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法定後見申立の障壁

こんにちは、今回は、法定成年後見の申し立てにおける、障壁について、記そうと思います。まず一つ目の障壁となるのは、

審判時および後における希望が受け入れられるか?

このことは、家庭裁判所の裁量なので、簡単ではないと思います。ただ後見人候補者を設けずにして申し立てられた事案は、割と淡々と手続きが行われます。もし親族後見を望んでいて、後見人候補者を記載した場合、他の推定相続人兼親族の同意を取り付けていて、同意書を提出し、裁判所の面接で問題がなければ、親族後見が認められることとなります。もし他の推定相続人兼親族から同意が得られない場合は、家庭裁判所も難しい判断を迫られることとなるので、認められるかどうかは難しいと思われます。

では、次に、もう一つの申立時の障壁についてです。それは、

申立書の添付する資料の収集

です。申し立てたいとお考えの方は、実務上は、もはや本人に、判断能力が「不十分」から『無い』ことが常である「欠く常況」であるため、大抵はご本人ではなく、ご親族がそれぞれの事情を抱えた上で、申し立てをご検討されていると思います。

その上で、いざ申立ての準備にあたり、福祉関係者および医師からの書面の入手に始まり、本人、後見に候補者の戸籍事項証明書、住民票の写しや年間の収支について見積れる資料等、申し立ての類型によって、本人の同意書、他の親族の同意書などが、必要となります。

書類によって有効期限あり

単に書類を揃えただけでは不十分で、作成されてから提出までの間に1ヶ月を経過してしまったら、再度の入手を求められるもの、同様に3ヶ月を経過してしまったら、再度入手し提出を求められる書類もあり、よりスピーディな対応が求められます。

収集のみならず情報をまとめる

その書面を揃えるだけでは不十分で、申立書に、その情報をまとめたものを提出することとなります。そのまとめる作業によって一般の方からの申し立ての難易度が急激に上がります。

さきにも記したように、このまとめる作業時間をかけてしまうと、書類そのものの有効期限をが存在するものもあるので、留意が必要です。

作成が難しいと感じたら、専門家の力を借りる

こうしていろいろと見てきましたが、法定後見を申し立てるに際に、書類のことだけでも、様々な留意点があることに気がつきます。特に各書類の情報をまとめる作業の段階では、一番手間がかかるように感じます。また書類の有効期限もあるので、自身では作成が難しいと感じたら、専門家からの力を借りるべきと感じます。

法定後見の申立書作成の相談を承ります

司法書士 大山 真 事務所では、後見の申立ての後方支援も当たっています。また単に申立書作成業務のみにとどまらず、申し立てから選任審判がされるまで、原則、後方支援を継続して対応します。

なお、後見申し立てに関する業務の概要は、当事務所Webページでも紹介しています。ぜひご覧になってみてください。

秋ですね

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身元保証と利益相反

今回は、成年後見における身元保証と利益相反のことを記そうと思います。

唐突な題目ですが、想定される事象は、成年後見人と被後見人の関係を主に見ていきます。このことは会社と代表者との関係でも問題視されるかもしれません。

身元保証について

まず、身元保証ですが、病院への入院、高齢者の福祉施設への利用にあたり、身元保証人または身元引受人という名称でもって、親族であれば、医療機関や施設から就任して欲しいと要請があると思います。

この身元保証ですが、もう少し丁寧に考えると、いわば、主たる債務者の身に万が一なことがあったときに、金銭的な保証をして欲しいこと、身元を引き受けることを医療機関もしくは施設に対して保証するための契約の一つと考えることができます。

民法上の保証契約は、まさに書面で以って契約を行うわけですが、その際に、具体的な損害額がもちろん確定はしていませんが、まさか青天井に請求できるとなると酷な話でもあるので、極度額が設定され、限定的な根保証契約を締結することとなります。よく見てみると医療機関や施設へ、主たる債務者の債務や身元の引き取りを行う債務を保証する契約であり、主たる債務者は保証契約においては、当事者ではありません。

保証委託契約について

では、主たる債務者が、医療機関や施設から、身元保証人をお願いしてもらってくださいを言われ、親族等が、保証人となる事象もあるのですが、このときの主たる債務者本人とその身元保証人となる親族の関係は、保証委託契約と考えることができます。

この保証委託契約と先の保証契約の当事者の関係は、明確にしていただきたいと思います。

利益が相反するとは

先の記事で何度か触れています。参考までにブログ内の記事を貼り付けましたので、参考になさってください。



さらに補足しますが、利益が相反する事象とは、具体例をあげると、子が未成年である場合、親子間での取引や相続手続における遺産分割協議において、子の親権者の地位である親御さんと生存配偶者としての相続人が同一人物であった場合、その親御さん一人で、全てが決めることができ、子にとって不利益が生じるかもしれない可能性が孕んでいる権利義務関係であることが言えます。この場合は、家庭裁判所から特別代理人を選任就任し、子の代わりに法律行為を対応することとなります。

付言しますが、会社と代表者間でイレギュラーな(例えば会社が所有していた不動産を代表者個人に売り渡す場合、取引内容いかんいよっては、会社が不利益を被る可能性のある)取引については利益相反となりますが、会社が継続反復して売上単価が固定化されている取引(小売業で代表者が、会社が設定したその商品を定価で購入する事例)は利益相反とはなりません。

身元保証と利益相反のこと

さて基本的な利益相反の事象を見てきたわけですが、身元保証と利益相反のことに注目したいと思います。

身元保証をした人物が、成年後見人等の法定代理人、任意後見契約によって受任者である任意後見人であるとき、以下のような利益が相反すると考えられています。

  1. 保証債務を履行したことにより本人、被後見人に対し求償権を請求することとなった場合
  2. 保証委託契約を任意後見契約発効前に取り付け、その後、任意後見契約が発効したのちに、身元保証委託契約に基づく保証料債権の発生とその債務に基づく弁済が無尽蔵に債権債務が作出される恐れが生じる場合

1については、結果的に債権譲渡があったことを作出することができ、事象によっては、元の債権者に対する弁済よりも高額に、求償債権として回収されてしまう可能性を孕んであります。2については、もはや本人の判断能力が低下している段階で、本人に代わって任意後見人が財産管理を担うわけですが、その反面、身元保証委託契約に基づく保証人である以上、もはや保証料という名目の請求権を無尽蔵に作り出し、本人に代わって任意後見人たる委託を受けた身元保証人が自ら弁済する形となり、本人に不利益が被る可能性が考えられます。

実務上職業後見人が身元保証できない事象

なお、成年後見の事件によっては、身元保証をしたことにより、保証債務の履行をしたが、結局求償権を行使しても回収できる見込みがない場合や、身元を引き受けたとしても、被後見人や任意後見人が付された本人が死去したのちの遺体の引き取りは元来、成年後見人、任意後見人の業務は終了しているはずで、法律上引き取る義務はありません。もっとも実務上は、被後見人等に身寄りのない人であり、緊急避難としてご遺体を預かり、火葬まで対応され、相続人が見つかるまで、遺骨を預かるという事象もあるようです。相続人が見つからなければ、市区町村長が対応することとなります。

利益相反を回避する可能性(任意後見)

なお、私見ですが、任意後見契約である場合は、契約締結時、委任者の判断能力に問題がなく、任意後見人受任者と契約を締結する段階で、身元保証債務履行時に対応するための預託金の設定および任意後見契約が発効した後に、委任者に不利益が生じないよう、身元保証料その他名目いかんを問わず保証料を任意後見人は請求することができない旨の特約を付すことにより、民法代理の規定にある自己契約の禁止の規定に対しもはや債務の履行以外存在しないため、身元保証料債権を無尽蔵に作り出し回収する行為を契約条項上防止するそれなりの工夫が必要であると考えます。

紅葉の季節

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公正証書遺言のススメ

こんにちは、改めて、公正証書遺言をお勧めします。

やはり、財産が少ないから作成しなくても大丈夫、とは限らないと考えます。

力を発揮するときに遺言者は実感しない

確かに遺言の効力という面で見た場合は、そう感じるのかもしれません。それでも高齢社会を生き抜くため、親族を頼る際の交渉のカードとして使えると考えます。

所有する財産が少額な方ほど検討すべき

少額だから遺さなくてもいいでしょとおっしゃる方もいらっしゃいますが 少額であればあるほど分け合う遺産が少ないため、遺言の存在意義が問われてきます。

相続人は子一人しかいないはずですけど?

認識とは違っている場合もあります。それは、子が先に死亡したが、その子どもの子どもがいる場合は、代襲相続人が存在し、相続人は一人ではないこととなります。

費用がかかるのでしょ?!

費用がかかる、かからないの二者択一ならば、確かにかかります。それでも特定の推定相続人一人に、全財産を相続させる遺言事項は、簡潔になります。また遺言の効力により移転する財産全体が大きくなければ、公証人の事務手数料も少額ですみますし、証人も頼れる友人がいれば、お礼の範囲ですみます。もし頼れる友人がいらっしゃらなければ、ご依頼があれば当職が対応いたします。

将来の不安の解消のための道具として活用

いろいろ記しました。究極的に、将来の不安解消の道具として、活用してほしいと思います。遺言される方が、将来、介護の必要が生じた際に、その介護に関わる推定相続人に安心して対応してほしい念いを込めて、公正証書遺言を作成することは有意義だと思います。

介護のことは、遠慮せずに制度を活用する

そして遺言により相続する推定相続人は、できる範囲で対応し、無理が生じる前に、介護制度の活用をして頂きたいと思います。遺言者は、ずっと付きっ切りで介護に当たってほしい念いでもって託したわけではなく、これからお互いに無理のない範囲でお願いしたいという思いを込めて遺言を遺したと考えることができます。誰しもが抱える問題です。その解決策の糸口として公正証書遺言の作成をお勧めします。

遺言書の作成の相談を承ります。なお、遺言のことは、当事務所Webページでも紹介しています。併せてご覧ください。

事務所近隣の公園で咲いていた紫陽花でした

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職業後見人選任を検討されている方へ

こんにちは、久しぶりに、新しい記事を記します。最近、過去記事の移植作業にとらわれ、記すことがおろそかになっていますね。

さて、題目にあるとおり、今回は、職業後見人選任を検討されている方に向けての記事です。もっとも、そうでない方にも、参考になる記事であると思って記しています。

申立段階では、後見・保佐・補助は原則確定しません

まず、どのような経緯で、成年後見人の選任申立を検討されているのかは存じ上げませんが、申立をしようとしているその人が、お身内の方を慮って、成年後見人選任の申立をしたとしても、必ずしも成年後見人として選任されるとは限りません。もっとも、既に寝たきりとなってしまい、意思疎通をどうやっても測ることができないことが明白ならば、成年後見開始の審判を受けることになるはずです。

本人の判断能力を確認する段階的手段

申立をするにしても、準備が必要です。また申立後にも、本人の判断能力は確認されます。以下は、その段階的手段です。

  1. 本人の情報を福祉関係者に取りまとめてもらう。
  2. 取りまとめた情報を元に、医師が診断する。
  3. 申立時に、添付された、本人情報シートと診断書をもとに、裁判所が、鑑定(精神鑑定)をする。(実務的には、裁判所の指示に基づいて医療機関が精神鑑定を行う。)

という確認手段が用いられます。なお申立時には、本人情報シートと診断書が存在するわけですが、その診断書の記載に則して申立の類型がほぼ定まります。もし診断書の記載に基づかない申立をしたとしても却下とはならず、本人保護のために審判手続きは継続します。

思惑と違う場合でも、取り下げは原則不可

時折、申立人の思惑と違っているので取り下げたいと聞きますが、申立をしてしまうと、本人保護の観点から取下げをするには、裁判所の許可が必要となります。この許可は、まず認められない傾向が強く、実務で活躍されている同業者同士の間でも、認められないと言われています。

身元保証の問題

職業後見人は、基本的に身元保証はできません。なぜなら、後見人として本人に代わって法律行為を行うのであり、身元保証をしてしまうと、いざ保証債務に基づき履行した結果、後見人と本人との間で利益が相反することとなります。この利益相反の問題を回避するため、司法書士は、倫理により、身元保証はできないこととしています。そうすると、今まで親族の関与があった以上、選任された後見人はもとより、医療機関や施設関係者からも、身元保証に関することで、親族へ連絡が入ると思われます。

医療行為の同意

職業後見人に同意権は存在しません。医療行為は、手術を受けたり、人工呼吸器を装着することの同意等、様々ですが、職業後見人は、判断能力が不十分になる前の、本人が受ける医療行為についての在り方を知り得るはずもなければ、本人の生き方そのものの意思表示について、代理行為になじまないと考えられています。

なぜ、医療機関は同意を求めるのか

本人に判断能力があれば、本人に同意を求めます。このことは自然なことです。では、なぜ医療機関は、判断能力が低下した本人ではなく、ご家族に同意を求めるのか。深く考えれば考えるほど難しい問題ですが、一つだけ推察すれば、判断能力が低下していることが明白な本人に同意を求めて得られた回答は、信ぴょう性に欠けるとも言えますし、ご家族であれば、判断能力が低下する前の段階から本人と接していたし、ご本人のことをよく知っている推定が働くからだと思われます。

同意を得るもう一つの目的

また施術が成功したとして施術前に想定された障害を負う結果となったり、回復の見込みがこれ以上望めないこととなった場合の負担等を斟酌すると親族に潜在的だったとしても不利益を被る可能性がありうるため、同意を求めていると考えられます。

申立を検討されているご家族の方へ

上記にあるとおり、

  1. 申立が思惑通りになるとは限らない
  2. 身元保証の問題は継続する
  3. 医療行為の同意は、申立前と同様に、問い合わせがある

1は、申立後の特有な問題ですが、2および3は、申立前後では、変わらないことで、後見人が付されたとしても、引き続き本人を取り巻く関係者からの求めは継続します。職業後見人が選任されたからといって、関与から外れるわけではないし、無縁にもあるわけではないのです。

職業後見人を選任する利点は

では、それでも後見人を選任した方が利点があるとことは何か、以下に列挙してみました。

  • 施設・医療機関の契約が法定代理人によりはっきりと意思表示がなされる。
  • 煩わしい財産管理から解放される。
  • 施設との身上監護面でのやりとりから解放される。

が考えられます。本人の容体が安定しているときは、ご家族の方は、しっかり仕事に取り組むことができると思います。

今回は、職業後見の活用するにあたって、留意すべきことを記してきました。またどこかの機会で、親族後見の利用と留意すべきことを記そうと思います。

先日訪れた夕暮れ時の新宿通りでした

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高齢者支援のサービスについて

こんばんは

タイトルに記しましたが、高齢者向けの支援サービスについて記したいと思います。

高齢者支援サービスは段階ごとに別々のサービスが存在します。

一言で「高齢者支援サービス」とくくってしまっていますが、実は高齢者の必要な支援の形によって異なるサービスが存在します。

そのサービスですが

  • 見守り契約
  • 財産管理委任契約
  • 任意後見契約
  • 死後事務委任契約
  • 遺言執行

があります。

4つの契約と遺言執行(遺言書に記載された内容を実現させるために行動すること)です。

契約という位置付けでは別れていますが 事象によって切れ目がない支援を受けることをお考えになっているのであれば すべての契約及び遺言を視野に入れなくてはいけないと考えます

次回以降 それぞれの各契約について記していこうと思います

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来宮神社の大楠です 樹齢2500年程のご神木だそうです