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不動産登記申請 民事信託・遺言・後見・相続

法務局の web ページより

こんにちは、年の瀬ですね 今回取り上げるテーマですが、同業者の何人かが、取り上げていることなので、当事務所でも、確認し、ブログ記事に取り上げることとしました。

相続登記申請のことです

近頃の法務局の対応

実務界では、この相続登記申請のことは、少なからず問題が生じています。法務局は、「登記相談」という形では、対応せず、「登記手続案内」と対応を見直しました。人員の削減と審査等の事務処理速度の向上が主な狙いであり、このことは、何も一般の方に限った話ではなく、司法書士・弁護士等の専門職からの問い合わせについても、法務局のカウンターでの質疑応答や照会には応じず、ファックスによる照会のみとなりました。このファックスによる照会の制度ですが、一般の方に開放しているかはどうかは、存じ上げませんが、より込み入った事案であれば、専門職を頼ってほしいと案内されると思われます。

二つのパンフレットの配布

法務局のwebサイトをよくみると、確かにPDF版のパンフレットがダウンロードできるようになっています。

一つは、遺産分割協議編、もう一つは、法定相続編となっています。遺産分割協議編は、本編だけで39ページ、法定相続編は、同じく本編だけで35ページあります。

内容ですが、まず「はじめに」では、「相続登記がされないために生じている社会問題のこと」が取り上げられ、その社会問題を解決を図るために、相続登記申請が義務化されることを述べていますています。

相続登記申請をする利点

これらのパンフレットでも触れていますが、相続登記申請をする利点は、どこにあるのか。念の為、確認をしておきましょう。

民法の改正があり、法定相続分よりも上回る持分・相続分を取得した場合、登記等の対抗要件を付与されなければ、第三者に対抗することができなくなりました。すなわち、登記すれば、確定的に相続によって取得したことを第三者に主張することができるのです。

パンフレットをご覧になってほしい対象者は?

では、本編に戻り、そのパンフレットをご覧になってほしい方、その対象者をどのように設定しているのか。それは、比較的単純なケースを想定しています。パンフレットで突り扱っている事例では、夫婦親子4人家族でいずれも、夫につき相続が開始した事例を扱っています。

パンフレットの内容の概略

 遺産分割協議編にしろ、法定相続編にしろ、帰結することは、登記申請行為をしてほしことが目的です。

パンフレットには手順が記載

両方のパンフレットには、それぞれ準備から申請までの手順が記されています。

当ブログでは、詳細は記しませんが、法定相続の場合はステップが4段階、遺産分割協議の場合は、ステップが5段階に分けて記されています。いかにそのステップの概略を記します。

  • ステップ1は、共通していて被相続人および相続人を証明する書類の取得について記されています。
  • 遺産分割協議編のステップ2では、協議をすること、協議書の作成が記されています。
  • 法定相続編のステップ2並びに遺産分割協議編のステップ3では、登記申請書の作成が記されています。
  • 法定相続編のステップ3並びに遺産分割協議編のステップ4では、登記申請書の提出が記されています。
  • 法定相続編のステップ4並びに遺産分割協議編のステップ5では、登記完了のことが記されています。

戸籍関係の書類の取得については、戸籍の記載例も引用し、戸籍関係の書類がどのような役割を担っているのか、どちらで入手すれば良いのか詳細に記されています。なお、両編とも内容は、同じです。もっとも手続きが同一である以上、内容も同じです。

遺産分割協議、協議書のこと

遺産分割協議編では、もちろん遺産分割協議のこと協議書のことが記されています。もっともごくごく簡易に記されており、すべての遺産を対象に協議をし、その協議書もいっつにまとめたい場合は、無理をせずに、司法書士・弁護士等の専門職に以来sれた方が後々の手続きで立ち往生することがないと考えます。

登記申請書の作成

登記申請書の作成ついて、二とおりの作成方法が紹介されています。また書式例も先ほどご紹介した事例に沿って記載されています。書面で申請する場合、その体裁も詳しく記されています。また登記申請書の記載事項の説明が記されています。司法書士試験受験生が、熟読するテキストほどではありませんが、各記載事項について詳細に記されています。なお、法定相続情報証明制度を活用してほしい旨も記されています。

法定相続分に留意

なお、法定相続分については、民法の改正によって変更されているので、いつの時代の相続なのかに留意する必要があります。そのこともパンフレットに記されています。

添付書面の原本還付

登記申請書には、申請に至る登記の目的とその原因を裏付ける資料として、書面を添付するわけですが、すべての書類が対象ではありませんが、登記完了後、添付した書面(原本)を戻してもらえる制度(添付書面の原本の還付請求)がありますが、そのことも触れています。もちろんどう準備すれば良いのか記されていますが、イメージがわかない方は、専門職を頼るべきだと考えます。なお、法定相続情報証明の利用も考えてみても良いと思います。

登記申請書の提出、登記完了

そしてステップは分かれますが、登記申請書の提出と登記完了のことが記されています。

申請書の提出

どこの法務局に提出するのか、提出方法が記されています。

登記完了

登記が完了すると法務局から「登記完了証および登記識別情報通知書」の交付を受けます。その交付を受ける際の、留意点が記されています。なお、登記完了証および登記識別情報通知書の再発行はできません。そのことがしっかり記されています。
 なお、登記識別情報という言葉を初めてご覧になる方もいらっしゃると思います。その登記識別情報がどのようなものか、パンフレットは記されています。

相続登記申請の義務化

最後に、相続登記申請の義務化のことが、文章としては、最後に記されています。令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化されることが、大きく記されています。なお、一旦法定相続登記をしたのちに、遺産分割協議が成立した場合は、追加的に、相続登記の申請義務が課されることとなります。

最後に、申請書提出前のチェックリストおよび令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化のフライヤーが掲載されています。

パンフレット配布の思惑

最後に、この相続登記申請手続きのご案内のパンフレットの配布の思惑について、私見ですが、今まで放置されてきて、相続人間および地方行政の固定資産税・都市計画税を徴収する部門では、全く困らなかったと言えます。

数年前の出来事より

数年前に、某市役所固定資産税課で、出くわしたことですが、登記なんてしなくても良いんですよ。届出さえしてもらえば良いんです。その届出もしていただけなかったら、差し押さえて、公売に附してしまえば、税収が測れるので問題ないんです。と豪語した職員がいました。その当時は、随分と登記制度を莫迦にされたものだなぁと感じたものです。

所有者不明な土地の存在

そうこうして歳月が流れ、所有者がわかりにくい土地が九州と同じ面積に相当し、このまま放置すると大変なことになると、国家行政が大号令を発し、その後、その部署からも、あのような失言に近い発言は、聞かなくなりました。

同業者からの不満の声について

 同業者の一部が、所有者自身で登記申請をして、登記所が混乱する、また司法書士法違反の他士業者が入り込んで、業務が圧迫されると豪語していますが、申請人が、単純な事案であり、キャッシュがないから、自身で申請することを妨げる要素なんて何もありません。

真に留意して欲しいことは記されていない

ただ専門職のような、まず実態ありきという観点から取り組むわけではなく、手続き重視に傾斜し、後に不都合が生じないために、手続きに配慮しなければならない留意点などは、そのパンフレットには、記されていません。また関係当事者が多数存在する事案な場合は、もはや個人では、対応しきれないこととなります。そのようなときに、専門職をぜひ、活用していただきたいと切に願っている次第です。

ぜひご依頼を

長くなりましたが、当事務所にご依頼いただければ、パンフレットを熟読することなく、相続手続および登記申請手続を代わって申請することができます。概要は、当事務所 Web ページ でも紹介しております。ぜひ、ご参照ください。

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TEL: 047-446-3357
事務所:千葉県白井市冨士185番地の21

クリスタルとイルミネーション
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民事信託・遺言・後見・相続 高齢者権利擁護

法定後見申立の障壁

こんにちは、今回は、法定成年後見の申し立てにおける、障壁について、記そうと思います。まず一つ目の障壁となるのは、

審判時および後における希望が受け入れられるか?

このことは、家庭裁判所の裁量なので、簡単ではないと思います。ただ後見人候補者を設けずにして申し立てられた事案は、割と淡々と手続きが行われます。もし親族後見を望んでいて、後見人候補者を記載した場合、他の推定相続人兼親族の同意を取り付けていて、同意書を提出し、裁判所の面接で問題がなければ、親族後見が認められることとなります。もし他の推定相続人兼親族から同意が得られない場合は、家庭裁判所も難しい判断を迫られることとなるので、認められるかどうかは難しいと思われます。

では、次に、もう一つの申立時の障壁についてです。それは、

申立書の添付する資料の収集

です。申し立てたいとお考えの方は、実務上は、もはや本人に、判断能力が「不十分」から『無い』ことが常である「欠く常況」であるため、大抵はご本人ではなく、ご親族がそれぞれの事情を抱えた上で、申し立てをご検討されていると思います。

その上で、いざ申立ての準備にあたり、福祉関係者および医師からの書面の入手に始まり、本人、後見に候補者の戸籍事項証明書、住民票の写しや年間の収支について見積れる資料等、申し立ての類型によって、本人の同意書、他の親族の同意書などが、必要となります。

書類によって有効期限あり

単に書類を揃えただけでは不十分で、作成されてから提出までの間に1ヶ月を経過してしまったら、再度の入手を求められるもの、同様に3ヶ月を経過してしまったら、再度入手し提出を求められる書類もあり、よりスピーディな対応が求められます。

収集のみならず情報をまとめる

その書面を揃えるだけでは不十分で、申立書に、その情報をまとめたものを提出することとなります。そのまとめる作業によって一般の方からの申し立ての難易度が急激に上がります。

さきにも記したように、このまとめる作業時間をかけてしまうと、書類そのものの有効期限をが存在するものもあるので、留意が必要です。

作成が難しいと感じたら、専門家の力を借りる

こうしていろいろと見てきましたが、法定後見を申し立てるに際に、書類のことだけでも、様々な留意点があることに気がつきます。特に各書類の情報をまとめる作業の段階では、一番手間がかかるように感じます。また書類の有効期限もあるので、自身では作成が難しいと感じたら、専門家からの力を借りるべきと感じます。

法定後見の申立書作成の相談を承ります

司法書士 大山 真 事務所では、後見の申立ての後方支援も当たっています。また単に申立書作成業務のみにとどまらず、申し立てから選任審判がされるまで、原則、後方支援を継続して対応します。

なお、後見申し立てに関する業務の概要は、当事務所Webページでも紹介しています。ぜひご覧になってみてください。

秋ですね

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民事信託・遺言・後見・相続

受遺者・遺言執行者の催告

今回は、遺言に遺贈の記載があり、その遺贈を受けるのか受けないのか、また遺言の内容を実現する遺言執行者の就職の催告のことを記そうと思います。

そもそも民法の規定は

民法の規定をよく見ると、遺贈に対して応答する等の意思表示は、実は限られた方に向けた規定であることがわかります。

包括受遺者と特定受遺者の違い

まず、整理しておきたいこととして、包括受遺者と特定受遺者の存在があります。

結論から記すと、民法の遺贈に関する規定のいくつかは、特定受遺者に向けられた規定であることがわかります。なぜなら、包括受遺者は、民法の規定上では、相続人と同じ立場として扱われます。すなわち遺贈の効力が生じたことを知ったときから3ヶ月以内に承認するのか、放棄をするのか、熟慮期間内に対応しなければならないこととなるからです。

特定受遺者の遺贈の承認放棄の催告

では、特定受遺者は、どうなのか?
それは民法第987条に規定があります。

第九百八十七条 遺贈義務者(遺贈の履行をする義務を負う者をいう。以下この節において同じ。)その他の利害関係人は、受遺者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨の催告をすることができる。この場合において、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなす

E-Gov より
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20220617_504AC0000000068&keyword=民法#Mp-At_988

とあります。

この規定をよく見ると、催告した結果、何も応答がなかった場合は、「承認したものとみなす。」となっています。


遺言執行者に対する就職の催告について

次に、遺言執行者の就職の催告について、みていきます。

実は、このことも民法に規定があります。

第千八条 相続人その他の利害関係人は、遺言執行者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就職を承諾するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、遺言執行者が、その期間内に相続人に対して確答をしないときは、就職を承諾したものとみなす

E-Gov より
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20220617_504AC0000000068&keyword=民法#Mp-At_1008

とあります。

この遺言執行者の就職のことも、実は、催告したが確答がない場合は、「就職を承諾したものとみなす。」とあります。

私見ですが、やはり、遺言によって定められた遺言執行者にその執行をしてほしいという念いが優先されるべき現れなのだろうと思います。また遺言執行者を指定するというスキーム(民法第1006条)もありますが、その場合も、指定する人物に遺言者が遺言執行者の指定を託した意思を尊重することが重視されているものなのだろうと考えます。

10月の13夜の月でした

遺言に関する相談を承ります。

なお、業務の概要は、事務所ホームページでも紹介しております。是非ご参照ください。

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任意後見 民事信託・遺言・後見・相続 法教育 高齢者権利擁護

身元保証と利益相反

今回は、成年後見における身元保証と利益相反のことを記そうと思います。

唐突な題目ですが、想定される事象は、成年後見人と被後見人の関係を主に見ていきます。このことは会社と代表者との関係でも問題視されるかもしれません。

身元保証について

まず、身元保証ですが、病院への入院、高齢者の福祉施設への利用にあたり、身元保証人または身元引受人という名称でもって、親族であれば、医療機関や施設から就任して欲しいと要請があると思います。

この身元保証ですが、もう少し丁寧に考えると、いわば、主たる債務者の身に万が一なことがあったときに、金銭的な保証をして欲しいこと、身元を引き受けることを医療機関もしくは施設に対して保証するための契約の一つと考えることができます。

民法上の保証契約は、まさに書面で以って契約を行うわけですが、その際に、具体的な損害額がもちろん確定はしていませんが、まさか青天井に請求できるとなると酷な話でもあるので、極度額が設定され、限定的な根保証契約を締結することとなります。よく見てみると医療機関や施設へ、主たる債務者の債務や身元の引き取りを行う債務を保証する契約であり、主たる債務者は保証契約においては、当事者ではありません。

保証委託契約について

では、主たる債務者が、医療機関や施設から、身元保証人をお願いしてもらってくださいを言われ、親族等が、保証人となる事象もあるのですが、このときの主たる債務者本人とその身元保証人となる親族の関係は、保証委託契約と考えることができます。

この保証委託契約と先の保証契約の当事者の関係は、明確にしていただきたいと思います。

利益が相反するとは

先の記事で何度か触れています。参考までにブログ内の記事を貼り付けましたので、参考になさってください。



さらに補足しますが、利益が相反する事象とは、具体例をあげると、子が未成年である場合、親子間での取引や相続手続における遺産分割協議において、子の親権者の地位である親御さんと生存配偶者としての相続人が同一人物であった場合、その親御さん一人で、全てが決めることができ、子にとって不利益が生じるかもしれない可能性が孕んでいる権利義務関係であることが言えます。この場合は、家庭裁判所から特別代理人を選任就任し、子の代わりに法律行為を対応することとなります。

付言しますが、会社と代表者間でイレギュラーな(例えば会社が所有していた不動産を代表者個人に売り渡す場合、取引内容いかんいよっては、会社が不利益を被る可能性のある)取引については利益相反となりますが、会社が継続反復して売上単価が固定化されている取引(小売業で代表者が、会社が設定したその商品を定価で購入する事例)は利益相反とはなりません。

身元保証と利益相反のこと

さて基本的な利益相反の事象を見てきたわけですが、身元保証と利益相反のことに注目したいと思います。

身元保証をした人物が、成年後見人等の法定代理人、任意後見契約によって受任者である任意後見人であるとき、以下のような利益が相反すると考えられています。

  1. 保証債務を履行したことにより本人、被後見人に対し求償権を請求することとなった場合
  2. 保証委託契約を任意後見契約発効前に取り付け、その後、任意後見契約が発効したのちに、身元保証委託契約に基づく保証料債権の発生とその債務に基づく弁済が無尽蔵に債権債務が作出される恐れが生じる場合

1については、結果的に債権譲渡があったことを作出することができ、事象によっては、元の債権者に対する弁済よりも高額に、求償債権として回収されてしまう可能性を孕んであります。2については、もはや本人の判断能力が低下している段階で、本人に代わって任意後見人が財産管理を担うわけですが、その反面、身元保証委託契約に基づく保証人である以上、もはや保証料という名目の請求権を無尽蔵に作り出し、本人に代わって任意後見人たる委託を受けた身元保証人が自ら弁済する形となり、本人に不利益が被る可能性が考えられます。

実務上職業後見人が身元保証できない事象

なお、成年後見の事件によっては、身元保証をしたことにより、保証債務の履行をしたが、結局求償権を行使しても回収できる見込みがない場合や、身元を引き受けたとしても、被後見人や任意後見人が付された本人が死去したのちの遺体の引き取りは元来、成年後見人、任意後見人の業務は終了しているはずで、法律上引き取る義務はありません。もっとも実務上は、被後見人等に身寄りのない人であり、緊急避難としてご遺体を預かり、火葬まで対応され、相続人が見つかるまで、遺骨を預かるという事象もあるようです。相続人が見つからなければ、市区町村長が対応することとなります。

利益相反を回避する可能性(任意後見)

なお、私見ですが、任意後見契約である場合は、契約締結時、委任者の判断能力に問題がなく、任意後見人受任者と契約を締結する段階で、身元保証債務履行時に対応するための預託金の設定および任意後見契約が発効した後に、委任者に不利益が生じないよう、身元保証料その他名目いかんを問わず保証料を任意後見人は請求することができない旨の特約を付すことにより、民法代理の規定にある自己契約の禁止の規定に対しもはや債務の履行以外存在しないため、身元保証料債権を無尽蔵に作り出し回収する行為を契約条項上防止するそれなりの工夫が必要であると考えます。

紅葉の季節

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不動産登記申請 事務所より 民事信託・遺言・後見・相続

相続による登記のこと

こんにちは、今回は、「相続による登記のこと」を記します。なお、実際の相談により聴取した事実を元に記しています。なお、今回は、力を入れて記したので、長文となりますので、ご了承ください。

唐突に「登記識別情報」が送られてきて、何のことだかわからなかった

お客様から、よくわからないことがあるから相談に乗ってほしいと、要請を受けて相談に応じたときの第一声でした。

ところで「登記識別情報(通知)」とは

登記識別情報とは、所有権の取得に関する登記を受けた方を対象に法務局から所有者(取得した権利が持分ならその共有者)に通知または交付される情報または書類のことです。後の不動産の処分(売却、担保権の設定)をする際に、登記申請時に提供または添付し、審査時に、本人の実在性および当該登記を実行したことによって現登記名義人の登記を失うまたは現時点での所有権に対して登記上制限が加わることの意思を確認するために必要な情報として位置付けられています。

なぜ、登記識別情報通知を入手したのに、不可解なのか?

相談者は、「登記申請の依頼(委任)をした覚えはない。」とのこと。それにも関わらず、登記識別情報が、登記申請を代わって対応したと思われる司法書士事務所から送付されたとのことでした。なにが問題なのか、もう少し丁寧に事実関係と登記申請手続について見ていくことにしましょう。

事実関係

母親が亡くなり、相続手続きをしなければならない。

相続人について

亡くなられた母親の相続人は?、相談者以外に姉が一人いて、相続人全員で二人だけでした。二人とも年齢は75歳以上でした。

共同相続人間のやり取り

相談者宅に、姉から連絡があり、訪問したいとのこと、相談者も来訪する趣旨について薄々気がついていたので、受け入れることにしました。

来訪日当日に、何と、姉一人だけではなく、なぜが司法書士も同席したそうです。その司法書士の席の前のテーブルには戸籍謄本の書類の山が築かれ、請求書らしき金額の説明が記された書面を相談者に見せたそうです。そうして、相談者にとっては、内容がよくわからない書類に、署名をさせられたようです。

そのような態度も含め、あまりにも唐突な対応であり、相談者は驚き、話の内容(前提となる事実関係や事情)が相談者の想定していたこととはかけ離れていた内容であったため、姉と司法書士に対し、相談者宅から引き取ってほしい(退去の)旨を告げ、そのときは、物別れとなったようです。

なされてしまった登記そして登記識別情報通知の送付

そうして約一ヶ月ほど歳月が流れ、上記に記された「登記識別情報通知」が同封された書類が送付されたとのことでした。

登記申請手続の要件

登記申請手続を見ていきます。実のところ、相続を原因とした所有権移転登記申請手続ですが、大きく二つの事象が存在します。

遺産分割等が完了し、所有権の帰属が明確になった後にする相続登記申請

こちらの方が、想像できると思います。いくつか残された遺産のうち、不動産所有権の帰属をどちらの相続人とするのかを決定した上で、登記申請手続に挑んでいると考えることができます。ただし、この場合は、協議によりやはり法定相続分を反映された共有持分で持ち合うことで合意がされていない限り、相続人のどなたかが、当該不動産の権利を法定相続分よりも多く取得する事象となり、そのことを証拠づけるための書類に記名または署名および実印で押印、押印されている印鑑が実印であることを証拠づけるため、印鑑登録証明書を添付する必要があります。

自らの相続分保全のための相続登記申請

この謂わば保全のための相続登記申請と記しましたが、今回の事案のように相続人が複数存在する場合でも、相続人のうちの一人からでも、法定相続分に基づく登記申請はすることができ、そして受理されます。確かにこの方法でも、当該申請は受理され、登記簿にもその旨が登記簿に反映されるのですが、登記が完了したことに伴う、登記識別情報通知の送付または交付の対象者は、実は実際に委任状を代理人に提出した人物のみ申請行為に及んだ者のみに対して、登記識別情報は、通知または交付されます

申請行為に及ばなかった相続人には通知も交付もされない

反射効ということではありませんが、法定相続分に基づく登記を申請した場合、登記申請のため委任状を代理人に提出しなかった他の相続人、登記申請行為に及ばなかった相続人には、登記識別情報は、通知も交付もされません。すなわち保全のための法定相続分に基づく登記申請をした場合、登記識別情報を持っている相続人と持っていない相続人が存在することとなります。

そもそも問題点は?

さて事実関係と相続による登記申請手続きを見てきましたが、そもそも何が問題なのでしょうか。

対応した司法書士がとった行動について、相談者からの話と相談者宅に司法書士事務所から送付された登記識別情報通知からわかることは、相談者が委任する意思もないのに、なぜか委任状が作成され、登記申請行為に及んだことです。このことは、有印私文書偽造罪の罪に問うこととなりますし、考えようによっては、公正証書原本不実記載罪の罪に問われることにもなります。

事実関係と権利関係が合致していれば登記は問題ないのか?

事実関係および現状の権利関係ならびに登記に公示されている権利関係は、公示上は確かに反映されていると言えなくもないです。しかしながら、相談者は、登記申請手続の行為は及んでいないにも関わらず、委任状が作出されている事実は無視できないものであると考えます。

売買の事例での最高裁の判例から

随分古いものですが昭和35年1月11日の最高裁の判例があります。この判例は、司法書士試験でも取り上げられている有名な判例です。この問題点は、確かに当事者間で取引が行われ、所有権は、売主から買主に移転したにも関わらず、売主が登記申請に協力してくれず、買主が書類を偽造して登記申請し、登記がなされてしまった事案でした。この場合は、公正証書原本不実記載罪に該当します。

相続を原因としての登記の問題

さて、上記の売買の場合は、明らかに違法と言えるのですが、相続を原因とした所有権移転ではどうなのか?同列に扱って良いのかという問題はあるにはあります。以下、見ていきましょう。

  1. まず、共同相続人のうちの一人からする法定相続分に基づく登記は、先にも記したように、保存行為として認められます。
  2. 一方遺産分割等がなされ、不動産だけに限って見てみたとき、法定相続分とは違った権利関係となる遺産分割協議がされているにも関わらず、法定相続分の登記がされてしまった場合は、問題があると考えます。民法の規定には、「遺産の分割の効力は、相続開始時にさかのぼる。」とあり、故に、遺産分割によって単有になった権利関係を、相続があった日で「相続」でもって登記されることとなります。
  3. また、一旦は、法定相続登記をして、後日、遺産分割協議によって単有となった場合は、遺産分割協議が成立した日を掲げて、「年月日遺産分割」として登記申請することとなります。この場合、事実関係は如実に表れているのですが、実務的に申し上げると登録免許税の税負担が余計にかかってしまうため、法定相続分に基づく登記申請はすべきではなかったとも言えます。

登記簿上では、どの経緯を辿り相続登記がされたか判然としない。

これまで見てきたように、実は、登記簿上では、どのような経緯により相続による登記がされたのか、判然とはしません。そして、今般の民法改正により、このことに限らず、他の諸原因によって法定相続分よりも多く取得した持分について、対抗関係の整備がなされ、登記等の対抗要件を取得しなければ、第三者に対抗できないこととなりました。ただ危惧することは、法定相続分の登記は、権利の保全として重要な登記として認められる反面、そのことに乗じて、他の共同相続人により、勝手に持分を処分されてしまう可能性を誘発することとなりうるのではないかと感じます。

一方、法改正により、施行予定である相続人による登記の届出の活用がもしかしたら、不可抗力的に、明るい活用が期待されるようにも思われます。それは、取引に入る相続人ではない第三者が、届出登記を見て、まだ相続の手続きが終わっていないことを外観上知ることができ、その上で、法定相続分の登記があった際、背信的悪意者以外の第三者は対抗関係によって、持分取得の権利を確定的に主張sルことができることとなります。

一つの結論として

今回の相談者の言い分が事実であるとすると、対応した司法書士の本人確認について問題があるように思われます。一義的には、法定相続分に基づく登記がされただけであり、実害はないと考えられますが、他の共同相続人として相談者が容認している事実さえも存在せずに、署名してもらう書面の意味や趣旨について、丁寧な説明をせずに、ただ署名押印がされた書面だけでもって、登記申請に関する代理権について授権があったとは考えられず、いわば強引は委任契約があり、その委任による代理に基づいて登記申請を行ったことは、もはや正当性を主張する利用にもならないと考えます。

相続人の高齢化に伴う、注意喚起として

高齢社会となって、相続人も高齢になり、その意思表示について、本人の真意に基づいたものかどうか、いくつかの相談を受けていると本人確認がずさんな対応が見受けられる司法書士同業者が存在することも事実存在しています。

こうして記していると、もはや振り込め詐欺と同等に本人確認を受ける高齢者も意識を持った方が良いのではないかと思ったりしています。

自分の意思に基づかない登記がされてしまっていること、これは何も登記を失うことだけではなく、委任した覚えがない、自身のあずかり知らぬところで相続登記の申請人として登記申請がされてしまっていることももしかしたら、留意しなければいけないと思います。

千葉県北西部のとあるヒマワリ畑です

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