談は随時受け付けております。
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梅の花です 青空の下は映えますね
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正本と謄本のこと

こんにちは

今回は、少しだけアカデミックなことを記したいと思います。

不動産登記手続きのうち、判決による登記という方法があります。

その「判決による登記」申請をする場合、登記の原因を証明する書面は判決書に他ならないのですが、この判決書は「正本」でなくてはならないと、実務では取り扱われています。

確かにそうだろうと思うのですが、それでは「謄本」というものの役割は何なのだろうか。ふと疑問に思いました。

そこで、学陽書房から出版されている法令用語辞典を参照すると、両方とも掲載されているので、確認する意味で紹介したいと思います。

正本

1)謄本の一種であって、法令の規定に基づき、権限のある者によって、特に正本として作成されるものをいう。「正本」は法令の規定により原本を一定の場所に保存することを要する文書について、その効力を他の場所で発揮させる必要がある場合に、原本と同一の効力を有するものとして作成される。例えば(以下省略)

学陽書房 法令用語辞典 より

一方、謄本について同じ書籍で、確認しました。以下に引用します。

謄本

 文書の「原本」に対する用語であって、原本と同一の文字、符号を用いて原本の内容を完全に写し取った書面をいう。(途中省略)「謄本」のうち、裁判所書記官、市町村長、公証人その他権限ある機関が原本の内容と同一である旨の認証をしたものは、法律の規定によって、「原本」又は「正本」と同様に取り扱われることがある(以下省略)。

学陽書房 法令用語辞典 より

それでは、不動産登記の関係法令を確認すると、不動産登記令第7条第一項第5号ロ(1)にあります。以下にe-Govより引用したものを示します。

 登記原因を証する情報。ただし、次の(1)…に掲げる場合にあっては当該(1)…に定めるものに限るものとし、別表の登記欄に掲げる登記を申請する場合(次の(1)…に掲げる場合を除く。)にあっては同表の添付情報欄に規定するところによる。
(1) 法第六十三条第一項に規定する確定判決による登記を申請するとき 執行力のある確定判決の判決書の正本(執行力のある確定判決と同一の効力を有するものの正本を含む。以下同じ。)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416CO0000000379

不動産登記令第7条第一項第5号ロ(1)の括弧書きをみても、「正本」と記されています。そうすると法令によって「正本」と記されている以上、「正本」が原則であることがよくわかります。

このこと、何故に記したのか、実のところ家庭裁判所の書記官でさえも、あまりよくわかっていらっしゃらないことがあるようです。

家事事件手続法で、調停が終結した際に、当然にその終結したことを証明する書面が交付されるのかというと、実は仕組み上、そうはなってはおらず、改めて申請によって交付を受けなければなりません。

その際に、正本の交付申請をしたにも関わらず、謄本が交付されたという事案があり、その際に担当書記官から「謄本じゃダメなんですか?」という問い合わせがありました。
もしかしたら、ご理解されていないのかなという、懸念を抱きましたが、書面の交付という事務作業なので、裁判事務手続とは、また違った扱いなので、そのようなご発言だっだろうと思います。

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不動産登記の放置と登記引取請求権

 納税の義務を新所有者が回避するため 登記を前所有者のままにする いわゆる登記を留保しているため 前所有者が納税の義務を負うことがあります 前所有者は その不利益を回避するため  現所有者に対して 登記を引き取ってほしい と 登記引取請求権に基づき 所有権移転登記手続訴訟を提起することができます

なんだか不思議なことかもしれません その昔 扱った事例として 遺産分割調停事件を拡張して共有物分割の事案までを遺産分割調停条項に盛り込むこととなり どちらの裁判所かは記しませんが当時の裁判所書記官もあまりよくわかっていなかったようで 原告に「調書に『不動産の所有の帰属および登記手続き不備が生じないようにしたい』から 誰か準備書面に 調停条項の起案となる文言をかけるに司法書士・弁護士先生に対応してもらってください。」と言われたようで その白羽の矢が立ったのが当職でした

原告に調停の状況を聞いたところ 主張すべきことはしている と面談をしてもおっしゃるし 家庭裁判所の書記官もどうしたものかと思いましたが 準備書面の起案を受けることとなりました

そのときに 不動産の共有物(現物)分割の話があり 対応したという次第です
 通常の遺産分割とは違い共有物の分割が入り込むと対立構造があり登記申請手続上 利益を受ける者と不利益を被る者が共同して申請しなければなりません(共同申請主義)

ただし 協議は成立したにもかかわらず 登記申請には協力しないという事態もあります 特に実勢価格ではそれほど価値のない物件について 当事者同士では 所有権の帰属が変わったことに同意しているのに 未だに登記は前所有者のままである そのまま登記を放置すると 所有権を手放したにもかかわらず 納税の義務が発生しかねない事態につながりかねません

もはや所有権がないにもかかわらず 固定資産税の納税義務を追うこと回避するために 登記引取請求権に基づく所有権移転登記を求める 不動産登記に関する訴訟を提起することができます

そして その訴訟で得られた勝訴判決は 登記権利者が関与せずに 登記義務者から一方的に 登記申請をすることができます(判決による登記)

なんだか不思議ですよね 通常なら登記権利者が単独で登記を申請するというのが常なのですが 少し変わった登記申請ということとなります

少し変わった事案ですが 判決による登記の一部を紹介しました

不動産に関する登記の相談を承ります
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ぐるり公園の突端(台場方面)を目指すために散歩をしていたところ こうしてかもめをよく見かけます