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会社・法人・企業法務

公開会社ではない会社でなければ、取締役会設置会社の廃止はできない

見出しに、唐突に、「公開会社」と記しましたが、社会通念上の感覚でこの「公開会社」という文言をみると、「上場企業」を連想しますが、上場企業を指しているのではなく、株式会社のうち、その株式の譲渡による取得について会社の承認を必要としない株式を発行している会社のことを「公開会社」と呼びます。

この公開会社ですが、株式の譲渡を自由にできるくらい事業規模も大きいことを想定しているので、取締役会設置会社・監査役設置会社が必須であるといえます。さらに事業規模が広大であれば、指名委員会等設置会社であったり、監査等委員会設置会社は確かに存在しますが、この記事では、中小規模の株式会社を想定していますので、割愛します。

会社法は、株式を譲渡によって取得するために、会社または会社の一機関からの承認が必要か否かによって必要な機関構成を定めているともいえます。ついてでながら、事業規模がおまりにも大きいあまり、資本金の額が5億円以上または負債が200億円以上の場合は取締役会以外に監査役会、会計監査人、社外取締役の存在も必要になります。

公開会社ではない株式会社の要件

ところで、公開会社ではない株式会社を構成するには、機関構成の他に、会社と株主の関係を定款の規定で設けなくてはなりません。それが、株式の譲渡による取得の制限のことです。この対象となる株式ですが、会社が発行するすべての株式について制限を設定することが要件です。ややうがった見方をすると、経営に口を出す人達を株主に入れたくないという株式会社でもあります。

公開会社ではない株式会社の最小の機関構成

さて、公開会社ではない株式会社の特徴は、その機関構成が株主総会と取締役一名から構成することができます。ただし、株主総会といっても、その総会の構成員数は1名からでよいと解されています。社団の意義が脳裏によぎりますが、講学的には、潜在的(後に増員する期待が持たれた)社団という解釈により、齟齬は生じないと考えられています。もちろん実務上でも、株主が1名であったとしても株主総会は存在し、その総会が議事し承認可決したことについて、株主総会議事録を作成、会社内で保存することは必須であります。

事業規模が大きくなったら、株式の譲渡制限はどうすべきか?

もし、会社の事業規模が順調に大きくなった場合、株式の譲渡制限の設定を継続した方が良いのかどうか?、もしかしたら疑問を持たれるかもしれませんが、会社法上は、あまりにも大きくなりすぎて大会社と事実認定されるならば、機関の設置を見直さなくてはなりませんが、それ以外が特に制限がありません。すでに発行されている株式を譲渡による取得を認めるならば、定款の規定を見直すことが必要となりますが、強制されることは原則ありません。もっとも創業者が、投下した資本を回収したいという思惑があれば、譲渡制限を見直すことは一考しても良いのかもしれません。

公開会社ではない株式会社の機関構成

先に最小の機関構成は触れましたが、それ以外に取りうる機関構成はどの様なものがあるのでしょうか?
実は、公開会社ではない会社が、一番選択肢が多い株式会社と言えます。その種類は以下の10通りの機関構成が考えられます。なお株主総会および取締役は、どの機関構成を考えても必須な機関であるので、以下のリストでは、株主総会は完全に割愛、取締役は取締役会が記されている構成については割愛しています。

  1. 取締役(一人の取締役から可。以下3まで同じ)
  2. 取締役+監査役(任意で監査の範囲を会計に関するものに限定することもできます)
  3. 取締役+監査役+会計監査人
  4. 取締役会+監査役(任意で監査の範囲を会計に関するものに限定することもできます)
  5. 取締役会+会計参与(監査役を置かない代わりに置くことが必須)
  6. 取締役会+監査役+監査役会
  7. 取締役会+監査役+会計監査人
  8. 取締役会+監査役+監査役会+会計監査人
  9. 取締役会+監査等委員会+会計監査人
  10. 取締役会+指名委員会等+会計監査人

上記に挙げた、機関構成は、構成しようと思えば講学上できます。もっとも実務上は、事業規模が大規模であれば、先にも記した様に、機関構成が義務化されることをあります。なお会計参与については、設置が義務付けられる事象と任意的に置くことができる場合があります。

機関構成に取締役会を置かないほど一番簡素な構成では、株式の譲渡制限の規定を設けていることは必須なのですが、それ以外の機関構成は、どれを採用したとしても株式の譲渡制限の設定があったからといって制限を受けるものではありません。

では、本題

公開会社ではない会社でなければ、取締役会設置会社の廃止はできない?

答えは「はい!廃止できません。」となります。株式の譲渡制限が設定されていない公開会社であった場合は、取締役会を置かなければなりません。取締役会設置会社を廃止するには、株式の譲渡制限に関する規定を設定しなくてはいけない、という結論が導かれます。

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不動産登記申請 民事信託・遺言・後見・相続

相続する義務?!?

こんにちは、不思議な問い合わせがあったこと、その問い合わせの対応後に感じたことを記しました。

内容は、「不動産登記の名義の変更が義務になったと聞かされました。」とのことでした。なんだか腑に落ちないセリフだなと思い詳細を聞くと、どうも相続することが、あたかも義務であるかの様にある行政庁から指導を受けたように感じました。

なんでも、「滞納処分をするために、相続登記が必要で、そのことが相続人には登記を申請する義務が課されている。」のような指導がされた様に聞き取れました。

もっとも、当事務所に電話で、依頼するか相談したいとのことでしたし、電話だけのことだったので、さらなる詳細は聞くことはできませんでした。そもそも連絡の後、本当に当事務所に訪ねてこられるのかどうかもわかりません。ただ、違和感を覚えたことは事実です。

相続する意思は相続人が決める

相続を(承認)するのかしない(放棄する)のか、それは相続人の自由な意思で決めることができます。被相続人の債権者、相続人の債権者はもちろんのこと、なんらかしらの租税債権をもっている行政庁でさえも、相続することを強要することは許されないものです。

熟慮期間経過の蓋然性のある相続放棄

他の相続人は、裁判上の相続放棄をするとのことでしたが、被相続人が死去して十数年以上経過しているようで、なお一部の共同相続人は同居しているようで、熟慮期間経過の蓋然性がある事案といえます。故に単なる書面による申立ておよび審理ならびに受理という事案では済まないことも容易に想像できます。もしこの事案の場合、裁判所は、申立人を呼び出し、事情を聞くことをします。その上で、受理不受理を決定します。

制度趣旨を履き違えるな

本題に戻りますが、相続をすることと相続登記申請をする義務は、まったく別次元の問題です。相続することは、義務ではありませんし、誰かに言われたからするものでもありません。相続人が自身で決めることです。上記の事案で考えられることですが、おそらく電話をしてきた相談者は、なんらかの事情があり、行政庁に相談したようですが、相続登記申請の義務化に乗じて、滞納処分による差押登記の嘱託をするにあたり、代位による登記嘱託費用を一時的に立て替えることを嫌ったのではないかと考えられます。

依頼者は何を望んでいる?

電話だけだったので、相談者は結局何を望んでいるのか、よくわからないまま、やりとりを終えたのですが、費用をかけて相続登記を完了させても、競売開始決定が下され、売却許可決定がでた場合、ご自身のものにならないことは、容易に想像でき、一体何を望んでいるのか、よくわからない発言でした。

相談者の振る舞いから、おそらく熟慮期間は経過し、法定単純承認事由の事案なのだろうと推測できるわけですが、誰がいつから税金を滞納し、その滞納額によっては任意売却の方法をとるべきことも考えられなくもなく、そうすると、相続登記申請をする価値があると言えますが、その調整ができている様には、思えませんでした。

先月から施行された「相続登記申請の義務化」ですが、この義務化に乗じ、熟慮期間の問題もありますが、相続をすることと相続登記申請をする義務は、全く別物であり、次元の違うことを理解してほしいと思います。

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事務所より 高齢者権利擁護

訪問セールスにご留意を

こんにちは、今回は、事務所近隣であったことを記します。事務所近隣で独居の高齢者のお宅に、屋根の修繕業者が、訪問セールスに訪れたそうです。

鉄塔に登り、上から見ていたら、お宅の屋根瓦が位置ずれを起こしている。このまま放置すると屋根から雨漏りをする危険性があるかもしれないと、冒頭に説明があったようです。

そのお宅の近隣には、確かに送電線の鉄塔が存在し、高齢者は、確かに作業をしていた気配はあったが、その方々だったかどうかわからないとおっしゃっていて、鉄塔に上がって作業ができる業者かどうかは、そのときは、業者の名刺も見ることができなかったので、ひとまずは相手の言っていることを疑うことは、時期尚早だと私も判断しました。後にその判断が誤っていたことも判明しますが後に記します。

私は、突然、高齢者から呼び出しを受け、話し合いの場に顔を出し、聞いてみると、上記のことを業者から告げられ、屋根に上がらせてもらい診てみたら、一番高いところの屋根瓦がずれている、瓦を止めている針金も腐食していて、直すことが必要、と説明がありました。

先の説明だけでは状況が掴みきれなかったのですが、私が突然現れたことによって、受注が難しいと判断したのか、「作業が完了した後の不具合について担保できない。」、「当社は、大手ゼネコンから下請けで仕事をしていることが常であり、通常は応じられない。」と 営業行為の常套句からはかけ離れた言葉を並べ立て、いったい何しにきたのかという疑念を抱きました。

全てを疑うことは、時期尚早かもしれないし、もしかしたら事実かもしれないと判断し、では見積もりをお願いしたいと言って、一週間後に再開することになりました。

一週間後の再来、お断りしました

見積もり提示を受ける日を迎え、定刻になっても業者は現れず、指定した時間から45分遅れること、私も高齢者のお宅から引き上げようかなと思っていたときに、その業者が、再び現れました。見積もりを持ってきたと言い、高齢者が、「身内に業者がいて…。」と話を切り出したら、「では、その業者にみてもらってください。その業者から見積もりを入手していただいて、その上で、こちらも同席の上で、こちらが準備した見積もりを提示します。」と業者は、言いました。要するに詳細は、見せないということでした。ただ金額だけは、提示を受け、具体的な工期も決めた上での金額ですと言い放ったので、こちらは、高齢者にとって、簡単に支払える金額ではないので、今すぐに、注文することはできない、確認することが必要です。と言ったところ、それでも見積書の詳細は見せることはできないと言われました。

その高齢者は、断ることありきで話を切り出したかったようでしたが、まずは見積もりをみて、それから注文するかどうか決めれば良いと思っていた私は、なんだか 残念だなと思いましたが、高齢者が意思を表示した以上、お断りのダメ出しの一言、「ではお引き取りを!」と発言しました。その発言を受け、それまで穏やかに発言していた業者が血相を変え、「あんたに話をしてるんじゃない、〇〇さん(高齢者)その人と話をしてるんだ。」と言い放ったので、こちらも「私は、この人から全権委任を受けている。」、業者は、「こちらは、〇〇さんと(直接)やりとりをさせてもらう。」と言い張ったので、こちらは警告のつもりで、「だから、全権委任を受けている。」と再度強く言ったところ、本当に間が悪くなったのか、業者は、「では、〇〇さん、連絡くださいね!」と負け惜しみのような挨拶をして立ち去って行きました。

事情に漬け込んですり寄ってくる

再度、高齢者に、ことの顛末について確認したところ、その業者は、二人組でやってきて、上記のような冒頭の説明をし、確認に3千円と言われ、少額だから大丈夫だろうとおもって、業者が持参した長梯をかけさせ、自身は登ることもなく、業者だけが屋根に上り、写真を撮って降りてきて、やはり曲がっているから修繕が必要、作業に数十万円かかるという説明があったようです。金額を上昇に対し驚いたことと追加作業が生じるかもしれないと感じたのか、怖くなり、冷静になってこのことを判断したいため、私を呼び出したというものでした。

確認のために3千円の費用の話、確認後数十万円の費用がかかると言われたことは、2回目の業者訪問し立ち去るまでに聞かされていたわけではないため、そんなやりとりがあったことが、後で聞かされたことに衝撃を受けました。

鉄塔に登れる権限は?

よくよく考えると、訪れた業者は、私が接触したときに、鉄塔に登ってそこから眺めていたら、気になったので声を掛けたとのことでしたが、訪れたときの風貌は、東京電力の関連会社特有の風貌からはかけ離れ、住宅建設時の鳶職の格好をした職人風の男と現場監督の作業着をきた男の出で立ちであり、そのことばは信用に値するだろうかと疑念を抱きました。たまたま名刺を業者は残していったので、調べてみると、屋根葺および建物外壁の塗装を手掛けている数年前に法人なりしたと思われる船橋市の業者でした。そうすると送電保守に関わっている説明とはかけ離れた事業を展開をしており、もはや冒頭に説明を受けた言葉に信憑性は担保しないと判断しました。

業者が立ち去った後、高齢者は、改めて断る発言をしっかりして、ご自身の気持ちに決め打ちをしたいと言っていましたが、嘘をついている業者に対してまで、ご自身の心情だけで曖昧にしている気持ちに整理をつけるために、電話して連絡することは、適切ではないと助言しました。気持ちは分からなくもないですが、お互いにとって無意味なことをすることは時間の無駄であり、言い放ったところで、虚しさが漂うだけですよ、そんな時間を過ごすくらいならもっと楽しいことをなさったらどうですかと助言しました。

ご留意を

近頃、作業に関する業務の訪問セールスが流行っていて、費用について説明不足、見積もりから注文を急がせるように仕向ける行為、そもそも所有者自身が容易に確認できないことに漬け込み、強引な営業を仕掛けてくる行為が多発しています。

同業者と話をしましたが、もはや知り合いの業者にしか、怖くて頼めないという意見で一致しました。

それから、当職が感じたことですが、やはり高齢者にとって普段から近所付きあいが大事だと感じます。特に長くその地に住み続け、お隣さんと信頼関係が築けているのであれば、よく分からない通りすがりの業者がやってきたとしても、お隣さんや近隣の頼れる地域の人たちに業者訪問時に声をかけ、自身が置かれている状況や判断は適切なのか、客観的に緩やかにみてもらえるだけでも、随分違うと思います。訪れた業者がどのような人なのかを客観的に冷静になって判断することもできるはずだと思います。

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会社・法人・企業法務

会社法人代表者住所のこと

こんにちは 今回は、令和6年10月1日に施行する商業法人登記の代表取締役住所非表示措置に関することを記します。

本ブログで記している段階では未施行でありますが よほどのことがない限り変わることがないと思われます

既登記の代表者の住所は?

残念なことですが、既に登記されている代表者の住所は、登記事項証明書および登記情報について、非表示にすることはできないこととなっています。

法務省のwebページでは 制度の概要が冒頭に記されているのですが、そのすぐ後ろに、「注意」の記載があります。

代表者の配慮と取引の安全の均衡

さて代表者住所は、登記事項であり、所定の手数料を支払えば、登記事項証明書または登記情報を誰でも入手可能な情報です。故に新たな取引等で関係に入る際に、登記事項証明書を入手し、相手方の存在はもとより、どの様な会社法人なのか、広義な意味では、これから関わる会社法人(社団)は、どの様な団体なのか?を知ることができ、代表者がどなたなのか、資本金などから与信はどうなのか、掛け取引をするにしても、相手方はどれほどの担保ができるのだろうかなど、単に登記しておけば良いでしょ!、というものではなく、相手方からみれば、逐一真正面から尋ねることもせずに、知ることができます。なんだか情報を与えてばかりに思われがちですが、一方で、代表者以外の人物は、会社法人の代表者ではないと言えます。勇退する役員の挨拶状を送付するという習慣がありますが、なんらかしらの事情で、お辞めになった役員や元代表者のことまで、会社は挨拶状を取引相手に逐一通知していたのでは、円滑な取引が期待できるものではありません。故に、商いをする以上、取引関係に入る前に登記事項を確認することはむしろ当たり前なことだ理解してほしいと感じます。
 さらに留意してほしいこと、例えば、退任した元代表者であった役員が、在籍していた会社を騙って取引したとしても、当該取引よりも前に退任登記をしてあれば、当該会社は、騙された相手方から請求されても、義務を負わないものとなります。この登記申請の義務を怠り放置していると、賠償責任を負わされる可能性もあります。

商業法人登記制度の趣旨

そもそも、なぜ登記制度を設けているのか、ですが、取引関係に入る前に登記されている事項は、知っておかなければいけない。登記することにより、取引の相手方が登記事項を見ている見ていないにかかわらず、見ているものと看做し、物事を進め、取引を円滑に進めるための制度です。商業法人登記制度は、不動産登記のように権利に対する対抗要件を付与するのではなく、取引の相手方に対し、自身の会社法人について登記されている事項を知っているものと看做す(このことを講学的には「悪意擬制」と呼んでいます。この「悪意」は害意ではなく、「ある事実について知っている」の意味です。)法律上の効果があるのです。

住所非表示措置の要件

改めて代表者の住所非表示措置の要件ですが、登記される代表者の住所に関するまたは住所も登記事項となる登記申請の場合で、申請と同時に申出をしなければなりません。登記されてから、非表示にしてくださいはできないのです。

登記される代表者が住所に関するまたは住所についても登記事項となる登記申請の場合

例えば、設立の登記、代表取締役の就任登記、代表者の住所移転による変更の登記の登記申請などです。

所定の書面の添付を要求

申出に際し、書面の添付が必要です。なお上場会会社と上場会社以外の株式会社によって違いますが、ここでは、上場会社以外の株式会社について、記します。

原則3種類の書類が必要です。

  1. 会社が受取人として記載された書面がその本店の所在場所に宛てて配達証明郵便により送付されたことを証する書面
  2. 代表取締役等の氏名及び住所が記載されている市町村長等による証明書(例えば、住民票の写しなど)
  3. 株式会社の実質的支配者の本人特定事項を証する書面(資格者代理人の法令に基づく確認の結果を記載した書面など)

なお、すでに代表取締役等住所非表示措置が講じられている場合は、2つ目の書類のみの添付で足ります。また会社が一定期間内に、実質的支配者リストの保管の申出をしている場合は、3つ目の添付は不要となります。

非表示措置がされた登記事項

非表示措置が講じられた場合、代表者の住所は、最小行政区画までしか記載されないこととなります。例えば、「千葉県白井市」の記載までに止まります。なお、東京都の特別区はその特別区まで、指定都市は区までの記載となります。

非表示措置が終了することも

措置が講じられた会社法人の登記ですが、措置が終了二つの事象があります。

  1. 措置が講じられた会社から措置を希望しない旨の申出があった場合
  2. 措置が講じられた会社法人が本店所在場所に実在しないことが認められた場合

これらの事象があった場合は、登記官は職権で当該措置を終了させることができます。なお、申し出による場合は、必ずしも登記申請と同時である必要はなく、単独で申し出ることができます。

登記申請の専門家からみた代表者住所非表示制度のこと

本職がみた、この代表者住所非表示の制度ですが、上場企業において、創業者が完全に勇退した事象まで成長企業は、大多数の株主とくに個人投資家はその典型ですが、個々の代表者について希薄な感情しかもっていないこともあること、その本店所在場所について、会社法のみならず金融商品取引法によって、その上場企業である以上、十分担保されると考えます。一方、上場企業ではない会社法人について、その事業に対する姿勢は、代表者・経営者の人となりが担保になり得ます。その代表者の住所を登記によって公示しないことがどう評価されるのか、もはや予測できないこととなります。

また登記とは直接関係ありませんが、金融機関と取引を考えている場合、与信の観点から、代表者の住所を把握する場合もありうるため、登記事項証明書とは別に、会社の印鑑証明書の提出を早々求められることになることが、十分考えられます。そうすると代表者の住所の記載がある登記事項証明書一通を提出するだけ事足りる段階であるにも関わらず、代表者住所非表示の措置をしたために、登記事項証明書のみならず、印鑑証明書の提出も求められることとなります。抵抗感がない方にとっては、それでも良いのかもしれませんが、まだ契約書の記入を求められてもいないのに相手に印鑑印影を手渡すことに抵抗を覚える方にとっては、とっても不快感を覚えると思われます。

登記申請にあたり考えられる対応

まず商業法人登記申請について、設立登記申請では、代表者住所非表示の申出は、依頼があれば対応できないわけではなりませんが、既に代表者住所非表示がされた会社法人の変更登記申請では、本人確認の観点から対応は難しくなるだろうと考えます。先に対応した司法書士事務所に変更登記についても依頼した方がより円滑に対応できると想像できます。もし先の事務所に依頼せず、他の事務所に依頼した場合は、代表者の本人確認のため、会社の印鑑証明書の提出をを求められることとなります。

また不動産登記申請手続に対しては本人確認をすることがより難しくなります。通常の本人確認手続に加え、会社法人の印鑑証明書の提出を求められることが想像されます。

まとめ

以上、令和6年10月1日施行なのでもう少し先のことの様に思われますが、記している段階で半年もない状況です。もしも代表者住所について、非表示にすることをお考えになっているのであれば、熟慮を重ねた上で、申出をするしないを決めていただきたいものです。

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相続登記義務化のこと4

こんばんは、相続登記申請の義務化のことについて、もう少し気になったことがあったので、追記したいと思います。

これまで、相続登記申請義務化のことを記事していますので、先の投稿も以下のリンクから、ご覧いただければと思います。

過料の制裁について

小見出しにも記したとおり、今回は、過料の制裁について、記したいと思います。

法令では、義務を怠った場合、金10万円以下の過料(過ち料)の制裁を裁判所から受けることとなります。

法務局では、正当な理由がなければ、例外なく裁判所に送付する扱いとなります。正当な理由となるのかどうかの判断について、法務局の登記官の裁量がどれほど設けられるのか、計りかねますが、謂わば、行政の処分についても平等原則がはたらくと考えると、見逃されることは、まず考えられないと考えます。

さて、今の段階で分かっていることとしては、『登記官が、「不動産登記法の規定による申請をすべき義務に違反して不動産登記法の規定により過料に処せられるべき者があることを職務上知ったときは、これらの申請義務に違反した者に対し相当の期間を定めてその申請をすべき旨を催告(以下「申請の催告」という。)し、それにもかかわらず、その期間内にその申請がされないときに限り、遅滞なく、管轄地方裁判所にその事件を通知(以下「過料通知」という。)をしなければならない。』となるようです。

申請の催告が考えられる事象

この申請の催告が考えらえれる事象ですが、主たる土地と自宅たる建物については、相続登記を申請したが、他の不動産については、登記申請を遺漏している、または意図的に申請をしていない場合が考えられます。

過去の実務経験より

過去に扱った事案ですが、意図的に、道路部分や山林について、登記申請をしないという相談者がいたり、道路部分の土地について共有者であることに気がつかない相談者もいらっしゃいました。

依頼者から「相続したくない不動産は捨ててしまえばよい」

当時は、ようやく相続登記の重要性が、再認識され始めていた最中、マスコミや週刊誌で「捨てられる不動産」という言葉が踊っていた頃に受託した案件で、申請したくない不動産について、書類が独立している場合は当職に見せない、共通して情報が搭載されている物件については、黒塗りをして当職に情報を開示しない方でした。その事案は、全部ではありませんでしたが、登録免許税の算定に必要な不動産の価格を証明する書面を取り寄せたところ、情報を開示されなかった道路部分の記載があったので、その部分については、相続登記申請に盛り込むことができましたが、他の山林等は、他の市区町村にあったようでしたが、結局探知することはありませんでした。もっとも職務上、それらの物件は、相続登記申請の委任を受けたわけでもなければ、依頼もないのに調査をすることが職責上許されるわけでもないので、登記申請をしなくても、義務化された場合、遅かれ早かれ法務局もしくは国家から通知が来ますよという忠告をしたことをよく覚えています。

評価上非課税として扱われ共有不動産

土地・建物について評価額があれば、評価証明書に記載事項であるので、ほぼ間違いなく掲載されますが、非課税扱いとされる道路敷として課税上の地目で登録されている土地は、課税行政庁が一方的に把握している代表共有者以外の共有者について見落とされることが多く、漫然と請求した場合、評価証明書に記載されないことがあります。

上記、二つの事象を見てきましたが、何れにしても、相続手続きをして登記を申請したのに、過料の制裁を受ける可能性がある事象であるといえます。対象となっている不動産について、よくよく確認すべきと感じます。

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