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対抗要件の関係により相続登記は何時でも良いわけにはいかない

こんにちは、今回は、相続したことによる不動産登記申請義務に関すること、また対抗要件の付与の観点から、相続登記は何時でも良いわけにはいかなくなりました。今回は、そのことをもっと掘り下げてみようと思います。

日本全全国で何が起きているのか?

視野を広げると 日本の国土として なんと九州全土に匹敵するくらいの土地が、誰の所有だかはっきりしないということです。

だからどうしたのか?と感じるでしょうか。それは大変だねぇと感じるでしょうか?

これまでの市区町村の固定資産税課の態度

確かに、今まではそうでした。故に某市区町村の固定資産税課では、登記なんて何時でも良いのですよ!と指導をしていたくらいでした 。別に税金の徴収ができればよく、周囲に迷惑がかかっていなければ、傍観するより他ないのです。いわば気の毒になぁ、という感じでです。
相続人間で困っている、民間で困っている、それくらいのレベルでは、行政は動こうとはしません。そうです、行政が介入したいと考えたときに、これは大きな問題だと認識を改め始めたのです。

なぜ、風向きが変わったのか?

行政区画について再開発を推し進めていくにあたり、地権者からの用地買収をしたり換地処分をしなくてはいけないわけですが、現在の所有者がわからないもしくははっきりしない土地が、無視できないくらい存在していて、計画が進まないという事態に直面したわけです。

行政としても念い、とにかく法務局に来て欲しい念い

そこで行政は、まずは相続を原因とする登記申請をしてほしい念いから、法務局では、法定相続情報証明という制度を施行しました。この「法定相続情報証明」は、相続手続きで集めた戸籍謄本を申出書と一緒に法務局に提出すると、一通の「法定相続情報証明書」という書面を無料で提供を受けることができます。だから何なのかと 思われるかもしれませんが 漫然と法務局、金融機関(しかも一機関ずつ)、年金、保険手続きのたびに被相続人に関する戸籍謄本を取り寄せると、高額になってしまうため、法務局で、「法定相続情報証明」でもって戸籍の束に変えることができる仕組みを造ったわけです。
もっともこれだけですと、一つずつの手続きで戸籍の束を返却してもらえば事足りるようにも思われますが、一連の手続きが完了するまでにずいぶんな時間を要することも考えられるため、ぜひご利用をしてほしいという念いがあります。

さて話題が逸れましたが、民法・不動産登記法の改正があり、相続による不動産の取得があった場合の登記申請手続きが義務化されました。登記申請を怠ると、法務局よりお尋ねの文書が届いたり、法務局による職権で付記登記をなしたり、最悪な場合、行政上の秩序罰たる過料の制裁を受けることとなりました。

相続登記の義務化以上に気にしてほしい改正条文

上記の様に、登記申請そのものについて義務化する大きな改正があったのですが、それよりも民法の大きな改正として、相続によって法定相続分以上の該当する持分を取得した場合、登記を受けなければ、第三者に対抗することができない(対抗要件付与)取り扱いに変更されました。

この改正は、相続登記の義務化の改正よりも、重く考えなければいけないと思っています。なぜなら共同相続人の中に、自らの相続分に基づく不動産の共有持分を他人に売買等により譲渡し、法定相続分による登記および持分全部移転の登記がなされてしまった場合、遺言により法定相続分よりも多く取得した相続人は、共有持分を譲り受けた第三者に対抗することができないこととなりました。改正前は、判例により、遺言により相続させる旨の記載があれば、登記がなくても第三者に対抗できる取り扱いをしていましたが、先の改正で、あくまで登記が対抗要件となったわけです。なお、遺産分割の場合は、分割協議により自らの法定相続分よりも多い共有持分を取得した相続人は、登記を経ないと第三者に対抗することはできない扱いは今までと変わりません。

今回は、民法第899条の2のことを見てきました。

今回の改正により、法定相続分よりも多く取得した相続人は、第三者に対する対抗要件を受ける必要性が生じたと言えます。

相続手続に関する概要を、当事務所Webページもご参照ください。

相続に関する相談を承ります。

司法書士 大山 真 事務所
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自身らしく過ごすために

認知症を患っても、自身らしく過ごすことは、とても重要なことです。今回は、任意後見制度を活用するにあたって、法定後見との違いも比較して、自身らしく過ごすために注目すべきことを記してみようと思います。

法定後見と違うこと

任意後見が、法定後見と大きく違うことは、契約で後見人を自ら選ぶことができることは、何度か触れてきたと思います。実は、もうひとつ任意後見の方が圧倒的に利点なことがもう一つあります。

それは、認知症が進行し、ご自身の判断能力が不十分になり、意思を表示することが難しくなったときに、事前に記したライフプランによって、よりご自身らしく過ごすことを継続することが期待できます

法定後見人の選任は、高齢者本人ではない。

法定後見の場合、残念なことに、判断能力がない、著しく不十分または不十分という事態になって初めて家庭裁判所に申し立てをし、申立時に一応成年後見人候補者という記載欄があるので、記しますが、選任する主体はあくまで家庭裁判所です。

どう過ごしたいのか、本人は伝えられない

選任された成年後見人が、弁護士、司法書士等の職業後見人の場合は、もちろん成年被後見人のこと(どう自身らしく過ごすのか)を知ろうと努力を試みますが、被後見人(本人)に直接聞くことはもちろんしますが、すでに判断能力に問題があるため、その返事や質問に対する答えが本人の真意に基づくのか、判断が難しいものです。故に親族や場合によっては近隣の方々に、日頃の様子を聞き、ようやく本人(被後見人)のことをなんとか知ることができることになります。もっとも 本人自身の希望を知ることは難しいと言えます。

任意後見なら伝えられる

一方、任意後見では、契約時に代理権目録にどの法律行為について代理権を与えるのかからはじまり、判断能力が衰えたときにどう自身らしく過ごすのかを伝えることができます。任意後見契約書には記すことが難しいことを、別紙にライフプランという形で、記しておくのです。そうすれば、認知症を患い、判断能力が不十分になったとしても、周囲はどうすべきかをすることができるのです。

任意後見等の当事務所の高齢者の見守りサービスについて、当事務所Webページでも紹介しています。

任意後見の相談をお受けいたします
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月光と電波塔
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名義変更・請負・委任

こんにちは

今回は「名義変更」、請負・委任について、記してみたいと思います。

「名義変更」について
相続の相談、特に電話での第一報でよく出てくる言葉です。一般の方は、単に名義が変わるという意味から、「名義変更」と言葉を用いてるのかもしれません。もちろん登記の目的で本当の名義変更という申請形態もあります。それは、所有者の氏名が婚姻離婚養子縁組離縁等で変わった事象の際に、「名義人氏名変更」と呼んでいます。

では、相続に伴う、被相続人から相続人への登記申請は名義変更とは呼ばず、所有権移転登記(被相続人が共有持分のみ保有しているならば、持分全部移転登記申請)と呼んでいます。

名義を変更してほしいと言っても、単に氏名が変わっただけではなく、相続により権利の主体(所有者)が変わったため、登記申請が必要になった、ということなのです。

権利の主体(所有者)が変わった以上、同一人物の氏名が変更になったときと違い、結果的により厳格な書類による審査が必要になります。揃える書類が「単なる『名義変更』」のときと比べ、多くの書類が必要になるのです。
必要書類等の詳細は、次回以降のブログで記そうと思います

さて次に、「請負・委任」について

「請負」は仕事の完成が将来確実に存在し、その完成に向かって仕事をすすめ、その仕事の結果(完成)に対して報酬を支払う契約です。故に請負の場合、平たく記すと仕事の完成というゴールがしっかり存在するということです。

一方、委任は「法律行為をすることを相手方に委託」し、委託を受けた側が承諾することによって生じる契約です。ここで留意すべきことは、法律行為をしたことによる効果は、委任者(託した人物)の期待通りになるのかどうかは、不確定であるということです。
 もちろん委任を受けた人(受任者)は、善良なる管理者と同等の義務があり、委任者の希望どおりに添えるように最大限に事務に当たらなければならないが、状況の変化によって事務処理の結果如何が功を奏するのかどうかは確定しておりません。この点が請負とは違ったものと言えます。

さて、いろいろと記しましたが、相続問題の解決について、最終的に登記申請をとお考えの方から、問い合わせがありましたが、単に「名義を変更する。」のではなく、所有者が変わる、依頼については、仕事の完成というものではなく、登記申請する法律行為を委託する委任契約というものであり、契約の性質上、単に「幾らですか?」と問われても、前提の準備がどれくらい整っているのか、そもそもこの人が所有者となった事実が存在するのかなど確認をする必要があり、電話のみでは費用報酬の見積は確定することはできません。

もちろん、相続手続きそのものについて後方支援もしてほしいという依頼もあります。その際には、各書面の起案にも対応しますが、詳細な事情を聞かなければ、見積ることができないのが実情です。

先の投稿で、報酬のことも少し触れましたが、被相続人の遺した財産、相続人の数、遺産の分割の内容によって、見積額は変動します。

最後になりましたが、何をどこまで依頼するのかも大事なことだと思います。

単にわからないわからない とおっしゃりながら問い合わせがありますが、何がわからないのかを確認することも大事だと思います。実際にあった話ですが、不動産の登記申請が税金の確定申告の一環だと大きく誤解をされている方もいらっしゃいました。

あと2年経つと、相続による移転登記申請は義務化されます。相続開始から3年、遺産の分割から3年経過すると10万円以下の過料の制裁があります。今まで、相続による登記をしてこなかった方も、そろそろ考えても良いと思います。

相続に関する相談を承ります
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通勤時に見かけた蝋梅でした。綺麗ですね!
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次順位者の相続放棄の申述(続き)

こんにちは、先の投稿、「次順位者の相続放棄の申述」の続きです。

先の投稿

次順位者の相続放棄の申述

について、ご覧になっていらっしゃらない方は、ぜひご覧になってから、この後の記述をご覧ください。


先順位者の相続人全員が相続放棄(相続放棄の申述が受理)されれば、次順位の相続人の熟慮期間の問題が生じます。

次順位者の相続の承認・放棄の熟慮期間の始期は?

もっとも相続人の順位間で疎遠になっているならば、先の投稿でも記したとおり、望まない形になるかもしれませんが債権者からの請求が到達してから、準備に取り掛かることでも良いと思われますが注意すべきことがないわけではありません。

集めるべき戸籍等の相続証明書の違い

注意すべきことは、被相続人からご自身にかけての戸籍等の相続証明書の取得することが必要になる場合があることです。

先順位の相続人だった方が次順位者の相続放棄の申述手続きに協力的であるならば、これまでの手続きの事件番号等を申述(申立)書に記載し、先の申述申立時に提出した戸籍謄本等の(再度の)提出は、不要となります。

ところが先順位の相続人だった方と疎遠である、次順位相続人に対し先順位相続人だった方が非協力的であった場合は、原則どおり、被相続人の戸籍をほぼ全て、先順位者の相続人だった方全員の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)及びご自身の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)が必要になります。

熟慮期間は長くはありません!

最後になりますが、相続放棄の熟慮期間は 「相続があったことを知ってから3ヶ月」とありますが、思っていた以上に実は短いものです 特に次順位の相続人となると戸籍等の書類の確認に時間がかかることもありうるので ご自身でできないことはないかもしれませんが、書類の入手、諸手続きについて熟知している専門家である司法書士、弁護士等に相談されることをお勧めいたします。当事務所Webページもご覧ください。

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熱海にある河津桜の蕾でした 春は近づいてますね
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任意後見のこと(3)

こんにちは

任意後見について いろいろと考えたり 関連書籍を読んでみたりしているのですが もしかしたら一般の方のみならず 専門家の方も誤解しているのかもしれない制度なのかもしれないと思ったりしています

故に もう少し このブログで記していこうと思っています

さて 任意後見ですが 任意後見人に対して、お願いしたい事項、すなわち委任事項ですが、依頼者本人が希望することをお願いできる仕組みになっています。表現を変えると、依頼していない事項は、代わってすることができないこととなります

誰しも お願いしたいことが財産の全てを管理してほしいのではなく、一部についてお願いしたい場合もあります そうやって一部について代理権を付与することもできるのです

ただ 留意しなければならないのは 判断能力の低下があまりにも進みすぎて 委任事項から外れてしまった行為を行わなければならない場合や取消権を付与した方が 本人のためになると判断せざるを得ない場合は 止むを得ず法定後見に切り替える必要があります。

もう少し見方を変えると 委任事項が少なかったり 狭すぎると 法定後見に切り替える必要性が高まるし その切り替え時期も相対的に早まってしまうことになります

もっともここで重要なことは 判断能力が低下しても ご自身らしく過ごしていくにはどうあるべきかを 熟慮して 代理事項を定めるのかです

法定後見の場合ですが 少なくとも職業後見人の場合は 本人のことを配慮しつつ後見業務には当たっていますが それでも迷いながら 最善なことを家計を考慮しながら対応しているのが実情です ただしそれにしても 本人の心情とはかけ離れたところに日々の暮らし態様となってしまう事実も存在するのかもしれません

任意後見は 判断能力が低下した際にどう過ごしたいのかを あらかじめ決めておき その決め事に基づいて任意後見人が代わって対応することが主たる目的です
 そんな意味では あくまで主役は本人であり 後見人は まさに「後見」であり 能楽のように いざとなったら代わって立ち振る舞うのが 本来 あるべき姿であろうと思います

任意後見は ご自身で 今後のあり方を決めて 振舞ってほしいことが決められる もう少し見方を変えると 勝手なことはさせない 納得いく形で振舞ってほしいことを記すことができるのです

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