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分割前に処分されてしまった場合の遺産の範囲のこと

こんにちは、前回は、民法第909条の2のことを見てきました。ご覧になっていない方は、前回の記事をご覧ください。

さて今回は、もしも分割前に、その遺産の全部または一部について、処分されてしまった場合、その遺産の範囲をどう扱うのかについて、記したいと思います。このこと実は、民法にあります。

では早速みてみましょう。民法第906条の2 です。e-Gov から引用します。

(遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲)
第九百六条の二 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。
2 前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。

https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_5-Ch_3-Se_3-At_906_2

です。条文を細かくみる前に、そもそも..

分割前に、遺産が処分されてしまうことがあるの?

はい。事案によってですが、あり得ます。特に預貯金債権については、もしかしたら行われていることがあります。

典型的に、葬儀費用ですが、講学上では、もはや被相続人(というよりも死亡により私権を失っているので表現がややおかしいのですが判りやすくイメージを持たせるために記ました)が直接負担するものではなく、遺族(相続人)が原則負担することと解されています。一方、地域社会や国家もしくは所属されてた会社組織等に対し尽力された方に向けて追悼の意を表すため、それらの団体が自ら負担して葬儀を行うこともないわけではありませんが、世俗的には、主催する方は大方、相続人でしょうから、相続人が負担すると考えられていますし、もしも相談を受けた場合、法律専門職であれば、一義的には、相続人や葬儀を行う方がご負担頂き、後に相続人間や主催者間で調整してくださいと、ご案内していたのも事実です。

葬儀費用の財源はどこから?

では、実社会に目を向けてみると、当事務所界隈を見渡してみると、葬儀費用の話が出てきた場合のほぼ全てが、被相続人の預貯金債権から、(いわゆる勝手払いによって)引き出して支弁していたようです。後の遺産分割協議と同時に、事実上、この葬儀費用の負担のあり方も調整を経て、葬儀費用の負担のあり方を協議書に明文化するのか否かはともかく、遺産を分割する事象にもよく遭遇しました。

良いのか悪いのか?と聞かれたら…

いわゆる「勝手払い」が良いのか悪いのかと聞かれたら、良い訳がありません。ここまで記してきた流れから、あくまで被相続人の葬儀費用に支弁するためと記してきましたが、払い出しを請求した共同相続人自身の生計費や遊興費(ゆうきょうひ)を賄うために、もしかしたら引き出したことも考えられるわけです。また遺産の分割の方針が定まっていないにも関わらず、遺産を動かしてしまうことは、遺産の散逸の危険性が増すため、消極的に考えられています。

社会の現状実情を鑑みて

杓子定規に考えると実社会上葬儀費用の負担や支弁はもとより、被相続人について死亡診断した医療機関に対する医療費の支払い等もどうするのだろうと、実社会上、いろいろ困ったことが起きます。少額ならば、共同相続人の一部が立て替えてということにもなろうかと思いますが、交流が疎遠な他の共同相続人ほど、差し迫った債務の支払いはしない(というよりもわからないと言った方が正しいのかもしれません)にも関わらず、相続開始日(死亡日)以後、預貯金債権の一部が払い出されている事実を知ったとき、この引き出された金員はどこ言ったのか?と疑念を抱かれてしまうこともあったようです。

勝手払いより良い方法があります

本題の確認に入る前に、一応前回の記事のおさらいにもなるかもしれませんが、今日の社会では、預貯金債権は遺産の分割の対象となっていて、当然に法定相続分に基づいて預貯金債権を引き出すことができなくなりましたが、現行民法第909条の2に基づいて、遺産の分割を得ずとも、ある程度は引き出しを金融機関に請求することができるようになりました。詳細は、以下のリンク先にある先日の記事をご覧ください。

さて、本題に戻し、「分割前に処分されてしまった場合の遺産の範囲」ですが、実は、家庭裁判所の実務では、分割の対象となる遺産の範囲は、相続開始時に存在し且つ分割時にも存在する遺産に限られました。もっとも相続回復請求や不当利得、不法行為に基づいて返還請求や損害賠償請求に基づいて、回復させることは考えられなくもないのですが、手続きが迂遠になります。処分した人物が他の共同相続人であったとしても、別訴で申し立てなければなりませんし、その紛争が解決するまで、遺産の分割にかかる争訟の手続きを停止するのか、併行して進めるのか、そのときの裁判官の判断(訴訟指揮権)によって進行をどうするのか決まるでしょうし、全てを解決するまでに、さらに時間がかかるため、先に記したように、「分割の対象となる遺産の範囲は、相続開始時に存在し且つ分割時にも存在する遺産に限る」取り扱いをしていました。

改正によりどう変わった?

先の家庭裁判所の実務の問題は、結局勝手払いをした共同相続人が、他の共同相続人よりも得をすることがありえます。そこで、今回の改正で、他の共同相続人の全員(処分した共同相続人を除く)の同意があれば、「分割前に処分されてしまった場合の遺産の範囲」について「当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。」としました。もうすこし噛み砕いて表現すると、一部の共同相続人が処分してしまった遺産について、その他の共同相続人の全員が、処分されてしまった遺産であると主張した共同相続人の主張に同意したならば、当該処分されてしまった遺産も分割対象の遺産に含め、処分した他の共同相続人はすでに遺産を処分したことにより利得を享受しているのだから、遺産の分割により収受できる具体的相続分を本来あるべき形に調える効果があります。

同意しない事象はあり得る?

では、その余の共同相続人が、当該主張に対し、「同意しない」という事象は、あり得るのでしょうか。
はい、あり得ます。それは、処分した行為が相続人全員のためだった場合(例えば葬儀費用の支弁)、遺産の保存(建物の保存に該当する修繕等)のためだったと認められる場合は、同意はしない等です。この場合は、もはや「当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができず」分割する遺産からは、除外される(というよりもすでに分割によって処分された遺産)として取り扱うこととなるのです。

第2項のこと

次に、念のため、第二項のことも見ておきましょう。本文が長くなったので、第二項だけ再掲します。

2 前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。

https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_5-Ch_3-Se_3-At_906_2

とあります。この規定は、処分を下した共同相続人についてまで、同意を得る必要はない規定です。考えてみれば、共同相続人間の不公平の解消を目的としているのに、処分をくだした共同相続人についてまで、同意を得ることとなると、本規定そのものが事実上死文化してしまうため、主旨を貫徹するために、第二項の存在意義があるように思われます。

結語

今回は、民法第906条の2 について見てきました。分割前に処分されてしまった場合の遺産の範囲のこと、このことと特別受益に基づくいわゆる持戻し計算のことと、遺贈によって流れてしまった財産や生前贈与されたことにより遺産に該当しない財産についてまでも、いろいろ気がついたり、疑問符が浮かんできそうですが、実のところ、持戻しで計算はするも、現実の財産の返還を請求することはできません。今回の「分割前に処分されてしまった場合の遺産の範囲」についてですが、これまで規定すら存在していなかったこと、預貯金債権について法定相続分に基づいて、共同相続人の一部からの請求に対し、遺産の分割の対象財産であるため応じられない旨の判例変更があったこと、実社会の現状実情を鑑みて、本規定と第909条の2の存在意義があるように思われます。

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357
事務所:千葉県白井市冨士185番地の21

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民法第909条の2のこと

こんにちは、今回は、預貯金債権の相続、特に民法909条の2ことを記します。

実はこの法令が制定される随分前は、銀行の預貯金債権は、遺産の分割の対象としなくても、各共同相続人が、法定相続分に基づいて、払い戻しを請求することができ、応じていたこともありました。

もっとも、遺産の分割手続がなされた上で、共同相続人の一人が、当該預貯金債権の元金および受け取れるべき利息の全てを、請求することも、実務では対応していました。もっともこの場合は、遺産の分割手続前に、法定相続分について払い出しを受けた場合、その分についての払い出しの義務はないものとして実務上取り扱っていたようです。

さて、ここで問題になるのが、一部の共同相続人が、法定相続分に基づき、預貯金債権の払い出しを受け、その後、遺産の分割手続を経て、預貯金債権の全額払い出しを請求した場合、問題が生じました。遺産の分割により取得した共同相続人から先の他の共同相続人による法定相続分による預貯金債権の一部の払い戻しについて、あずかり知らぬことであり、いわば、勝手に引き出されたことと同じ事象となったのです。一方金融機関側にとってみると、いわば二重払いの危険が孕むことが考えられ、法定相続分の払い出しを請求した共同相続人に対し念書や覚書を記載させて対応していたようです。

この問題は、最高裁で、預貯金債権は、遺産の分割の対象であり、当然に法定相続分に基づいて請求されても、払い出す義務を負わないものと、これまでの判例を変更することとなりました。

預貯金債権を他の相続財産と寸分違わず同等に扱って良いものかどうか?

ところで、預貯金債権の相続ですが、他人様に金銭を貸し付けたうえでの貸金返還請求権という性格ではなく、むしろ生活のための資金を預け入れておいたり、公共料金の支払いのための引き落としのための口座として活用されている事象がほとんどだと思います。そうすると、共同相続人の中には、これまで被相続人から扶養を受け、必要生計費を賄ってもらっていたり、相続人の資産が潤沢ではないため、葬儀費用を被相続人の預貯金債権から捻出することは、先の判例変更でもって、家計のやりくりが滞ることを避けなければならないため、題名にある、民法第909条の2が制定されることとなりました。

それでは条文を見てみましょう。e-Gov の法令検索から

(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
第九百九条の二 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-At_909_2

とあります。

前段ですが、「預貯金債権の三分の一…」とあります。

事例1:
例えばA銀行に、普通預金300万円、定期預金240万円あり、共同相続人が甲および乙の2名いるところ、甲は、
普通預金について
300×1/3(本法令による)×1/2(法定相続分)= 金50万円
定期預金について
240×1/3(本法令による)×1/2(法定相続分)= 金40万円
であり、総額金150万円を超えず、金90万円の払い出しを受けることができるわけですが、もしも定期預金の約定利息が、普通預金の利息よりも利回りが良いから温存させようと思って、普通預金から総額金90万円を払い出しを受けることができないことを意味しています。

事例2:
A銀行に、普通預金に600万円、定期預金に1200万円、B銀行に普通預金720万円あり、共同相続人は2名の場合、甲は、
A銀行普通預金について、最大で
600×1/3(本法令による)×1/2(法定相続分)= 金100万円
A銀行定期預金について、最大で
1200×1/3(本法令による)×1/2(法定相続分)= 金200万円ではなく、預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度である金150万円
と計算することができますが、A銀行から総額金250万円とはならず、預貯金債権の債務者ごとにとあるので、結局A銀行からは、普通預金(上限金100万円)と定期預金(上限金150万円)を併せて最大金150万円の請求をすることができます。
わかりにくいかもしれませんが、先の事例1と同様で、A銀行の普通預金は先の計算から最大金100万円であり総額金150万円の全額の請求はできませんが、定期預金からは金150万円の全額(この結果上限額に達し、普通預金からの払い出しはできないこととなる)を請求することもできますし、普通預金の上限額金100万円および定期預金50万円を請求することもできます。
B銀行普通預金について、最大で
720×1/3(本法令による)×1/2(法定相続分)= 金120万円
を払い出すことができます。
A銀行およびB銀行の払い出しの総額は270万円となり、金150万円を超えるわけですが、「預貯金債権の債務者ごとに」とあるので、問題ありません。

民法第909条の2 後段のこと

では、後段のことを、みてみましょう。

随分スクロールしてしまったので、後段部分だけ、e-Govより再度引用します。

(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
第九百九条の二 {前段省略} この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-At_909_2

とあります。このことは、遺産の分割手続が行われていないのにも関わらず、本条前段を受けて、払い出しを受けた事実は変わらないので、いやしくも、権利を行使した共同相続人は、遺産の一部の分割によりこれを取得したものをみなすとしている「みなし規定」となっています。そうすると、この後段の規定を受けて看做す以上、他の共同相続人に知られないように本条の規定により払い出しを受け、その後、払い出した共同相続人は預貯金債権を一切取得しないと協議がまとまったとしても、金融機関は、分割時に取得した共同相続人に対し、先に払い出しに応じた金員分は払い出しに応じる必要はなく、元金残部およびその残元金に対応する利息を支払いのみで良いこととなります。分割により預貯金債権を取得した共同相続人は、抜け駆けにより払い出しを受けた他方共同相続人に対し、求償することなるでしょう。

この後段を受け、協議書を調える際に、事実を確認する必要があると思われますし、留意が必要だろうと思われます。

社会が変化し、相続人自身の収入や必要生計費の変化、葬儀費用の捻出のため、いわば勝手払いの実態が多い昨今を鑑みると、法令に「遺産の分割前における預貯金債権の行使」の規定が、置かれたことはとっても有意義なことだと思います。もっとも現時点でも上限額が金150万円であるので、最近の物価上昇や、その物価上昇の前の段階で、東京をはじめとする首都圏では、家族葬に類似する事案でさえも葬儀費用だけで金200万円を超える事象もあると聞きます。この上限額の見直しをそろそろ考える時期なのではないかと思われます。

遺産の分割に関する相談を承ります
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事務所より 法教育

総量規制とおまとめローン

こんにちは、今回は、債務整理のこと、特に総量規制とおまとめローンのことを記そうと思います

まず総量規制ですが、貸金業法の適用を受ける貸金業者からの借り入れは、この総量規制を受けるので、借り入れができる金額に制限を受けます。この根拠法令は、貸金業法第13条の2(過剰貸付等の禁止)にあります。

https://laws.e-gov.go.jp/law/358AC1000000032#Mp-Ch_2-Se_2-At_13_2

リンクだけでは、内容が判然としませんので、そのまま引用します。

第十三条の二 貸金業者は、貸付けの契約を締結しようとする場合において、前条第一項の規定による調査により、当該貸付けの契約が個人過剰貸付契約その他顧客等の返済能力を超える貸付けの契約と認められるときは、当該貸付けの契約を締結してはならない。
2 前項に規定する「個人過剰貸付契約」とは、個人顧客を相手方とする貸付けに係る契約(住宅資金貸付契約その他の内閣府令で定める契約(以下「住宅資金貸付契約等」という。)及び極度方式貸付けに係る契約を除く。)で、当該貸付けに係る契約を締結することにより、当該個人顧客に係る個人顧客合算額(住宅資金貸付契約等に係る貸付けの残高を除く。)が当該個人顧客に係る基準額(その年間の給与及びこれに類する定期的な収入の金額として内閣府令で定めるものを合算した額に三分の一を乗じて得た額をいう。次条第五項において同じ。)を超えることとなるもの(当該個人顧客の利益の保護に支障を生ずることがない契約として内閣府令で定めるものを除く。)をいう。

念の為、引用した貸金業法第13条の2第2項にの基準額については、貸金業法施行規則第十条の二十二(年間の給与に類する定期的な収入の金額等)にあります。

ご興味のある方は、以下のリンク先をご覧ください。なお、原文をそのまま載せようと思いましたが、条文はかなりの長文です。端的に記すと、「複数の貸金業者から借り入れるにしても、その全貸金業者の総借入額は、年収の3分の1までとする。」と規制されています。

https://laws.e-gov.go.jp/law/358M50000040040/#Mp-At_10_22

貸金業法は、あくまで貸金業者に対して適用される法律

ただこの貸金業法は、あくまで貸金業者(およびみなし貸金業)に適用する法律です。銀行等の金融機関には、適用を受けません。例えば、住宅ローンについて銀行等の金銭消費貸借契約は、貸金業法の適用を受けません。もっとも住宅ローンは、実は貸金業法の適用を受ける業者が取り組むつなぎ融資についても例外規定を設けています。

話を総量規制に戻します。銀行等の金融機関が取り組む住宅ローンに限らない金銭消費貸借契約に基づく貸金に関する業務は銀行法の適用を受けますし、農業に従事されている方には身近な存在である農業協同組合が取り組む融資も、農業協同組合法の適用を受けるのであり、貸金業法の適用を受けることはありません。信用金庫、信用組合についても同様に、貸金業法の適用を受けません。

貸金業法の適用を受けない事業者からの借金は、総量規制の適用を受けない

上記のとおり、実のところ、貸金業法の総量規制の適用を受けない事業者が展開している融資・金銭貸付は、意外にも身近に存在しています。では他の法令に基づき金銭の貸付が許されている事業者はなぜ貸金業法の総量規制の適用を受けないのか、それは、他の法令の適用によって融資審査は、適切に行われていると捉えているため、貸金業法の適用は受けないのです。

適切な審査は行われているのか?

では、融資に当たって、審査は適切に行われているのでしょうか?と疑問を持ちますが、そうであると信じたいとしか記しようがありあません。あまりにも酷い実情が存在し、社会に露呈し、立法行政が問題として取り上げられるくらいであれば、なんらかしらの法改正があっても良いのではないかと考えます。

おまとめローンのこと

さて、おまとめローンのことですが、個々の債権額が10万円未満の場合、利息制限法の上限利率が年率20パーセント、10万円から100万円未満の場合は、年率18%ですが、複数の債務を結果的に一本化したことによって、総額100万円以上になった場合、利息制限法の上限利率は15パーセントに縮減することとなるので、論理的には、利率の引き下げにつながるだろうと考えられます。またまとめたことによって、債権額もそれなりにまとまった金額となるため、もしかしたら、利息制限法の上限利率よりも低い利率で借り入れることができるかもしれません。適用する利息は、上限は利息制限法の規定を受けますが、下限は、貸し付ける事業者が自由に決めるので、個々の貸金業の借入時の適用されていた利率よりも低い利率になることもあります。では不利な点は、債権額および貸金業者の確定利息分の返済のための金員は必要であるため、債権額(元金)が、まとめる前の債権額(元金)総額に比べるとその確定利息分が上昇してしまうこと、昔の話かもしれませんが、利息制限法に違反した貸金業法上の上限利息に近い確定利息について、引き直しをすることなく融資し、結果的に元金に組み込まれた形で、債権額が膨れ上がってしまうこともありうること、が考えられます。

まとめ

貸金業法の総量規制は、貸金業者にしか適用されない。銀行、信用金庫、信用組合、農業共同組合等の融資については、総量規制の適用は受けない。結果的に適用を受けないことにより、年収の3分の1以上の借金を背負うことが結果的に生じてしまい、生活が破綻する不確実要素(リスク)が生じる可能性がある

貸金業者から借り入れている方は、おまとめローンを利用するのかどうか、よくよくお考えになっていただきたいものです。

司法書士 大山 真 事務所
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不動産登記申請

権利証(登記済証,登記識別情報)のこと

こんにちは、電話による問い合わせがあり、以前から何回か取り上げているテーマだろうと思っていたのですが、どうやらそうでもなかったようなので、注意喚起を促すために改めて記そうと思います。

権利証は再発行されない

はい、「権利証」と俗世間では、言われていますし、時折、法務局内部職員の方からも、「権利証」という言葉が出てくることもあるのですが、この権利証は、平成15年改正前の不動産登記法に基づき不動産の権利に関する登記で、所有権をはじめ、地役権以外の登記することができる制限物権に対して初めて取得したときに交付されてました。なお現行不動産登記法では「登記識別情報」がいわばその役割を引き継ぎましたが、平成15年改正不動産登記法に基づき当該法務局(登記所)がオンライン庁に実施される前に、交付していた書面としての「登記済証」と言われる書面のことを一般的に指しますが、「登記識別情報」も含めて、広義に「権利証」を指していることもあります。

さて、小見出しに記したように、この「登記識別情報」または「登記済証」は再発行はされません。特に登記済証は、世界で一通しか存在しない書面と言え、希少価値?!?という点では、重要なものと言えるかもしれません。やや話が逸れましたが、この「登記済証」「登記識別情報」は、再発行、再交付、再送付を受けることができない大きな理由は、法令に救済措置に当たる規定が存在しないからです。規定が存在しない以上、たとえ真の登記権利者からの申し出があったとしても、その申し出に答えて再交付・再送付する規定の法令が存在しない以上、登記官が、「気の毒な方ですね。」と内心思っていても、再交付・再送付できないのです。

紛失した経緯にご留意

さて、「登記済証」「登記識別情報」を紛失した、在り処も含めて失念してしまったという理由で、よく問い合わせをいただき、「どうしたら良いですか?」、とよく聞かされますが、その紛失した理由がとっても大事なことだと考えられます。

特に、金庫に入れていたのに、ある日、中身を確認したら何も入ってなかったということもあるようです。もしもその金庫について、施錠や鍵や解錠するためのダイヤルの管理が適切にされていたのなら、盗難の可能性も考えられるので、民事上不利に扱われないために、警察に対し盗難被害届および不動産の管轄法務局に対し不正登記の防止の申し出の手続きを行いましょう。
まず、警察への盗難被害届ですが、刑事上の取り扱いを適切に対応してもらうための制度であり、直接不正登記の防止に寄与するものではありません。しかしながら真の所有権登記名義人が、その盗取された権利証を使われて登記申請がなされたとき、被害を被っている蓋然性を持たせ、後に発生するかもしれない民事上の紛争(窃盗犯に対する賠償、所有権を主張する第三者からの否認し、自己への所有権回復のための証拠の一つとして事実を積み上げるため)への対策を講じるためです。
不正登記の防止の申し出は、真の登記名義人の預かり知らないうちに登記申請がなされることを防止するための制度です。詳細は別の記事に記そうと思います。

耳を疑う事実でした

先日、電話で問い合わせを受けた事案は、様子が違っていました。それは、金庫の鍵は、本人にすぐにわかるように金庫の近くに保管し、ダイヤルの設定も、ご自身が備忘的な意味を込めてメモしたものを金庫に貼り付けておいた、とのことでした。
これでは、確かに金庫としては機能を搭載しているのですが、その機能を全く働かせていない貴重品を入れる保管庫に成り下がっているように思いました。この状況では、さすがに盗難被害届を提出する際に、その経緯を尋ねられ、事実を話したところで、被害が出て当然と叱責されることもあるかもしれません。もっとも「権利証」がなくなった事実は変わらないので、おそらく受理されるのだろうと思います。もちろんこの事案でも、先に記したように、警察への盗難被害届および法務局に不正登記の防止の申出をすることをお勧めします。

高齢社会を迎え

この権利証の紛失のこと、実は取引決済でもよく耳にすることがあります。最近では、親子二代に渡って取引に関与する場合、親御さんの名義に関する不動産の権利証について、紛失しているというケースです。特に高齢者となり、認知機能が低下し、判断能力も衰えてきて、大事なものが常に気になる心配性な方や盗られ妄想の傾向のある方だと、大事なものを確認してはその時々に自分にとってその時点で大事な場所に仕舞ってしまい、後にその仕舞った場所を思い出せなくて、紛失してしまう事案があるようです。またそう言った不都合を解消しようと、親族の方が、介助(と親族の方は思っているようです)して、貴重品を保管していたところ、本人の預かり知らないところで紛失していると誤認し、警察に被害として届け出ていたという事案など、笑えるようで笑えない事実もあるようです。

登記識別情報の失効制度

先の記載は、主に「『登記済証」の紛失」に重視して記しましたが、「登記識別情報」については、もう一つ、対処方法があります。その方法は、登記識別情報の効力を失わせてしまう制度である「登記識別情報の失効制度」です。

ただこの失効制度も、一度失効させると再度の登記識別情報の効力を復活させる制度は、準備されてはいません。事前通知制度や資格者代理人による本人確認制度等の代替手段を用いて、対応する必要があります。

ご留意を

くれぐれも、登記済証、登記識別情報について、紛失、失念することがないようご留意願います。

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不動産登記申請 事務所より 民事信託・遺言・後見・相続

年度が変わりました

こんにちは、年度が変わりました。まずは、登記申請の際に必要は固定資産の評価額についても切り替わりますので、継続事案については、資料の取り直しが必要になります。

また年度の切り替わりに伴うわけでもありませんが、来年から住所氏名の変更登記申請についても義務化されます。そして相続登記申請の義務化にともなう、過料の制裁の開始があと2年となりました。

住所氏名の変登記申請にしても、相続登記申請にしても、すぐできるから、後で申請しますという気持ちは、持たない方が良いと思います。特に相続は、単独相続でもない限り、他の共同相続人の存在があり、いわば利害関係人の態度如何によって、手続に必要な期間なんて、あっという間に経過してしまいます。

当事務所での、相続登記申請について兄弟姉妹が相続人である事案、相続放棄する事案について ならびに事業所得者が相続人である場合において 当事務所では、積極的に対応致します。

ご依頼に前にお願いですが、単に見積もり金額だけ聞きたい電話による問い合わせがとても多くありますが、対面で、資料を拝見しなければ、確定的な見積金額を提示することもできません。おそらく他所と比べたいからなのでしょうけど それにしても具体的な情報の提供がないにも関わらず、単に金額を教えて欲しいという要望に応えるには、やはり高めな概算見積を出さざるを得ません。ご理解いただきますよう、お願い申し上げます。

不動産の登記に関する相談を賜ります。
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