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会社・法人・企業法務

業務執行と持主の切り分けの難しさ

 とある面談での事である。現在の代表取締役から相談を受けて、面談をすることになった。話を聞いたところによると、本人は業務執行からは引退したいそうだが、株主としての権利行使は継続したいということでした。
 「いざとなったら、株主総会を開いて、次期代表者を解任する事はできるのですよね?!」と質問されたので、「いえ、株主総会を会社(取締役)に開催する事を請求することができる事、(やや噛み砕いた表現です(また詳細は申し上げませんでした)が)株主総会の開催の準備をしていないければ、裁判所の許可を得て、株主総会を開催することができます。」と答えたところ、「そんなの建前でしょ」と発言がありました。
 今まで、会社法の周知徹底がなされていなかった、と言ってしまえば虚しさを覚えますが、業務執行と持ち主たる株主が別人である以上、厳格に手続を踏まなければ、会社の内部で紛争が生じる事は、避けられないことになります。
 事業承継を円滑にするにあたって、自身の会社という固定観念から解き放たなければならないのかもしれません。
 当事務所では事業承継について、お客様と一緒に考えて行きます。ぜひお電話を…

雪山からの眺めです

上記記事は、2022年5月25日、旧ブログ「時報」より、本ブログに移植しました。

回想

このときは、株主兼経営者からの質問でした。今後経営に関与せず、株式だけ持っていたいという要望であり、後任の経営者をどうするのかと問うたところ、今の生え抜きの従業員に取締役になってもらうということでした。面談時に、株主構成等をはきり仰らず、株主名簿または同族会社の判定書等の提示もなかったので、相談のみの対応となった事案でした。

株主総会の招集権限のこと

上記のように、会社法において、株主は、直接株主総会を開催する権限は持っておらず、一義的には取締役会または取締役の過半数の一致があって開催することができ、株主は、会社に総会を開催するよう請求するだけにとどまります。請求をしたのにも関わらず、会社が開催しないのであれば、株主は、裁判所より許可を得て株主総会を開催することができると会社法にはあります。

経営と持ち主の分離のこと

会社法によると

こうしてみると、経営者と持ち主の分離は、なかなか難しいと感じます。株主は、経営者を選ぶことはできますが、その選ぶための総会を一義的に自由に開催できないしくみとなっていて、いざとなったら解任すればよいとよくおっしゃることがありますが、原則その解任決議のための総会を思ったときに自由に開くことができないのです。

判例法より

もっとも例外というものは、確かに存在します。それでもよほどのことがない限り、法令上の手続きを無視するような、取り計らいはどうしたものかと思います。以下、参考までに最高裁の判例記(要旨)します。

  • 株主全員が出席した、招集通手続きに瑕疵がある株主総会の決議は、有効である旨。
  • 株主が一人しか存在しない株式会社において、株主総会の招集手続を欠いたとしても、総会は有効に成立する。

そうすると、会社法が予定している規模の株式会社は、株主が複数存在し、株主間である程度の緊張が存在することを想定して、規定が存在しているように思われます。

もっとも大事なこと

日本の株式会社の99パーセントは、中小企業であり、ほとんどが家族経営の会社法人です。そうすると、見方をかえると家族間の問題のように錯覚することもないわけではないかもしれませんが、よくみてみると会社経営の問題だとすれば、やはり会社法の適用により、手続きも厳格にせざるを得ないと言えます。もっとも上記の最高裁の判例にもあるとおり、会社の規模がとても小さく、社会に与える影響がほぼ皆無だったと言えるほどのもののような扱われた事案では多少の手続上の瑕疵があっても軽微であり、議題で扱われた決議の方が重要であったのであれば、上記判例は妥当なのだろう、と多少穿った見方ですが言えなくもないのだろうと感じます。

事業承継および会社法人等の企業法務について当事務所の取り組みの概要は、事務所公式Webページで、紹介しています。ぜひご覧ください。

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357

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事務所より 法教育

have to ではなく want to であれ

 なかなか難しい問題かもしれません。「しなければならない」と思ってしまうと、物事はとてもつまらなくなってしまいます。今過ごしている時間は、とても虚しいものとなります。
 私は、「したい」という心境で仕事をしています。だからどんな時でも常に面白い時間を過ごしています。
 特に、従業員として御勤めされている方は、「しなければならない」と思って取り組んでいらっしゃる方が多い様です。
 もちろん生活があるので、すぐに転職は難しいでしょうが、自分のしたい事と会社が求めている事をマッチさせられる様に意識を変えるか、行動するために決心するのかを確り考えてみるのも良いのかもしれませんね。

どこかの飲食店でいただいたケーキ

上記記事は、旧ブログ「時報」より、2022年5月25日に、本ブログに移植しました。

回想

当時、司法書士受験生より、相談を頂いていたこともあり、仕事としたいことを、よく考えてくださいねと、言っていたことの現れなのかもしれません。

今でも、この心境は、変わらないものです。義務感が強くなると自主性が希薄化してしまい、結局何のためにしているのか、よくわからなくなると思います。

物事を始める前によく考える

また何かを始めたは良いものの、途中積極的に取り組む気持ちが低下し、なぜそれを始めようと思ったのか、その行動したい動機が曖昧だと、結局義務感に駆られ、つまらなくなってしまう、そう思ったりします。

今回の記事は、自己啓発的なことを記しましたが、業務に関する概要は、事務所公式webページで紹介しています。ぜひ、ご覧ください。

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事務所より 民事信託・遺言・後見・相続

本人申請の難しさ

 相続を原因として、不動産登記申請について、本人申請で手続をしたいというお客様がいらっしゃいましたので、手伝うことになりました。
 きっと相続を原因とする登記申請手続について、法務局で相談をしながら、手続をされていらっしゃる方もいらっしゃると思います。
 単純に本に記されている知識だけで、手続きをしようと思っても、書面集めの経費を節約するノウハウまでは、なかなか知ることができないのではと、手伝って感じました。
 我々の仕事は、書面一通を如何に安く手に入れるのかにも注意を払っています。
 特に固定資産評価証明書交付依頼書を法務局から発行してもらい、その発行された依頼書を持参すれば、無料で発行を受けられます。
 ただし、この方法で発行された固定資産評価証明書は登記以外には使用することができないことにも注意が必要です。
 親切心のある法務局では張り紙がしてありますが、その意味が解る一般のお客様がどれくらいいらっしゃるのであろうかと考えさせられました。
 そうすると、一般の方々からみると、登記申請手続は、敷居が高いのかなと感じました。

千鳥ヶ淵より

上記記事は、旧ブログ「時報」より、2022年5月24日に、本ブログに移植しました。

回想

本人申請の支援依頼は、今日においては、ずいぶん少なくなったのかと思います。白書によって確認しているわけではありませんが、相続を原因とする本人申請は、増加していると思います。

原因は、いくつか考えられますが、登記を受ける申請人も定年退職し自由な時間がある一方、年金生活とともに、可処分所得が見えにくくなり、依頼することをためらうことが、多いにして存在しているのかなと思われます。

法務局の動向

ただ、法務省および法務局の動きとして、リストラを図っている以上、通常業務でさえ手が回らない上、申請されれば、補正に対する質問は、多分受け付けるのでしょうけど、申請前の段階では、申請手続きの案内に留め、相談は、受け入れなくなりました。まして相談時に、一方当事者からの要望に対応するための相談は、対処することは認められないことも手伝ってのことだと思います。

法定相続情報証明の活用

今日の相続手続では、法務局以外に戸籍等の書面が必要であれば、請求できる法務局は限られますが、戸籍の束と申出書を提出すれば、法定相続情報証明書を取得することができます。この法定相続情報証明が戸籍謄本等の束にしたものの代わりを果たすこととなり、他の相続手続も並行して行うことができます。

手続きが難航するなら司法書士に相談を

最後になりますが、ご自身で、手続きをしようと思っても、うまくいかない、戸籍を入手するために時間が思ったよりかかる、一度手続きをしたのに、把握しきれなかった不動産がまた出てきた際には、ご無理をなさらずに、当事務所またはお近くの司法書士事務所に相談されることをお勧めいたします。

当事務所業務の概要は、事務所公式Webページで紹介しています。ぜひご参照ください。

司法書士 大山 真 事務所
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事務所より 法教育

壱年間有難うございました

今回は、実務から離れて、司法書士試験受験のことを記したいと思います。長かったのか、短かったのか、それぞれの心境にその評価は譲りますが、某資格試験予備校の司法書士試験1年合格コース講座が昨日をもって、無事に終了しました。
 受講生の方は、本当におつかれさまでした。
 とは言っても、これからが勝負なのです。
 月並みな表現しかできないかもしれませんが、「自分自身から逃げ出さないこと」を強く意識して、受験準備に取り組んでほしいと思います。
 「あきらめる」という言葉がありますが、決してネガティブな言葉ではありません。「明らかに・見極める」という意味があるのです。受験準備をしていて、覚え込む作業、答える訓練など、適切な手段を用いなければ、融合がうまくいかない場合もあります。そういう事態に、あきらめて、次に進む分には、問題はありません。でも疑問点は頭の片隅に気にはしておいてください。そうして、他の知識が、疑問点を解決してくれることもあります。またそのような事態に遭遇しても、逃げ出さずに、大きな枠組みで捉えて、受験準備に励んで欲しいと思います。
 これまで費やしていた時間、過ごしてきた時間の上に今があります。あと3ヶ月もありませんが、とにかくめいいっぱい取り組んでください。


上記記事は、旧ブログ「時報」より、2022年5月22日に、本ブログに移植しました。

回想

当時、資格試験受験予備校の講師として、一年合格コースを担当しました。講師としての葛藤や、資格試験受験予備校の組織再編により、不安定な境遇、また組織の集客やPRのノウハウの悪さに翻弄され、いろいろ悩んだところもありました。もっともそんなことは、受験生には関係なく、とにかく臥薪嘗胆の念いで取り組んでいる以上、その期待に答えなければいけないと思い直して、教壇にたったことを覚えています。その年の合格者を輩出することができませんでしたが、その翌年に、過去に私の受講したクラスから、合格者が輩出された知らせが届き、嬉しくなったものです。

現在の受験生に伝えたいこと

今現在は、SNS上で、時折、受験に関する気持ちのあり方を、投稿したりすることもあります。ただ私が受験していた時と比べると、若年者の受験が増えたように思います。合格してから、何したら良いでしょうか?次は〇〇士、という受験生も現れ、ずいぶんこの資格試験の捉え方も変わったな等思うことがあります。

合格をすぐに仕事ができる

今も昔も変わらないこととして、この試験は、合格すれば、すぐにでも独立開業することができる、それが、とってもすごい資格試験だと思います。現在は、開業登録時に先立ち、一定の研修を受講することが登録要件な会もあるようですが、実務と試験の乖離は、一定以上は、致し方ないことだとは思います。それにしても、他の資格試験に比べれば、実務に近い試験だと思います。

合格に際し多くの犠牲を伴います

ただ、試験合格に向けて、多くの時間を費やすことになることその他多くの犠牲も伴うことも、今も昔も変わらないもう一つの事実が存在します。そうして時間を費やし合格したのですから、取得した資格を十分に人生に生かして欲しいと思います。

綺麗なことは記せないものです

しかしながら、この資格を短期で合格した優秀な方でさえも、実務について数ヶ月でお辞めになってしまう現実も存在します。私は、試験に合格したら人生は薔薇色ですよ、というきれいなことを記すことはできません。それほど実務の世界は厳しいことをよくよく認識して欲しいものです。そんな厳しい世界であったとしてもなんとかして生計を立てている同業者もいることも事実です。

資格取得の意義について

最後に、資格取得の意義の一つは、職業選択の自由と法令による制限を受けている業種の仕事に就くことができることだと思います。このことは、資格を持っていらっしゃらない方とは、比べ物にならないほど大きなことだと思います。他の方が仕事につくことが容易ではない業種に就くことができるのは、職業の選択肢が他の方より一つ多くあり、このことは人生に有利なものであると確信しています。先にいろいろ記しましたが、もし挑戦してみたいと思っていらっしゃる方は、よくよくご自身とよく向き合って受験するしないと決めて欲しいと思います。

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2022年5月吉日のエビス界隈
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事務所より

書くだけが仕事ではありません

 近頃、気になる事は、どうしても書くだけが仕事だという偏見が持たれているように感じます。我々の仕事は、書くだけが仕事ではなく、法律上、実体上、そして手続要件を満たすのかどうかを精査しています。
 信頼関係を構築するために、こちらも様々な角度から検討しています。
 助言をしても「関係ない」と発言される方が時々見受けられますが、自身で判断することができるのであれば、こちらとしては注意喚起を促すだけで、あとは自らの責任で行動してくださいとしか言いようがありません。
 以上を理解された上で、士業を活用される事を切に願います。

寺泊の浜辺でした

上記記事は、旧ブログ「時報」より、2022年5月20日に、本ブログに、移植しました。

回想

当時のことを思い出そうとしているのですが、いくつか同じ様なことがあったので、厳密にいうと、どれがどの事案だったのか、移植時の段階では、思い出せずにいます😅

ただ代書屋呼ばりされると、どうしたものかと思うことはあります。それほどまでに、単に書類が欲しいだけなら、本屋に駆け込めば良いのではないかとふと思うこともあります。単に知りたいことだけを探すだけなら、今の時代、それほど難しいことはありません。耳障りの良いことだけを調べたければ、今は調べられる時代です。

もっとも、その知りたいことを知った後の行動による効果が、どうなるのか、こちらも助言するわけですが、紛争性を帯びる様な事案になるだろうと、こちらが注意喚起を促すと 過度に反発され、怒り出す方もいらっしゃるのも事実です。

もっとも、士業の先生も人間ですので、合う合わないはあると思います。初回の相談の30分で、その見極めは、お互いにできると思います。こちらとしてもご期待に添うことができないことが明らかであれば、お断りするほかありません。そのことは報酬面も含めてです。

受験当時は、依頼に応じる義務という司法書士法の規定をしっかり認識させる様に出題もされますが、依頼内容もそうですが、報酬基準が撤廃された以上、無償や不当に安価に要請されたとしてもで依頼に応じる義務がないだろうと考えます

士業という職種は、ある程度の公益性を帯びている様にも思われますが、社会に多く存在しているあくまでも一つの事業です。感情を持った人間が事業に取り組んでいることは、普通の事業者と何も変わりません。よくよくご理解いただきたいと思います。

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