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道路部分のこと

こんにちは、今回は、相続財産にも該当する「道路部分」のことを記そうと思います。

はじめに

相続財産の対象となる不動産、特に道路部分のことを記します。これから取引によって不動産(土地)を購入する際の接道部分のことは、また別の機会に記そうと思います。

さて、「接道部分なんて、大した問題ではない。」そう思っていらっしゃる方が大多数だと思いますが、あながちそうは限らないことを記そうと思います。

その存在の有無による影響

その道路部分ですが、固定資産の評価上、非課税扱いとなることが多いため、どうしても見下されてしまう物件ですが、この存在が主たる不動産(土地)の活用を考えた場合、必要なのか、備わっているのかが、とっても重要となります。

公道に接してれば問題ないのか?

もう少し具体的なことを考えると、現状、公道に出られるようであれば、これまで被相続人が活用してきた不動産である以上問題ないと推測できます。もっとも、被相続人が、その不動産を取得する段階で、法令上の制限に適合しない形で取得活用していた場合は問題となり得ますが、ひとまず相続手続では、その財産を取得して引き継ぐのかどうかが問われることになります。その上で、相続によって取得した場合は、その問題も相続することとなります。

調査をしなければ、存在が顕在化しないことも

先にも記したとおり、道路部分における評価証明書上の記載ですが、道路部分も単有であれば、証明書上にも搭載されていることが多いものです。ところが共有であった場合、事象によっては、漫然と証明書交付を請求した場合、道路部分が搭載されないことが多いにしてあり得ます。

相続手続で見過ごされてしまった道路部分

被相続人が所有していた権利証が見当たらない、被相続人が住宅ローンを利用して不動産を取得していたとして、当時の抵当権設定契約書もしくは当該ローン完済後の抵当権解除証書が見当たらない、固定資産評価証明書等から不動産の記載に道路部分が見当たらないことによって、接道部分の存在に気がつかないことは、大いにしてあります。

接道部分を正確に知るには?

さて、公的な書面を頼りに、道路部分の存在を確認しようとしても判然としなかった場合、どうしたら良いのか?

それは、法務局より公図を入手して、建物の底地から普段公道に出るに至るまでの土地の登記事項を確認することです。

不動産調査は、手間がかかるもの

私道部分をしっかり把握するには、先にも記したとおり、公図を入手し、底地から公道に出るまでの土地の登記事項を確認します。

公図を入手し、公道に出るまでの土地を確認した際に、場合によっては、その土地の存在の多さにげんなりしてしまうかもれません。それでも確認し、後の遺産の分割手続に含むことで、将来的に支障を来すことなく不動産を処分することができます。

不動産の売却を考え仲介業者に打診をしても、道路部分について相続手続きをしていないことが判明した段階で、仲介業務を中止せざるを得ず、物事が前に進みません。

空き家となった相続不動産の処分に影響

道路部分を見過ごして相続手続がなされ、その後において、相続した相続人が、被相続人所有の不動産に居住し続けるのであれば、問題は潜在的に留まります。もっとも、その後なんらかしらの理由により、不動産を手放さなければならない事態に陥った時に、最悪な場合、再度の相続手続きを余儀なくされます。

話が逸れましたが、相続不動産について、相続人のどなたも居住なさらないのであれば、空き家となるため、売却する案が浮上しますが、道路部分の存在を見落としていると、やはり先にも記したように、仲介業者の不動産調査の段階で、道路部分について相続手続きが行われていないため対応できないため、手続きが中断してしまいます。

こうしてみてみると、その道路部分についての登記申請手続きが漏れていたために、物事が進まないこととなります。

相続登記申請の義務化の影響

もう一つ留意しなくてはならないこととして、昨今、相続を原因とした不動産登記の申請について義務化が図られました。この登記申請の義務ですが、裁判上の相続放棄の申述受理でもなされない限り、登記申請をする義務を負います。

ついでながら、相続放棄の申述受理がなされたとしても、管轄法務局では、その事実まで、裁判所が保有する情報には直接アクセスすることは想定されてませんので、法務局から催告(いわゆるお尋ね)があった場合、対処することが必要となります。

話を元に戻します。この相続を原因とする不動産登記の申請義務ですが、所有権登記名義人が相続開始時点で登記がある物件の全てについて義務が課されます。この物件は相続の登記を申請するけど、あの物件は申請しないのは、結局義務をおこなることと同じであり、過料の制裁を受ける可能性があります。もっとも登記の申請を怠ったことが意図的でもない事案、すなわち、接道部分の物件に気がつかなかった場合でも、過料の制裁がありうることに留意する必要があります。

道路部分について、遺漏がないように心がけたいものです。

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357
事務所: 千葉県白井市冨士185番地の21

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分割前に処分されてしまった場合の遺産の範囲のこと

こんにちは、前回は、民法第909条の2のことを見てきました。ご覧になっていない方は、前回の記事をご覧ください。

さて今回は、もしも分割前に、その遺産の全部または一部について、処分されてしまった場合、その遺産の範囲をどう扱うのかについて、記したいと思います。このこと実は、民法にあります。

では早速みてみましょう。民法第906条の2 です。e-Gov から引用します。

(遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲)
第九百六条の二 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。
2 前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。

https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_5-Ch_3-Se_3-At_906_2

です。条文を細かくみる前に、そもそも..

分割前に、遺産が処分されてしまうことがあるの?

はい。事案によってですが、あり得ます。特に預貯金債権については、もしかしたら行われていることがあります。

典型的に、葬儀費用ですが、講学上では、もはや被相続人(というよりも死亡により私権を失っているので表現がややおかしいのですが判りやすくイメージを持たせるために記ました)が直接負担するものではなく、遺族(相続人)が原則負担することと解されています。一方、地域社会や国家もしくは所属されてた会社組織等に対し尽力された方に向けて追悼の意を表すため、それらの団体が自ら負担して葬儀を行うこともないわけではありませんが、世俗的には、主催する方は大方、相続人でしょうから、相続人が負担すると考えられていますし、もしも相談を受けた場合、法律専門職であれば、一義的には、相続人や葬儀を行う方がご負担頂き、後に相続人間や主催者間で調整してくださいと、ご案内していたのも事実です。

葬儀費用の財源はどこから?

では、実社会に目を向けてみると、当事務所界隈を見渡してみると、葬儀費用の話が出てきた場合のほぼ全てが、被相続人の預貯金債権から、(いわゆる勝手払いによって)引き出して支弁していたようです。後の遺産分割協議と同時に、事実上、この葬儀費用の負担のあり方も調整を経て、葬儀費用の負担のあり方を協議書に明文化するのか否かはともかく、遺産を分割する事象にもよく遭遇しました。

良いのか悪いのか?と聞かれたら…

いわゆる「勝手払い」が良いのか悪いのかと聞かれたら、良い訳がありません。ここまで記してきた流れから、あくまで被相続人の葬儀費用に支弁するためと記してきましたが、払い出しを請求した共同相続人自身の生計費や遊興費(ゆうきょうひ)を賄うために、もしかしたら引き出したことも考えられるわけです。また遺産の分割の方針が定まっていないにも関わらず、遺産を動かしてしまうことは、遺産の散逸の危険性が増すため、消極的に考えられています。

社会の現状実情を鑑みて

杓子定規に考えると実社会上葬儀費用の負担や支弁はもとより、被相続人について死亡診断した医療機関に対する医療費の支払い等もどうするのだろうと、実社会上、いろいろ困ったことが起きます。少額ならば、共同相続人の一部が立て替えてということにもなろうかと思いますが、交流が疎遠な他の共同相続人ほど、差し迫った債務の支払いはしない(というよりもわからないと言った方が正しいのかもしれません)にも関わらず、相続開始日(死亡日)以後、預貯金債権の一部が払い出されている事実を知ったとき、この引き出された金員はどこ言ったのか?と疑念を抱かれてしまうこともあったようです。

勝手払いより良い方法があります

本題の確認に入る前に、一応前回の記事のおさらいにもなるかもしれませんが、今日の社会では、預貯金債権は遺産の分割の対象となっていて、当然に法定相続分に基づいて預貯金債権を引き出すことができなくなりましたが、現行民法第909条の2に基づいて、遺産の分割を得ずとも、ある程度は引き出しを金融機関に請求することができるようになりました。詳細は、以下のリンク先にある先日の記事をご覧ください。

さて、本題に戻し、「分割前に処分されてしまった場合の遺産の範囲」ですが、実は、家庭裁判所の実務では、分割の対象となる遺産の範囲は、相続開始時に存在し且つ分割時にも存在する遺産に限られました。もっとも相続回復請求や不当利得、不法行為に基づいて返還請求や損害賠償請求に基づいて、回復させることは考えられなくもないのですが、手続きが迂遠になります。処分した人物が他の共同相続人であったとしても、別訴で申し立てなければなりませんし、その紛争が解決するまで、遺産の分割にかかる争訟の手続きを停止するのか、併行して進めるのか、そのときの裁判官の判断(訴訟指揮権)によって進行をどうするのか決まるでしょうし、全てを解決するまでに、さらに時間がかかるため、先に記したように、「分割の対象となる遺産の範囲は、相続開始時に存在し且つ分割時にも存在する遺産に限る」取り扱いをしていました。

改正によりどう変わった?

先の家庭裁判所の実務の問題は、結局勝手払いをした共同相続人が、他の共同相続人よりも得をすることがありえます。そこで、今回の改正で、他の共同相続人の全員(処分した共同相続人を除く)の同意があれば、「分割前に処分されてしまった場合の遺産の範囲」について「当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。」としました。もうすこし噛み砕いて表現すると、一部の共同相続人が処分してしまった遺産について、その他の共同相続人の全員が、処分されてしまった遺産であると主張した共同相続人の主張に同意したならば、当該処分されてしまった遺産も分割対象の遺産に含め、処分した他の共同相続人はすでに遺産を処分したことにより利得を享受しているのだから、遺産の分割により収受できる具体的相続分を本来あるべき形に調える効果があります。

同意しない事象はあり得る?

では、その余の共同相続人が、当該主張に対し、「同意しない」という事象は、あり得るのでしょうか。
はい、あり得ます。それは、処分した行為が相続人全員のためだった場合(例えば葬儀費用の支弁)、遺産の保存(建物の保存に該当する修繕等)のためだったと認められる場合は、同意はしない等です。この場合は、もはや「当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができず」分割する遺産からは、除外される(というよりもすでに分割によって処分された遺産)として取り扱うこととなるのです。

第2項のこと

次に、念のため、第二項のことも見ておきましょう。本文が長くなったので、第二項だけ再掲します。

2 前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。

https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_5-Ch_3-Se_3-At_906_2

とあります。この規定は、処分を下した共同相続人についてまで、同意を得る必要はない規定です。考えてみれば、共同相続人間の不公平の解消を目的としているのに、処分をくだした共同相続人についてまで、同意を得ることとなると、本規定そのものが事実上死文化してしまうため、主旨を貫徹するために、第二項の存在意義があるように思われます。

結語

今回は、民法第906条の2 について見てきました。分割前に処分されてしまった場合の遺産の範囲のこと、このことと特別受益に基づくいわゆる持戻し計算のことと、遺贈によって流れてしまった財産や生前贈与されたことにより遺産に該当しない財産についてまでも、いろいろ気がついたり、疑問符が浮かんできそうですが、実のところ、持戻しで計算はするも、現実の財産の返還を請求することはできません。今回の「分割前に処分されてしまった場合の遺産の範囲」についてですが、これまで規定すら存在していなかったこと、預貯金債権について法定相続分に基づいて、共同相続人の一部からの請求に対し、遺産の分割の対象財産であるため応じられない旨の判例変更があったこと、実社会の現状実情を鑑みて、本規定と第909条の2の存在意義があるように思われます。

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民法第909条の2のこと

こんにちは、今回は、預貯金債権の相続、特に民法909条の2ことを記します。

実はこの法令が制定される随分前は、銀行の預貯金債権は、遺産の分割の対象としなくても、各共同相続人が、法定相続分に基づいて、払い戻しを請求することができ、応じていたこともありました。

もっとも、遺産の分割手続がなされた上で、共同相続人の一人が、当該預貯金債権の元金および受け取れるべき利息の全てを、請求することも、実務では対応していました。もっともこの場合は、遺産の分割手続前に、法定相続分について払い出しを受けた場合、その分についての払い出しの義務はないものとして実務上取り扱っていたようです。

さて、ここで問題になるのが、一部の共同相続人が、法定相続分に基づき、預貯金債権の払い出しを受け、その後、遺産の分割手続を経て、預貯金債権の全額払い出しを請求した場合、問題が生じました。遺産の分割により取得した共同相続人から先の他の共同相続人による法定相続分による預貯金債権の一部の払い戻しについて、あずかり知らぬことであり、いわば、勝手に引き出されたことと同じ事象となったのです。一方金融機関側にとってみると、いわば二重払いの危険が孕むことが考えられ、法定相続分の払い出しを請求した共同相続人に対し念書や覚書を記載させて対応していたようです。

この問題は、最高裁で、預貯金債権は、遺産の分割の対象であり、当然に法定相続分に基づいて請求されても、払い出す義務を負わないものと、これまでの判例を変更することとなりました。

預貯金債権を他の相続財産と寸分違わず同等に扱って良いものかどうか?

ところで、預貯金債権の相続ですが、他人様に金銭を貸し付けたうえでの貸金返還請求権という性格ではなく、むしろ生活のための資金を預け入れておいたり、公共料金の支払いのための引き落としのための口座として活用されている事象がほとんどだと思います。そうすると、共同相続人の中には、これまで被相続人から扶養を受け、必要生計費を賄ってもらっていたり、相続人の資産が潤沢ではないため、葬儀費用を被相続人の預貯金債権から捻出することは、先の判例変更でもって、家計のやりくりが滞ることを避けなければならないため、題名にある、民法第909条の2が制定されることとなりました。

それでは条文を見てみましょう。e-Gov の法令検索から

(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
第九百九条の二 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-At_909_2

とあります。

前段ですが、「預貯金債権の三分の一…」とあります。

事例1:
例えばA銀行に、普通預金300万円、定期預金240万円あり、共同相続人が甲および乙の2名いるところ、甲は、
普通預金について
300×1/3(本法令による)×1/2(法定相続分)= 金50万円
定期預金について
240×1/3(本法令による)×1/2(法定相続分)= 金40万円
であり、総額金150万円を超えず、金90万円の払い出しを受けることができるわけですが、もしも定期預金の約定利息が、普通預金の利息よりも利回りが良いから温存させようと思って、普通預金から総額金90万円を払い出しを受けることができないことを意味しています。

事例2:
A銀行に、普通預金に600万円、定期預金に1200万円、B銀行に普通預金720万円あり、共同相続人は2名の場合、甲は、
A銀行普通預金について、最大で
600×1/3(本法令による)×1/2(法定相続分)= 金100万円
A銀行定期預金について、最大で
1200×1/3(本法令による)×1/2(法定相続分)= 金200万円ではなく、預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度である金150万円
と計算することができますが、A銀行から総額金250万円とはならず、預貯金債権の債務者ごとにとあるので、結局A銀行からは、普通預金(上限金100万円)と定期預金(上限金150万円)を併せて最大金150万円の請求をすることができます。
わかりにくいかもしれませんが、先の事例1と同様で、A銀行の普通預金は先の計算から最大金100万円であり総額金150万円の全額の請求はできませんが、定期預金からは金150万円の全額(この結果上限額に達し、普通預金からの払い出しはできないこととなる)を請求することもできますし、普通預金の上限額金100万円および定期預金50万円を請求することもできます。
B銀行普通預金について、最大で
720×1/3(本法令による)×1/2(法定相続分)= 金120万円
を払い出すことができます。
A銀行およびB銀行の払い出しの総額は270万円となり、金150万円を超えるわけですが、「預貯金債権の債務者ごとに」とあるので、問題ありません。

民法第909条の2 後段のこと

では、後段のことを、みてみましょう。

随分スクロールしてしまったので、後段部分だけ、e-Govより再度引用します。

(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
第九百九条の二 {前段省略} この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-At_909_2

とあります。このことは、遺産の分割手続が行われていないのにも関わらず、本条前段を受けて、払い出しを受けた事実は変わらないので、いやしくも、権利を行使した共同相続人は、遺産の一部の分割によりこれを取得したものをみなすとしている「みなし規定」となっています。そうすると、この後段の規定を受けて看做す以上、他の共同相続人に知られないように本条の規定により払い出しを受け、その後、払い出した共同相続人は預貯金債権を一切取得しないと協議がまとまったとしても、金融機関は、分割時に取得した共同相続人に対し、先に払い出しに応じた金員分は払い出しに応じる必要はなく、元金残部およびその残元金に対応する利息を支払いのみで良いこととなります。分割により預貯金債権を取得した共同相続人は、抜け駆けにより払い出しを受けた他方共同相続人に対し、求償することなるでしょう。

この後段を受け、協議書を調える際に、事実を確認する必要があると思われますし、留意が必要だろうと思われます。

社会が変化し、相続人自身の収入や必要生計費の変化、葬儀費用の捻出のため、いわば勝手払いの実態が多い昨今を鑑みると、法令に「遺産の分割前における預貯金債権の行使」の規定が、置かれたことはとっても有意義なことだと思います。もっとも現時点でも上限額が金150万円であるので、最近の物価上昇や、その物価上昇の前の段階で、東京をはじめとする首都圏では、家族葬に類似する事案でさえも葬儀費用だけで金200万円を超える事象もあると聞きます。この上限額の見直しをそろそろ考える時期なのではないかと思われます。

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不動産登記申請 事務所より 民事信託・遺言・後見・相続

年度が変わりました

こんにちは、年度が変わりました。まずは、登記申請の際に必要は固定資産の評価額についても切り替わりますので、継続事案については、資料の取り直しが必要になります。

また年度の切り替わりに伴うわけでもありませんが、来年から住所氏名の変更登記申請についても義務化されます。そして相続登記申請の義務化にともなう、過料の制裁の開始があと2年となりました。

住所氏名の変登記申請にしても、相続登記申請にしても、すぐできるから、後で申請しますという気持ちは、持たない方が良いと思います。特に相続は、単独相続でもない限り、他の共同相続人の存在があり、いわば利害関係人の態度如何によって、手続に必要な期間なんて、あっという間に経過してしまいます。

当事務所での、相続登記申請について兄弟姉妹が相続人である事案、相続放棄する事案について ならびに事業所得者が相続人である場合において 当事務所では、積極的に対応致します。

ご依頼に前にお願いですが、単に見積もり金額だけ聞きたい電話による問い合わせがとても多くありますが、対面で、資料を拝見しなければ、確定的な見積金額を提示することもできません。おそらく他所と比べたいからなのでしょうけど それにしても具体的な情報の提供がないにも関わらず、単に金額を教えて欲しいという要望に応えるには、やはり高めな概算見積を出さざるを得ません。ご理解いただきますよう、お願い申し上げます。

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債権者から見た相続手続

こんにちは 今回は 被相続人の債権者から相続手続と債権回収のことを見つめてみようと思います

債務者がお亡くなりになった場合 法律上「死亡」を原因として契約が終了することもあれば 権利義務関係を相続します

基本的には 相続するものと考えていただいて問題ありません

死亡によって契約が終了する法律関係について 一応触れておくと 借主が死亡した場合の使用貸借契約、委任者・受任者が死亡した場合の委任契約関係(ただし、義務の履行に準ずる登記申請手続の委任による代理の場合は終了しないこともあります。)などが考えられます

相続とは

あまりにも抽象的な 小見出しを記しましたが 相続とは 被相続人が得た資産や権利も負っている債務の一切を引き継ぐことを言います

もっとも相続の制度を貫徹してしまうと 相続人にとって不測の事態に陥りかねないため 単純承認のみならず相続放棄や限定承認の制度も準備されています

限定承認についての詳細はまた別の機会に記そうと思いますが 端的に言えば 被相続人が遺した資産から負債を差し引いて資産が残れば その残った部分を相続するが何も残らなかった場合もしくは負債が残ってしまった場合は 遺産を引き継がない制度です 難しい論点が実はあるのですが 詳細は別の機会に記したいと思います

さて相続人は承認する(引き継ぐ)のか 放棄するのか の2者択一を迫られるわけですが 債権者としては 相続人に承認しろ!とも 放棄しろ!とも強要することはできません。

もっとも 債権者としては 回収を早くしなければならない事情もあるでしょうから 相続人に対して 被相続人が負っていた債務について請求します

相続登記は相続した証

さて ここで不動産登記のことも考慮してみてみましょう

債権者にとって この不動産登記は 実は貴重な情報源となります

このことは 相続のみならず 債務者の財産状態も 不動産登記制度の反射効的におおよそ把握できる仕組みになっています

債務者が所有する不動産に着目すると まず他の金融機関とどのような権利関係が継続しているのか おおよそ 登記簿をみるとわかります
それから 場合によってですが 所有者が過去に離婚歴があり 元配偶者と法律問題があったことも時折伺えることがあります

では被相続人に対し債権を持っている債権者からみた相続登記はどのように見えるのでしょうか

債権者が債務者の生前中に請求できなかった理由が諸々あるかもしれません この被相続人が所有していた不動産に対し強制執行するにしても 抵当権等の担保権を持っているか 債務名義がなければできません

債務名義を得るにしても債務者において相続が開始すると 債権者としては 債務者のどの相続人に対して請求すべきかの問題はあります 実務上の回収業務として 財産をより多く所有している相続人に対して標的として定めたいところです

そこで相続を原因として登記が完了されていれば 債務者のどの相続人が承認したことが明確になり 債権者は 登記を得た相続人に対し効率よく請求することができます

債務者の相続人にとって 熟慮期間中に、債権者が相続人に請求をしたとしても 相続人が被相続人の債権債務関係が明らかになり 資産を引き継がなくても問題なければ 相続放棄という選択がかなり有意義であることが言えます

一番敏感な相続債権者とは

よくありがちな話ですが 実は債務者の相続について一番敏感な債権者は 固定資産税・都市計画税の租税債権をもっている地方自治体でもあります

地方自治体から納税に関するお尋ねと回答書(雛形)の送付があったことで 初めて自身が相続したことを知ったという事象は多いにしてあります もちろん熟慮期間が始まったばかりですので 資産と負債をよく調べ 承認するのか放棄するのか 意思決定し 承認ならば 納税する登記申請する 放棄をするならば 家庭裁判所に申述を申し立て 受理してもらうことが必要です

付言しますが結果的に承認することとなった場合 それまで留保していた納税義務について 納税が遅延していたことが遡って主張されることもありうるため 留意すべきと考えます

結びに

債権者からみた相続登記は どの相続人を相手にして請求すれば良いのか明確になり 効率よく請求することができます

もっとも 登記を得た相続人にとって まさか被相続人が巨額な債務を負っていた・保証人になっていたという事象は 注意していても 気がつかなかった 錯誤(いわゆる勘違い)に基づいて相続してしまったので取り消したい ということがありうるかもしれません もっとも実情によって認められるのか認められないのか かなり難しい問題だと言え あまり登記を得たのちの相続放棄の申述は困難を極めると考えられます

先の記事にも記しましたが 被相続人の資産を調べるのも一苦労ですが 負っていた債務を調べるのは いわゆるないことの証明をすることと同じであり 限定的に情報機関とお付き合いのある業者に対して負債を負っていないという証明?!?にはなるかもしれませんが 世界中に債権者は存在しないという証明は皆無であるので 本当に難しい問題であると感じます

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