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会社設立 出資の手段(4)

こんにちは、前回の「会社設立 出資の手段(3)」の続きです。

変態設立事項のこと

 会社法第28条ですが、実は変態設立事項と呼ばれています。何がどう変態(態様が通常と違うという意味)なのかは、後ほど記します。それよりも、まず大事なことを記します。

会社法第28条の抜粋

 (中略)定款に記載し、または記録しなければ、その効力を生じない。

  1. 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(今回は種類株式の説明については省略します。詳細は会社法第28条1号で確認してください。)
  2. …成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
  3. (以下、省略)

定款の相対的記載事項

 上記のことは、必ず、定款に記さなければなりません。記さなければ、効力は生じないと解されています。前回の投稿記事でも触れましたが、このことを定款の相対的記載事項と呼ばれています。

会社を構成する財産に注目した第1号および第2号

 ここに掲げた事項のうち、第1号の現物出資、第2号の財産引受は、成立後の会社にとって、基本的に資本に影響しますが、発起人が決めた価格について、時価を調べたら、実は著しく価値が低くいことも考えられます。そうすると、成立後、実際のところ会社は、財産を持っていないことと同じことになります。

株主と債権者が会社に対して、関心を寄せる事項は?

 債権者や株主は、最終的に会社が持ちうる積極的財産を引き当てにして、取引や株式の引受をすることも考えられます。現物出資や財産引受の引き当てとなる財産にその価値が著しく低い場合、担保することができないと考えられるわけです。

 以上のことから、現物出資財産や財産引受は、誰からの出資や譲り受けを受けるのかを明確に記し、後の紛争になることを未然に防ぐために定款に記すことが必要となるわけです。

(次号に続く)

ブログ投稿当時の月島の商店街(だった)と思います

本ブログには、2022年4月25日に、内容を加筆修正して、旧ブログ「時報」より、移植しました。

回想

さて、株式会社の設立時の現物出資は、要望があればしっかり検討する事案です。実務上の経験で、現物出資は、過去に何回か、ご希望されるお客様がいらっしゃいました。いずれも総額500万円を超えず、検査役の証明も弁護士等の証明も不要な事案でした。それでも設立時の計算書類および税務申告のことを考えると、大丈夫だろうか、と老婆心ながら思うこともあります。

財産の価格決定は簡単ではない

たしかに、あまりにもかけ離れた財産価値をおっしゃるようであれば、せめて、これまで事業で活用していらっしゃるのであれば、そのときの償却資産の減価償却の計算書で再検討してもらうなど、助言することとしています。

補足

さてここでは、「財産引受」を補足します。ごく稀に話が浮上することもあれば、まったくそのような発想をお持ちでない方が大多数です。なぜなら、財産の引き渡す義務履行は、会社成立後となります。

せっかく成立直後、あてにしてた引き受けた財産が取得できないことも考えられ、制度としては存在しますが、中小規模の会社設立での活用は、皆無だと言っても良いと思います。しかも、検査役の調査が必須となり、せっかく安価に会社を設立させようとしたところ、裁判所の介入が間接的に必要となり、返って設立費用が嵩んでしまうこととなります。

会社・法人の設立の概要は、当事務所Webページでも、紹介しています。ぜひ、ご覧ください。

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