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不動産登記申請 事務所より 会社・法人・企業法務 民事信託・遺言・後見・相続 裁判事務

問い合わせ前のお願い

こんにちは、今回は、当事務所をはじめ、司法書士事務所に問い合わせる前の、留意事項を記したいと思います。なお、相続手続に関する問い合わせのみに、限定して記したいと思います。

他の共同相続人と話ができるようであれば、よく話し合ってからの来所をお願いします

以前、訪れた事例を記しますが、同居されている他の共同相続人と話し合いができる状況であるにも関わらず、話し合わずに複数で来所されたことがあり、面談時に、他の共同相続人から「自分で(手続きを)やります。」と宣言されました。初動において取られた態度から、当職としても相続財産たる不動産における所有権の帰属が確定していない以上、事件を受託するのは適切ではないと判断し、お断りしました。

見積を依頼するなら、見積るための材料(資料)の提示をお願いします

このことも以前ありましたが、見積もるに当たっての材料(書類)の提示がなければ、見積もることはできません。

また「相場は?」という言葉をお聞きしますが、市場で公開されているような事業ではありませんし、そもそも法令通達倫理等において報酬基準は撤廃されており存在しません。もっとも統計調査に基づいた過去の結果は存在していますが、当時の報酬額が今日において適切かどうかは、誰しも判断することはできません。

話を元に戻しますが、業務を遂行するに当たって、見通しが必要となります。その見通しをつけるための資料の提示を受けなければ、見積もることはできません。

参考に記しますが、相続に基づく不動産登記申請依頼であれば、固定資産評価額、相続関係を証明する書類が明確にならなければ、見積もることはできません。

登記申請手続きの前に、実体上の権利関係を証する書面の起案は別途費用報酬の請求が発生します

面談時点で、書面が充実していない場合、登記申請にかかる見積もりの前に、実体上の権利関係を確定させるための書面起案は、登記申請手続きよりも前に必要なことですので、登記申請にかかる費用報酬とは別に請求が発生します。

弁護士業、司法書士業は慈善事業ではありません

最後に、少々厳しいことを記しますが、弁護士先生や私たち司法書士は、残念なことに慈善事業ではありませんし、国家行政から資格により限定されている職業ではありますが、それ以上の保護を受けているわけでわありませんし、金銭的に、補助を受けて事業が成立しているわけでもありません。

法令実務に関する情報を入手するだけでも、他のお客様からいただいた報酬を元手にして、経費を払って仕入れています。時折勘違いをされて、相談は無料ですよね?とおっしゃる方がいらっしゃいますが、原則、相談料は有償です。もっとも事務所によっては、地域へのことを慮って、初回30分は無料で対応したりする当事務所をはじめ他の事務所さんでも存在します。それにしても、もともと相談は、無償で対応しなければならない根拠は存在せず、むしろ法令により、相談を受けることを生業とする規定が存在する以上、原則有償であることを、ご理解ください。

海岸にて

相続手続きの相談に応じます(白井市市内在住の方は、初回30分相談料無料)

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357
事務所:〒270-1432 千葉県白井市冨士185番地の21

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裁判事務

なぜ裁判所は同じ内容を2回聴くのか(訴訟手続)

こんにちは、以前に似たような事案を取り扱いましたが、今回は、『なぜ裁判所は同じ内容を2回聴くのか(訴訟手続)』として、記したいと思います。

前回は、家事事件手続に位置している相続放棄申述申立を主として取り扱いましたが、今回は、主に、民事訴訟手続上のことを記したいと思います。

同じことを二回も聴くなんて!、そう思われるかもしれませんが ん、一般の方の感性から、裁判所の振る舞いを見た場合、そう思われても致し方ない面もあるだろうと思います。おそらく大多数の判事、判事補である裁判官でさえも、意識はしているはずですし、訴訟指揮権のあり方に忠実である方ほど、そうせざるを得ないと意識するのかもしれませんね。

ではどのようなシーンなのかというと、原告(訴えた人)・被告(訴えられた人)双方が、訴訟代理人(弁護士先生)の関与がないいわゆる本人訴訟という形態で、訴訟審理が進行しているときに時折、そう感じられる方がいらっしゃいます。

訴えるためには請求原因が必要

ところで、訴えを提起するには、訴えて、相手方に請求し、満足を得られるだけの利益が存在しなくてはいけませんが、その請求するための原因が存在しなくてはいけません。そのことを「請求の原因」と言います。

もう少し噛み砕いて、記すと、請求の趣旨と請求の原因があります。

請求の趣旨

請求の趣旨は、いわば、究極的に「相手方に何をして欲しいのか」、その主張を記します。そしてこの請求の趣旨は、特に重要で、登記請求訴訟では、この「請求の趣旨」がしっかり記されていないと、法務局で受理できないこととなります。

請求の原因

改めて、「請求の原因」についてですが、請求の趣旨に至るための法律上の原因を主張することとなります。この請求の原因ですが、例えば、不動産の売買であるならば、「不動産を買い受けた。」「不動産を売り渡した。」という事実を主張することとなります。(実際の訴状の記載では、もう少し詳しく記します。)

証拠の提出

次に、請求の原因を主張したのですが、その事実を裏付ける証拠を、例えば「不動産売買契約書」を書証として提出し、そして、証拠調べの期日で、尋問として、インタビューに答えていく作業を行います。

さて、ここまで記してきましたが、訴状に記し提出し、証拠(書証:不動産売買契約書)も提出したので、裁判所もわかってくれるだろうと思いがちですが、訴状は、主張するためのもの、書証は、請求原因を裏付けるために証拠ということになるのですが、相手方から反論や請求原因となっている事実に対して知らないと主張されることもあります。そうすると書証のみでは証拠としては不十分かもしれないと裁判所が判断した場合は、尋問をして、書証には現れていない証拠を引き出すことをしていきます。

実質同じことを2回聞かれる理由

この「尋問」の際に、訴状に書いたこと、売買契約書に記されたことについて、再度聞き出すことも行われることがあるわけですが、このときに、一般人の方は、なぜ2回聴くのだろう、という感覚になります。しかしながら、訴訟手続を厳格に行なった場合、主張する活動と立証する活動は、全く別のこととして取り扱います。故に、訴訟に記したことを陳述することで主張したこととなり、尋問で述べたことは、証拠として取り扱われることとなります。

訴訟指揮権というもの

最後に、訴訟指揮権は、裁判所に存在しているわけですが、その指揮権に基づいて、証拠の提出を求められます。ただ裁判所によっては、弁論期日(主に主張を出し合う期日)の時点で、原告または被告が、事実に関することを述べることも十二分に考えられることもあり、その場合、改めて尋問期日を設け、その時に再度、陳述させるのではなく、その時に陳述した内容を証拠として採用することもあるようです。


裁判実手続について後方支援のご依頼を承ります

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離婚・財産分与

内縁関係解消と慰謝料等請求のこと

こんにちは、今回は、相続や後見から話題が逸れますが、内縁関係の解消時の法律問題について触れたいと思います。

結婚後の夫婦と内縁の違い

まず、前提となる知識として、結婚して夫婦共同して生活していくことと結婚(婚姻)をせずに、内縁関係(程度はあるかもしれませんが同居・同棲していることを想定しています。)に至り、共同生活している場合、戸籍法や行政による税と社会保障の問題はここでは取り上げませんが、男女の関係について、何か違いがあるのかというと、実のところ違いはありません。

判例の態度を見ると、内縁関係にあったものが不仲になり、関係を解消するにあたって、離婚の規定を準用して解決を探ります。そういった意味では、関係解消の原因を作った有責内縁者に対し慰謝料を請求したり、内縁関係継続中に、共同して築いた財産を分与の対象としたり、内助の功を奏してきた一方当事者に対し、他方当事者に対して、補償を求めることもありえます。

どこに訴えれば良いのか?

内縁関係解消の問題は、どこに訴えれば良いのか。離婚の問題に準じて取り扱うので、家庭裁判所に対し、家事調停の申し立てることとなります。
詳細は、当事務所を始め、弁護士事務所、司法書士事務所にご相談いただければと思います。

相続問題は対応できない

さてここまでは、内縁関係にあったが不仲になり、その内縁関係を解消することとなった場合の問題を見てきました。

では、内縁関係の解消といっても、一方当事者が死亡したことによって解消した場合の問題点を見ていこうと思います。

死亡した一方内縁者の相続ですが、他方内縁者は相続人ではないため、民法の規定にある相続人の存在があるならば、遺産について相続することはできません。その一方で、負債についても相続財産であるので、連帯債務者、連帯保証人でもない限り、債務についても責任を負わないこととなります。もしも相続人が不存在であり、他方内縁者以外に特別縁故者がいないならば、最終的には家庭裁判所の事実認定に委ねらえれますが、遺産を引き継ぐ可能性がありえます。

不仲の関係に至った場合は要注意

話が前後してしまいますが、諸般の事情がああり、内縁関係を継続されていることと思います。また夫婦別姓という問題もあって、婚姻届の提出には二の足を踏んでいらっしゃる現実もメディアを通じて、話が聞こえてきます。
婚姻関係と内縁関係、それぞれに至ったのち、不仲になった場合は、その後の紛争処理は、先に見てきたとおり類似しています。故に、ドラマで、内縁関係の二人のうち、一人が突然出て行くというシーンがあり、現実社会でも起きていますが、それ相応に留意が必要なのではないかと思います。別れることを切り出した際に、暴力が伴う可能性があるならば、身の安全の確保が最優先ですが、できることなら、しっかりと清算してから関係を解消することも大事だと思います。

死別による内縁関係解消のことを考えて準備することは?

では、もう少し視点を変えて、死別による内縁関係の解消について、どのような対策が考えられるのか。一応検討してみたいと思います。

遺言書の作成

内縁の夫婦で、個別に遺言書を作成することが、まず考えられます。ただ共同遺言は、婚姻関係の夫婦間でも民法が規定しているように禁止されています。なぜなら、法律関係が複雑になるからです。また共同して作成することにより、遺言者自身の自由な意思にかからしめる期待が軽薄化してしまうことも考えられます。後先という条件を記すことにより、かなり複雑になるかもしれませんが、何も準備せずいると、疎遠だった相続人と対峙することになり、財産形成に功を奏してきた事実が存在しても、証明する材料がなければ、その権利を保持することでさえも、難しくなることが想定されます。遺言書は作成すべきと考えます。

生命保険の活用

生命保険の活用も検討してみても良いと思います。ただ加入する要件が厳しいかもしれませんし、保険料を支払うことが必要にもなります。ただいざというための「生命保険」ですし、連れ合いと死別後の補償を考えてみた場合、やはり活用を検討しても良いのではないかと思います。

結語

さて、いろいろ診てきました。諸般の事情が男女間であって、婚姻関係または内縁関係が存在するわけですが、少なくとも、他人様に迷惑をかけない限り、その男女間の問題ではあります。法律は、基本的には家庭の中に割って入って行くことはしないことが基本姿勢ですが、関係の解消や死別による相続問題などの財産に関係する問題が顕在化すると、やはり法律に頼らざる得ないこともあります。お互いのことを思いやって活きていきたいものですね。

離婚に関する財産分与の相談をお受けいたします。当事務所Webページでも手続きの概要を記しています。ぜひ、ご覧になってみてください。

司法書士 大山 真 事務所
千葉県白井市冨士185番地の21
電話:047−446−33547

近くの公園でも、紅梅が咲き乱れています
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民事信託・遺言・後見・相続 裁判事務

裁判所はなぜ本質的に同じ内容の書類の提出を2回求めるのか

こんにちは、今回は、「裁判所はなぜ本質的に同じ内容の書類の提出を2回求めるのか」について、記したいと思います。

裁判事務手続の後方支援にあたっていると、時折、依頼者から、「裁判所からなぜ同じ質問をしてくるのだろう?」と、素朴に疑問を持たれる方がいらっしゃいます。

今回は、家事事件手続に限って記したいと思います。

申立方法はどのような方法を用いたのか?

まず申立の際にどのような方法を用いたのか、意識する必要があります。

家事事件手続を始め、民事訴訟の訴えの提起でも、実は郵送による方法でも申立は認められます。専門職が行動する場合は、対応が分かれますが、当事務所は、原則、持参して申し立てることをお勧めしています。

郵送による方法で申立てた場合ですが、もちろん裁判所は、受付処理を行い、提出された申立書や添付された書類についても不備がないか確認します。

添付書類を求める理由

次に添付書類の提出を求める理由について記します。なぜ、添付書類の提出を求めるのか。

受け付けた裁判所が審理を扱って良いかどうか

裁判所としては、申し立てを受け付けた裁判所で審理して良いのか管轄の問題があります。相続放棄申述の申し立てを例にとると、被相続人の最後の住所地が記されている「住民票の除票」または「戸籍の附票」が必要となるわけですが、相続の開始した場所を証明するとともに、管轄裁判所の特定をするための証明書として位置づけられます。もしこの「被相続人の最後の住所地を証明する書類」の添付がないと、受け付けた裁判所も一応は受け付けたが、果たして審理を進めて良いのか判然とせず、申立人への照会の際に、「被相続人の最後の住所地を証明する書面」の提出を求めることとなります。

前提の事実・実体の有無の確認

そのほかにも、取り扱う事案によって添付しなくてはいけない書類は変化しますが、取り扱って良いかどうかを確認するための書類や申し立てをしなければならないほどの重要な事実が存在の有無(相続放棄申述の事案で言えば、被相続人につき死亡し、相続が開始している事実)を確認するための書面を添付する必要があります。

他の家事事件として、当事務所では、相手方の特定を慎重に行う必要性が存在する場合、特に相手方と調停の必要がある事件では、その相手方の住民票の写しをあえて提出する場合もありますし、住民票の記載のとおりに生活の拠点が存在していることを知っているのかどうかを依頼者から聴取し、さらに調査が必要になるかどうかも確認しています。

実質的に同じ内容の書面を2回送付する理由

では、タイトルにも記しましたが、なぜ「実質的に同じ内容の書面を2回送付する必要があるのか、その理由について解説したいと思います。

相続放棄の申述を例にとると、添付書面から、被相続人につき、相続が開始したこと、申立人が相続人であることを確認します。そして、郵送による申し立てであった場合、実のところ厳格な申立人の本人確認は、なされていません。他の裁判事務手続きでは、申立人は自らの権利(相続放棄の申述の場合は、どちらかというと消極的利益の事案が多い)の実現をはかる積極的な行動を求められるので、出頭時に裁判所書記官から本人確認を求められることがありますが、相続放棄の申述では、出頭を要する事案は限られ、原則送付による方法で完結します。

一度も出頭せずに完結する事件

それゆえに、照会という形で、再度、申立人の本人の実在性と裁判上の相続放棄の申述をする意思を確認するために「照会書」の提出を求められます。その照会書の質問内容が、実は、申立書に記載すべき内容と同じなのです。なぜ、同じなのか、それは、申立人本人の実在性の確認も兼ね合わせていますが、相続を放棄する意思を確認するための重要な手段として、照会書による回答は位置付けられています。

出頭による申立ての取扱い

では、もし出頭によって相続放棄の申述の申し立てをした場合、どのような扱いがなされるのか、管轄裁判所の事件処理の状況や方針にもよりますが、場合によっては、受け付けられたその場で、本人の実在性および意思確認をして、その場で、受理され、受理通知書が手渡す家庭裁判所も存在するようです。出頭の方が、より現実的なように見えますが、郵送による方法で以って事件背負いをした場合でも、口頭によるものか書面によるものかの違いはありますが、裁判所としての姿勢は同じことが頷けると思います。

結語

今回は、「裁判所はなぜ本質的に同じ内容の書類の提出を2回求めるのか」について、見てきました。なぜ同じことを2度も聞くいのか?! と嫌気がさして、あたかも申し立ての行為そのものを否定されているような気持ちになって「取下げる。」「取下げる。」と豪語していた相談者も過去にいましたが、事件処理する裁判所の立場について、考えてみると、裁判所の行動について、合理性がしっかり存在することが頷けると思います。

司法書士 大山 真事務所では、「相続放棄の申述」についての、相談を受け付けております。なお、当事務所ホームページでも概要を記しております。是非ご参照ください。

司法書士 大山 真 事務所
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蝋梅です
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事務所より 法教育 裁判事務

竹木の枝の切除・根の切り取り(相隣関係)

こんにちは、今回は、「竹木の枝・根の切除のこと(相隣関係)」のことを取り上げます。質問がありましたし、少し前に改正もありましたので、テーマとして取り上げていきたいと思います。

早速、条文を確認してみましょう。引用元は、e-Govの法令検索の民法からです。

民法第233条「竹木の枝の切除・根の切り取り

現行(令和4年9月2日現在)は以下のとおりで、

第二百三十三条 隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

e-Gov 法令検索 民法第233条(令和4年4月25日施行日)より

念のため、参照したURLを記します。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20220525_504AC0000000048&keyword=民法#Mp-At_233

とあります。

改正後の民法第233条

来年の令和5年4月1日から、民法233条は、以下のようになります。

第二百三十三条 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。

 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。

 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。

 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

 急迫の事情があるとき。

 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

こちらも、念の為、引用元のページをURLを記します。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20230401_503AC0000000024&keyword=民法#Mp-At_233

となっています。

現時点では、旧来の取り扱いと同じですが、来年の令和5年4月1日以降では、同条第2,3項が追加されるため、留意が必要です。

改正後民法第233条第2項のこと

もっとも第2項のことは、竹木そのものの共有関係における枝の切除のことを記しています。もちろんこのことは、あくまで権原でもって生息している地から隣地へ越境してしまった枝に対して、他の共有者の同意承諾なしに、一部の共有者から切除して良いことが記されています。

改正後の民法第233条第3項のこと

では、3項を見ていきましょう。確かに第一項で、竹林の所有者に枝の切除を請求することができるとあります。そのことが前提なのですが、同項各号の場合であれば、隣地所有者が自ら枝の切除をすることができます。

竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。

この催告とは、「枝が土地の境界を越境し、こちらの敷地内に入り込んでいるため切除せよと書面等で請求すること」です。催告をし、切除するための相当な期間が経過したが、竹木所有者が当該枝を切除しなかった場合に、隣地所有者が自ら、枝を切除することができます。

竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

前号の催告をしようにも居場所がわからない、そもそも竹木の所有者が知ることができないならば、催告どころか、第一項の請求もできないことが明白なため、隣地所有者は自ら、越境した竹木の枝の切除をすることができます。

急迫の事情があるとき。

催告から実行してもらうまでに、また請求しても対応してもらうまでに相当な時間を要し、実行されるまで待っていては、隣地所有者にとって損害が生じてしまうような場合、隣地所有者自ら、越境した竹木の枝の切除をすることができます。

費用負担は?

枝を切除することが、令和5年4月1日より、状況によって、隣地所有者自らができるようになったことはわかりました。

ところで大事な論点として、費用負担はどうなるのだろうと疑問があるにはあります。丁寧に見ていきましょう。

第一項が大前提 権利義務に関する規定

第一項が大前提の権利義務のことが記されています。

すなわち、「隣地所有者が、竹木の所有者に、(中略)請求することができる。」とあります。これが大前提です。

催告したが、枝と切除してくれず、隣地所有者が切除した場合

では、第三項第一号に至った場合は、生じた費用は、隣地所有者が立替て、竹木所有者に請求することとなると考えられます(民法第703条)。

急迫の事情により、隣地所有者が枝を切り取った場合

第三項第三号の急迫の事情があるときは、事実認定を考えると請求できるものと考えられなくもないですが、竹木所有者にとって、越境している竹木の枝の切除をする機会を設けてくれれば対処できたにも関わらず、その機会を奪うかのように、急迫な事情が生じることに乗じて、枝を切除されたとなると、あとは事実認定の問題といえ、厳密な費用の請求や切除したことによって生じた損害について、司法の判断を仰ぐ必要が生じる可能性があると思われます。

竹木所有者の住所不明、そもそも竹木所有者自体が不明の場合

第三項第二号ですが、そもそも 、所有者がどこに住んでいるのか、尋ね当たらず、むしろ所有者の存在すらわからない場合を意味しています。この場合、事実上、費用は、隣地所有者が負担することになるように思われます。もっともその後、請求権に基づいて、住所や、竹木所有者が確定できれば請求できる可能性がありうるのかもしれません。

越境してしまった根っこの切り取りのこと

確かに、ないわけではない問題です。条文上は、隣地所有者が、竹木所有者の承諾なしに、切り取ることができると読めます。

ただ、越境してきた根っこを切り取ってしまったことによって、その竹木が枯れてしまう話もあり得ます。お隣り同士という関係は、どちらかがその地から離れない限り継続するため、もしも気がついた場合は、双方話し合い、場合によっては造園業等の方からの助言を受けながら、お互いに協力して解決する必要があるように思われます。

終わりに

相隣関係という特別な事情を熟慮すると、先に記したように、当事者の一方がその地から離れるか、解決しない限り、関係は解消もしませんし、相隣関係の問題を放置すると、新たなる当事者とも問題は継続することも考えられます。

債務名義を取って対応することは、できなくはありません。民事執行による強制執行や間接強制の制度を利用することも考えられなくもありませんが、実務上、事実上、費用は債権者負担となることも多いにしてありえます。

もちろん、民法の規定により、双方の権利義務が明確となり、その上で民事訴訟・民事執行・民事保全の制度の存在があり、それは並行して、当事者同士によって話し合いで解決することが、もしかしたら、お互いに一番経費をかけずに、問題を解決できる可能性もあると、意識の片隅に置いた上で、問題解決に当たられることを切に願うものです。

長文をご覧になっていただきありがとうございました。

季節の花
季節の花

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