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不動産登記申請 事務所より

残念な訪問者(親子)

こんにちは、久しぶりに残念な方々にお会いしたので、その顛末を記し、当事務所としてお願いを記しました。

面談前の電話

前日に、相続の相談をしたいとのことで連絡があり、電話越しでは、「夫が死去し、私(妻)と息子(妻と被相続人の間の子)が、相続人であること。私(妻)が、相続した。」とおっしゃっていたので、では息子さんとは、お話ができているのですね?と問うたところ、「息子も面談に同席した方が良いでしょうか?」と問われたので、どちらでも、と案内しました。

面談時の息子さんの発言より

いざ面談になり、その親子が席をつき、挨拶を終え、早速資料を見せて欲しいと切り出した際に、妻は資料を出している傍で、息子が、「いくらかかります? 相場は? 一般的な相続で難しい手続きではないと思うので 法務局に(自ら)行って手続きしようと思っています!」との御発言!?!?! がありました。

その発言を受け、「事案と依頼内容によって見積金額は変動します。相場とおっしゃいますが、報酬基準制度は撤廃されていますし、もし報酬基準を設けたとすると合法的なカルテルとなり、今日の社会になじまないものであります。みなさんそれぞれ一般的だとおっしゃいます。予算はどれくらいとお考えでしょうか?」と問うたところ…

「安けりゃ頼みますよ 安けりゃ。」とおっしゃいました。当職から「ご自身で申請をなさるということですので、どうぞ! 面談終了です。」と宣言し、面談を打ち切りました。

問題点として

相続人間で意思疎通が図られていなければ登記はできない

面談の態度から、親子間の意思疎通が図られておらず、相続した不動産の所有権の帰属も決まっているようには到底思われないため、相対立する共同相続人が同席して、面談を受けることは、もはや適切ではないと判断しました。

見積が欲しいならば情報提供と依頼内容の明確化が不可欠

時折、費用見積は画一的なものであると勘違いされますが、依頼内容が最終委任事項である登記申請代理は決まっていますが、それ以外の依頼内容が千差万別なため、何を依頼したいのか、どの程度・規模の財産が被相続人から相続人に帰属するのかによって、見積金額が異なります。
遺産分割協議が不要な相続人が一人である場合もあれば相続人が数十人にわたる事案、遺された財産が生計の基礎としていた建物(自宅)とその底地のみの事案もあれば、多数の不動産が相続財産の対象な事案もあります。故に聞かなければわかりませんし、資料を拝見しなければ見積もりを出すことでさえ難しいのです。

このことは、再三にわたり、当ブログや他のメディアでも、指摘していることですが、いまだに、ご理解いただいていないことがとってもとっても残念でなりません。

法務局に過度の負担をかけないように配慮をお願い申し上げます

ご自身で申請するのは構いませんが、法務局に過度の負担をかけないように配慮をお願い申し上げます。法務局の姿勢も、現在は、「登記『相談』」ではなく、「登記『手続案内』」とコンセプトが変わりました。この背景には、事務負担の軽減がありますが、人員の削除も大きな課題があります。事務負担の軽減の話に戻りますが、その昔は、既存の申請に対する審査業務に対し、割って入って相談に対応していたわけですが、審査手続の迅速化を図るために、「登記『相談』」から、「登記『手続案内』」とコンセプトが変わりました。
 時折、法務局の登記申請の受付で、申請をするでもなく、カウンター越しで矢継ぎ早に、質問をする方を見かけますが、じつのところ、受付で対応されている職員は、法務局に入局したばかりの新人さんが大多数で、後ろの審査に当たっている職員に比べれば、知識も拙いものであり、彼らに責任はありません。彼らに課された責任は、受け付けた申請書に間違いなく登録免許税が納付されているかを確認し、間違いなく受けつけたどうか、くらいなものであり、ましてカウンター越しで聞かれた質問に対して答える義務もありません。

調べてご自身で申請するなら図書館の利用を

ご自身で申請するなら、法務局にいきなり出向くのではなく、まず図書館で関連書籍を熟読し、知識を備え、ご自身なりに実体上の問題を解決してから、法務局に出向くことをお勧めします。ありがちなケースとして、どうしたら税金が安く済みますかと愚問を投げかける方がいらっしゃいますが、あくまでも実態があっての登記です。何か勘違いしていらっしゃる方が多く見受けられます。
 行政が民事上の問題については不介入であることは自明なことであり、その発生した事実に基づいて納税の義務が生じるのかどうか興味があるのは、税務署、都道府県の税務事務所・市区町村の課税課であり、法務局ではありません。納税関係で強いていうなら登録免許税くらいなもので、資産課税に関連することは答えることは、(一職員が、個人的に知っていたとしても答えることが)できないのはいうまでもありません。

最後に

その親子ですが、息子が「自分で申請する。」と頑張って発言している傍で、妻から「そう言って、亡くなってからもう3年も経っているのにねぇ。」とぼそりとつぶやき資料をしまいました。結局二人の態度を見ていて、意思疎通が全く図られてはおらず、息子は忙しいことを理由に、手続きに非協力的な態度をとり、全く取り合う姿勢では無いと感じました。もしかしたら次の相続まで手続きをしないつもりなのかもしれないと勘ぐられてもおかしく無いなぁとふと思った次第です。

読者の皆さんも気をつけてくださいませ

相続の相談を承ります
司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357

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相続登記申請のこと

こんにちは

先の記事にも記しましたが、法務省民事局のwebサイトにて、相続登記申請に関する2種類のパンフレットが公開されたことに伴い、当事務所としても、そのパンフレットを確認し、解説と感想を Youtube にて、動画公開しました。

よろしければ、ご覧になってみてください。

youtube 動画

念のため、先に本ブログでも記した記事も引用します。

法務省民事局のwebページにて、相続登記に関するパンフレット公開を受けて

なお、相続登記申請について、ご自身では、難しいと感じていらっしゃる方を対象に、当事務所では、相談、代理申請で対応しております。

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法務局の web ページより

こんにちは、年の瀬ですね 今回取り上げるテーマですが、同業者の何人かが、取り上げていることなので、当事務所でも、確認し、ブログ記事に取り上げることとしました。

相続登記申請のことです

近頃の法務局の対応

実務界では、この相続登記申請のことは、少なからず問題が生じています。法務局は、「登記相談」という形では、対応せず、「登記手続案内」と対応を見直しました。人員の削減と審査等の事務処理速度の向上が主な狙いであり、このことは、何も一般の方に限った話ではなく、司法書士・弁護士等の専門職からの問い合わせについても、法務局のカウンターでの質疑応答や照会には応じず、ファックスによる照会のみとなりました。このファックスによる照会の制度ですが、一般の方に開放しているかはどうかは、存じ上げませんが、より込み入った事案であれば、専門職を頼ってほしいと案内されると思われます。

二つのパンフレットの配布

法務局のwebサイトをよくみると、確かにPDF版のパンフレットがダウンロードできるようになっています。

一つは、遺産分割協議編、もう一つは、法定相続編となっています。遺産分割協議編は、本編だけで39ページ、法定相続編は、同じく本編だけで35ページあります。

内容ですが、まず「はじめに」では、「相続登記がされないために生じている社会問題のこと」が取り上げられ、その社会問題を解決を図るために、相続登記申請が義務化されることを述べていますています。

相続登記申請をする利点

これらのパンフレットでも触れていますが、相続登記申請をする利点は、どこにあるのか。念の為、確認をしておきましょう。

民法の改正があり、法定相続分よりも上回る持分・相続分を取得した場合、登記等の対抗要件を付与されなければ、第三者に対抗することができなくなりました。すなわち、登記すれば、確定的に相続によって取得したことを第三者に主張することができるのです。

パンフレットをご覧になってほしい対象者は?

では、本編に戻り、そのパンフレットをご覧になってほしい方、その対象者をどのように設定しているのか。それは、比較的単純なケースを想定しています。パンフレットで突り扱っている事例では、夫婦親子4人家族でいずれも、夫につき相続が開始した事例を扱っています。

パンフレットの内容の概略

 遺産分割協議編にしろ、法定相続編にしろ、帰結することは、登記申請行為をしてほしことが目的です。

パンフレットには手順が記載

両方のパンフレットには、それぞれ準備から申請までの手順が記されています。

当ブログでは、詳細は記しませんが、法定相続の場合はステップが4段階、遺産分割協議の場合は、ステップが5段階に分けて記されています。いかにそのステップの概略を記します。

  • ステップ1は、共通していて被相続人および相続人を証明する書類の取得について記されています。
  • 遺産分割協議編のステップ2では、協議をすること、協議書の作成が記されています。
  • 法定相続編のステップ2並びに遺産分割協議編のステップ3では、登記申請書の作成が記されています。
  • 法定相続編のステップ3並びに遺産分割協議編のステップ4では、登記申請書の提出が記されています。
  • 法定相続編のステップ4並びに遺産分割協議編のステップ5では、登記完了のことが記されています。

戸籍関係の書類の取得については、戸籍の記載例も引用し、戸籍関係の書類がどのような役割を担っているのか、どちらで入手すれば良いのか詳細に記されています。なお、両編とも内容は、同じです。もっとも手続きが同一である以上、内容も同じです。

遺産分割協議、協議書のこと

遺産分割協議編では、もちろん遺産分割協議のこと協議書のことが記されています。もっともごくごく簡易に記されており、すべての遺産を対象に協議をし、その協議書もいっつにまとめたい場合は、無理をせずに、司法書士・弁護士等の専門職に以来sれた方が後々の手続きで立ち往生することがないと考えます。

登記申請書の作成

登記申請書の作成ついて、二とおりの作成方法が紹介されています。また書式例も先ほどご紹介した事例に沿って記載されています。書面で申請する場合、その体裁も詳しく記されています。また登記申請書の記載事項の説明が記されています。司法書士試験受験生が、熟読するテキストほどではありませんが、各記載事項について詳細に記されています。なお、法定相続情報証明制度を活用してほしい旨も記されています。

法定相続分に留意

なお、法定相続分については、民法の改正によって変更されているので、いつの時代の相続なのかに留意する必要があります。そのこともパンフレットに記されています。

添付書面の原本還付

登記申請書には、申請に至る登記の目的とその原因を裏付ける資料として、書面を添付するわけですが、すべての書類が対象ではありませんが、登記完了後、添付した書面(原本)を戻してもらえる制度(添付書面の原本の還付請求)がありますが、そのことも触れています。もちろんどう準備すれば良いのか記されていますが、イメージがわかない方は、専門職を頼るべきだと考えます。なお、法定相続情報証明の利用も考えてみても良いと思います。

登記申請書の提出、登記完了

そしてステップは分かれますが、登記申請書の提出と登記完了のことが記されています。

申請書の提出

どこの法務局に提出するのか、提出方法が記されています。

登記完了

登記が完了すると法務局から「登記完了証および登記識別情報通知書」の交付を受けます。その交付を受ける際の、留意点が記されています。なお、登記完了証および登記識別情報通知書の再発行はできません。そのことがしっかり記されています。
 なお、登記識別情報という言葉を初めてご覧になる方もいらっしゃると思います。その登記識別情報がどのようなものか、パンフレットは記されています。

相続登記申請の義務化

最後に、相続登記申請の義務化のことが、文章としては、最後に記されています。令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化されることが、大きく記されています。なお、一旦法定相続登記をしたのちに、遺産分割協議が成立した場合は、追加的に、相続登記の申請義務が課されることとなります。

最後に、申請書提出前のチェックリストおよび令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化のフライヤーが掲載されています。

パンフレット配布の思惑

最後に、この相続登記申請手続きのご案内のパンフレットの配布の思惑について、私見ですが、今まで放置されてきて、相続人間および地方行政の固定資産税・都市計画税を徴収する部門では、全く困らなかったと言えます。

数年前の出来事より

数年前に、某市役所固定資産税課で、出くわしたことですが、登記なんてしなくても良いんですよ。届出さえしてもらえば良いんです。その届出もしていただけなかったら、差し押さえて、公売に附してしまえば、税収が測れるので問題ないんです。と豪語した職員がいました。その当時は、随分と登記制度を莫迦にされたものだなぁと感じたものです。

所有者不明な土地の存在

そうこうして歳月が流れ、所有者がわかりにくい土地が九州と同じ面積に相当し、このまま放置すると大変なことになると、国家行政が大号令を発し、その後、その部署からも、あのような失言に近い発言は、聞かなくなりました。

同業者からの不満の声について

 同業者の一部が、所有者自身で登記申請をして、登記所が混乱する、また司法書士法違反の他士業者が入り込んで、業務が圧迫されると豪語していますが、申請人が、単純な事案であり、キャッシュがないから、自身で申請することを妨げる要素なんて何もありません。

真に留意して欲しいことは記されていない

ただ専門職のような、まず実態ありきという観点から取り組むわけではなく、手続き重視に傾斜し、後に不都合が生じないために、手続きに配慮しなければならない留意点などは、そのパンフレットには、記されていません。また関係当事者が多数存在する事案な場合は、もはや個人では、対応しきれないこととなります。そのようなときに、専門職をぜひ、活用していただきたいと切に願っている次第です。

ぜひご依頼を

長くなりましたが、当事務所にご依頼いただければ、パンフレットを熟読することなく、相続手続および登記申請手続を代わって申請することができます。概要は、当事務所 Web ページ でも紹介しております。ぜひ、ご参照ください。

司法書士 大山 真 事務所
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クリスタルとイルミネーション
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特別受益・寄与分,除斥期間

こんにちは、今回は、特別受益・寄与分の除斥期間のことを取り上げます。

早速条文をあたります。民法の規定です。E-Govから引用します。

(期間経過後の遺産の分割における相続分)
第九百四条の三 前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20230401_503AC0000000024&keyword=民法#Mp-At_904_3

とあります。

法令の施行日

さて、この規定、実は令和5年4月1日から施行される規定です。なので、このブログ記事の公開時点では、まだ効力は発生していません。

もっとも、改正により、取り扱いが大きく変わるため、注意喚起を含めて、本ブログ記事に搭載することにしました。

前三条の規定とは

条文の冒頭に「前三条の規定は、」とあります。「前三条の規定」は、前回、前々回取り上げた、「特別受益」、「寄与分」のことです。その規定を時間が経過した場合どう取り扱うのかの規定です。

相続開始から10年経過すると

相続開始時から10年を経過すると、「特別受益、寄与分の主張ができなくなり、純粋な「法定相続分に基づく遺産の分割」を余儀無くされます

全ての相続手続きが対象ではない

但し書きにもあるように、全ての相続手続が、相続開始から10年経過したら、特別受益、寄与分の主張が認められなくなるわけではありません。

但し書きをよくみてみましょう。

10年経過する前に、家裁に申し立てた

まず、第一号です。

 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

E-Gov より

とあります。相続開始から協議がまとまらず、10年経過する前に、家庭裁判所に遺産分割調停等の請求をし、調停成立が相続開始から10年経過することもないわけではありません。

そのような事案で特別受益・寄与分の主張が認められないとなると相続人によっては、不合理な結果になります。この不合理を回避するため、10年の除斥期間は、考慮しないこととなります。

止むを得ない事由によるもの

次に、第二号です。

 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

E-Govより

なかなか難しいですね。

相続開始時から10年経過6ヶ月前から満了までの期間で、家庭裁判所に遺産の分割を請求できない止むを得ない事由が相続人にあった場合、その止むを得ない事由が消滅し、除斥期間経過前に、「…止むを得ない事由があった相続人」は、家庭裁判所に遺産の分割の請求(申立)をした場合、この除斥期間は、考慮しないこととなります。

原則は10年経過すると主張できない

さて、前々回「特別受益」、前回「寄与分」をみてきました。施行後、相続開始から協議がまとまらず、10年を経過したら、「特別受益」「寄与分」の主張は認められず、あくまで法定相続分に基づく遺産の分割を行うこととなります。もっとも共同相続人間が円満であれば、結局実情に合わせ、協議により遺産の分割を成立させることを妨げるものではないと考えられます。
この規定が施行され、様々な相続がありますが、まだ何にも手続きをしていないのは論外ですが、相続開始からなるべき早めに手続きをされることを切に願っています。

経過措置のこと

ところで、既に開始している相続はどうなのでしょうか? このことも触れておきましょう。

附 則 (令和三年四月二八日法律第二四号)第3条に規定があります。E-Govから引用します。

第三条 新民法第九百四条の三.(一部省略).の規定は、施行日前に相続が開始した遺産の分割についても、適用する。この場合において、新民法第九百四条の三第一号中「相続開始の時から十年を経過する前」とあるのは「相続開始の時から十年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第二十四号)の施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時まで」と、同条第二号中「十年の期間」とあるのは「十年の期間(相続開始の時から始まる十年の期間の満了後に民法等の一部を改正する法律の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から始まる五年の期間)」と.(一部省略).する。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20230401_503AC0000000024&keyword=民法#503AC0000000024-Sp-At_3

とあります。施行されると新法の規定が適用されます。

猶予はあります

よく見てみると、その期間は、事実上優遇されることもありうると考えて良いと思います。

まず第一号の読み替えは、相続開始から10年経過する時、または、法律の施行の時から5年を経過する時の「いずれか遅い時まで」とあります。

続けて第二号の読み替えは、10年の期間に括弧書き「十年の期間の満了後に..(一部省略)..法律の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から始まる五年の期間」があります。

相続手続きの概要は、当事務所Webページでも、紹介しています。ご参照ください。

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綿帽子のたんぽぽと花咲くたんぽぽを前にしての撮影でした。
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寄与分

こんにちは、今回は、「寄与分」のことを記します。

条文を確認

早速、条文を確認してみましょう。E-Govから引用します。

第九百四条の二 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2 (省略)
 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4 (省略)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20220401_430AC0000000059&keyword=民法#Mp-At_904_2

さて、民法第904条の2第一項を見てみましょう。

寄与分を主張できる人

冒頭に、共同相続人中に、

  • 被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付
  • 被相続人の療養看護その他の方法

上記のリストにより、「被相続人の財産の維持又は増加について、特別の寄与した者」

が寄与分を主張できる相続人と言えます。

上記のリストに掲げられている行為により、被相続人の財産が維持されもしくは財産の増加に一躍をになったことと言えます。ただ、普通の寄与ではなく、「特別の寄与」とあります。この「特別の寄与」ですが、条文等に、具体例は明文化されてはいませんが、配偶者が上記のリストを実行したとしても、さほど認められないのは、実務のようです。もっとも生存配偶者は、法定相続分が、多く設定されていることも、理由の一つと考えられています。

寄与分を考慮した相続分の計算

次に、寄与分を考慮した相続分の計算について見てみます。

条文では、「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。」とあります。まず相続開始時の相続財産は、

みなし相続財産=
相続開始時の財産ー共同相続人の協議で定めたその者の寄与分

となります。こうしてみると、共同相続人間で協議をして控除する寄与分を決めることが、条文からわかると思います。

そして、寄与分を含めて相続分を受ける相続人は、

寄与分を含めた相続分=
「みなし相続財産から法定相続分に基づいて取得した相続分
+「寄与分」

となります。

具体例

では、具体例です。被相続人Aの相続開始時の財産が金5,000万円、相続人は、生存配偶者B、AとBの間の子C,Dがいる。Dは、Aの事業に対し労務の提供をし、共同相続人間で、協議した結果、Dの寄与分は金1,000万円とすることで、調った。

ではみなし相続財産を計算すると、

金5,000万円(相続開始時の財産)
ー金1,000万円(協議して調った寄与分)
=金4,000万円(みなし相続財産)

となります。そうすると、各相続人の相続分は、

Bが金2,000万円、Cが金1,000万円、
そしてDが金2,000万円(みなし相続財産から金1,000万円+寄与分金1,000万円)となります。

寄与分はどうやって決める?

寄与分の決めからは、条文をみると、協議で決めるとあり、協議が調わない、協議をすることができないときは、寄与分を主張する相続人から、家庭裁判所に対し、寄与分を決める請求(申立)をすることができます。請求を受けた家庭裁判所は、「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。」とあります。こうしてみると、家庭裁判所に請求する場合は、単に申立てだけすれば、主張したことが認められるわけではなく、上記にリストに上がっている事実が認められる証拠を提出していくことが必要だということがわかります。その上で、家庭裁判所が寄与分を定めることとなります。

寄与分の上限額

協議によっても、家庭裁判所への請求によって定まるにしても、第904条の2第3項の規定にあるとおり、遺贈の価格を侵害してはいけないことが記されています。すなわち、
相続開始時の財産から遺贈の価格を控除して得られた残額が寄与分の上限、ということになります。

家庭裁判所への請求について(実務上の経験も含む)

さて条文には、家庭裁判所への請求ですが、認知の問題がない遺産の分割の調停の申し立て、認知後の相続人からの遺産の分割に対する請求もあった時にすることができるとありますが、実務では、遺産の分割調停の申立てと寄与分の申立ては、別々の申立と考えられています。遺産分割調停の継続中に、相続人の一人から寄与分が主張されましたが、家庭裁判所から「寄与分は別で申立てください。」と案内があったようです。その上で、併合して調停を進めていくものと思われます。

さて、いかがだったでしょうか、次回は、改正民法によって、この「寄与分」と先の投稿で取り上げた「特別受益」について、どう影響があったのかを取り上げたいと思っています。

遺産の分割手続きについて、当事務所Webページでも紹介しております。ぜひ、ご参照ください。

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桜の開花が一巡し、ネモフィラが綺麗に咲き始めました