カテゴリー
不動産登記申請 事務所より 民事信託・遺言・後見・相続

相続による登記のこと

こんにちは、今回は、「相続による登記のこと」を記します。なお、実際の相談により聴取した事実を元に記しています。なお、今回は、力を入れて記したので、長文となりますので、ご了承ください。

唐突に「登記識別情報」が送られてきて、何のことだかわからなかった

お客様から、よくわからないことがあるから相談に乗ってほしいと、要請を受けて相談に応じたときの第一声でした。

ところで「登記識別情報(通知)」とは

登記識別情報とは、所有権の取得に関する登記を受けた方を対象に法務局から所有者(取得した権利が持分ならその共有者)に通知または交付される情報または書類のことです。後の不動産の処分(売却、担保権の設定)をする際に、登記申請時に提供または添付し、審査時に、本人の実在性および当該登記を実行したことによって現登記名義人の登記を失うまたは現時点での所有権に対して登記上制限が加わることの意思を確認するために必要な情報として位置付けられています。

なぜ、登記識別情報通知を入手したのに、不可解なのか?

相談者は、「登記申請の依頼(委任)をした覚えはない。」とのこと。それにも関わらず、登記識別情報が、登記申請を代わって対応したと思われる司法書士事務所から送付されたとのことでした。なにが問題なのか、もう少し丁寧に事実関係と登記申請手続について見ていくことにしましょう。

事実関係

母親が亡くなり、相続手続きをしなければならない。

相続人について

亡くなられた母親の相続人は?、相談者以外に姉が一人いて、相続人全員で二人だけでした。二人とも年齢は75歳以上でした。

共同相続人間のやり取り

相談者宅に、姉から連絡があり、訪問したいとのこと、相談者も来訪する趣旨について薄々気がついていたので、受け入れることにしました。

来訪日当日に、何と、姉一人だけではなく、なぜが司法書士も同席したそうです。その司法書士の席の前のテーブルには戸籍謄本の書類の山が築かれ、請求書らしき金額の説明が記された書面を相談者に見せたそうです。そうして、相談者にとっては、内容がよくわからない書類に、署名をさせられたようです。

そのような態度も含め、あまりにも唐突な対応であり、相談者は驚き、話の内容(前提となる事実関係や事情)が相談者の想定していたこととはかけ離れていた内容であったため、姉と司法書士に対し、相談者宅から引き取ってほしい(退去の)旨を告げ、そのときは、物別れとなったようです。

なされてしまった登記そして登記識別情報通知の送付

そうして約一ヶ月ほど歳月が流れ、上記に記された「登記識別情報通知」が同封された書類が送付されたとのことでした。

登記申請手続の要件

登記申請手続を見ていきます。実のところ、相続を原因とした所有権移転登記申請手続ですが、大きく二つの事象が存在します。

遺産分割等が完了し、所有権の帰属が明確になった後にする相続登記申請

こちらの方が、想像できると思います。いくつか残された遺産のうち、不動産所有権の帰属をどちらの相続人とするのかを決定した上で、登記申請手続に挑んでいると考えることができます。ただし、この場合は、協議によりやはり法定相続分を反映された共有持分で持ち合うことで合意がされていない限り、相続人のどなたかが、当該不動産の権利を法定相続分よりも多く取得する事象となり、そのことを証拠づけるための書類に記名または署名および実印で押印、押印されている印鑑が実印であることを証拠づけるため、印鑑登録証明書を添付する必要があります。

自らの相続分保全のための相続登記申請

この謂わば保全のための相続登記申請と記しましたが、今回の事案のように相続人が複数存在する場合でも、相続人のうちの一人からでも、法定相続分に基づく登記申請はすることができ、そして受理されます。確かにこの方法でも、当該申請は受理され、登記簿にもその旨が登記簿に反映されるのですが、登記が完了したことに伴う、登記識別情報通知の送付または交付の対象者は、実は実際に委任状を代理人に提出した人物のみ申請行為に及んだ者のみに対して、登記識別情報は、通知または交付されます

申請行為に及ばなかった相続人には通知も交付もされない

反射効ということではありませんが、法定相続分に基づく登記を申請した場合、登記申請のため委任状を代理人に提出しなかった他の相続人、登記申請行為に及ばなかった相続人には、登記識別情報は、通知も交付もされません。すなわち保全のための法定相続分に基づく登記申請をした場合、登記識別情報を持っている相続人と持っていない相続人が存在することとなります。

そもそも問題点は?

さて事実関係と相続による登記申請手続きを見てきましたが、そもそも何が問題なのでしょうか。

対応した司法書士がとった行動について、相談者からの話と相談者宅に司法書士事務所から送付された登記識別情報通知からわかることは、相談者が委任する意思もないのに、なぜか委任状が作成され、登記申請行為に及んだことです。このことは、有印私文書偽造罪の罪に問うこととなりますし、考えようによっては、公正証書原本不実記載罪の罪に問われることにもなります。

事実関係と権利関係が合致していれば登記は問題ないのか?

事実関係および現状の権利関係ならびに登記に公示されている権利関係は、公示上は確かに反映されていると言えなくもないです。しかしながら、相談者は、登記申請手続の行為は及んでいないにも関わらず、委任状が作出されている事実は無視できないものであると考えます。

売買の事例での最高裁の判例から

随分古いものですが昭和35年1月11日の最高裁の判例があります。この判例は、司法書士試験でも取り上げられている有名な判例です。この問題点は、確かに当事者間で取引が行われ、所有権は、売主から買主に移転したにも関わらず、売主が登記申請に協力してくれず、買主が書類を偽造して登記申請し、登記がなされてしまった事案でした。この場合は、公正証書原本不実記載罪に該当します。

相続を原因としての登記の問題

さて、上記の売買の場合は、明らかに違法と言えるのですが、相続を原因とした所有権移転ではどうなのか?同列に扱って良いのかという問題はあるにはあります。以下、見ていきましょう。

  1. まず、共同相続人のうちの一人からする法定相続分に基づく登記は、先にも記したように、保存行為として認められます。
  2. 一方遺産分割等がなされ、不動産だけに限って見てみたとき、法定相続分とは違った権利関係となる遺産分割協議がされているにも関わらず、法定相続分の登記がされてしまった場合は、問題があると考えます。民法の規定には、「遺産の分割の効力は、相続開始時にさかのぼる。」とあり、故に、遺産分割によって単有になった権利関係を、相続があった日で「相続」でもって登記されることとなります。
  3. また、一旦は、法定相続登記をして、後日、遺産分割協議によって単有となった場合は、遺産分割協議が成立した日を掲げて、「年月日遺産分割」として登記申請することとなります。この場合、事実関係は如実に表れているのですが、実務的に申し上げると登録免許税の税負担が余計にかかってしまうため、法定相続分に基づく登記申請はすべきではなかったとも言えます。

登記簿上では、どの経緯を辿り相続登記がされたか判然としない。

これまで見てきたように、実は、登記簿上では、どのような経緯により相続による登記がされたのか、判然とはしません。そして、今般の民法改正により、このことに限らず、他の諸原因によって法定相続分よりも多く取得した持分について、対抗関係の整備がなされ、登記等の対抗要件を取得しなければ、第三者に対抗できないこととなりました。ただ危惧することは、法定相続分の登記は、権利の保全として重要な登記として認められる反面、そのことに乗じて、他の共同相続人により、勝手に持分を処分されてしまう可能性を誘発することとなりうるのではないかと感じます。

一方、法改正により、施行予定である相続人による登記の届出の活用がもしかしたら、不可抗力的に、明るい活用が期待されるようにも思われます。それは、取引に入る相続人ではない第三者が、届出登記を見て、まだ相続の手続きが終わっていないことを外観上知ることができ、その上で、法定相続分の登記があった際、背信的悪意者以外の第三者は対抗関係によって、持分取得の権利を確定的に主張sルことができることとなります。

一つの結論として

今回の相談者の言い分が事実であるとすると、対応した司法書士の本人確認について問題があるように思われます。一義的には、法定相続分に基づく登記がされただけであり、実害はないと考えられますが、他の共同相続人として相談者が容認している事実さえも存在せずに、署名してもらう書面の意味や趣旨について、丁寧な説明をせずに、ただ署名押印がされた書面だけでもって、登記申請に関する代理権について授権があったとは考えられず、いわば強引は委任契約があり、その委任による代理に基づいて登記申請を行ったことは、もはや正当性を主張する利用にもならないと考えます。

相続人の高齢化に伴う、注意喚起として

高齢社会となって、相続人も高齢になり、その意思表示について、本人の真意に基づいたものかどうか、いくつかの相談を受けていると本人確認がずさんな対応が見受けられる司法書士同業者が存在することも事実存在しています。

こうして記していると、もはや振り込め詐欺と同等に本人確認を受ける高齢者も意識を持った方が良いのではないかと思ったりしています。

自分の意思に基づかない登記がされてしまっていること、これは何も登記を失うことだけではなく、委任した覚えがない、自身のあずかり知らぬところで相続登記の申請人として登記申請がされてしまっていることももしかしたら、留意しなければいけないと思います。

千葉県北西部のとあるヒマワリ畑です

相続手続きを概要は当事務所webページでも紹介しております。是非ご参照ください。

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357
千葉県白井市冨士185番地の21

カテゴリー
民事信託・遺言・後見・相続 高齢者権利擁護

公正証書遺言のススメ

こんにちは、改めて、公正証書遺言をお勧めします。

やはり、財産が少ないから作成しなくても大丈夫、とは限らないと考えます。

力を発揮するときに遺言者は実感しない

確かに遺言の効力という面で見た場合は、そう感じるのかもしれません。それでも高齢社会を生き抜くため、親族を頼る際の交渉のカードとして使えると考えます。

所有する財産が少額な方ほど検討すべき

少額だから遺さなくてもいいでしょとおっしゃる方もいらっしゃいますが 少額であればあるほど分け合う遺産が少ないため、遺言の存在意義が問われてきます。

相続人は子一人しかいないはずですけど?

認識とは違っている場合もあります。それは、子が先に死亡したが、その子どもの子どもがいる場合は、代襲相続人が存在し、相続人は一人ではないこととなります。

費用がかかるのでしょ?!

費用がかかる、かからないの二者択一ならば、確かにかかります。それでも特定の推定相続人一人に、全財産を相続させる遺言事項は、簡潔になります。また遺言の効力により移転する財産全体が大きくなければ、公証人の事務手数料も少額ですみますし、証人も頼れる友人がいれば、お礼の範囲ですみます。もし頼れる友人がいらっしゃらなければ、ご依頼があれば当職が対応いたします。

将来の不安の解消のための道具として活用

いろいろ記しました。究極的に、将来の不安解消の道具として、活用してほしいと思います。遺言される方が、将来、介護の必要が生じた際に、その介護に関わる推定相続人に安心して対応してほしい念いを込めて、公正証書遺言を作成することは有意義だと思います。

介護のことは、遠慮せずに制度を活用する

そして遺言により相続する推定相続人は、できる範囲で対応し、無理が生じる前に、介護制度の活用をして頂きたいと思います。遺言者は、ずっと付きっ切りで介護に当たってほしい念いでもって託したわけではなく、これからお互いに無理のない範囲でお願いしたいという思いを込めて遺言を遺したと考えることができます。誰しもが抱える問題です。その解決策の糸口として公正証書遺言の作成をお勧めします。

遺言書の作成の相談を承ります。なお、遺言のことは、当事務所Webページでも紹介しています。併せてご覧ください。

事務所近隣の公園で咲いていた紫陽花でした

司法書士 大山真 事務所
TEL: 047-446-3357

カテゴリー
離婚・財産分与

離婚の裁判事務手続案内

こんにちは、今回は、離婚に関する裁判事務を紹介します。

民法の規定より

もしかしたら、世間体としては、あまり望ましいものではないのかもしれませんが、民法の規定をみると、実は、婚姻のすぐ後に、「離婚」に関する規定が存在します。

このことは、積極的にではありませんが、「離婚」はありうる問題だと、明治の時代から民法制定の段階で、認識されていたことであり、人生において起こりうることであるため、法律として予定されていることを表しています。

協議でできれば協議の方が良いのですが…

もちろん当事者が、協議により調える余地があれば、協議の方が良いことに間違いありません。しかしながら、そうもいかないこともありうることですので、家庭裁判所の力を借りて、離婚等の手続きについて、後方支援をしていきます。

改めて、当事務所の裁判事務のご紹介

当事務所では、webページに業務紹介をこれまで、なぜか掲載してきていませんでしたが、この度、簡潔ではありますが、搭載することとなりました。

離婚等の手続きで後方支援を受けたいとお考えであれば、当事務所公式webページをご覧いただけたら幸いです。

紫陽花
カテゴリー
民事信託・遺言・後見・相続 高齢者権利擁護

職業後見人選任を検討されている方へ

こんにちは、久しぶりに、新しい記事を記します。最近、過去記事の移植作業にとらわれ、記すことがおろそかになっていますね。

さて、題目にあるとおり、今回は、職業後見人選任を検討されている方に向けての記事です。もっとも、そうでない方にも、参考になる記事であると思って記しています。

申立段階では、後見・保佐・補助は原則確定しません

まず、どのような経緯で、成年後見人の選任申立を検討されているのかは存じ上げませんが、申立をしようとしているその人が、お身内の方を慮って、成年後見人選任の申立をしたとしても、必ずしも成年後見人として選任されるとは限りません。もっとも、既に寝たきりとなってしまい、意思疎通をどうやっても測ることができないことが明白ならば、成年後見開始の審判を受けることになるはずです。

本人の判断能力を確認する段階的手段

申立をするにしても、準備が必要です。また申立後にも、本人の判断能力は確認されます。以下は、その段階的手段です。

  1. 本人の情報を福祉関係者に取りまとめてもらう。
  2. 取りまとめた情報を元に、医師が診断する。
  3. 申立時に、添付された、本人情報シートと診断書をもとに、裁判所が、鑑定(精神鑑定)をする。(実務的には、裁判所の指示に基づいて医療機関が精神鑑定を行う。)

という確認手段が用いられます。なお申立時には、本人情報シートと診断書が存在するわけですが、その診断書の記載に則して申立の類型がほぼ定まります。もし診断書の記載に基づかない申立をしたとしても却下とはならず、本人保護のために審判手続きは継続します。

思惑と違う場合でも、取り下げは原則不可

時折、申立人の思惑と違っているので取り下げたいと聞きますが、申立をしてしまうと、本人保護の観点から取下げをするには、裁判所の許可が必要となります。この許可は、まず認められない傾向が強く、実務で活躍されている同業者同士の間でも、認められないと言われています。

身元保証の問題

職業後見人は、基本的に身元保証はできません。なぜなら、後見人として本人に代わって法律行為を行うのであり、身元保証をしてしまうと、いざ保証債務に基づき履行した結果、後見人と本人との間で利益が相反することとなります。この利益相反の問題を回避するため、司法書士は、倫理により、身元保証はできないこととしています。そうすると、今まで親族の関与があった以上、選任された後見人はもとより、医療機関や施設関係者からも、身元保証に関することで、親族へ連絡が入ると思われます。

医療行為の同意

職業後見人に同意権は存在しません。医療行為は、手術を受けたり、人工呼吸器を装着することの同意等、様々ですが、職業後見人は、判断能力が不十分になる前の、本人が受ける医療行為についての在り方を知り得るはずもなければ、本人の生き方そのものの意思表示について、代理行為になじまないと考えられています。

なぜ、医療機関は同意を求めるのか

本人に判断能力があれば、本人に同意を求めます。このことは自然なことです。では、なぜ医療機関は、判断能力が低下した本人ではなく、ご家族に同意を求めるのか。深く考えれば考えるほど難しい問題ですが、一つだけ推察すれば、判断能力が低下していることが明白な本人に同意を求めて得られた回答は、信ぴょう性に欠けるとも言えますし、ご家族であれば、判断能力が低下する前の段階から本人と接していたし、ご本人のことをよく知っている推定が働くからだと思われます。

同意を得るもう一つの目的

また施術が成功したとして施術前に想定された障害を負う結果となったり、回復の見込みがこれ以上望めないこととなった場合の負担等を斟酌すると親族に潜在的だったとしても不利益を被る可能性がありうるため、同意を求めていると考えられます。

申立を検討されているご家族の方へ

上記にあるとおり、

  1. 申立が思惑通りになるとは限らない
  2. 身元保証の問題は継続する
  3. 医療行為の同意は、申立前と同様に、問い合わせがある

1は、申立後の特有な問題ですが、2および3は、申立前後では、変わらないことで、後見人が付されたとしても、引き続き本人を取り巻く関係者からの求めは継続します。職業後見人が選任されたからといって、関与から外れるわけではないし、無縁にもあるわけではないのです。

職業後見人を選任する利点は

では、それでも後見人を選任した方が利点があるとことは何か、以下に列挙してみました。

  • 施設・医療機関の契約が法定代理人によりはっきりと意思表示がなされる。
  • 煩わしい財産管理から解放される。
  • 施設との身上監護面でのやりとりから解放される。

が考えられます。本人の容体が安定しているときは、ご家族の方は、しっかり仕事に取り組むことができると思います。

今回は、職業後見の活用するにあたって、留意すべきことを記してきました。またどこかの機会で、親族後見の利用と留意すべきことを記そうと思います。

先日訪れた夕暮れ時の新宿通りでした

事務所の業務の概要は、公式事務所Webページでも紹介しております。ぜひ、ご覧ください。

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357

カテゴリー
事務所より

webページを改良します

こんにちは

事務所公式webページを改良します。

まずは、最寄駅等からのアクセスについてのページを作成しています。

早速ですが、PCによる閲覧向けページですが、徐々にレスポンシブデザインに変更していきます。

単なるwebページでもあるので、ブログ上に埋め込んで、表示させることができませんが、リンクを入れておきますので、よろしければご参照ください。

最寄駅等からのアクセスについてのページのリンク:

https://makoto-ohyama-judicial-scrivener-office.jp/etc/access.html

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357

通勤中に見かけた 水玉 でした