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株主にはどのような権利があるのでしょうか(その3)

こんにちは 7月に入り 昨日はうるう秒がありましたが いかがお過ごしでしょうか?さて今回は 株主総会の招集について記しています。

今回は、判例で認められている事案を見て行きたいと思います

一つ目は、招集通知は無かったが「株主が全員が同意して出席した」場合は、株主総会として成立します。もっとも括弧書きの中に記した様に、株主の「全員が同意して出席」していなければなりません。

二つ目は、いわゆる一人会社(取締役及び株主が同一人物である会社)は、その株主が出席すれば、招集の手続が無くても、株主総会は成立します。

単に定足数を満たして集まって話し合えばよいだけのように もしかしたら思われるかもしれませんが、全員の株主に総会を開催することを招集を知らしめなければなりません。

しかしながら、一つ目の「株主の全員が同意し、出席した」とすると、確かに招集の方法に問題があるかもしれませんが、一部の株主に対する不利益が生じることは考えられません。二つ目の一人会社の場合は、唯一の株主であり唯一の取締役であるので、株主総会の招集手続の形式が調っていなかったところで、株主は一人であり、他の株主の存在はあり得ないことであるので、問題となることはありません。

前回の投稿から、株主総会の招集に関することを記していますが、株主総会を招集することができる者(招集権者)や招集権者が権利を行使するための取締役会の決議または取締役の過半数の一致は、株主総会を招集する重要な権限を持っていると過言ではありません。そして招集するに至る適切な手段が伴っていなければ、総会として適法に成立しているとは言えず、たとえ何かを話しあったとしても、総会が無効である以上、その話し合いは、単に一部の株主同士で話し合った程度のものとしか取り扱うことしかできません。

もしも、招集権者が不存在となってしまった場合の総会を開催する方法については、次回の投稿で記したいと思います。

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株主にはどのような権利があるのでしょうか(その2)

こんにちは 6月が今日で最後 上場企業の株主総会についても3月末に決算期を置いている会社は、大方終了しているはずですね

さて 前回の株主提案権のことですが、一点だけ補足します。前回のとおり、提案権を行使できる株主でも、提案ができない場合があります。それは…、

「実質的に同一の議案につき株主総会において総株主(議決権制限株式の株主を除く)の議決権の十分の一以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合」です。

「議決権の十分の一以上…」のとありますが、定款で下回らせる割合を定めることもできますが、基本的には、引き下げられていないことが多いです。ただ会社側から事案を総会に提出し、採決を諮ることはできます。
補足の補足ですが、法令・定款に違反する場合は、議論する余地もないはずですので、会社法には、丁寧に規定されていますが、当然のことと言えるでしょう。

さて前回は一定の事項を総会の目的とする「株主提案権」のことを記したのですが、今回は、株主による「株主総会を招集する権利」が、「総株主の議決権の百分の三以上の議決権を六箇月前から引き続き有する株主」には認められています。

また公開会社では無い会社は、「六箇月前から引き続き有する」要件を満たさなくても、議決権の百分の三以上の要件を満たしていれば、請求することができます。

ただこの段階では、自らが、総会を開催することができるという訳ではなく、あくまで取締役会に対して請求することができるまでに留まります。

さらに、次の場合には、裁判所の許可を得ることによって、総会を招集することができます。

  • 招集の請求の後遅滞なく招集の手続がおこなわれない場合
  • 招集の請求があった日から8週間以内の日を株主総会とする株主総会の招集の通知が発せられない場合

です。いずれも裁判所に対して、行動して行かなければなりません。一つ目の遅滞無くということの要件を満たしていない場合の事実をどう裁判所に知らしめるのか、難しいでしょう。また招集通知が発せられない場合は、請求したことの事実と通知が発せられない事実を裁判所に知らしめれば、事実認定上、許可が得られやすいと考えます。

以上が会社法上の規定に基づく招集の請求に関することです。次回以降に、判例によって認められている収集手続が無くても認められる場合について、記したいと思います

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株主にはどのような権利があるのでしょうか?(その1)

さて 株主 どのようなイメージをお持ちでしょうか?

株主というと どうしても上場企業の株主を指し 言わば投資という観点からのイメージも持たれる方が多いのでしょうか?

せっかくですので 取り上げてみようと思います

株主には、基本的に2つの権利があると言われています。

一つが「自益権」です。この自益権とは、自らが受ける権利のことであり、いわゆる剰余金の配当を受ける権利や売却したことによる対価等の権利のことを言います。

もう一つが「共益権」と言われるものです。この共益権は、株主総会において、議決権の行使することができる権利が代表的です。議決権を行使した効果は、その一株主のみならず、会社に対しても影響をあたえます。

自益権は、やはり、配当や売却に伴う対価の取得のイメージが強いので、上場企業の株式投資のイメージが強いのかもしれませんが、もちろん業績が良くて、純資産が金300万円が確保できるのでれば、中小企業でも、剰余金の配当を株主に付与することは可能です。もっとも、上場企業と違うところは、業務執行を担っている役員と株主が一致しているケースが多く、一時的に配当として剰余金から付与するとなると、税金のことがもたげてきてしまうため、もしかしたらあまりなじみが無いかもしれませんし、お抱えの税理士先生から、時間をかけて役員給与として貰った方が節税効果が得られるというアドバイスを受けているのかもしれません。

共益権についてですが、先に説明した株主総会での議決権の行使がもっとも典型的ですが、まだあります。もっとも株主なら誰でも認められる権利と一定の株式を保有していないと行使できない権利も存在します。
一つは、株主総会に対して議案を提案する権利があります。株主提案権は、各会社の態様によって、要件が変わってきます。
まず、典型的な上場企業のように取締役会が存在し、株式の譲渡が自由にできる会社の場合は、「総株主の議決権の百分の一以上の議決権又は三百個以上の議決権を六箇月前から引き続き有する株主(定款で要件を緩和されていれば、定款の定めに従います。)。」に限り認められています。一方、株式の譲渡による取得について制限をしている取締役会がある中小企業の場合は、六箇月の保有要件がありません。
続きはまたの機会にしたいと思います。

上場企業の株主総会が集中していますし、新聞、テレビのニュース、Webでもいろいろ話題にあがっていると思いますが、興味を持って頂けたらと思います。

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陸橋からの夕焼け

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事務所より

ニュースのwebサイトを拝見して… 千葉の有料道路(7路線) 7月から9月まで無料開放するそうです

こんにちは

少し 時間が取れましたので webでニュースを見ていたところ 7月から9月までですが、「千葉県有料道路7路線を無料開放 7月から観光キャンペーン」が始まるようです。九十九里有料道路(通称波乗り道路)も対象の様です。

観光キャンペーンと謳っていますが、観光目的に限らず、通勤や通学も含めて全車両を無料とするようです

良ければ この夏に 房総に遊びにきて頂ければと思います

以下にリンクを貼っておきます

産経ニュースのwebサイト:千葉県有料道路7路線を無料開放 7月から観光キャンペーン

「千葉県道路公社」のwebページへ

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民事信託・遺言・後見・相続

相続の対象となっている賃貸物件の賃料の扱いについて

こんにちは

今回は 相続財産と言っても遺産の分割手続なしで、法定相続分に基づいて、その財産を取得できるかどうかという観点で 賃料の場合はどうだったか? 確認してみたいと思います

最高裁(最判平17・9・8民集59-7-1931)の判例より、(ここでは、要旨を記します。)

「相続開始から遺産分割までの間に遺産である不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産であり、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、その帰属は後にされた遺産分割の影響を受けない。」

とあり、この判例によると、相続開始から遺産の分割までに生じた賃料債権は、相続人が個別に、法定相続分に応じて賃借人に賃料を請求することができ、後の遺産の分割によって、その不動産が共同相続人の一人に帰属したとしても、期発生の賃料請求権について、原則、その遺産の分割の効果は相続開始時まで遡及しないと解することができます。

上記の判例から判ることは、賃料は、相続開始から遺産分割までの間は、法定相続分に基づいて、各相続人が請求できることの可分債権であること。言わば、銀行の預金債権と扱いは同じなのです。

ところで、賃借人は、どう振る舞えば良いのでしょうか。幾つか考えられますが、一番気をつけなければならないこと、それは、「不動産を相続した相続人が確定するまで、支払わなくてもよいことには決してなりません。当初の契約のとおりに支払う必要があります。」です。また上記の判例によると、一部の相続人に賃料を全額払えばそれで済みません。問題は、そう単純ではないようです。

賃借人は、共同相続人の誰に支払うべきか、上記の判例によると、相続開始から遺産分割が成立するまでは、各共同相続人に対し、法定相続分に応じて支払えば良い、と判り安直に手続ができそうに思えますが、そうも行きません。なぜなら相続を証明する書面を全て見なければ、どの共同相続人がどれくらいの相続分があるか、わからないからです。
もっとも賃借人は、債権者ではなく債務者であり、相手方債権者の都合について、その相続人を過不足無く調査することは、賃借人にとって過度な負担であると考えられます。

そこで、賃料を国に預けてしまい、その月の賃料の支払いの義務を果たしたとする制度、供託手続を利用します。

賃貸(地主・家主)人の相続人側からする手続としては、上記の判例のとおり、直接賃借人にその法定相続分に基づいて、請求することはできますが、相続を証明する書面を準備する必要があると考えます。単に契約書だけ持って賃借人に請求したとしても、相続人・法定相続分がはっきりしなければ、賃料請求権たる権利を持っているかどうかわからないからです。もしも、賃借人が既に賃料を供託していた場合は、その供託金の還付を受ける手続を受けなければなりません。

補足ですが、銀行の預貯金債権との違いは、賃貸借が継続中ならば、賃料の支払も継続し、(銀行の預貯金の払出請求権の債務は)取立債務とは違って、賃借人は原則賃貸人の住所地にて賃料を支払う持参債務として(もしくは指定した支払い方法ならばその方法によって)支払っていたのであり、相続が開始したことに伴い、相手方がはっきりするまで、賃料の支払いの度に供託し続けなければならないこととなります。

と相続する財産は、当然に分かれているのかそうでないのか、時折、注意しなければならないことなのですが、行動に移す前に、少し立ち止まって考えてみると、事故は、生じないと考えます。

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