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裁判事務

なぜ裁判所は同じ内容を2回聴くのか(訴訟手続)

こんにちは、以前に似たような事案を取り扱いましたが、今回は、『なぜ裁判所は同じ内容を2回聴くのか(訴訟手続)』として、記したいと思います。

前回は、家事事件手続に位置している相続放棄申述申立を主として取り扱いましたが、今回は、主に、民事訴訟手続上のことを記したいと思います。

同じことを二回も聴くなんて!、そう思われるかもしれませんが ん、一般の方の感性から、裁判所の振る舞いを見た場合、そう思われても致し方ない面もあるだろうと思います。おそらく大多数の判事、判事補である裁判官でさえも、意識はしているはずですし、訴訟指揮権のあり方に忠実である方ほど、そうせざるを得ないと意識するのかもしれませんね。

ではどのようなシーンなのかというと、原告(訴えた人)・被告(訴えられた人)双方が、訴訟代理人(弁護士先生)の関与がないいわゆる本人訴訟という形態で、訴訟審理が進行しているときに時折、そう感じられる方がいらっしゃいます。

訴えるためには請求原因が必要

ところで、訴えを提起するには、訴えて、相手方に請求し、満足を得られるだけの利益が存在しなくてはいけませんが、その請求するための原因が存在しなくてはいけません。そのことを「請求の原因」と言います。

もう少し噛み砕いて、記すと、請求の趣旨と請求の原因があります。

請求の趣旨

請求の趣旨は、いわば、究極的に「相手方に何をして欲しいのか」、その主張を記します。そしてこの請求の趣旨は、特に重要で、登記請求訴訟では、この「請求の趣旨」がしっかり記されていないと、法務局で受理できないこととなります。

請求の原因

改めて、「請求の原因」についてですが、請求の趣旨に至るための法律上の原因を主張することとなります。この請求の原因ですが、例えば、不動産の売買であるならば、「不動産を買い受けた。」「不動産を売り渡した。」という事実を主張することとなります。(実際の訴状の記載では、もう少し詳しく記します。)

証拠の提出

次に、請求の原因を主張したのですが、その事実を裏付ける証拠を、例えば「不動産売買契約書」を書証として提出し、そして、証拠調べの期日で、尋問として、インタビューに答えていく作業を行います。

さて、ここまで記してきましたが、訴状に記し提出し、証拠(書証:不動産売買契約書)も提出したので、裁判所もわかってくれるだろうと思いがちですが、訴状は、主張するためのもの、書証は、請求原因を裏付けるために証拠ということになるのですが、相手方から反論や請求原因となっている事実に対して知らないと主張されることもあります。そうすると書証のみでは証拠としては不十分かもしれないと裁判所が判断した場合は、尋問をして、書証には現れていない証拠を引き出すことをしていきます。

実質同じことを2回聞かれる理由

この「尋問」の際に、訴状に書いたこと、売買契約書に記されたことについて、再度聞き出すことも行われることがあるわけですが、このときに、一般人の方は、なぜ2回聴くのだろう、という感覚になります。しかしながら、訴訟手続を厳格に行なった場合、主張する活動と立証する活動は、全く別のこととして取り扱います。故に、訴訟に記したことを陳述することで主張したこととなり、尋問で述べたことは、証拠として取り扱われることとなります。

訴訟指揮権というもの

最後に、訴訟指揮権は、裁判所に存在しているわけですが、その指揮権に基づいて、証拠の提出を求められます。ただ裁判所によっては、弁論期日(主に主張を出し合う期日)の時点で、原告または被告が、事実に関することを述べることも十二分に考えられることもあり、その場合、改めて尋問期日を設け、その時に再度、陳述させるのではなく、その時に陳述した内容を証拠として採用することもあるようです。


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正本と謄本のこと

こんにちは

今回は、少しだけアカデミックなことを記したいと思います。

不動産登記手続きのうち、判決による登記という方法があります。

その「判決による登記」申請をする場合、登記の原因を証明する書面は判決書に他ならないのですが、この判決書は「正本」でなくてはならないと、実務では取り扱われています。

確かにそうだろうと思うのですが、それでは「謄本」というものの役割は何なのだろうか。ふと疑問に思いました。

そこで、学陽書房から出版されている法令用語辞典を参照すると、両方とも掲載されているので、確認する意味で紹介したいと思います。

正本

1)謄本の一種であって、法令の規定に基づき、権限のある者によって、特に正本として作成されるものをいう。「正本」は法令の規定により原本を一定の場所に保存することを要する文書について、その効力を他の場所で発揮させる必要がある場合に、原本と同一の効力を有するものとして作成される。例えば(以下省略)

学陽書房 法令用語辞典 より

一方、謄本について同じ書籍で、確認しました。以下に引用します。

謄本

 文書の「原本」に対する用語であって、原本と同一の文字、符号を用いて原本の内容を完全に写し取った書面をいう。(途中省略)「謄本」のうち、裁判所書記官、市町村長、公証人その他権限ある機関が原本の内容と同一である旨の認証をしたものは、法律の規定によって、「原本」又は「正本」と同様に取り扱われることがある(以下省略)。

学陽書房 法令用語辞典 より

それでは、不動産登記の関係法令を確認すると、不動産登記令第7条第一項第5号ロ(1)にあります。以下にe-Govより引用したものを示します。

 登記原因を証する情報。ただし、次の(1)…に掲げる場合にあっては当該(1)…に定めるものに限るものとし、別表の登記欄に掲げる登記を申請する場合(次の(1)…に掲げる場合を除く。)にあっては同表の添付情報欄に規定するところによる。
(1) 法第六十三条第一項に規定する確定判決による登記を申請するとき 執行力のある確定判決の判決書の正本(執行力のある確定判決と同一の効力を有するものの正本を含む。以下同じ。)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416CO0000000379

不動産登記令第7条第一項第5号ロ(1)の括弧書きをみても、「正本」と記されています。そうすると法令によって「正本」と記されている以上、「正本」が原則であることがよくわかります。

このこと、何故に記したのか、実のところ家庭裁判所の書記官でさえも、あまりよくわかっていらっしゃらないことがあるようです。

家事事件手続法で、調停が終結した際に、当然にその終結したことを証明する書面が交付されるのかというと、実は仕組み上、そうはなってはおらず、改めて申請によって交付を受けなければなりません。

その際に、正本の交付申請をしたにも関わらず、謄本が交付されたという事案があり、その際に担当書記官から「謄本じゃダメなんですか?」という問い合わせがありました。
もしかしたら、ご理解されていないのかなという、懸念を抱きましたが、書面の交付という事務作業なので、裁判事務手続とは、また違った扱いなので、そのようなご発言だっだろうと思います。

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司法書士試験受験のこと

こんにちは 久しぶりにこのテーマを扱おうかなと思い 打ち込んでます

まず司法書士試験ですが 司法書士になるための試験です

ところで司法書士の仕事というのはどんなものか このことをよく知っておかないと 合格後の進路に問題が生じるので 今回はこのことを記そうと思いました

司法書士の業務ですが 法令では、まず司法書士法の第3条に規定があります コアな業務は法令上に規定されているのです 以下E-Govから引用したものを示します。長いので受験生以外の方は ざっと読み流しても良いです

(業務)
第三条 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 登記又は供託に関する手続について代理すること。
二 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第四号において同じ。)を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。
三 法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。
四 裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続(中略)において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。
五 前各号の事務について相談に応ずること。
六 簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。ただし、上訴の提起(自ら代理人として手続に関与している事件の判決、決定又は命令に係るものを除く。)、再審及び強制執行に関する事項(ホに掲げる手続を除く。)については、代理することができない。
イ 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定による手続(ロに規定する手続及び訴えの提起前における証拠保全手続を除く。)であつて、訴訟の目的の価額が裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
ロ 民事訴訟法第二百七十五条の規定による和解の手続又は同法第七編の規定による支払督促の手続であつて、請求の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
ハ 民事訴訟法第二編第四章第七節の規定による訴えの提起前における証拠保全手続又は民事保全法(平成元年法律第九十一号)の規定による手続であつて、本案の訴訟の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
ニ 民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)の規定による手続であつて、調停を求める事項の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
ホ 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第二章第二節第四款第二目の規定による少額訴訟債権執行の手続であつて、請求の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
七 民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。
八 筆界特定の手続であつて対象土地(不動産登記法第百二十三条第三号に規定する対象土地をいう。)の価額として法務省令で定める方法により算定される額の合計額の二分の一に相当する額に筆界特定によつて通常得られることとなる利益の割合として法務省令で定める割合を乗じて得た額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は代理すること。
2 前項第六号から第八号までに規定する業務(以下「簡裁訴訟代理等関係業務」という。)は、次のいずれにも該当する司法書士に限り、行うことができる。
一 簡裁訴訟代理等関係業務について法務省令で定める法人が実施する研修であつて法務大臣が指定するものの課程を修了した者であること。
二 前号に規定する者の申請に基づき法務大臣が簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定した者であること。
三 司法書士会の会員であること。
(3、4及び5号 中略)
6 第二項に規定する司法書士は、民事訴訟法第五十四条第一項本文(民事保全法第七条又は民事執行法第二十条において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、第一項第六号イからハまで又はホに掲げる手続における訴訟代理人又は代理人となることができる。
7 第二項に規定する司法書士であつて第一項第六号イ及びロに掲げる手続において訴訟代理人になつたものは、民事訴訟法第五十五条第一項の規定にかかわらず、委任を受けた事件について、強制執行に関する訴訟行為をすることができない。ただし、第二項に規定する司法書士であつて第一項第六号イに掲げる手続のうち少額訴訟の手続において訴訟代理人になつたものが同号ホに掲げる手続についてする訴訟行為については、この限りでない。
8 司法書士は、第一項に規定する業務であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、これを行うことができない。

引用元:
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC1000000197#A

とこのように規定されています 簡裁訴訟代理関係業務が入っているので なんだか読みづらい規定になっています(苦笑)
と規定を見てきたわけですが さらにざっくり記すと

  • 登記供託に関する手続きの代理
  • 法務局に提出する書類の作成
  • 登記供託に関する審査請求の手続きの代理
  • 裁判所、検察庁に提出する書類の作成、筆界特定手続きに関する書類の作成
  • 先に掲げられた4つの事務に関する相談
  • 簡裁訴訟代理等関係業務
  • 簡易裁判所の管轄にかかる民事紛争の相談、仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理
  • 筆界特定の相談・代理(ただし利益の額が140万円を超えないものに限定)

とこれでもまだ読みづらいなぁと思うのですが まぁこれくらい絞り込んで表現すれば 受験しようかどうしようか迷っている方には わかりやすいと思います あっ 受験生は もちろん引用した文言を理解する必要があるので 直前期までにしっかり復習してくださいね
法律系の資格として受験界では位置付けられているのですが 先に掲げた業務の中でも「『登記』に関すること」が大きく試験も関係してきます もちろん供託も聞かれますが 出題数から言えば私が合格した平成17年でも3問出題されましたが 実体法と手続法が解っていないと難しい問いが多いです それから民事訴訟執行保全に関する知識も足し合わせると 侮れない出題範囲になります

実務ではどうかというと 受験との関わりが強いのは やはり「登記」です そして登記業務が一番携わっている業務と言っても良いと思います

一応 補足すると「成年後見」に関する業務が法令では姿を表していないのですが 他の法令によって 成年後見人に就任することを制限する規定が存在しないため 司法書士は成年後見を業務とすることが認められると解されています そう考えると成年後見業務は司法書士のみならず 弁護士 行政書士 社会保険労務士 税理士 公認会計士などの他の士業の先生も 成年後見に関する業務をすることができるのです

さて やや脱線しましたが 業務という性格から司法書士試験を見てきました 登記に関する知識について答えられることが大きなポイントとなるのですが 登記に関する知識は実体法の理解が必須となります 実体法とは民法・商法・会社法等というより実生活に近く 権利義務の発生 変更 消滅に直接関わる法令で これらの理解が必要なのです

そうすると 司法書士試験で問われていることは何か それは登記 供託 民事訴訟・執行・保全に関わる実体法と手続法を理解しているか ということとなります 故に弁護士を目指す司法試験 行政手続の申請に重きをおき 公務員試験の合格者と同等の知識を備えているかを問う行政書士試験 その他 法律系の資格試験は色々ありますが 聞かれていることがそれぞれの試験で違うことを意識し どの事務仕事をしたいのか その中で登記・民事に関する裁判事務に関わること 司法書士に関する業務をしてみよう 故に司法書士試験を受験する という動機づけをした上で 受験に挑戦してほしいと思います

次回以降も 受験に関することを記そうと思います

司法書士 竹下流 合格ロード ─短期合格へのタイムスケジュール 第6版

上記の書籍は 司法書士試験の受験についてどう捉えるべきか 私が司法書士試験受験生時代のときの講師の先生が記した書籍です 参考に読まれてはいかがでしょうか?

司法書士試験受験の相談を受けた賜ります
司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357 

日本丸
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代理行為について

こんにちは、今回は、代理行為について、見ていきたいと思います。

代理行為とは?

「代理」、平たく言うと、代わって法律行為を行う、ということです

「代わって法律行為を行う」、ということですが、別の表現をすれば、行為をする人自身は、自身が主体になって振舞うのではなく、あくまで本人(代理人に法律行為を託したその人のこと、まさに本人)のために、振舞っており、その効果も本人に帰属する ということ、なのです。

紛争性の有無、裁判の内外

実務では、相手方と争いがあるのかないのか、争いがあるとしても、相手方が、代理人と認めるのかによって、代理として振る舞えるのか、振舞えないのか、という論点もあります。

相手方と争うこととなり、訴訟にまで発展した場合、裁判所への訴訟手続の代理行為は、地方裁判所以上であれば、弁護士に限られています。

実社会での代理行為

もちろん、実社会において、争いだけではなく、相手方も納得していて、本人にとって有意義な行為であれば、代理という制度は 有意義に成立しうるものであります。

これまで実務で目の当たりにしたことの一例として、弁護士が債務者からの委任による代理人として、相手方(債権者)の代理人である税理士との間で、債務弁済契約を締結したという事例もありました。この場合、債権債務関係は、双方代理人が介入する前から存在すること及びその金額については全く争うことがないもので、単に一方当事者自身が、相手方への直接の接触が精神的に容易とはならなかったという事案でした。

訴訟手続きの代理

紛争にまでは発展し、訴訟となってしまった場合は、訴訟の価格が金140万円を超えていると、弁護士の先生のみが委任による代理をすることができる業務です。
一方、我々司法書士は、裁判事務は、これまで生じた事実に対して法律関係の相談に対応することができ、要件事実に即して依頼者からの言い分を取りまとめて書面にする業務を担うことができます。また認定司法書士であれば、金140万円以内であれば、代理することができます。

なかなか各士業の業務の違いについても、一般の方からはわかりづらいものがあると思いますが、権利擁護のため、司法書士も日々研鑽を重ねています。

相続手続をはじめ法律相談も承ります。
司法書士 大山 真 事務所
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