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不動産登記申請 事務所より 民事信託・遺言・後見・相続

相続による登記のこと

こんにちは、今回は、「相続による登記のこと」を記します。なお、実際の相談により聴取した事実を元に記しています。なお、今回は、力を入れて記したので、長文となりますので、ご了承ください。

唐突に「登記識別情報」が送られてきて、何のことだかわからなかった

お客様から、よくわからないことがあるから相談に乗ってほしいと、要請を受けて相談に応じたときの第一声でした。

ところで「登記識別情報(通知)」とは

登記識別情報とは、所有権の取得に関する登記を受けた方を対象に法務局から所有者(取得した権利が持分ならその共有者)に通知または交付される情報または書類のことです。後の不動産の処分(売却、担保権の設定)をする際に、登記申請時に提供または添付し、審査時に、本人の実在性および当該登記を実行したことによって現登記名義人の登記を失うまたは現時点での所有権に対して登記上制限が加わることの意思を確認するために必要な情報として位置付けられています。

なぜ、登記識別情報通知を入手したのに、不可解なのか?

相談者は、「登記申請の依頼(委任)をした覚えはない。」とのこと。それにも関わらず、登記識別情報が、登記申請を代わって対応したと思われる司法書士事務所から送付されたとのことでした。なにが問題なのか、もう少し丁寧に事実関係と登記申請手続について見ていくことにしましょう。

事実関係

母親が亡くなり、相続手続きをしなければならない。

相続人について

亡くなられた母親の相続人は?、相談者以外に姉が一人いて、相続人全員で二人だけでした。二人とも年齢は75歳以上でした。

共同相続人間のやり取り

相談者宅に、姉から連絡があり、訪問したいとのこと、相談者も来訪する趣旨について薄々気がついていたので、受け入れることにしました。

来訪日当日に、何と、姉一人だけではなく、なぜが司法書士も同席したそうです。その司法書士の席の前のテーブルには戸籍謄本の書類の山が築かれ、請求書らしき金額の説明が記された書面を相談者に見せたそうです。そうして、相談者にとっては、内容がよくわからない書類に、署名をさせられたようです。

そのような態度も含め、あまりにも唐突な対応であり、相談者は驚き、話の内容(前提となる事実関係や事情)が相談者の想定していたこととはかけ離れていた内容であったため、姉と司法書士に対し、相談者宅から引き取ってほしい(退去の)旨を告げ、そのときは、物別れとなったようです。

なされてしまった登記そして登記識別情報通知の送付

そうして約一ヶ月ほど歳月が流れ、上記に記された「登記識別情報通知」が同封された書類が送付されたとのことでした。

登記申請手続の要件

登記申請手続を見ていきます。実のところ、相続を原因とした所有権移転登記申請手続ですが、大きく二つの事象が存在します。

遺産分割等が完了し、所有権の帰属が明確になった後にする相続登記申請

こちらの方が、想像できると思います。いくつか残された遺産のうち、不動産所有権の帰属をどちらの相続人とするのかを決定した上で、登記申請手続に挑んでいると考えることができます。ただし、この場合は、協議によりやはり法定相続分を反映された共有持分で持ち合うことで合意がされていない限り、相続人のどなたかが、当該不動産の権利を法定相続分よりも多く取得する事象となり、そのことを証拠づけるための書類に記名または署名および実印で押印、押印されている印鑑が実印であることを証拠づけるため、印鑑登録証明書を添付する必要があります。

自らの相続分保全のための相続登記申請

この謂わば保全のための相続登記申請と記しましたが、今回の事案のように相続人が複数存在する場合でも、相続人のうちの一人からでも、法定相続分に基づく登記申請はすることができ、そして受理されます。確かにこの方法でも、当該申請は受理され、登記簿にもその旨が登記簿に反映されるのですが、登記が完了したことに伴う、登記識別情報通知の送付または交付の対象者は、実は実際に委任状を代理人に提出した人物のみ申請行為に及んだ者のみに対して、登記識別情報は、通知または交付されます

申請行為に及ばなかった相続人には通知も交付もされない

反射効ということではありませんが、法定相続分に基づく登記を申請した場合、登記申請のため委任状を代理人に提出しなかった他の相続人、登記申請行為に及ばなかった相続人には、登記識別情報は、通知も交付もされません。すなわち保全のための法定相続分に基づく登記申請をした場合、登記識別情報を持っている相続人と持っていない相続人が存在することとなります。

そもそも問題点は?

さて事実関係と相続による登記申請手続きを見てきましたが、そもそも何が問題なのでしょうか。

対応した司法書士がとった行動について、相談者からの話と相談者宅に司法書士事務所から送付された登記識別情報通知からわかることは、相談者が委任する意思もないのに、なぜか委任状が作成され、登記申請行為に及んだことです。このことは、有印私文書偽造罪の罪に問うこととなりますし、考えようによっては、公正証書原本不実記載罪の罪に問われることにもなります。

事実関係と権利関係が合致していれば登記は問題ないのか?

事実関係および現状の権利関係ならびに登記に公示されている権利関係は、公示上は確かに反映されていると言えなくもないです。しかしながら、相談者は、登記申請手続の行為は及んでいないにも関わらず、委任状が作出されている事実は無視できないものであると考えます。

売買の事例での最高裁の判例から

随分古いものですが昭和35年1月11日の最高裁の判例があります。この判例は、司法書士試験でも取り上げられている有名な判例です。この問題点は、確かに当事者間で取引が行われ、所有権は、売主から買主に移転したにも関わらず、売主が登記申請に協力してくれず、買主が書類を偽造して登記申請し、登記がなされてしまった事案でした。この場合は、公正証書原本不実記載罪に該当します。

相続を原因としての登記の問題

さて、上記の売買の場合は、明らかに違法と言えるのですが、相続を原因とした所有権移転ではどうなのか?同列に扱って良いのかという問題はあるにはあります。以下、見ていきましょう。

  1. まず、共同相続人のうちの一人からする法定相続分に基づく登記は、先にも記したように、保存行為として認められます。
  2. 一方遺産分割等がなされ、不動産だけに限って見てみたとき、法定相続分とは違った権利関係となる遺産分割協議がされているにも関わらず、法定相続分の登記がされてしまった場合は、問題があると考えます。民法の規定には、「遺産の分割の効力は、相続開始時にさかのぼる。」とあり、故に、遺産分割によって単有になった権利関係を、相続があった日で「相続」でもって登記されることとなります。
  3. また、一旦は、法定相続登記をして、後日、遺産分割協議によって単有となった場合は、遺産分割協議が成立した日を掲げて、「年月日遺産分割」として登記申請することとなります。この場合、事実関係は如実に表れているのですが、実務的に申し上げると登録免許税の税負担が余計にかかってしまうため、法定相続分に基づく登記申請はすべきではなかったとも言えます。

登記簿上では、どの経緯を辿り相続登記がされたか判然としない。

これまで見てきたように、実は、登記簿上では、どのような経緯により相続による登記がされたのか、判然とはしません。そして、今般の民法改正により、このことに限らず、他の諸原因によって法定相続分よりも多く取得した持分について、対抗関係の整備がなされ、登記等の対抗要件を取得しなければ、第三者に対抗できないこととなりました。ただ危惧することは、法定相続分の登記は、権利の保全として重要な登記として認められる反面、そのことに乗じて、他の共同相続人により、勝手に持分を処分されてしまう可能性を誘発することとなりうるのではないかと感じます。

一方、法改正により、施行予定である相続人による登記の届出の活用がもしかしたら、不可抗力的に、明るい活用が期待されるようにも思われます。それは、取引に入る相続人ではない第三者が、届出登記を見て、まだ相続の手続きが終わっていないことを外観上知ることができ、その上で、法定相続分の登記があった際、背信的悪意者以外の第三者は対抗関係によって、持分取得の権利を確定的に主張sルことができることとなります。

一つの結論として

今回の相談者の言い分が事実であるとすると、対応した司法書士の本人確認について問題があるように思われます。一義的には、法定相続分に基づく登記がされただけであり、実害はないと考えられますが、他の共同相続人として相談者が容認している事実さえも存在せずに、署名してもらう書面の意味や趣旨について、丁寧な説明をせずに、ただ署名押印がされた書面だけでもって、登記申請に関する代理権について授権があったとは考えられず、いわば強引は委任契約があり、その委任による代理に基づいて登記申請を行ったことは、もはや正当性を主張する利用にもならないと考えます。

相続人の高齢化に伴う、注意喚起として

高齢社会となって、相続人も高齢になり、その意思表示について、本人の真意に基づいたものかどうか、いくつかの相談を受けていると本人確認がずさんな対応が見受けられる司法書士同業者が存在することも事実存在しています。

こうして記していると、もはや振り込め詐欺と同等に本人確認を受ける高齢者も意識を持った方が良いのではないかと思ったりしています。

自分の意思に基づかない登記がされてしまっていること、これは何も登記を失うことだけではなく、委任した覚えがない、自身のあずかり知らぬところで相続登記の申請人として登記申請がされてしまっていることももしかしたら、留意しなければいけないと思います。

千葉県北西部のとあるヒマワリ畑です

相続手続きを概要は当事務所webページでも紹介しております。是非ご参照ください。

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357
千葉県白井市冨士185番地の21

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事務所より 民事信託・遺言・後見・相続

年度が変わりました

こんにちは、年度が変わり、いろいろ変わっていることが多いものです。その変わったことに対応していかなくてなりません。

今回は、不動産登記申請について、留意すべき基本的なことを記します。

年度の前後、すなわち3月と4月で、留意しなくてはならないことは、不動産登記申請の対象となっている不動産の評価額のことです。

固定資産評価証明書の使用期限

この不動産の評価額ですが、評価替えの年度では、特に留意するものですが、そうでもない年度でも、やはり新しい年度の評価額が、登記申請時に必要な情報となります。前年度の評価証明書でもって、価格証明書として使用することはできないのです。

長期化した相続手続と評価証明書の年度に留意

また長期化している相続手続後の登記申請でも、特に留意が必要です。相続手続時点では、相続開始時の価格に焦点を当てますが、年度が変わるくらい歳月が経過した上で、遺産分割が成立していざ登記申請の段階で価格が変動していることがあり、当初予定していた登録免許税価格についても変動している可能性もあります。

何事も、しなけれがいけないことを早めに行うことが、よくよく考えてみると、積極的とまではいかなくても、メリットが大きいのかなと思います。

相続手続きの概要については、当事務所webページも記しています。ぜひをご覧ください。

相続手続きについて、相談を承ります。
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地上では桜が咲き乱れ、夜空は春を終わろうとしているそんな情景でした。
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事務所より 民事信託・遺言・後見・相続 法教育

相続登記の主登記,付記登記

こんにちは、今回は、不動産登記、特に相続登記の主登記と付記登記のことを記します。

なんだか、マニアックな題名だなと思いながら、投稿を記している段階では、適切な題名が浮かばないので、そのまま記しました。実は、相続のことと改正後の不動産登記の実務に大きく影響するので、おさらい・確認の意味を込めて、記そうと思います。

まずは条文を当たる

まず条文を当たります。引用元は、E-Gov からです。不動産登記法の第4条および第66条の規定です。

驚いたことに主登記と付記登記の定義は、第2条の定義規定の中にはありませんでした。そうすると、直接記載されている規定を当たったところ、以下の2か条にその記載があります。

詳しく見ていきましょう。まず第4条から

(権利の順位)
第四条 同一の不動産について登記した権利の順位は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記の前後による。
 付記登記(権利に関する登記のうち、既にされた権利に関する登記についてする登記であって、当該既にされた権利に関する登記を変更し、若しくは更正し、又は所有権以外の権利にあってはこれを移転し、若しくはこれを目的とする権利の保存等をするもので当該既にされた権利に関する登記と一体のものとして公示する必要があるものをいう。以下この項及び第六十六条において同じ。)の順位は主登記(付記登記の対象となる既にされた権利に関する登記をいう。以下この項において同じ。)の順位により、同一の主登記に係る付記登記の順位はその前後による。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123_20210428_503AC0000000024&keyword=不動産登記法

(権利の変更の登記又は更正の登記)
第六十六条 権利の変更の登記又は更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者(権利の変更の登記又は更正の登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)の承諾がある場合及び当該第三者がない場合に限り、付記登記によってすることができる。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123_20210428_503AC0000000024&keyword=不動産登記法

不動産登記法第4条をよく見てみる

どうやら第4条の第二項の括弧書きに、その記載がありますね。
以下は、その括弧書きを抜きだしてみたものです。

「権利に関する登記のうち、既にされた権利に関する登記についてする登記であって、当該既にされた権利に関する登記を変更し、若しくは更正し、又は所有権以外の権利にあってはこれを移転し、若しくはこれを目的とする権利の保存等をするもので当該既にされた権利に関する登記と一体のものとして公示する必要があるものをいう。以下(省略)。」

とあります。

まず、前提として権利に関する登記であること。

次に所有権に関する登記と所有権以外の権利に関する登記について、意義づけが分かれます。

所有権に関する登記について注目してみると、以下のことが読み取れます。

  1. 既にされた登記についてする登記
  2. 当該既にされた登記を変更し、もしくは更正する

ここで、留意しなければならないのは、条文には、謳っていませんが、権利の主体に完全な変更はないことです。例えば、「法務太郎」さんが不動産の所有者として登記されていたところ、結婚を機に、「民事太郎」さんに名前が変わったとしても、それは、「氏」苗字が変わっただけで、所有者が別人になったわけではなく、登記名義人の氏に変更があったので、その変更登記申請をすると付記登記がなされます。
 詳細は別の機会にしますが、権利の主体が完全に変わってしまう場合や先に引用した第66条の規定のとおり、登記上の利害関係を有する者からの承諾がなければ、更正・変更登記申請による付記登記はすることはできない事案もあるにはあります。

念のため、所有権以外の権利についても、その付記登記の運用の仕方を確認しておきます。もう一度第4条の規定をみて、括弧書きの、「又は」以下の記載の抜粋を以下に記します。

又は所有権以外の権利にあってはこれを移転し、若しくはこれを目的とする権利の保存等をするもので当該既にされた権利に関する登記と一体のものとして公示する必要があるものをいう。」

とあります。所有権以外の権利というとなんだかいっぱいありそうな気がしますが、実は9種類しかありません。それらの9種類の権利は、乙区に記載されるわけですが、その保存、設定された権利の登記について、権利の移転があった場合、その権利の上に設定したまたは保存した場合は、所有権に関する登記とは違い、付記登記によって公示されます。もちろん登記された所有権以外の権利に関する登記についても、変更・更正し一体として公示する必要があるものは、付記登記でなされます。

変更更正の登記について詳細を確認するなら、第66条もしっかり見なけければならないのですが、今回は、相続により所有権を取得した際の登記に関することを記そうとしているので、第66条の規定の解説は、別の機会にしたいと思います。

改めて不動産登記法第76条の3を見てみましょう

以上のことを踏まえて、不動産登記法第76条の3を見てみましょう。引用は、E-Govからです。

(相続人である旨の申出等)
第七十六条の三 前条第一項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
 前条第一項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第一項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。
 登記官は、第一項の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる。
 第一項の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前条第一項前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
 前項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、同項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
 第一項の規定による申出の手続及び第三項の規定による登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123_20240401_503AC0000000024&keyword=不動産登記法#Mp-Ch_4-Se_3-Ss_2

さて相続登記が義務化されたのですが、遺産の分割協議がまとまらず、立ち往生する事案も確かにあるにはあります。そうすると相続による共有状態が生じるわけですが、最終的に誰に帰属するのか判らないため、登記申請ができないという事態も生じます。
それでは登記申請をしなくて良いのかというと、それを認めてしまうと、元の木阿弥となってしまい、政策的に目指したにも関わらず法の抜け穴となりうるため、現在、その相続による共有状態が生じていて確定的ではないにしろ、その不動産(正確に言うと相続分に基づく持分)の権利を保有している人物が誰なのかを登記簿上把握させるための制度として、第76条の3が新設されました。申出をすると、登記官は同条第3項を根拠に「『付記する』ことができる。」とあります。

付記登記の意義づけを再確認する。

さて、ここで「付記」という言葉が出てきました。その内容は、第4条と類似します。ただ相続があったということは、権利義務を包括承継し、主体も相続人に移っているはずですが、後に遺産の分割により、第三者の権利を害さない程度に、相続の時まで効力が遡り、結果的に協議により不動産を取得(承継)した相続人が、相続によって取得し、その不動産の相続人となるわけです。換言すると「付記」のままでは、完全に権利の主体が変わったことを公示しておらず、相続によって権利を取得した登記をしたことにはならないのです。

さて冒頭に記した付記登記の仕組みを見た上で、法第76条の3を再度よく見ると、法第76条の3の規定に基づいた申し出をしたのちに、相続人間で協議がまとまったときから3年以内に相続の登記申請をしなくてはいけないことがよくわかると思います。

申出をしただけで、相続登記をする義務は、最終的に免れるか?

 ところで第76条の3第2項のみなし規定は、「第76条の2第1項の規定に基づく登記の申請する義務を履行したものとみなす。」とあります。この規定は、第76条の2第1項の登記を受けたいと考える相続人もいれば、そうでない相続人もいるかもしれません。
そもそも第76条の2第1項の登記は、単有もしくは一部の共同相続人で不動産を取得した相続人がする登記申請の義務を負うことを指すこともあれば、法定相続人全員が登記名義人として登記を受ける保存行為としての登記の性格の規定であるようにも見えます。ただし、後者の取り敢えず法定相続に基づく登記申請だけしておく場合でも、当該登記申請だけでは、その後、共同相続人全員で売却し、金員を受けるのか、それとも協議が整わず相続人間で紛争が生じている過程で、一共同相続人の権利を保全するために登記を受けたのか判然としないため、登録免許税は租特法の適用を受けることなく、本則で課税されます。
そうすると事案によって多少の違いはあるにせよ、一回で済ませられる登記を複数回に分けて行う登記申請手続である以上、登録免許税は結果的にほぼ同額となり得ますが、添付しなければならない書面の準備負担が大きく異なってきます。そのことを考慮に入れると安易に法定相続に基づく登記申請をすることを敬遠する事案もあると思います。

実体上、遺産分割協議が争っているため長期化している事案もある最中、法定相続に基づく相続登記は抵抗感を覚える事案もある

もっともその時点で相続により不動産を取得する相続人が確定していないにも関わらず、事情を知らない法務局では、法第76条の2第1項を根拠に過料の制裁の手続きせざるを得ない事態となります。そこで、この申出をすることにより、「申請する義務を履行したものとみなす。」の規定により、当該制裁を回避できると考えられます。後の通達等で解釈が明らかにされると思いますが、この規定の効果は、申出をしてもらえれば、過料の制裁から回避することを意味しているに過ぎないと考えられます。

昨今の市区町村の固定資産税課の対応を見ていて

相続手続きは千差万別ですが、登記申請を始め、相続手続きの経費は、抑えたいという心理が働くようです。そう考えてみると、早期にしなくても問題ないですよ、いつでもいいですよ、と言っていた某市区町村の固定資産税課の職員の言葉と、その言葉を聞いた相続人であろう来庁者の安堵した顔を私はよく覚えていますが、今時は、そのようなセリフは聞かなくなりました。現時点で、国土に換算すると、九州分の土地が、所在者が不明または誰と交渉して良いのか判らないくらいの広さまでになるそうです。

不動産登記法の改正の報道を見ていて

不動産登記の改正を受け、浮き足立つ報道機関、SNSで「それは誤解だ」と豪語する同業者等を見てきましたが、現場(法務局)でどれほど説明をしなければならないのか、これから骨が折れる作業がありそうだと思われます。もっとも今の社会は、冷静に細かく取り上げても、皆さん時間がないのでしょうね、しっかりご覧になってくれることはあまりないのかもしれませんし、丁寧に対応しようとすればするほど、煙たがられる傾向もあるようです。それほど慌てても、苦労することは落ち着いて取り組んでも同じですよと言いたいのですが、それだとだれも(法務局に)来てくれないと行政は考えたのかなと感じました。

いろいろ記しました。機会を設けて、もう少し整理して発信していこうと思います。

長文をご覧になっていただいてありがとうございました。

相続手続きについての概要は、当事務所ホームページをご覧ください。
なお、相談は随時受け付けております。
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梅の花です 青空の下は映えますね
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事務所より

廃止のようですが、「年金手帳」は大切に保管してください。

こんにちは

今度の4月1日でもって、年金手帳の新たな交付は、制度を廃止する関係で、なされないようです。代替手段として「基礎年金番号通知書」が、交付されます。もっともこの話は、新たに被保険者となった場合です。

既存の被保険者に対しては、改めて「基礎年金番号通知書」なるものは、制度が廃止となったとしても、原則交付はされないようです。

故に、不動産の登記申請に関して、本人確認書類として、既存の年金手帳も使うことがあります。廃棄せずに大切に保管されることをお勧めします。

不動産の登記に関する相談を承ります
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公園にて、梅が綺麗に咲いてました。
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事務所より 法教育

正本と謄本のこと

こんにちは

今回は、少しだけアカデミックなことを記したいと思います。

不動産登記手続きのうち、判決による登記という方法があります。

その「判決による登記」申請をする場合、登記の原因を証明する書面は判決書に他ならないのですが、この判決書は「正本」でなくてはならないと、実務では取り扱われています。

確かにそうだろうと思うのですが、それでは「謄本」というものの役割は何なのだろうか。ふと疑問に思いました。

そこで、学陽書房から出版されている法令用語辞典を参照すると、両方とも掲載されているので、確認する意味で紹介したいと思います。

正本

1)謄本の一種であって、法令の規定に基づき、権限のある者によって、特に正本として作成されるものをいう。「正本」は法令の規定により原本を一定の場所に保存することを要する文書について、その効力を他の場所で発揮させる必要がある場合に、原本と同一の効力を有するものとして作成される。例えば(以下省略)

学陽書房 法令用語辞典 より

一方、謄本について同じ書籍で、確認しました。以下に引用します。

謄本

 文書の「原本」に対する用語であって、原本と同一の文字、符号を用いて原本の内容を完全に写し取った書面をいう。(途中省略)「謄本」のうち、裁判所書記官、市町村長、公証人その他権限ある機関が原本の内容と同一である旨の認証をしたものは、法律の規定によって、「原本」又は「正本」と同様に取り扱われることがある(以下省略)。

学陽書房 法令用語辞典 より

それでは、不動産登記の関係法令を確認すると、不動産登記令第7条第一項第5号ロ(1)にあります。以下にe-Govより引用したものを示します。

 登記原因を証する情報。ただし、次の(1)…に掲げる場合にあっては当該(1)…に定めるものに限るものとし、別表の登記欄に掲げる登記を申請する場合(次の(1)…に掲げる場合を除く。)にあっては同表の添付情報欄に規定するところによる。
(1) 法第六十三条第一項に規定する確定判決による登記を申請するとき 執行力のある確定判決の判決書の正本(執行力のある確定判決と同一の効力を有するものの正本を含む。以下同じ。)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416CO0000000379

不動産登記令第7条第一項第5号ロ(1)の括弧書きをみても、「正本」と記されています。そうすると法令によって「正本」と記されている以上、「正本」が原則であることがよくわかります。

このこと、何故に記したのか、実のところ家庭裁判所の書記官でさえも、あまりよくわかっていらっしゃらないことがあるようです。

家事事件手続法で、調停が終結した際に、当然にその終結したことを証明する書面が交付されるのかというと、実は仕組み上、そうはなってはおらず、改めて申請によって交付を受けなければなりません。

その際に、正本の交付申請をしたにも関わらず、謄本が交付されたという事案があり、その際に担当書記官から「謄本じゃダメなんですか?」という問い合わせがありました。
もしかしたら、ご理解されていないのかなという、懸念を抱きましたが、書面の交付という事務作業なので、裁判事務手続とは、また違った扱いなので、そのようなご発言だっだろうと思います。

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