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離婚・財産分与

財産分与のこと

こんにちは、今回は 離婚に伴う財産分与のことを記したいと思います。

さて、財産分与ですが、協議が調えばその協議に基づいて、元夫婦の婚姻中に築かれた財産の帰属が確定することとなります。

協議が調わない場合、家庭裁判所に調停の申立をし、調えば財産の帰属が確定しますし、調停が調わない場合は、調停に代わる審判によって財産の帰属が確定します。
ただし 財産分与の調停・審判は離婚後2年内という除斥期間が設けられているため、協議により財産分与が調わない場合は 早めに家庭裁判所の力を借りた方が良いといえます。

では、離婚後2年を経過してしまった、事実上の財産分与はできるのでしょうか?

実は家庭裁判所は、夫婦、親子、親族間の問題をかなり広く事件を取り扱うことができます。

他の裁判所での取り扱いを確認する必要はありますが 東京家庭裁判所では 「離婚後の紛争調整調停」でもって 離婚後2年を越えた財産分与の問題について 対応する取り扱いをしているようです
もっとも その取り扱いは 通常の財産分与の調停・審判とは異なり 一般調停事項であるため調停に代わる審判ができないという面もあります

審判ができないので なんだかなぁと思われるかもしれませんが 財産分与がなされていない もしくは曖昧さがあるのであるならば 「離婚後の紛争調整調停」を申し立てるべきではないかと考えます

なぜ 「離婚後の紛争調整調停」を申し立てるべきか それは離婚後といえども もともとは夫婦という関係であった事実は変わりません 故に調停前置主義という言葉が脳裏をよぎります

実務で避けたいことは たらい回しにされてしまうこと 特に訴え提起時の納税(収入印紙による納税)の重複や管轄の変更による交通費等の不用意な出費は できるだけ避けなければいけないと思います

もっとも 財産分与が書面等でしっかり確定していることが明らかで 元配偶者から権利の実現に向けて協力が得られない事案でしたら それは訴訟事項でしょうから 一般債権と同様に考えて 訴額によって簡易裁判所または地方裁判所にて民事訴訟として取り扱うこととなるでしょう

とにかく 大原則に立ち返り 離婚後2年内に 財産分与および年金分割のことは対処した方が良いことは言うまでもありません。

離婚後の財産分与に関する相談を承ります
司法書士 大山 真 事務所
TEL 047-446-3357

紫陽花です
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民事信託・遺言・後見・相続 法教育

実体が違います 特別受益と遺産の分割手続きのこと、書面のこと

こんにちは 今回のテーマは 相続手続の特別受益と遺産分割のことを対比して 記していこうと思います

まず 特別受益という言葉を持ち出しましたが 一体なんなのかというと 民法にその根拠があります

以下はE-Govの法令検索の民法からの引用です

(特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
第九百四条 前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089#3867

とあります
条文を丸ごと引用してしまったので もしかしたら読みづらいかもしれませんね
では 解説していきましょう

まず民法第903条第一項ですが、

第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089#3867

とあり、「遺贈を受け、」というのは遺言により、財産を貰い受けたと考えてください
次に「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた」とありますが 結婚や縁組のために被相続人から財産の贈与を受けたり 生計の資本としての贈与は 例えば学校に対する学費を出してもらったなどが考えられます

さて

「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする」

とあるのですが 上記の遺贈や贈与があった場合 その受贈者・受遺者兼相続人は本来の法定相続分から実際に取得する相続分の修正が入ります その計算方法を条文は示しています
その計算方法ですが

実際に付与される相続分=法定相続分ー(遺贈+贈与)の価額

です この計算式によって、得られた結果、ゼロ以下だった場合は ゼロとなります このことを第二項が示しています

第三項は 遺言で以って 被相続人が特別受益を受けた相続人に対して 先の計算式とは違った内容を意思表示した場合は その意思表示に従うこととなります

第四項は 昨今の改正で追加された規定です 生存配偶者の居住のための確保と持戻し免除の推定規定が設けられました

第904条は 持戻しの計算に関することです 財産価値が下がったりまたは無になってしまったとしても 相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなして計算することとなります

ずいぶん前置きが長くなりましたが 遺贈の根拠となる遺言は相手方の無い単独行為と言われています それから贈与は契約として位置付けられ その効果は生前に生じるものもあれば 始期付き すなわち贈与者の死亡でもって生じる贈与もあります
遺贈は、受遺者には、遺贈を受けるのか受けないのか、受遺者自身が独自で意思表示をする機会が与えられていますし、贈与は、諾成片務不要式契約であり 契約そのものはすでに成立しています

そうすると 特別な受益により相続分が相続開始時には存在しない相続人にとっては もはやその事実が存在するだけ となります

次に遺産の分割を見ていきます
遺産の分割は協議によって行われることが大多数であります 事案によっては 協議がまとまらず 家庭裁判所に持ち込まれ 調停や審判または訴訟によって決定や判決によって定まることもありますが それにしても その協議 調停 審判 訴訟による審理結果の判決により 遺産の分割が確定し 法律上の効果として第三者の権利を害する場合を除いて相続開始時に遡ることとなります
すなわち 遺産の分割まで経る筋道は 相続開始後の相続人全員の意思表示に基づいて形成され その分割が成立すると言ってもよいと思います

さて 特別受益のことと遺産の分割のことを個別で見てきましたが もう一度おさらいすると

特別受益は 過去または相続開始時によって遺贈や贈与の効果が既に生じた事実が存在すること
遺産の分割は 相続が開始して 相続人全員の意思表示によって形成され 相続財産の帰属が定まること
です

さて これらの証となる書面の作成について意識すると

特別受益は事実に関する証明をその当事者がすること

遺産の分割は 意思表示をしたことにより相続財産の帰属を相続人全員がすること

となります

さらに相続人の中に未成年者がいた場合は どのような手続が必要でしょうか?

特別受益者である未成年の相続人について その事実に関する証明を自らも相続人でもある親権者がすることがありますが 利益相反は問題とはなりません なぜなら事実に関する証明であって その証明は法律行為では無いからです

一方 遺産の分割について その意思表示は、法律行為として位置付けられるため 相続人でもある親権者が その未成年者のために代わって意思表示をしたとしても 自らと子の利益が相反してしまうため 効力は生じませんので 家庭裁判所で その未成年者に対する特別代理人を選任してもらう必要があります

未成年者である相続人への対応

特別受益遺産分割
利益相反に該当?
しないする
家庭裁判所の特別代理人の選任の要否不要必要

相続の手続きについて 特別受益があった場合と遺産の分割のことを対比して見てきました

おそらく依頼者にとって一番気になること それは費用のことだと思います
相続手続について 未成年者とその未成年者の親権を行使する生存配偶者が共同相続人である場合

特別受益がある場合、その証明について家庭裁判所の関与が不要であり、証明する書類も未成年者の親権を行使する相続人から その事実について証明することで足ります もし未成年者自身について 印鑑証明書の発給が受けられるのであれば 未成年者自身がその登録印で押印した証明書でも有効なものとして扱われます

一方、遺産の分割協議が必要である場合は 未成年者一人一人個別に特別代理人を家庭裁判所が選任する必要があります
また選任してもらって好きに協議すれば その結果が反映できるのかと言えば そうではなく 選任の審判をするにあたり 遺産分割協議案を家庭裁判所に提出する必要があります
適切に 不公平なく分割されるように謂わば 家庭裁判所が後見監督していると言っても過言ではありません

最も 上記に記したことは それらの手続きは選択的なことではなく あくまで実体上の前提も含めた事実の存在があって導かれた上で存在するものです
同業者のwebページを見ていると 時折 費用のことを意識されて その稚拙な内容を記したページが散見されますが 実体が存在しなけければ その手続きを用いることもできないと考えるべきです ありもしない事実(不実)について に書き留め証明をしようとしたところで それは事実が存在しない以上 無効なものであり 場合によっては有印私文書偽造罪 登記が実行されてしまった場合は 公正証書原本不実記載罪 という刑法上の罪に問われることあり得ます
また 特別受益があったということは その反射光的に税金のことも意識をすべき場合もあるのかもしれません 特に贈与税についてです

ここまで ご覧になっていただいてありがとうございます
よくよく 事実を確認した上で 適切な手続きをしていただけたらと思います

相続に関する相談を承ります
司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357

夜の東京駅でした 星もよく見えてました たまには こんな秋の夜もいいかなと思います
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推定相続人の廃除について

 先日、電話で「相続人を排除したいのですけど…」という相談がありました。なぜか一般の方は誤解されている様ですが、単に裁判所に行って手続さえすれば、推定相続人は排除することができるということではないのです。
 根拠は民法にあります。条文には、「被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があった」という事実がなければなりません。また排除の対象者は、遺留分を有するということなので、兄弟姉妹に対しては、排除をすることはできないのです。
 廃除は、生前で申し立てることもできれば、遺言をもって請求する事ができます。
方法等については、個別具体的な内容に触れるので、個別に対応致します。
まずは、お電話を…047-446-3357

池にある蓮の花でした

上記記事は、旧ブログ「時報」より、2022年6月3日に、本ブログに移植しました。なお、内容を一部修正しました。

補足

相続人の排除の件ですが、生前、遺言で申し立てることができます。ただ、上記にも記したように、申し立てれば、安直に認められるわけではなく、廃除の対象となる人物に審尋(簡単に記すと訴訟手続の対面とは違い、一方当事者のみを交互に呼び出し審理する形式)が行われ、上記の要件に該当するか否かを事実認定し、審判します。

そうすると、生前ならば申し立てた後に、裁判所は、該当する相続人を呼び出し、審尋する。相続開始後は、遺言に廃除の意思表示があれば、遺言執行者が、廃除の審判を申し立て、裁判所は、審尋することとなります。

主張立証の難しさ

生前ならば、被相続人となるその人が、申立書および準備書面もしくは、審尋時に主張し、証拠となりうるものを提出するば良いのですが、相続開始後となると、遺言書に記載し、事実上遺言執行者に、審理の対応をお願いすることとなります。

そうすると、生前では、推定相続人との関係をどうしていくのか、相続開始後の遺言でももってならば、主張立証のための大きなハードルをどう超えていくのか、なかなか難しいところがあるにはあります。

画一的な手法は、存在しない

なにか、こうすれば絶対認められるというセオリーや確固たるプロセスというものは、存在はしないと考えます。しかしながら、どうしてもということであれば、相続人の排除という手段を用いることも視野に入れても良いと思います。

兄弟姉妹が推定相続人の場合、なぜ排除が認められないのかは、また別の機会に触れたいと思います。

相続手続き全般の業務の概要は、事務所公式webページでも紹介しています。是非ご覧ください。

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357

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相続放棄

 いきなり唐突なタイトルかもしれませんが、大切な方が亡くなられたときに、開始するのが相続です。基本的に相続と言えば、積極的な財産、即ち、不動産や預貯金、株などをもらえると思い浮かべますが、実はもうひとつあります。それは消極財産、即ち、借金、立替金、売買代金、滞納していた税金等の他人様に支払わなければならない債務も財産で、この債務も引き受けることとなります。

 もしかしたら、相続により財産を承継するとは、積極財産だけ相続して、消極財産は相続しないというイメージを持っていらっしゃると思います(もちろん、限定承認という方法を用いれば、清算して、消極財産が残れば承継することも可能です)が、積極財産のみならず、消極財産も承継します。そうすると、思わぬところから、返済の取り立ての電話などが掛かってきたりします。

相続放棄の意義

 そこで故人が残された消極財産のために、あずかり知らぬところから返済等の取り立てから防御する方法、それが相続放棄です。
 この相続放棄ですが、現時点での相続人のみならず、次順位等(直系尊属、兄弟姉妹)の相続人も必要となります。なぜならば、故人の子供全員が相続放棄をしたことで、放棄した子は、相続人ではなかったものとみなされるため、次順位である直系尊属の方が相続人、そして直系尊属全員が相続放棄すると、次順位である兄弟姉妹が相続人となります。

家庭裁判所での手続きが必要

 この相続放棄ですが、相続は相続人の財産について分け合う重要なことなので、裁判所での申述が必要となります。
 司法書士大山真事務所では、相続による不動産の登記申請手続のみならず、相続放棄の申述についても、御手伝い致します。

月島界隈でした

上記記事は、旧ブログ「時報」より、2022年5月26日、本ブログに移植しました。なお、移植の際に、本文について、加筆修正しました。

回想

初めての相続放棄の申述のための、家庭裁判所に提出する申立書起案および手続き支援の依頼の折り記した記事でした。

円満な親族ほど次順位の存在は大きい

上記に記したとおり、配偶者以外の相続人は順位というものが存在し、子、直系尊属、兄弟姉妹と順位があります。また被相続人が亡くなる以前に子、兄弟姉妹が亡くなられている場合は、代襲相続の問題もあり、親戚づきあいが良好な親族は、綿密な連絡が大事なのだろうと思います。

未成年者の相続放棄の申述には留意が必要

この事案も、以前取り扱ったことですが、相続放棄の申述人が未成年者であるとき、留意が必要な場合もあります。特に複数の子が相続放棄の申述をする際に、親権者法定代理人は、子供同士について利益が相反することとなるため、この相続放棄の申述のための特別代理人の選任手続きが必要になります。

次際に扱った事案では、唯一の親権者である被相続人につき相続が開始し、未成年後見人として、その未成年者らから見て祖父が就任しましたが、この祖父は、相続放棄の申述手続きでは、子の次の相続権をしゅとくする順位者、すなわち次順位であるため、子と法定代理人である(祖父)の間の利益相反行為、そのとき子は二人だったので、子同士の利益相反もあるため、子一人一人につき特別代理人の選任が必要な事案でした。

こうして考えてみると、相続放棄の申述をするにしても、なかなか難しい問題です

ここまで記しましたが、繰り返しになるかもしれませんが、またの機会に、このことを詳細に記そうと思います。

相続放棄の申述の詳細は、事務所公式Webページで、紹介しています。是非、ごらんください。

司法書士 大山 真 事務所
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