残念なことに、一方当事者のみから、贈与、売買等、財産が大きく移転する契約に関する書類の提示があっても、我々は、登記申請手続を代理することは、犯罪等収益移転防止法を遵守しなければならない観点から、応じることはできません。両方当事者の本人確認、意思確認が必要です。
本人の意思確認は法令上の義務
司法書士は代書屋さん、というイメージが今まで強かったようですが、公法上、規定されていることに違反してまで、依頼に応じる義務は発生しません。
実体上、確かに契約があったことを両当事者に確認致します。その上で、登記申請ができるのか手続的要件を確認して、依頼に応じます。
社会不安が起きているからなのか、最近、このような問い合わせが多く見受けられます。判断能力が弱くなってきたから、登記名義を換えたいという要望や、他方配偶者が身体に障碍があるから名義を換えたいなど。
所有者が相手方に対して譲渡する意思表示がなければ、譲渡は成立はしないのです。
単純に名前が替われば良いというものではありません
単純に名前を換えたいということにはならないのです。もっとも購入当初から、実は婚姻継続中で、夫婦共同で購入したが、共有名義になっていなかったというのであるならば、購入した当時の共有持分は、実体上認められるのですから、その分についてだけ、登記を構成する必要があると言っても良いのかもしれませんね。もっともそれを証明する書類があれば、なおのことでしょう。
申請の代理できる要件は存在し、単に書類を揃えれば、代理して申請できるのは大きな誤解であると思います。
上記記事は、旧ブログ「時報」より、2022年6月15日に、本ブログに移植しました。なお、本文を加筆修正しました。
補足および回想
上記記事は、当事者間売買の話があり、相談に応じたときのことを記しました。
記しきれてないことを追記します。先の記事本文の結びですが、実体が初めから共有だったのであれば、登記もそのように更正をすべきであろうという見解を述べました。それにしても登記申請には、登記上権利が縮減してしまう人を申請手続上の義務者、新たに共有者となる方を権利者として、双方が共同して申請するのが原則です。故に一方当事者からの申し出だけでは、登記を申請することができないのです。
その当時のこと
当時の回想を改めて思い返すと、相談者の態度は、摩訶不思議なものでした、よく考えると、相談者一人ではとても決められることではないであろう契約内容までを語り始めたと思ったら、不動産の評価さえ確認していなかったり、こちらが質問すると的を射ない回答が多くて、なんだか身勝手な行動をしているだけのように感じました。こちらが売主を確認したいとお願いしたところ、今は会うことはできないニュアンスの回答をし、近日中に書類を揃えるから登記(申請)をしてほしいと言い寄られたため、相談を打ち切った、という次第でした。
真相は藪の中にあるかも確認できませんでした
結局、その事案は、なぜか相談者は、「自分でやるから問題ない。」とわざわざ電話を入れてきたのですが、その後どうなったかは、謎が深まるばかりが、真相は藪の中にあるのかさえもわからないままです。
本ブログ記事で、相対取引と登記申請に関することをのちに記そうと思います。
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