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事務所より

素直には喜べません

 ファイル交換ソフト「ウィニー」の控訴審判決で、無罪が言い渡されたようですね。気になる事は開発者の視点のみで判断されたとことです。ならば、社会的にそのソフトを利用する側のモラルを問わなければならないと感じました。
 技術の革新ならばどんどん追求してよい。悪用するかは、使用者のモラルの問題だというならば、それまでかもしれないですが、日本人の著作物に対する意識は低いと思っています(もっともこのブログを読んでいらっしゃる方は、問題ない方々ばかりだと思っていますが)。
 とある半導体関連企業で、ソフトウェアの不正使用を問題視した社員から聞いた話ですが、不正使用を啓蒙していた社員の上司が「業務上、どうしても利用しなければならないので、インストールディスクを貸してほしい」と言ったところ、その部下は「このソフトウェアのライセンスは1つだけですから、私が使用しているし、ディスクを渡す事はできない」と返事をしました。そしてその上司は「いい加減にしろ!!!」と言って無理矢理ディスクを取り上げ、インストールをされてしまったようです。結局ソフトウェア不正使用を平気でやられてしまったというお粗末な話だったのです。
 日本の中堅の企業内でもこんな有様ですから、大手ソフトウェア会社とファイル交換ソフトウェアを開発する企業で、倫理的な話から、 ソフトウェアのライセンスの管理について、不正使用ができない仕様を話し合う必要があるのかもしれません。
 話が若干それたような気がするかもしれませんが、不正使用をもくろむならば、ファイル交換ソフトを巧みに使ってライセンス契約を逸脱する事も、至って簡単にできる様に思われます。
 また情報漏洩に対するリスクを促すメッセージを起動時に表示させ、「情報漏洩があった場合は、当ソフトウェア会社は、責任を負いません」等の免責事項を大きな表示で盛り込む必要があると感じます。もっともそれにしたって情報が漏洩しないソフトウェアの仕様を検討しなければならないと思います。
 無罪判決を受けた被告人は、自身のことしか考えていないと思われます。各紙に記されているコメントは、「萎縮してしまった開発者のために無罪判決を勝ち取った」と捉えられてもおかしくないコメントが記されています。ではそのソフトウェアの使用者・利用者の視点ではどうなのか、社会に対する影響は、プラスに働くのか、マイナスに働くのかをもっと考えなければならないと感じます。
 そして立法担当者は、この判決を踏まえ、ソフトウェアを流通させる段階で、何らかしらの(消極目的規制的に)法規制を置く必要があるのではないかと感じます。

イタリア ミラノにて

上記記事は、旧ブログ「時報」より、2022年6月22日に、本ブログに移植しました。なお、本文中、加筆修正しました。

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357