遺産の分割

はじめに

 遺産の分割は、故人が遺した財産をどのように分けるのかが、最大のテーマです。民法には、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」と第906条にあります。もちろん、共同相続人には相続分が存在し、その相続分も配慮した上で、遺産を分割します。

共同相続人の一部に多重債務者が存在する場合

 共同相続人の一部に、多重債務者が存在する場合、その相続人の意向次第によって、その相続人の債権者から「その遺産の分割は、詐害行為にあたりうる」と主張され、詐害行為取消請求訴訟に発展する可能性があります。
 多重債務に陥っている共同相続人が、遺産を相続する意思がなければ、裁判上の相続放棄の申述の手続をされることをお勧めします。なお相続放棄の申述が受理されるには、期限があります。詳細は、相続放棄のページをご参照ください。

共同相続人同士で協議することが大前提

 共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除いて、いつでも、その協議で遺産の分割をすることができます(民法第907条)。基本的には、共同相続人皆さん全員で協議をして分割の方法を決めて頂きます。
 「被相続人の事業を手伝っていた、同居していた自宅が被相続人のものだった、この資産を相続したい。」というお話をよく聞きます。もちろん協議をしてそのとおり決まれば、遺産を取得することができます。良心的な方ほど「他の相続人の法定相続分への配慮はどうしたらよいですか?」と質問をされる方がいらっしゃいますが、他の相続人が納得されているのですから、特にその方々に対してご自身で拠出するものはありません。

協議が調わなければ、調停手続

 共同相続人の協議による分割が難航するのであれば、家庭裁判所を活用した遺産分割調停を申し立てることができます。調停成立後、共同相続人が納得をされて、調停条項に応じれば、手続は迅速に進みますが、協力が得られなかった場合に備えて、調停時に提出する書面を的確に作成することが必要です。

一部の共同相続人による遺産分割協議をすることはできますか?

 共同相続人全員で協議をすることが必要です。共同相続人とは、故人が亡くなられたときに側にいらっしゃった方だけでではなく、戸籍に記載されている相続人全員で協議をすることが必要です。

協議の仕方は法定されてはいません

 上記にも記した様に、共同相続人間で、協議をすることで、遺産の分割をするわけですが、実のところ、その方法は法律に一定の要式に定められているわけではありません。その方法については、ぜひ当事務所にて相談サービスを御受け下さい。

遺産は、プラスの財産、マイナスの遺産があります。

 不動産、預貯金、現金、株式等の資産はもちろん遺産ですが、実は、借金、保証債務、身元保証をはじめとした何かをしなければならない義務、即ち債務も遺産です。資産は、共同相続人の協議によって、最終的な帰属を決めることができますが、債務は、共同相続人間で帰属を決めても、そのことだけでは、債権者に対抗することができません。債務については債権者の同意・承諾が必要です。
 また会社経営をされてこられた故人には、その株式が相続財産として存在します。例えば共同相続人が配偶者および子が2名の場合で、故人が400株を発行していた会社の株式を所有していた場合、配偶者に200株、子それぞれに100株づつが当然に相続されるのではなく、1株につき3名の共同同族人がその相続分に基づいて共有することとなります。共同相続人の全員の協力が得られなければ、会社経営の一環である株主総会の決議さえままならないこととなります。会社経営を承継される方に株式を集中させるなどの配慮が必要です。

遺産の分割の方法

 遺産の分割の方法は、大まかに、①現物分割、②代償分割、③換価分割の3とおり存在するといわれています。それぞれを見ていきましょう。

①現物分割

 現物分割は、まさに、「遺産そのものを分割して取得する」方法です。明確で判り易いと一見思えます。現金、預貯金債権、株式ならば、問題は生じにくいと思われます。不動産について、場合によっては「分けることができない、または分けてしまったことによって、対象となる遺産の価値が大きく減少してしまう」場合は、とかく不向きな分割方法であるといわれます。

②代償分割

 遺産のうち、一部の共同相続人が法定相続分を超えて権利を取得するのと引き換えに、他の共同相続人が取得できたはずの相続分を価額等で代わりに償う分割方法です。

③換価分割

 遺産のうち、現物を承継することも、ままならない場合、その遺産を売却等(換価)して、売得金を遺産として分割する方法です。不動産の場合ならば、共同相続人の誰もが、使用収益を受けない(活用しない)ならば、最善の方法であると思われます。もっとも登記申請は、売却に先立ち、共同相続で手続きをする必要があります。

遺産の分割に関する相談を承ります

 上記に様々な注意点を記しましたが、よりスムーズに遺産の分割をすすめるには、司法書士等の専門家に相談されることをお勧めします。
 司法書士 大山 真 事務所では、遺産の分割に関する相談に対応し、より良い方法をご提案致します。