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特別受益・寄与分,除斥期間

こんにちは、今回は、特別受益・寄与分の除斥期間のことを取り上げます。

早速条文をあたります。民法の規定です。E-Govから引用します。

(期間経過後の遺産の分割における相続分)
第九百四条の三 前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20230401_503AC0000000024&keyword=民法#Mp-At_904_3

とあります。

法令の施行日

さて、この規定、実は令和5年4月1日から施行される規定です。なので、このブログ記事の公開時点では、まだ効力は発生していません。

もっとも、改正により、取り扱いが大きく変わるため、注意喚起を含めて、本ブログ記事に搭載することにしました。

前三条の規定とは

条文の冒頭に「前三条の規定は、」とあります。「前三条の規定」は、前回、前々回取り上げた、「特別受益」、「寄与分」のことです。その規定を時間が経過した場合どう取り扱うのかの規定です。

相続開始から10年経過すると

相続開始時から10年を経過すると、「特別受益、寄与分の主張ができなくなり、純粋な「法定相続分に基づく遺産の分割」を余儀無くされます

全ての相続手続きが対象ではない

但し書きにもあるように、全ての相続手続が、相続開始から10年経過したら、特別受益、寄与分の主張が認められなくなるわけではありません。

但し書きをよくみてみましょう。

10年経過する前に、家裁に申し立てた

まず、第一号です。

 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

E-Gov より

とあります。相続開始から協議がまとまらず、10年経過する前に、家庭裁判所に遺産分割調停等の請求をし、調停成立が相続開始から10年経過することもないわけではありません。

そのような事案で特別受益・寄与分の主張が認められないとなると相続人によっては、不合理な結果になります。この不合理を回避するため、10年の除斥期間は、考慮しないこととなります。

止むを得ない事由によるもの

次に、第二号です。

 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

E-Govより

なかなか難しいですね。

相続開始時から10年経過6ヶ月前から満了までの期間で、家庭裁判所に遺産の分割を請求できない止むを得ない事由が相続人にあった場合、その止むを得ない事由が消滅し、除斥期間経過前に、「…止むを得ない事由があった相続人」は、家庭裁判所に遺産の分割の請求(申立)をした場合、この除斥期間は、考慮しないこととなります。

原則は10年経過すると主張できない

さて、前々回「特別受益」、前回「寄与分」をみてきました。施行後、相続開始から協議がまとまらず、10年を経過したら、「特別受益」「寄与分」の主張は認められず、あくまで法定相続分に基づく遺産の分割を行うこととなります。もっとも共同相続人間が円満であれば、結局実情に合わせ、協議により遺産の分割を成立させることを妨げるものではないと考えられます。
この規定が施行され、様々な相続がありますが、まだ何にも手続きをしていないのは論外ですが、相続開始からなるべき早めに手続きをされることを切に願っています。

経過措置のこと

ところで、既に開始している相続はどうなのでしょうか? このことも触れておきましょう。

附 則 (令和三年四月二八日法律第二四号)第3条に規定があります。E-Govから引用します。

第三条 新民法第九百四条の三.(一部省略).の規定は、施行日前に相続が開始した遺産の分割についても、適用する。この場合において、新民法第九百四条の三第一号中「相続開始の時から十年を経過する前」とあるのは「相続開始の時から十年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第二十四号)の施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時まで」と、同条第二号中「十年の期間」とあるのは「十年の期間(相続開始の時から始まる十年の期間の満了後に民法等の一部を改正する法律の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から始まる五年の期間)」と.(一部省略).する。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20230401_503AC0000000024&keyword=民法#503AC0000000024-Sp-At_3

とあります。施行されると新法の規定が適用されます。

猶予はあります

よく見てみると、その期間は、事実上優遇されることもありうると考えて良いと思います。

まず第一号の読み替えは、相続開始から10年経過する時、または、法律の施行の時から5年を経過する時の「いずれか遅い時まで」とあります。

続けて第二号の読み替えは、10年の期間に括弧書き「十年の期間の満了後に..(一部省略)..法律の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から始まる五年の期間」があります。

相続手続きの概要は、当事務所Webページでも、紹介しています。ご参照ください。

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357

綿帽子のたんぽぽと花咲くたんぽぽを前にしての撮影でした。
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寄与分

こんにちは、今回は、「寄与分」のことを記します。

条文を確認

早速、条文を確認してみましょう。E-Govから引用します。

第九百四条の二 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2 (省略)
 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4 (省略)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20220401_430AC0000000059&keyword=民法#Mp-At_904_2

さて、民法第904条の2第一項を見てみましょう。

寄与分を主張できる人

冒頭に、共同相続人中に、

  • 被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付
  • 被相続人の療養看護その他の方法

上記のリストにより、「被相続人の財産の維持又は増加について、特別の寄与した者」

が寄与分を主張できる相続人と言えます。

上記のリストに掲げられている行為により、被相続人の財産が維持されもしくは財産の増加に一躍をになったことと言えます。ただ、普通の寄与ではなく、「特別の寄与」とあります。この「特別の寄与」ですが、条文等に、具体例は明文化されてはいませんが、配偶者が上記のリストを実行したとしても、さほど認められないのは、実務のようです。もっとも生存配偶者は、法定相続分が、多く設定されていることも、理由の一つと考えられています。

寄与分を考慮した相続分の計算

次に、寄与分を考慮した相続分の計算について見てみます。

条文では、「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。」とあります。まず相続開始時の相続財産は、

みなし相続財産=
相続開始時の財産ー共同相続人の協議で定めたその者の寄与分

となります。こうしてみると、共同相続人間で協議をして控除する寄与分を決めることが、条文からわかると思います。

そして、寄与分を含めて相続分を受ける相続人は、

寄与分を含めた相続分=
「みなし相続財産から法定相続分に基づいて取得した相続分
+「寄与分」

となります。

具体例

では、具体例です。被相続人Aの相続開始時の財産が金5,000万円、相続人は、生存配偶者B、AとBの間の子C,Dがいる。Dは、Aの事業に対し労務の提供をし、共同相続人間で、協議した結果、Dの寄与分は金1,000万円とすることで、調った。

ではみなし相続財産を計算すると、

金5,000万円(相続開始時の財産)
ー金1,000万円(協議して調った寄与分)
=金4,000万円(みなし相続財産)

となります。そうすると、各相続人の相続分は、

Bが金2,000万円、Cが金1,000万円、
そしてDが金2,000万円(みなし相続財産から金1,000万円+寄与分金1,000万円)となります。

寄与分はどうやって決める?

寄与分の決めからは、条文をみると、協議で決めるとあり、協議が調わない、協議をすることができないときは、寄与分を主張する相続人から、家庭裁判所に対し、寄与分を決める請求(申立)をすることができます。請求を受けた家庭裁判所は、「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。」とあります。こうしてみると、家庭裁判所に請求する場合は、単に申立てだけすれば、主張したことが認められるわけではなく、上記にリストに上がっている事実が認められる証拠を提出していくことが必要だということがわかります。その上で、家庭裁判所が寄与分を定めることとなります。

寄与分の上限額

協議によっても、家庭裁判所への請求によって定まるにしても、第904条の2第3項の規定にあるとおり、遺贈の価格を侵害してはいけないことが記されています。すなわち、
相続開始時の財産から遺贈の価格を控除して得られた残額が寄与分の上限、ということになります。

家庭裁判所への請求について(実務上の経験も含む)

さて条文には、家庭裁判所への請求ですが、認知の問題がない遺産の分割の調停の申し立て、認知後の相続人からの遺産の分割に対する請求もあった時にすることができるとありますが、実務では、遺産の分割調停の申立てと寄与分の申立ては、別々の申立と考えられています。遺産分割調停の継続中に、相続人の一人から寄与分が主張されましたが、家庭裁判所から「寄与分は別で申立てください。」と案内があったようです。その上で、併合して調停を進めていくものと思われます。

さて、いかがだったでしょうか、次回は、改正民法によって、この「寄与分」と先の投稿で取り上げた「特別受益」について、どう影響があったのかを取り上げたいと思っています。

遺産の分割手続きについて、当事務所Webページでも紹介しております。ぜひ、ご参照ください。

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357

桜の開花が一巡し、ネモフィラが綺麗に咲き始めました
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特別受益

こんにちは、今回は、相続手続きの際に、時折文言が出てくる、「特別受益」のことを取り上げます。

特別受益

さて、この「特別受益」ですが、民法では、第903条にあります。ではその第1項を見てみましょう。E-Govから引用します。

第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
(第2項以下省略)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20230401_503AC0000000024&keyword=民法#Mp-At_903

とあります。「遺贈」、「『結婚、養子縁組、生計の資本』として贈与」を受けた者が、特別受益を受けた相続人となります。

持戻しのこと

共同相続人の中に、特別受益を受けた相続人がいた場合は、

“相続開始時の遺された財産”+贈与の価格=相続財産 とみなす

とあります。このことを「持戻し」と呼んでいます。さて、相続総財産の計算をした後、特別受益を受けた相続人の相続分は、

計算した相続(総)財産
ー {「遺贈」、「『結婚、養子縁組、生計の資本』として贈与」}
=特別受益を受けた相続人の相続分

となります。文字で表すと、分かりづらいでしょうか、では具体例です。

持戻しとその後の相続分の計算例

被相続人Aが死亡時に現存する財産が3000万円、相続人Cに贈与した財産が1000万円、相続人Dに遺言で2000万円の遺贈する。共同相続人は、Bは生存配偶者、CDは、被相続人Aと生存配偶者のBの間の子であった場合を考えると、

持戻しの計算は、

3,000万円(現存する財産)+1,000万円(Cへ生前贈与の財産)
=4,000万円
となり

相続財産の4,000万円とみなし、再度計算して法定相続分を価格で表すと、

Bが2000万円 CおよびDは1000万円ずつとなるはずですが、民法第903条第2項の規定により、Cは、生前に贈与を受けており、相続開始時に受け取る遺産は、”ゼロ” 、Dは、遺贈によって2000万円の遺贈を受けることができますが、遺された相続財産1000万円からは相続することができません。なおBは、1000万円を受けることができます。それからBの遺留分ですが、侵害されていないことは、言うまでもありません。

20年以上連れ添った生存配偶者に、優しい規定の新設

新設された第四項ですが、20年以上連れ添った生存配偶者のための推定規定です。子と生存配偶者との間で、争いがあった場合など、涙ぐましいことがあったようですね、また平均寿命が長くなる一方、生存配偶者も高齢であることが多く、また可処分所得が少なくなり、相続後の生計を立てることが難しいケースもあるようです。そもそも論ですが、紛争が生じると「特別受益」の問題が浮上し、結局死亡時の被相続人の財産を取得できないことを回避するための推定規定です。もっともこの規定は推定規定ですので、遺言で以って、別段の意思表示があったときは、働かなくなるので、留意が必要です。

さて実務ではどうなのかというと、円満であれば、あまり出てこない文言かもしれません。ただ遺産の分割で、法律論はもとより、実情に合わせて、遺産を分け合うことが肝要だろうと思われます。

相続手続きの概要は、当事務所Webページでも、紹介しております。ご参照ください。

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八重桜です。綺麗ですよね!
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白井市、船橋市、鎌ケ谷市の皆様へ

こんにちは、当事務所の所在場所ですが、千葉県白井市冨士地区にあります。ですが、白井市のみならず、船橋市、鎌ケ谷市にも接しています。

今更、所在場所の紹介をするのもどうかと思ったのですが、近頃の検索結果を見ていると、船橋市と関連づけた検索結果が大きく反映されていて、地元の「白井市」、お隣の「鎌ケ谷市」については、あまり表示されていないことが気になりました。

それでは、googleMapsを引用します。

 少し小さい表示ですが、北北東に西白井駅、南南西に鎌ヶ谷大仏駅、西北西に新鎌ヶ谷駅、南西に鎌ヶ谷駅があります。

実は、船橋市高野台地区、鎌ケ谷市東初富地区と接している

当事務所は、白井市の冨士地区にあり、その冨士地区は、地理的には南西部であり、鎌ケ谷市東初富、船橋市高野台地区と接しています。

 白井市内在住のお客様からのご依頼がありますが、船橋市高野台地区在住のお客様、時折鎌ケ谷市在住のお客様からのご依頼も頂いております。

ありがたいお言葉を頂戴しております

ご依頼される皆様、当事務所にお越しになったときに、「近くにあって良かった。」とありがたいお言葉を頂戴いたします。

初回相談料について

上記の地区に在住在勤の方を対象に、初回30分相談料を無料で、対応しております。

当事務所の業務の概要は、事務所公式Webページでも紹介しております。ぜひご参照ください。

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357
事務所:〒270-1432 千葉県白井市冨士185番地の21

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開業当初のブログの整理

こんにちは、ご案内ですが、開業当初のブログの整理をすることとしました。

開業当初のブログ記事を整理する理由

現在、webページやブログは、事務所の存在を世に知ってもらう良い広告媒体と言えます。また検索結果も関心を持っています。

開業当初のweb・ブログ構築のあり方の回想から

当初の検索結果の重要な要素は、構造(内容)をページに持たせていれば、デザインは、さほど騒ぐことでもありませんでした。またスマートフォンの登場がまことしやかに騒がれてましたが、まだまだ先のこと、デザインがどの様に統一されるのか未知だったこともありました。
しかしながら、発信しないわけにもいかないと思い、当時PCに標準搭載されていたWeb制作ツールを用いて、ブログを構築し、運用を開始ししました。

今日では、webページを閲覧するデバイスが多様化したことに伴い、デザインも無視できないこととなりました。

法令・制度の改正に対応するためブログ記事の再考

歳月が流れ、法令の改正、登記制度も変更があり、随分変わったなと感じます。登記申請はインターネットを介する申請が主流となりつつあります。また裁判事務手続も、インターネットを活用した方法を具体的に検討されています。

そこで、当事務所の開業当初のブログ記事について、見返しながら現在のブログに移植することとなりますが、内容は、現行法令に即した内容に改めようと思います。

デザインをモダンなものに

開業当初のブログ記事を移植する理由は、現在のデザインに準拠する必要があると考えました。先にも記しましたが、当時のレイアウトデザインでは、スマートフォンからのアクセスの対応が難しいと判断しました。記事を現在のブログに移植することで、レイアウトデザインも解消していきます。

事務所、業務内容の概要は、当事務所webページでも紹介しております。ぜひ、ご覧ください。

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飛翔