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民事信託・遺言・後見・相続

「裁判上の」相続の放棄

こんにちは 今回は「裁判上の」相続の放棄について 記します

何回か取り扱ってきた事案ですが 大事なことでもあるので 繰り返しの要素が盛り込まれた内容になってしまうかもしれませんが 記したいと思います

遺産の分割協議に応じたことや相続分を譲渡したことでは「相続の放棄」とはならない

なぜか よく勘違いされがちですが 他の相続人から せがまれて 「自身は何も取得できない・もらえない遺産の分割協議に応じたことでもって相続を放棄した」ことや「他の共同相続人に自身の相続分を全部譲渡した」ことで 相続の放棄をしたことにはなりません

もらえるものが何もないのに 相続の放棄にはならないとは どうしたことか?! と訝る方もいらっしゃるかもしれません

「相続」には、二種類の財産を相続する意味が込められている

実は 相続とは「資産」を相続するとともに「負債」も相続します

さて「資産」「負債」とは何なのでしょうか? 会社経営をされてきた方や経理の仕事に関わってきた方にとっては わかるかもしれませんが とってもとっても簡単に言うと

「資産」とは?

プラスの財産のことです わかりやすく言えば 現金、預貯金、不動産、株式(株券)等のことです

この資産については 簡単に想像することができると思います

では

「負債」とは?

マイナスの財産のことです こちらもわかりやすく言えば 被相続人が他人から借りていたお金を支払う義務、どなたかの支払いについて保証する義務(保証人の義務)などです

この債務は被相続人の個性に特化した義務 例えば 債権者の依頼が 被相続人自らが絵を描く義務について 被相続人がその対価を受け取らないままに相続が開始したならば その相続人は義務を負わないこととなります もしも対価を領収していたら 契約の解除等で返金の問題が残りますが 基本的に絵を描く義務は履行できないので 契約は終了します

さて 代替性のある(謂わばあまり債務者の個性にとらわれない)債務は 相続の対象となります

「相続手続」で見落とされがちなもの

それは債務についてです もっとも債務は 資産と違い 何かモノで残っていることは あまりなく 敷いて残っているとすれば 債権証書の写しがあるのかないのかが 関の山だと思います

以前 このブログ記事で取り扱いましたが ある物事について「ない」ことの証明は 悪魔の証明と言われ どれほど証明しようと思っても 困難を極めます
もちろん「債務がない。」ことの証明についてもです

生前の被相続人との交流の有無

被相続人と生前から交流があり 相続開始後も信頼関係が存続するなら 債務は生前の交流から被相続人の素業を推定しながら 心配なら 貸金業者の事案は信用情報を取り扱う機関に確認できるでしょう
一方 資産は 相続開始後 より具体的な資産を知ることとなり 積極的に相続することを前提にして 手続きを行うでしょう

ところが 被相続人との交流が生前から無い相続人にとっては 資産を網羅的に調べることでさえも困難極めます
まして債務は 先に記したとおり貸金業者案件で信用情報を共有している事案であれば 機関を通じて訪ね当たることもできるかもしれませんが 個人間の契約であった場合は さらに困難を極めます
そうすると 被相続人の素性を知らない相続人にって 資産が存在するからと言って いたずらに相続手続をすべきではないほうが無難かもしれません

さて そこで 被相続人の生前の素業を知らない相続人にとって 結果的に他の共同相続人からの要望に応える形で 相続分の譲渡に応じたり 遺産分割の協議に応じるとどのような法律上の効果が生じるのでしょうか?

相続債務を 一部の共同相続人が負うこととしたとしても 債権者に対抗できない

さて 小見出しに記しましたが 今回の「裁判上の」相続の放棄について とってもとっても利点のあることを 記します

冒頭でも記しましたが 何も遺産のもらえなかった相続人であっても 「裁判上の」相続の放棄の申述をしなければ 債権者からの請求に対し 対抗することはできません

このことは「遺産分割協議書」や「相続分の譲渡書」に 被相続人の負っていた負債について特定の共同相続人が義務を負うと合意していたとしても その事実だけでももって債権者からの支払いを拒むことはできないのです

債権者にとって 共同相続人間で協議した内容 特に資産については 債権者が求めるものが特定物ならば話は別ですが 金銭ならば将来的な換価のための資産関係がどうなるかくらいの話であって 問題は その相続人から回収するのが合理的なのかを第一に考えます

裁判上の相続の放棄の有無によって矛先がかわる

ところが この裁判上の相続の放棄の申述を行い受理されていれば 債権者の請求を拒むことができます

被相続人名義の建物で同居してきた相続人は かなり難しい対応を迫られることになりますが 被相続人の生前に交流がなく素業もわからず 遺した資産についてもご興味がない相続人であれば 相続債権者から 不測の請求に対し防御するための予防線を張ることは重要なことであると考えます 

何ももらわなかったから義務を負わない勘違いは危険

繰り返しになりますが 相続によって何ももらう意思がないなら 裁判上の相続放棄の申述をすべきと考えます

熟慮期間を経過してしまったら 相続の放棄の申述はできませんが その熟慮期間は 被相続人が死亡した日付ではなく 相続人にとって相続があったことを知った日 であるため もしかしたら まだ熟慮期間が開始していない可能性もあります

もっとも 他の共同相続人からの連絡を受けてしまった段階で 熟慮期間は開始するので 相続があったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に「相続放棄の申述」申立をしなければなりません

どうか ご留意を

「『裁判上の』相続放棄の申述」について 相談を承ります
司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357
事務所: 〒270-1432 千葉県白井市冨士185番地の21

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任意後見 民事信託・遺言・後見・相続

任意後見契約について

こんにちは、今回は、任意後見契約のことを記したいと思います

まず はじめに 任意後見契約締結までに それ相応の時間を要します

初回面談終了時に 契約締結は まずありません

初回の面談時に そのまま契約締結はありえませんし皆無です

任意後見は契約を締結したら それでお終いではなく 契約から判断能力が低下し 任意後見が発動し 基本的にご本人様が一生を遂げるまで 関係は続きます

上記のとおり とってもとっても長く続く関係について 一回二回の面談だけで 契約が締結できるとは 到底考えられません 任意後見契約を締結する前に 月々に面談をすることによって 本人様の判断能力を見ていくとともに ご本人様は 見守りをしてくれている人物を信頼して良いだろうか? と吟味する必要があると思います 見守る側も ご本人様との信頼関係をお互いに築きあげられるだろうか 意識していますし 双方確認し合うことになります そうして お互いに納得した段階で 任意後見契約の締結に至ります

以上 任意後見契約に至るまで 簡単に記しましたが 任意後見の相談を希望される前に考えなければいけないこと 意識していただきたいことを記しました

ご相談の前に、意識して頂きたいこと

任意後見のご相談は 相談に来られる前の段階で よくある話ですが お亡くなりになられた後のこと 死後の相続や葬儀 お墓のことで相談される方が大半です
しかしながら 実社会で一番困ることは ご本人様の判断能力が低下した段階で生活をどうするのか そのことがむしろ重要なことです

死後のことより気にしてほしいこと

亡くなられた後のことは ご自身が与り知らないことでもあるので 家族(お子さんやご兄弟)に迷惑をかけるわけにはいかない心境のもとで 不安に感じていらっしゃるのだろうと思われます

それでも 少しだけ立ち止まって考えると 本当に死後に迷惑をかけたくないのであれば 今 しっかりしていらっしゃるときに 予防線を張ることを考えた方が得策です

その予防線とは 何か それは ご自身の判断能力が低下し認知症が始まり その後の余生をどう過ごすのか このことが置き去りにされて相談に来られるケースがよくあります

判断能力が低下して認知症になり亡くなられるまでの人生をどう過ごすのか?

確かに ご自身の死後 遺されたご家族が気になることはよくわかります それでも ご自身の判断能力が低下し 認知症になったときに 頼ることができるご親族がいらっしゃるのかどうか このことは 認知症になってからのご自身の人生について大きな問題となるのです

判断能力が低下しても より良く生きるために

以外にも ご自身の判断能力が低下し認知症となったときのことを想像される方は 今日において ようやく認知されてきたところのようで まだまだ少ないのが現状です

判断能力が低下すると

なぜ、ご自身の判断能力が低下し認知症となったときの対策を考えなければならないのか。それは、判断能力が十分備わっているときと比べ、認知症が進行するとともに、できることが減っていってしまうからです。そして、そのことでさえも、本人は、気がつかず、いざその現場に直面して、立ち往生することが多いにしてあります。立ち往生して一番困るのは、他の誰でもない、ご本人様ご自身です。周囲は、手探りで対策を講じますが、その対策が本人とって望んだものかどうかは置き去りされ、物事がどんどん進んでいきます。

判断能力が低下しても、自身が望んだ生活をする手段として

先に見てきたように、判断能力が低下してしまった段階で、ご自身がどうありたいのか、意思を表示することさえも難しいものです。では、判断能力が低下する前にできることがあるのか?

あります

それは、事前に、ご自身の判断能力が低下した以後、どうしたいのか決めておくことです。その決め事に基づき、任意後見契約締結時に、ライフプランとして財産管理から身上監護までのあり方を、事前に決めておくのです。このことは、法定後見と大きく違うことです。

判断能力が低下し、ご自身では、どうすることもできなくなった段階では、直近におけるしたいこと、そして、先に記したご自身の死後における相続手続き等の事務手続を決めることや、誰かに託すことは、容易なことではないことは想像できると思います。

ゆえに 判断能力が低下する前に 準備をする一環として任意後見契約を締結します

次回は、任意後見契約に向いている人について記したいと思います

成年後見について相談を承ります
司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357
事務所: 〒270-1432 千葉県白井市冨士185番地の21

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事務所より

言質

こんにちは 今回は「言質」というタイトルを記しました 端的に言うと「権限のある方から『大丈夫 問題ない。』と 言われました。」となど その発言が証拠として質を取っていて問題ないと認識され 事実が進んでいく というものです

先に記したとおり「『大丈夫 問題ない。」』と言われました。」 と面談に応じていて よく聞かされます

ただ その根拠はどこにあるのか を ろくに確認をせず 単に「あの人が言っていたから」とご発言される方が たまにいらっしゃいます

最近では 「市役所の方(おそらく市民課の窓口で対応している職員)から『これで大丈夫です」と言われたんですけど?!」とおっしゃっていたことが印象的でした

昨今 法律専門職には門戸は開かれていないのですが 相続人が被相続人の戸籍を収集する際に ご自身の住所で直系の尊属卑属の関係であれば 戸籍をまとめて交付を受けることができる 広域交付の制度があります

ただ交付した行政庁(例えば被相続人の最後の住所地がA市)でも本籍地が他の行政庁(例えばB 市)だった場合 そのB市を本籍地とする除籍事項証明書(または除籍謄本)についてもA市で入手が可能ではあります ただし A市で交付が可能だったとしても B市が記した戸籍事項に誤りがあった場合 その誤りに対する問い合わせは 交付したA市ではなく 記載し管理しているB市に問い合わせることとなります

その誤りに気がつかず 交付したA市は「大丈夫です」と言い放っているわけですが 万が一 登記申請に対する審査で その誤りの影響で 受理できないと事実認定した場合 上記の言質を取っていたとしても 登記所は認めないこともあります

単なる誤りでは済まされない

その「大丈夫」という発言 その大丈夫な理由・根拠はどちらにあるのでしょうか ご自身で 登記の申請をなさるのであれば そのご自身が責任を負い 結局 その補正のための手続きを踏まなければなりません 先の相続登記申請について言えば 単に相続登記申請1件だけならば良いのですが その後の不動産の売却が控えており 買主となる方が 既に引越し等の準備をしており 予定がずれ込むと 契約条項の違反となり 最悪な場合 契約の解除 損害賠償を請求されることにもつながります

 法律専門職は 「誰かが言ったから」という発言は 基本的に消極的に考えています よほど権限や裁量権を持っていることが明らかで その身分が明らかでない限り あくまでも法令規則通達をよく見た上で 接しています

個人の方が自ら行政手続の申請に挑むときの自己の管理にもとづく注意義務とは違い 法律専門職が業務を扱うときは 善良なる管理者の注意義務が課されている以上 その職責に対して費用報酬にも含まれていると認識を持っていただきたいものです

言質は よほど権限を持っている方の発言でなければ 無価値なものでありますし 言質を保証する書面でもない限り 言った言わないの水掛け論が繰り広げられるわけですが 結局は 法令規則通達にどう記されているのかを拠り所にして処断されることもあります

あくまでも法令規則通達が基準 行政手続は基本的に間違いないことが前提事実の上にして組み立てられている

その昔 某執行保全裁判所のホームページに 手続き案内にかかる書式を掲載していたそうですが その内容に問題があり その書式に基づいて作成された申立書では結局は受け入れることができず 受付担当官は謝ったそうですが 取り下げを促されたということもあります もちろん その誤りに対して 申立をしようとして弁護士 当事者 後方支援に当たった司法書士は 文句を言ったそうですが それでも 法令に違反している以上 受け付けるわけにはいかないといわれ 却下(処分)となったそうです

今一度 根拠を確認すべき

頑張って ご自身で手続きに挑む方について 時折 言質を取ったから大丈夫 と安心していらっしゃる方がいらっしゃいますが そうではなく 今一度 ご自身で なぜ この人は大丈夫と言っているのだろうか と立ち止まって 考えていただきたいと感じます

司法書士 大山 真 事務所
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事務所より

ご自身で対応すべき事案

こんにちは、最近「自分でできるんですけど 安くできませんか?」とご発言される方が本当に増えました

この言葉を受けて 私をはじめ 同業者のほとんどが 「この方は何をしにきたのだろう」という心境になります

当事者が考えているほど 他人様の権利擁護に関わる手続きについて 安っぽい仕事とは思えませんし 何も代理人を立ててまで手続きしなければならない事案は この日本の社会において まずありません

以前にも ブログ記事で取り上げましたが ご自身でできるならば どうぞご自身でご対応ください というのが 我々の本音です

よく 周辺の事業者が 提携している司法書士・税理士が対応します 手続き報酬は 金50,000円(カッコ書は省略)という文言を見かけることでしょう

ただよく見てみると その報酬は申請手続(行為)そのものであり その後補正を求められようと却下決定後の再申請についての責任を担保するとは記しておりません

時折 その記載を理由にして 見積に対し ご自身の想定した金額とかけ離れた料金の提示を受け おどろかれる方がいらっしゃいますが ご自身が手続きする際の責任の認識(自己がする責任)と 他人が変わってする手続きする際の責任の認識(善良な管理者が負う責任)に差異があるためが主な理由です

責任を負う以上 劣り広告のような 安価な報酬体系に基づく事業者の執務態度はどうなのかなと思います

また広告の料金の脇の括弧書きをよく見てみると 申請前の準備する書類の収集 起案等は別途費用報酬が発生します という文言が振られています

一般の方は よく勘違いされるのですが 登記申請手続きの代理業務は 申請に先立つ準備手続は含まれていません
このことは 事前の費用報酬の見積の提示にも影響があり 資料の提示がないにもかかわらず 事実が確定しているかどうかも不確かであるにもかかわらず 明確な費用見積はどころか概算でさえも 個別具体的な事案ではないため出せないのです

以前記しましたが 登記申請手続きを依頼した方が向いている方と ご自身で対応した方が向いている事案は存在します

ご自身でできる ご自身でできる と 連呼されるのであれば そうなされば良いのではないです それが あなたにとって 最善の手続き選択だと思います

最後に 以前にもブログ記事にしましたが 依頼した方が良い事案をご参照いただければと思います

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357
事務所:〒270-1432 千葉県白井市冨士185番地の21

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事務所より

突然のご来所

こんにちは、今回は題目に上がっているとおり 突然の来所される方々について 当事務所の対応について 記したいと思います

せっかくご来所いただいても

基本的に 現代社会において 来所前に連絡をすることはできるはずです 当職も 常時暇ではなく 何かしらの業務に従事しています

どちら様も受け入れの準備を なさっているはずですが?

また 面談の機会を設ける事前の連絡を受けた段階で 時間が許される限りの範囲でですが 必要であれば 法令規則等の確認作業も行なっています この準備は もちろん 問い合わせた潜在的依頼者の期待に応えるためでもあります

また面談を行うロケーション(空間)においても 夏季であれ冬季であれ 室温の調節を行う必要もある場合があります

もとより その空間を清掃する必要も時としてあり 事前の連絡もなく 突然の訪問では 受け入れるための準備に時間を要することもあります

そもそも 来客を受け入れるにあたり どちら様も準備を要するはずであり 不意に来所いただいても 対応ができない場合もありうることをご理解ください

曖昧な時間指定を頂いても

それから電話による問い合わせをいただいても 「午後」などの曖昧な時間を指定される方もいらっしゃいます こちらの提案した時間指定について その良し悪しをせずに 曖昧に回答される方もいます

その場合 当事務所では ご来所いただく前に 必ず連絡くださるようお願いしております

特に 初回の面談の時点で 曖昧な時間指定であった場合 たの所用が入り次第 その所用を優先致します

最後に

ご依頼されるにあたって 所用のある中で お時間をつくり 面談に挑まれるのは 何も依頼者 相談者だけではなく 受け入れる側の事務所も立場は同じです

上記のことをよくよく踏まえた上で 問い合わせいただければと思います

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357
事務所〒270−1432 千葉県白井市冨士185番地の21