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会社設立 定款の確認

こんにちは、今回は、株式会社設立における定款の記載事項の確認を解説します。以下、私見も入りますので、ご了承ください。

定款とは?

唐突な見出しですが、「定款とは、会社における根本規則のこと」です。会社がどうあるべきか、そのあり方を記したものと言っても良いものです。成立後、歳月が流れ、何らかしらの手続きで、定款が必要となることがあり、保存場所を失念してしまった等がありうるのですが、ここでいう定款とは観念的なもので、紙面上の定款を指しているわけではないのですが、経営者の皆さんが、当時決めて今日も継続している事項を、全て一字一句を覚えているはずもないので、やはり紙や電子データで表現された定款は、大事なものであることがわかります。

定款の絶対的記載事項

ところで、定款には、絶対に記さなければならない事項があります。これを定款の絶対的記載事項と言います。会社法の条文から直接記されているのは、第27条です。

  1. 目的
  2. 商号
  3. 本店の所在地
  4. 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
  5. 発起人の氏名又は名称及び住所

 それ以外に、この事項は公証人の認証を受けた後でも良いのですが、発行可能株式総数を定めなければなりません。

設立時に大事なことから順番に投稿しています

 これまで、出資のこと、発起人のことを強調して書きましたが、設立の段階で、その手続と出資について、発起人が大きく関与するため、あえてこのような順番で記してきました。

 「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額の記載」および「発起人の氏名又は名称及び住所」について、発起人が複数になった際の利害関係、また成立後における会社と利害関係者(株主、債権者(取引先はもとより、従業員もこの類に含まれます)、会社役員等(取締役、監査役など))との調整が必要であるため、定款に記されたとおりの資本等がなければ、企業活動に大きな支障を来すことになります。このようなことがないように、設立の段階で定款に記させるのは、このためです。

 上記事項以外にも、実は定款に記さなければならない事項は、多く存在するのですが、随時紹介できればと思っています。

 次回は、目的以下について記したいと思います。

当時撮影した松葉牡丹でした

補足解説

会社法になってから、絶対的記載事項は上記のとおりとなりました。

公告の方法

旧商法時代は、株主は不特定多数の構成されることが前提でしたので、遠方の株主や利害関係人にしっかり知らせることも相まってなのでしょう、「公告の方法」が入っていました。歳月が流れ、会社法を制定する際に、定款で、特に定めなかった場合は、「官報による公告」とすると明文化されたことに伴い、絶対的記載事項から外れることとなりました。

発行可能株式の総数

こちらも、上記に記したとおり、現会社法では、定款の認証前段階では、記載は任意です。なぜなら、資金調達を柔軟にするために、定款の認証段階では、記載しなくても良いとされました。そうすることにより、一株単価の設定と何株を発行し、授権枠をどう設定するのかを柔軟に計画することができるからです。もちろん会社設立の出資の履行前には、しっかり決まっていることが必要です。

回想

この定款の記載事項は、本当に奥が深く、いろいろ調べることが必要だなと当時、思いました。実務では単に覚えておくだけでは足らず、どうしてその条項が必要なのかを説明できるように準備しておかなければいけないと感じました。

小規模な会社の定款の記載事項の対応(成立後も含)

今、振り返ってみると、小規模の会社、特に一人株主取締役の株式会社では、シンプルな定款が好ましいと感じます。株主が複数になったり、役員を増員する少し前の段階で、定款の記載事項を見直した方が、経営者としても各条項を、せめて概略だけでも認識すると感じます。

上記ブログ記事は、題目内容を加筆修正し、2022年4月28日、本ブログに移植しました。

会社設立の概要は、当事務所Webページをご参照ください。

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司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357

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会社設立 出資の手段(5)

遅くなりました、前投稿からの続きですが、「会社設立 出資の手段(5)」として記します。

(前号の続きより) こうして、定款に記された変態設立事項について、原則裁判所に検査役を申し立てて、調査をしてもらわなければならないのですが、一定の場合に、その検査役の調査が不要であるというのが以前、「会社設立 出資の手段(2)」に記したことです。

 会社を立ち上げたいけれど、元入れの資金についてどうすべきか、金銭出資が一番スムーズだが、今現在個人で事業をしているが今後法人なりしたときに、機械工具備品も会社事業で生かしたいと、悩んでいらっしゃる方は、ぜひ参考にしていただけましたら、幸いです。

次回以降で、会社設立手続の続きを記したいと思います。

珍しい形のトマトが手に入ったので撮影しました

当時の内容を加筆修正して、旧ブログ「時報」より、2022年4月27日に、移植しました。

補足

以前の投稿にも出てきた変態設立事項ですが、現物出資のこと、財産引き受けのことは、先の投稿で見てきましたが、残りの二つを解説します。実務では、中小規模の会社の設立ではまず定款に記載しない事項と言えますが、法令に記載されていることなので、念のため触れます。

再度、会社法第28条を確認

会社法第28条第1項第3号および第4号を確認します。まず第3号です

発起人の報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086_20210301_501AC0000000070&keyword=会社法#Mp-At_28
より抜粋

とあります。先の投稿にも、記しましたが、発起人は、会社が成立すると、株主となります。しかし、当然には役員となるわけではありません。発起人が一人、設立時取締役も同一人物で一人であるならば、最低限の記載事項のみで、設立手続きに挑むことはよくあります。

複数の発起人がいる場合は特に留意

発起人が複数いて、設立前から緊張した関係があり、第3号のような事項を定めた場合、会社が成立した途端、会社は、その元発起人たる株主に対して、債務を追うこととなります。しかも定款作成時に発起人らが決めているので、いわばお手盛りに近いことが、設立過程で行われ、会社として事業を開始するや否や財産が減少し、会社に対する債権者らへの責任財産が確保できないこととなります。故に、手続きを慎重に行う必要があるため、検査役の調査が必要になるのです。

第4号について

続けて第4号をみてみましょう。

株式会社の負担する設立に関する費用(定款の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086_20210301_501AC0000000070&keyword=会社法#Mp-At_28

より抜粋

とあり、会社の設立段階では、発起人らが民法上の組合に準じて、設立に関する費用を立て替えていることとなります。そう考えると、成立後、会社は、費用を立て替えた発起人にその立替金を支払わなければならない義務を負います。そうすると第3号の場合と似たようなことが考えられ、原則検査薬の調査が必要ということになります。

どの会社設立でも想定される設立費用は、検査役の調査は不要

もっとも会社設立時に、当然に発生する費用である「定款の作成認証手数料」、登記申請手続に必要となる「登録免許税の納付」「『代理による申請』で対応した司法書士報酬等」は、大方、見積もれますので、カッコ書きで除かれています。それ以外にかかる設立費用の負担で問題になったことはないことはないですが、いずれにしても、成立後、立ち往生をしないようにしたいものです。

回想

当時、このブログ記事は、文面が短く、また投稿の間隔も長かったと、見返して感じました。当時は、資格試験受験予備校講師業も兼業していたため、準備に追われ、なかなか記せなかったような気がします。設立するための要件が、会社法になって、随分緩和されたという印象を持ちました。私が、司法書士試験受験生だった頃は、会社法という文言は、聞こえてくることはありましたが、法令の公布、施行前に、試験に合格しました。そして資格試験受験予備校で、教鞭をとることとなったわけですが、やはり勉強をし直すような感じで取り組んでいたことをよく覚えています。

株式会社の設立について、当事務所ブログでも概要を示しています。ぜひ、ご覧ください。

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会社設立 出資の手段(4)

こんにちは、前回の「会社設立 出資の手段(3)」の続きです。

変態設立事項のこと

 会社法第28条ですが、実は変態設立事項と呼ばれています。何がどう変態(態様が通常と違うという意味)なのかは、後ほど記します。それよりも、まず大事なことを記します。

会社法第28条の抜粋

 (中略)定款に記載し、または記録しなければ、その効力を生じない。

  1. 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(今回は種類株式の説明については省略します。詳細は会社法第28条1号で確認してください。)
  2. …成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
  3. (以下、省略)

定款の相対的記載事項

 上記のことは、必ず、定款に記さなければなりません。記さなければ、効力は生じないと解されています。前回の投稿記事でも触れましたが、このことを定款の相対的記載事項と呼ばれています。

会社を構成する財産に注目した第1号および第2号

 ここに掲げた事項のうち、第1号の現物出資、第2号の財産引受は、成立後の会社にとって、基本的に資本に影響しますが、発起人が決めた価格について、時価を調べたら、実は著しく価値が低くいことも考えられます。そうすると、成立後、実際のところ会社は、財産を持っていないことと同じことになります。

株主と債権者が会社に対して、関心を寄せる事項は?

 債権者や株主は、最終的に会社が持ちうる積極的財産を引き当てにして、取引や株式の引受をすることも考えられます。現物出資や財産引受の引き当てとなる財産にその価値が著しく低い場合、担保することができないと考えられるわけです。

 以上のことから、現物出資財産や財産引受は、誰からの出資や譲り受けを受けるのかを明確に記し、後の紛争になることを未然に防ぐために定款に記すことが必要となるわけです。

(次号に続く)

ブログ投稿当時の月島の商店街(だった)と思います

本ブログには、2022年4月25日に、内容を加筆修正して、旧ブログ「時報」より、移植しました。

回想

さて、株式会社の設立時の現物出資は、要望があればしっかり検討する事案です。実務上の経験で、現物出資は、過去に何回か、ご希望されるお客様がいらっしゃいました。いずれも総額500万円を超えず、検査役の証明も弁護士等の証明も不要な事案でした。それでも設立時の計算書類および税務申告のことを考えると、大丈夫だろうか、と老婆心ながら思うこともあります。

財産の価格決定は簡単ではない

たしかに、あまりにもかけ離れた財産価値をおっしゃるようであれば、せめて、これまで事業で活用していらっしゃるのであれば、そのときの償却資産の減価償却の計算書で再検討してもらうなど、助言することとしています。

補足

さてここでは、「財産引受」を補足します。ごく稀に話が浮上することもあれば、まったくそのような発想をお持ちでない方が大多数です。なぜなら、財産の引き渡す義務履行は、会社成立後となります。

せっかく成立直後、あてにしてた引き受けた財産が取得できないことも考えられ、制度としては存在しますが、中小規模の会社設立での活用は、皆無だと言っても良いと思います。しかも、検査役の調査が必須となり、せっかく安価に会社を設立させようとしたところ、裁判所の介入が間接的に必要となり、返って設立費用が嵩んでしまうこととなります。

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会社設立 出資の手段 (3)

先のブログ投稿で、現物出資について3つの方法を用いるにしても、それに先立って、これらの事項を定款に記さなければならないことは、記しました。今回は、このことを詳しく記します。

定款の相対的記載事項

 このことは実は、会社法第28条にあります。
 (中略)定款に記載し、または記録しなければ、その効力を生じない。
1.金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(今回は種類株式の説明については省略します。詳細は会社法第28条1号で確認してください。)

 ついでながら会社法第28条は次のことも規定しています。(第2号から)

2.株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
3.株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
4.株式会社の負担する設立に関する費用(定款の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)

 上記は、必ず定款に記さなければなりません。記さなければ、効力は生じないと解されています。
 なぜそうなのかは、次回に記したいと思います。

当時撮影したマツバボタンでした

補足

さて、設立時の現物出資は、定款にその旨を記載しなくてはなりません。後の投稿でも触れますが、定款に記載しなければ、効力が生じない事項のことを相対的記載事項と読んでいます。設立時の現物出資は、発起人のみに許され、定款に記載がなければ、当該現物出資行為として認められないこととなります。

定款作成および認証並びに出資の時期

実務では、出資の時期が気になるところです。金銭出資とは違うので、あまり良いことでもありませんが、とにかく引き渡しを急ぐのであれば、引き渡しと同時に占有改定により所有は発起人に留めておき、定款認証後、簡易の引渡しもしくは占有改定を解いて、発起人組合(会社はまだ成立していないため、発起人で構成される組合に準じた社団が所有することとなる。)所有権の移転することで、問題ないと思います。気難しい話かもしれませんが、事業のための使用開始が会社成立前だと、税務上の取り扱いをどう解釈するのかは、判然としなくなるように思います。

金銭出資では、勇足になることも

実務では、金銭出資の履行の時期は、書類が一つ増えてしまうか、より簡易に済むのか、出資の履行と定款認証の前後によって、大きく異なります。

預金口座ごと現物出資の履行として対応できるか

今日では、発起人の個人の口座を出資の履行のための口座として利用することで、良い簡易に手続きで済ませられるわけですが、預金口座ごと出資を履行することは、事実上の債権譲渡と同じです。大抵の預金口座は、預金払い戻し債権を譲渡することが契約上禁止されているため、事実上認められません。

定款作成・認証前の出資の履行

では、定款の作成・公証人による認証前に、出資の履行をしてしまった場合は、どうなるのでしょうか?

最終的に法務局による書類による審査の段階で、そのタイミングの金銭の入金が、本当に出資のための入金だったのか、それとも別件として入金された事実なのか判然とはしません。

作成する書類が一つだけではなくなる

すなわち 、預金通帳の写しを添付した証明書一通だけでは、出資の履行があったことを証明する書類が足りないこととなります。もし、定款の作成認証前に出資の履行をしてしまった場合、発起人の全員の同意書を作成し、出資の履行を証明する一部の書類として添付することとなります。

回想

当時、伝えたいことがあまりにも多く、返って内容が希薄化していたり、焦点が逸れてしまっていたのかもしれないと、歳月が流れてから見返すとよく気がつくものです。

移植作業を進めるとともに、当時、記したかったことを補足しよと思います。

先の内容は、旧ブログ「時報」より、内容を再構成し、2022年4月24日に、本ブログに移植しました。

会社設立の概要について、当事務所Webでも紹介しております。

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会社設立 出資の手段(2)

 先のブログより、会社設立時は、発起人である場合は、金銭で出資に限らず、他の財産も、現物出資の対象にできることを記しました。

現物出資財産の価格の認定

では、具体的にどのような財産を現物出資の対象とできるかですが、事業に関連性のある財産が望ましいのですが、売買目的有価証券も認められています。

現物出資財産の価値を証明する人は?

ところで、現物出資財産の財産的価値の証明は、設立時取締役が行うのですが、利害関係をもつ者にとって、出資者その人が自己証明に過ぎない懸念があります。

しかしながら、会社法は次のような場合に、裁判所が選任した検査役の調査は不要としています。以下、確認してみましょう。

検査役の調査が不要な場合の現物出資財産

  1. 現物出資財産の総額(発起人らが持ち寄った現物出資財産の全ての価額)が500万円を超えない場合
  2. 市場価格のある有価証券の価額が法務省令(会社法施行規則第6条)で定める算定されるものを超えない場合
  3. 出資財産について、弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士税理士法人の証明を受けた場合

そうすると、これら3つのどれかに当てはまれば、裁判所に検査役の申立て、検査役の調査をすることなく、認められます。但し。個々に注意すべき点はあります。

 そして、何よりもこれら3つの方法を用いるにしても、大事なことがあります。実は現物出資をするに先立って、これらの事項を定款に記さなければなりません。このことは次号で詳しく照会したいと思います。

当時撮影したカフェラテでした

上記記事は、旧ブログ「時報」の投稿記事の内容を再構成し、本ブログに、2022年4月22日に移植しました。

回想

さて、当時のブログ記事の作成について、とにかく勢いがあったと感じます。見返して再構成する必要が、多いにしてあったと思います。当時よりは、読みやすい構成になったと思っています。

補足

ところで、検査役の不要な場合の現物出資ですが、実務では、やはり大丈夫だろうか?と少し不安がよぎります。

もっとも根拠もなく価格を計上するのは論外ですが、これまで個人事業で使ってきた「機械工具備品」や「土地」「建物」は、個人の税務申告や固定資産の評価額で、一応客観的な価格があると言えばあります。設立時は、第三者からの具体的な検証はあまりないのですが、成立後、第三者(税務当局を含む)から根拠を求められたときに、耐えうるだけの準備はして頂きたいものです。

会社設立の概要について、当事務所Webページでも、ご紹介しています。ご参照ください。

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