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会社・法人・企業法務

株式会社の取締役会について(3)

こんにちは

前々回の投稿では 取締役会の機能について 見てきました

さて前々回の投稿の最後に 中小企業にとって 取締役会は必要なのか という問いですが 必要性は乏しいというのが実情かもしれません

なぜ そうなのか

実のところ 日本のあまねく 株式会社の99パーセント以上は 非上場企業です 中には 上場企業並みの規模の「公開会社ではない会社」が存在するのですが 多くはそうではありません 何方かと言えば 統計を採ったわけではありませんが 代表者とその代表者のご家族が役員となっており、株式についても代表者とそのご家族が保有しているケースが大多数であろうと想定されます。

業務執行の決めごとも定款の記載事項の決めごとも 議決権の違いはあれども 役員兼株主の方である事案が多く また殆どの株式会社の筆頭株主は 代表取締役が所持していることが多いので 株主総会の決議と取締役会の決議のイニシアティブの差はあれど ほとんど変わらないこととなり得ます

そうすると 決議する機関が二つあることは 管理しなければならない書面が増えるだけで 株主兼取締役が実質同じ人物である場合では その決議の差は 総会では株式の議決権の数 取締役会では頭数によって決まることとなるのですが 株式の議決権を過半数以上持っていれば 基本的には取締役の選解任のことでも大きく影響を及ぼすことができるため 無理に取締役会を構成せずとも 株主総会で 取締役会の機能を十分に担えるケースが殆どなのです。

故に 中小企業の多くは 取締役会は不要な機関であることがいえると考えます

会社の機関構成について相談を承ります
司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357

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株式会社の取締役会について(2)

こんにちは

前回の投稿は、千葉に置ける法務局の対応について記しました

さて前々回投稿の「株式会社の取締役会について」の続きを記したいと思います

定款の変更、剰余金の処分などは、株主にお伺いを立てなければならないことが必須なのですが、取締役会を置くことによって 業務執行に関するより具体的な事項に関しては 取締役会で定めることができます 表現を変えると 取締役会を置いていない会社では 株主総会が全権を持っているのに対し 置いている会社では株主総会は法令、定款に定められている事項のみについてだけお伺いを立てればよい ということになります

それから 取締役会を設置している会社は 規模が比較的大きな事業を展開していることを想定しているため 監査役を置かなければなりません ただし発行済株式の全部について 譲渡による取得について制限を設けている会社は 監査役の代わりに会計参与を設置することができます もっともそれにしても監査役または会計参与のどちらかを置くことが必要であります
では 別の角度で この監査機能について考えると 株主からの直接の監督監査を受けることはないのですが 代わりに監査役により  株主に変わって 会社を監査すると言っても過言ではありません

さて いろいろ記してきました 取締役会についての規定を見ていくと 上記のような機能があるわけですが 中小企業にとって取締役会は必要なのかどうなのかを次回以降に記したいと思います

会社の機関構成(役員変更)の相談を承ります
司法書士 大山 真 事務所
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業務執行と持主の切り分けの難しさ

 とある面談での事である。現在の代表取締役から相談を受けて、面談をすることになった。話を聞いたところによると、本人は業務執行からは引退したいそうだが、株主としての権利行使は継続したいということでした。
 「いざとなったら、株主総会を開いて、次期代表者を解任する事はできるのですよね?!」と質問されたので、「いえ、株主総会を会社(取締役)に開催する事を請求することができる事、(やや噛み砕いた表現です(また詳細は申し上げませんでした)が)株主総会の開催の準備をしていないければ、裁判所の許可を得て、株主総会を開催することができます。」と答えたところ、「そんなの建前でしょ」と発言がありました。
 今まで、会社法の周知徹底がなされていなかった、と言ってしまえば虚しさを覚えますが、業務執行と持ち主たる株主が別人である以上、厳格に手続を踏まなければ、会社の内部で紛争が生じる事は、避けられないことになります。
 事業承継を円滑にするにあたって、自身の会社という固定観念から解き放たなければならないのかもしれません。
 当事務所では事業承継について、お客様と一緒に考えて行きます。ぜひお電話を…

雪山からの眺めです

上記記事は、2022年5月25日、旧ブログ「時報」より、本ブログに移植しました。

回想

このときは、株主兼経営者からの質問でした。今後経営に関与せず、株式だけ持っていたいという要望であり、後任の経営者をどうするのかと問うたところ、今の生え抜きの従業員に取締役になってもらうということでした。面談時に、株主構成等をはきり仰らず、株主名簿または同族会社の判定書等の提示もなかったので、相談のみの対応となった事案でした。

株主総会の招集権限のこと

上記のように、会社法において、株主は、直接株主総会を開催する権限は持っておらず、一義的には取締役会または取締役の過半数の一致があって開催することができ、株主は、会社に総会を開催するよう請求するだけにとどまります。請求をしたのにも関わらず、会社が開催しないのであれば、株主は、裁判所より許可を得て株主総会を開催することができると会社法にはあります。

経営と持ち主の分離のこと

会社法によると

こうしてみると、経営者と持ち主の分離は、なかなか難しいと感じます。株主は、経営者を選ぶことはできますが、その選ぶための総会を一義的に自由に開催できないしくみとなっていて、いざとなったら解任すればよいとよくおっしゃることがありますが、原則その解任決議のための総会を思ったときに自由に開くことができないのです。

判例法より

もっとも例外というものは、確かに存在します。それでもよほどのことがない限り、法令上の手続きを無視するような、取り計らいはどうしたものかと思います。以下、参考までに最高裁の判例記(要旨)します。

  • 株主全員が出席した、招集通手続きに瑕疵がある株主総会の決議は、有効である旨。
  • 株主が一人しか存在しない株式会社において、株主総会の招集手続を欠いたとしても、総会は有効に成立する。

そうすると、会社法が予定している規模の株式会社は、株主が複数存在し、株主間である程度の緊張が存在することを想定して、規定が存在しているように思われます。

もっとも大事なこと

日本の株式会社の99パーセントは、中小企業であり、ほとんどが家族経営の会社法人です。そうすると、見方をかえると家族間の問題のように錯覚することもないわけではないかもしれませんが、よくみてみると会社経営の問題だとすれば、やはり会社法の適用により、手続きも厳格にせざるを得ないと言えます。もっとも上記の最高裁の判例にもあるとおり、会社の規模がとても小さく、社会に与える影響がほぼ皆無だったと言えるほどのもののような扱われた事案では多少の手続上の瑕疵があっても軽微であり、議題で扱われた決議の方が重要であったのであれば、上記判例は妥当なのだろう、と多少穿った見方ですが言えなくもないのだろうと感じます。

事業承継および会社法人等の企業法務について当事務所の取り組みの概要は、事務所公式Webページで、紹介しています。ぜひご覧ください。

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