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共同と累積式の根抵当権の違いについて

少し気になったので 記してみたいと思います 少しネットサーフィンをしていたのですが 司法書士受験生は 出題に大きく影響するため 登記事項が気になるし また資格試験受験機関の講師も 受験に関する知識以外は あまり触れない  […]

少し気になったので 記してみたいと思います

少しネットサーフィンをしていたのですが 司法書士受験生は 出題に大きく影響するため 登記事項が気になるし また資格試験受験機関の講師も 受験に関する知識以外は あまり触れない 一方実務においては 比較的信頼できる機関からの依頼であれば 渡された書面に基づいて 申請すれば良いだけなので あまり気にしないのかもしれないが 表題の違いを登記ではなく 法律上の効果という観点で記してみたいと思います

共同根抵当は、複数の不動産について共同担保の関係で根抵当権を設定する約定担保物権であり、対債務者に対する担保される不特定の債権の、極度額、債権の範囲を複数の不動産が共同して担保するということである。なんだかわかりづらいので、もう少し具体的に記すと…

甲土地、乙土地、丙建物が共同担保の関係で、極度額3億円で共同根抵当権を設定すると、3つの不動産で極度額3億円の枠内で担保するということである。

一方、累積式根抵当権では、甲土地について根抵当権設定、乙土地について根抵当権設定、丙建物について根抵当権設定と(敢えて個別に記したが)それぞれについて設定する。その効果として其々の不動産が極度額の範囲で担保する。例えば、極度額を甲土地につき1億円、乙土地につき1億円、丙建物につき1億円という具合にである。

設定と(残念なことかもしれませんが)実行時の手続の違いについて記すと以下のとおり。

共同根抵当の場合、事務手続は概ね1回で済むと考えられ、設定時のいわゆる登録免許税は極度額で定まるが、一回の設定登記申請で済むので、極度額に税率を乗じて得られた税額で済む。実行時の申立てについても確実に一回で済む。
また担保価値について曖昧さが存在する場合でも、複数の不動産が共同して担保するため、仮に一部の不動産につき(結果的に)担保価値を見誤った場合でも、他の不動産によって担保されるというメリットが存在する。デメリットとしては、一部の不動産について、担保を解除してしまい、後日残りの不動産について実行した場合、事実上後順位担保権者に優先弁済権を奪われる場合があり得る。もっともこのことは普通抵当の共同担保の関係と同じである。

累積式根抵当の場合、事務手続は、不動産の個数分必要となり、其々の極度額に対し、登録免許税が課税されるので、共同根抵当権と比べると高額となる(後記の例で税率を其々乗じて、税額を計算すると、先の共同根抵当のときと比べると登録免許税だけで3倍の納税が必要となる。)。共同根抵当のときに比べると額面のみを見た場合、其々の不動産が極度額の範囲で担保する。例えば(例1)極度額を、甲土地に1億円、乙土地に1億円、丙建物に1億円と設定すれば、合計3億円が、(例2)甲土地に3億円、乙土地に3億円、丙建物に3億円と設定すれば、合計9億円が、担保されることとなる。もっとも個々の不動産の担保価値の判断を見誤れば、合計の極度額の額面通りに回収が見込めるわけではなく、全てが個別で扱われるため、共同根抵当のように、全部の不動産によって担保するわけではないので、回収、保全しきれない可能性もある。それから取引関係が流動的なことをメリットと考えるならば、元本確定前の担保譲渡を円滑に行うことができる。

普通抵当と違い、根抵当の場合は原則累積式であり、共同根抵当の方がむしろ特則の様に思えるが、保全、回収の観点から、制度を見てみるとより理解しやすと考えます。累積式なのか共同なのか、保全する側にとっては、その費用対効果も含めると大事なことだと思います。

今回は、かなりマニアックな話題だったかも知れません。
次回は、もう少し柔らかい話題を取り上げたいと思います。

司法書士 大山 真 事務所
TEL : 047-446-3357