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相続登記義務化のこと3

今回は、今年の4月より「相続登記の義務化」のことを継続して取り上げています

関連記事のリンクを、以下に貼り付けましたので、まだご覧になっていない方は、目を通していただければ幸いです。

申出たことによる効果?

前回でも触れましたが、申出・申告したことによって、不動産登記法上の相続登記申請について義務懈怠(義務履行をしないこと)による過料の制裁は、免れます。しかしそれだけで安心していいのでしょうか?

登記簿の記載について

申告したことによって、「登記官は、(途中省略)その旨の登記をすることができる。」と不動産登記法にあります。法令の文言によると登記官の裁量によって、登記するしないのように読めそうですが、おそらく登記することとなると思われます。

主登記ではありません

ただ、この申告したことによる登記は、主登記でなされません。不動産登記法上で主登記でなされない以上、権利の移転があったことによる登記が反映されるわけでもなければ、共同相続人が他に存在する場合、所有権を第三者に確定的に主張することができないことに変わりはありません。相続分に該当する持分についてのみ主張できるに留まります。

申告登記による反射的効果の可能性について

相続人間の権利関係は、この申告の登記をしたからといって、なにも状況は変わりません。相続人と法務局との間では、ひとまず法定相続による登記をしなかったからといって、この申し出をしたことで、過料の制裁を免れるにと留まり、その後、遺産の分割によって相続し、不動産を取得した場合は、改めて、相続登記の申請の義務を負います。

では申し出により、付記登記がされると、先にも記しましたが、この付記登記とは、相続人の申し出をした相続人の住所氏名が登記されることとなります。もっともドメスティックバイオレンス等の被害を受けている方が、対象者であった場合は、その申し出の際に、法務局にその旨も併せて申し出をすれば、代替措置をするそうですが、原則、住所氏名は登記されます。

登記されるということは、取引利害関係にない第三者はもちろん国家行政、地方自治体も登記を閲覧することができます。

登記を確認できる者

先に挙げた者以外でも、手数料を支払えば不動産仲介業者をはじめ誰でも登記を確認することができます。

事実上の問い合わせ窓口に

私が、懸念していることとして、実は、付記登記を受けたことによって、一部の相続人の存在が具体的に、明らかにされます。先にも記したとおり、登記上、住所氏名が記される以上、相隣関係のことで、不動産に関して利害関係を持っていらっしゃる第三者、例えば、お隣さん等から問い合わせがよりしやすくなります。

 これまで、被相続人の登記名義人である以上、相手方は、本腰を入れて、対処したいと思わない限り、相隣関係の問題を解決するには、それ相応にいくつものハードルを越えなければならず、涙ぐましいことが多々ありました。まず相手方を調べるには、それ相応の書類を揃えなければならず、その上で、自治体へ戸籍住民票を請求する。もしくは、先に裁判所に申し立てをして、その後、受け付けられた訴状等の控えをもって、自治体に戸籍住民票を請求して、相手方を特定することが行われてきました。それまで苦労した上で、本腰を入れた上で、問い合わせをしてきたわけですが、法律の施行後は、相隣関係の対応の仕方も変わり、そして、相続の対象となっている不動産について付記登記された相続人に相隣関係の問題の解決を迫られることとなるでしょう。遺産の分割が成立していない以上、被相続人が負っていた債務は、相続人間で分割しても、その内容によって、相続人間で求償権を取得するにとどまるだけで、債権者に対しては、対抗することができません。ゆえに この申し出によって、登記官による付記登記がされることについて、過料の制裁を免れる反面、相隣関係の問題解決の矢面に立たされることになるような気がしてなりません。

やはり早期の相続手続を

こうしていろいろ記しましたが、やはり相続手続を速やかに行い、不動産を取得した相続人が、不動産にまつわる諸問題に対処することが大事なことだと思います。場合によりますが、良かれと思い申し出をしたことによって、付記登記が行われ、相続手続が完了していないのに、矢面に立たされることがありうかもしれません。相続により不動産を取得するつもりはないのに、どうしても場の空気という不思議な力が働き、勢い余って、申し出をしてしまい付記登記がされて、矢面に立たされることになる可能性もありえます。ぜひご留意いただきたいと思います。

相続手続の支援を承ります
司法書士 大山 真 事務所
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相続登記の義務化のこと

こんにちは

2024年、令和6年になりました。元旦から、大変なことが起きて、とても正月気分では過ごせない期間となりました。

この場を借りて、能登地震により被災された方へ、お見舞い申し上げます。

さて、今年の4月から大きく変わることがあります。相続により不動産を取得した場合、その登記申請が義務化されます。

施行日前の相続にも適応される

さて、この相続登記の義務化のことですが、法律施行日前の開始した相続についても、適応を受けます。

法律施行日前に開始した相続についての申請期限

気になることとして、法律施行前に開始した相続について、いつまでに登記申請をしなければならないのか?ですが、法律施行日(令和6年4月1日)から3年内に、登記申請をしなければならないこととなります。このことから法律不遡及効の原則にも抵触しない形をなっています。

相続登記申請の義務が顕在化する時期

ところで、これまで相続登記がされる場合ですが、大きく二つの事象がありました。

法定相続分に基づく登記申請

ひとつは、法定相続に基づく登記申請の場合です。この場合は、何らかの事情で、法定相続によって登記申請がなされたました。相続人以外の第三者からは、登記簿を見ただけでは判然としません。考えられることとして、

  • 法定相続分に基づいて、遺産の分割が成立した
  • 遺産の分割は成立はしていないが、登記申請がなされた

の二つの事象があります。

この法定相続分に基づく登記申請は、実は、共同相続人の一人からの申請行為で、登記所(法務局)は応答、審査、登記します。別に遺産の分割が成立していようとしていなくとも、申請は可能であり、登記されます。

話がやや脱線しましたが、この法定相続分に基づく登記の申請においても、登記申請の義務が健在される事象は、まさに、法定相続分に基づいて遺産の分割が成立し、不動産を取得した場合です。

遺産分割成立後、不動産を取得した相続人に申請義務が課される

今回の相続登記申請の義務化について、特に注意しなくてはいけない事象の一つで、遺産の分割が成立し、不動産を取得した相続人です。この事象は、まさに不動産登記法の条文の文言に沿うものであり、取得した時点(協議によって取得したときは、協議成立日、調停によって成立し取得したときは、調停成立日)から、3年内に登記申請をしなければならないこととなりました。

相続人が一人、単純承認した場合も申請義務が課される

相続人が一人で、単純承認した場合も、登記申請義務が課されます。この場合は、相続があったこと知り、単純承認したとき、遅くとも、相続があったことを知ってから3ヶ月経過した時点から、登記申請の義務が課されます。

結語

以上、相続登記申請の義務が課される方を見てきました。次回は、申出制度を用いれば、登記申請の義務が免れるのか、過料の制裁のこと、相続登記の申請と申出制度の違いを見ていこうと思います。

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登記申請は、年内までに

こんにちは、「登記申請は、年内までに。」とタイトルをつけましたが、不動産登記では、特に大事なことです。

なぜなら、固定資産税・都市計画税の納税義務者について、1月1日の所有権登記名義人を名宛人とするためです。

相続手続そのものは、終了しているけど、不動産の登記だけはしていない場合は、特に要注意です。

再来年ではなく来年4月から留意が必要

やや早いかもしれませんが、再来年(2024年)4月には、相続登記も義務化されます。

受遺・協議により取得しても放置したら、対抗できない

また決まったこととはいえ、登記申請手続をされていない方は、法定相続分よりも超えた部分の権利の取得分は、その増加した相続分について譲渡され登記されてしまうと、第三者に対応できないこととなります。このことも、民法の改正があり、来年(2023年)4月1日より、法令が施行されるため、遺言により、貰い受けた(受贈)、遺産分割により取得したと、相続人間では、権利関係を決めていても、対外的には、通用しない場合もあり得ます。

ぜひお問い合わせを

先に記したとおり、特に不動産の登記の申請は、早めになさった方が良いことは、間違いありません。

おそらく、すぐに登記の申請をなさらなかったことに、いくつかの理由が考えられますが、費用はどれくらいかかるのだろうか?という疑問をお持ちになっているのかもしれません。

概算で

画一的に、いくらとは、申し上げられませんが、白井市冨士地区で、現役時代はお勤めなさっておられた方が亡くなられ、相続財産は自宅の不動産および預貯金のみ、相続人は、生存配偶者および預かり知っている子でかつ相談前の段階で口約束では、合意が調っているのであれば、総額20万円は超えないと想定されます。

もっとも遺産となる不動産が幾つもある、相続人について、相談者が認識していたとは違った与り知らない方が存在する、そもそも相続人間で、合意形成ができない。そうなると、上記の想定額を上回る可能性は大きいと言えますし、登記申請手続のみならず、家庭裁判所に対する手続が必要になることも想定されます。

まずは、電話で、相談の予約をしていただいて、面談日に、持参された資料を拝見しながら、費用見積もり、手続の方針について、お話できればと思っています。

佃大橋と星空

相続手続の概要は、当事務所公式Webページでも公開しています。ぜひ、ご覧ください。

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相続による登記のこと

こんにちは、今回は、「相続による登記のこと」を記します。なお、実際の相談により聴取した事実を元に記しています。なお、今回は、力を入れて記したので、長文となりますので、ご了承ください。

唐突に「登記識別情報」が送られてきて、何のことだかわからなかった

お客様から、よくわからないことがあるから相談に乗ってほしいと、要請を受けて相談に応じたときの第一声でした。

ところで「登記識別情報(通知)」とは

登記識別情報とは、所有権の取得に関する登記を受けた方を対象に法務局から所有者(取得した権利が持分ならその共有者)に通知または交付される情報または書類のことです。後の不動産の処分(売却、担保権の設定)をする際に、登記申請時に提供または添付し、審査時に、本人の実在性および当該登記を実行したことによって現登記名義人の登記を失うまたは現時点での所有権に対して登記上制限が加わることの意思を確認するために必要な情報として位置付けられています。

なぜ、登記識別情報通知を入手したのに、不可解なのか?

相談者は、「登記申請の依頼(委任)をした覚えはない。」とのこと。それにも関わらず、登記識別情報が、登記申請を代わって対応したと思われる司法書士事務所から送付されたとのことでした。なにが問題なのか、もう少し丁寧に事実関係と登記申請手続について見ていくことにしましょう。

事実関係

母親が亡くなり、相続手続きをしなければならない。

相続人について

亡くなられた母親の相続人は?、相談者以外に姉が一人いて、相続人全員で二人だけでした。二人とも年齢は75歳以上でした。

共同相続人間のやり取り

相談者宅に、姉から連絡があり、訪問したいとのこと、相談者も来訪する趣旨について薄々気がついていたので、受け入れることにしました。

来訪日当日に、何と、姉一人だけではなく、なぜが司法書士も同席したそうです。その司法書士の席の前のテーブルには戸籍謄本の書類の山が築かれ、請求書らしき金額の説明が記された書面を相談者に見せたそうです。そうして、相談者にとっては、内容がよくわからない書類に、署名をさせられたようです。

そのような態度も含め、あまりにも唐突な対応であり、相談者は驚き、話の内容(前提となる事実関係や事情)が相談者の想定していたこととはかけ離れていた内容であったため、姉と司法書士に対し、相談者宅から引き取ってほしい(退去の)旨を告げ、そのときは、物別れとなったようです。

なされてしまった登記そして登記識別情報通知の送付

そうして約一ヶ月ほど歳月が流れ、上記に記された「登記識別情報通知」が同封された書類が送付されたとのことでした。

登記申請手続の要件

登記申請手続を見ていきます。実のところ、相続を原因とした所有権移転登記申請手続ですが、大きく二つの事象が存在します。

遺産分割等が完了し、所有権の帰属が明確になった後にする相続登記申請

こちらの方が、想像できると思います。いくつか残された遺産のうち、不動産所有権の帰属をどちらの相続人とするのかを決定した上で、登記申請手続に挑んでいると考えることができます。ただし、この場合は、協議によりやはり法定相続分を反映された共有持分で持ち合うことで合意がされていない限り、相続人のどなたかが、当該不動産の権利を法定相続分よりも多く取得する事象となり、そのことを証拠づけるための書類に記名または署名および実印で押印、押印されている印鑑が実印であることを証拠づけるため、印鑑登録証明書を添付する必要があります。

自らの相続分保全のための相続登記申請

この謂わば保全のための相続登記申請と記しましたが、今回の事案のように相続人が複数存在する場合でも、相続人のうちの一人からでも、法定相続分に基づく登記申請はすることができ、そして受理されます。確かにこの方法でも、当該申請は受理され、登記簿にもその旨が登記簿に反映されるのですが、登記が完了したことに伴う、登記識別情報通知の送付または交付の対象者は、実は実際に委任状を代理人に提出した人物のみ申請行為に及んだ者のみに対して、登記識別情報は、通知または交付されます

申請行為に及ばなかった相続人には通知も交付もされない

反射効ということではありませんが、法定相続分に基づく登記を申請した場合、登記申請のため委任状を代理人に提出しなかった他の相続人、登記申請行為に及ばなかった相続人には、登記識別情報は、通知も交付もされません。すなわち保全のための法定相続分に基づく登記申請をした場合、登記識別情報を持っている相続人と持っていない相続人が存在することとなります。

そもそも問題点は?

さて事実関係と相続による登記申請手続きを見てきましたが、そもそも何が問題なのでしょうか。

対応した司法書士がとった行動について、相談者からの話と相談者宅に司法書士事務所から送付された登記識別情報通知からわかることは、相談者が委任する意思もないのに、なぜか委任状が作成され、登記申請行為に及んだことです。このことは、有印私文書偽造罪の罪に問うこととなりますし、考えようによっては、公正証書原本不実記載罪の罪に問われることにもなります。

事実関係と権利関係が合致していれば登記は問題ないのか?

事実関係および現状の権利関係ならびに登記に公示されている権利関係は、公示上は確かに反映されていると言えなくもないです。しかしながら、相談者は、登記申請手続の行為は及んでいないにも関わらず、委任状が作出されている事実は無視できないものであると考えます。

売買の事例での最高裁の判例から

随分古いものですが昭和35年1月11日の最高裁の判例があります。この判例は、司法書士試験でも取り上げられている有名な判例です。この問題点は、確かに当事者間で取引が行われ、所有権は、売主から買主に移転したにも関わらず、売主が登記申請に協力してくれず、買主が書類を偽造して登記申請し、登記がなされてしまった事案でした。この場合は、公正証書原本不実記載罪に該当します。

相続を原因としての登記の問題

さて、上記の売買の場合は、明らかに違法と言えるのですが、相続を原因とした所有権移転ではどうなのか?同列に扱って良いのかという問題はあるにはあります。以下、見ていきましょう。

  1. まず、共同相続人のうちの一人からする法定相続分に基づく登記は、先にも記したように、保存行為として認められます。
  2. 一方遺産分割等がなされ、不動産だけに限って見てみたとき、法定相続分とは違った権利関係となる遺産分割協議がされているにも関わらず、法定相続分の登記がされてしまった場合は、問題があると考えます。民法の規定には、「遺産の分割の効力は、相続開始時にさかのぼる。」とあり、故に、遺産分割によって単有になった権利関係を、相続があった日で「相続」でもって登記されることとなります。
  3. また、一旦は、法定相続登記をして、後日、遺産分割協議によって単有となった場合は、遺産分割協議が成立した日を掲げて、「年月日遺産分割」として登記申請することとなります。この場合、事実関係は如実に表れているのですが、実務的に申し上げると登録免許税の税負担が余計にかかってしまうため、法定相続分に基づく登記申請はすべきではなかったとも言えます。

登記簿上では、どの経緯を辿り相続登記がされたか判然としない。

これまで見てきたように、実は、登記簿上では、どのような経緯により相続による登記がされたのか、判然とはしません。そして、今般の民法改正により、このことに限らず、他の諸原因によって法定相続分よりも多く取得した持分について、対抗関係の整備がなされ、登記等の対抗要件を取得しなければ、第三者に対抗できないこととなりました。ただ危惧することは、法定相続分の登記は、権利の保全として重要な登記として認められる反面、そのことに乗じて、他の共同相続人により、勝手に持分を処分されてしまう可能性を誘発することとなりうるのではないかと感じます。

一方、法改正により、施行予定である相続人による登記の届出の活用がもしかしたら、不可抗力的に、明るい活用が期待されるようにも思われます。それは、取引に入る相続人ではない第三者が、届出登記を見て、まだ相続の手続きが終わっていないことを外観上知ることができ、その上で、法定相続分の登記があった際、背信的悪意者以外の第三者は対抗関係によって、持分取得の権利を確定的に主張sルことができることとなります。

一つの結論として

今回の相談者の言い分が事実であるとすると、対応した司法書士の本人確認について問題があるように思われます。一義的には、法定相続分に基づく登記がされただけであり、実害はないと考えられますが、他の共同相続人として相談者が容認している事実さえも存在せずに、署名してもらう書面の意味や趣旨について、丁寧な説明をせずに、ただ署名押印がされた書面だけでもって、登記申請に関する代理権について授権があったとは考えられず、いわば強引は委任契約があり、その委任による代理に基づいて登記申請を行ったことは、もはや正当性を主張する利用にもならないと考えます。

相続人の高齢化に伴う、注意喚起として

高齢社会となって、相続人も高齢になり、その意思表示について、本人の真意に基づいたものかどうか、いくつかの相談を受けていると本人確認がずさんな対応が見受けられる司法書士同業者が存在することも事実存在しています。

こうして記していると、もはや振り込め詐欺と同等に本人確認を受ける高齢者も意識を持った方が良いのではないかと思ったりしています。

自分の意思に基づかない登記がされてしまっていること、これは何も登記を失うことだけではなく、委任した覚えがない、自身のあずかり知らぬところで相続登記の申請人として登記申請がされてしまっていることももしかしたら、留意しなければいけないと思います。

千葉県北西部のとあるヒマワリ畑です

相続手続きを概要は当事務所webページでも紹介しております。是非ご参照ください。

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相続登記の義務化 のこと

こんにちは、今回は、昨年、この業界ではセンセーショナルに謳われた、「相続登記の義務化」について、もう少し細かく見ていこうと思います。

まず条文を引用します。

(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
 前項前段の規定による登記(民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第四項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
 前二項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123_20240401_503AC0000000024&keyword=不動産登記法 より

とあります。

そしてその施行日は、令和6年4月1日です。

既に発生した相続により取得したが登記をしていない場合は?

ふつふつと気になることは、この規定は、改正前に発生した相続についても適用を受けるのかという問題があります。

そこで、不動産登記法の附則を見てみることにします。附則第5条第6項の規定です

(不動産登記法の一部改正に伴う経過措置)
第五条 (省略)
(第2項から第5項まで省略)
 第二号新不動産登記法第七十六条の二の規定は、第二号施行日前に所有権の登記名義人について相続の開始があった場合についても、適用する。この場合において、同条第一項中「所有権の登記名義人」とあるのは「民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第二十四号)附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日(以下この条において「第二号施行日」という。)前に所有権の登記名義人」と、「知った日」とあるのは「知った日又は第二号施行日のいずれか遅い日」と、同条第二項中「分割の日」とあるのは「分割の日又は第二号施行日のいずれか遅い日」とする。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123_20240401_503AC0000000024&keyword=不動産登記法

とあります。

この附則を見てみると、「適用する。」とあります。また読み替え規定が記載されています。では読み替えた条文は以下のとおりとなります。

(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第七十六条の二 民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第二十四号)附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日(以下この条において「第二号施行日」という。)前に所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日又は第二号施行日のいずれか遅い日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
 前項前段の規定による登記(民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第四項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日又は第二号施行日のいずれか遅い日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

となります。太字で示した箇所が、入れ替え部分です。

過去の相続による取得した不動産についても、登記申請義務の適用はある、何時までに申請しなければならないのか?

そうすると、気になるのが、令和3年3月30日に、相続により所有権を取得した者が、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ当該所有権を取得したこと知った場合は、知った日から三年以内で令和6年3月30日までとなりそうですが、施行日前であり、この日では適用は受けず、附則には「いずれか遅い日」とあるので、施行日から三年以内の令和9年3月31日までとなります。
また令和3年3月30日よりも前の相続による所有権を取得した事案も、施行日から三年以内となり、令和9年3月31日までとなります。それから知った日が、令和3年3月31日から令和6年3月31日の範囲内であった場合は、「いずれか遅い日」とあるので、この場合も施行日(令和6年4月1日)から三年以内の令和9年3月31日までに申請しなければならない義務を負うこととなります。

そして施行日以降に相続を知って取得したのであれば、知った日から三年以内に申請しなければならない義務を負うこととなります。

申請の義務は、最終的に免れることができない

適用は受けることは受けますが、申請しなければいけない期限について、少しだけ猶予がある事案が存在する場合もあるといえます。もっとも登記申請する義務を負うことに変わりはありません。そして相続により法定相続分よりも多く取得したのであれば、登記が対抗要件とする法改正したこともありますし、そもそも放置したことによって、再転相続・数次相続が発生し、相続人たる関係当事者が増えてしまうことだけは、避けなければいけないと考えます。

相続の概要について、当事務所Webページもご覧ください。

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公園にて