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身元保証と利益相反

今回は、成年後見における身元保証と利益相反のことを記そうと思います。

唐突な題目ですが、想定される事象は、成年後見人と被後見人の関係を主に見ていきます。このことは会社と代表者との関係でも問題視されるかもしれません。

身元保証について

まず、身元保証ですが、病院への入院、高齢者の福祉施設への利用にあたり、身元保証人または身元引受人という名称でもって、親族であれば、医療機関や施設から就任して欲しいと要請があると思います。

この身元保証ですが、もう少し丁寧に考えると、いわば、主たる債務者の身に万が一なことがあったときに、金銭的な保証をして欲しいこと、身元を引き受けることを医療機関もしくは施設に対して保証するための契約の一つと考えることができます。

民法上の保証契約は、まさに書面で以って契約を行うわけですが、その際に、具体的な損害額がもちろん確定はしていませんが、まさか青天井に請求できるとなると酷な話でもあるので、極度額が設定され、限定的な根保証契約を締結することとなります。よく見てみると医療機関や施設へ、主たる債務者の債務や身元の引き取りを行う債務を保証する契約であり、主たる債務者は保証契約においては、当事者ではありません。

保証委託契約について

では、主たる債務者が、医療機関や施設から、身元保証人をお願いしてもらってくださいを言われ、親族等が、保証人となる事象もあるのですが、このときの主たる債務者本人とその身元保証人となる親族の関係は、保証委託契約と考えることができます。

この保証委託契約と先の保証契約の当事者の関係は、明確にしていただきたいと思います。

利益が相反するとは

先の記事で何度か触れています。参考までにブログ内の記事を貼り付けましたので、参考になさってください。



さらに補足しますが、利益が相反する事象とは、具体例をあげると、子が未成年である場合、親子間での取引や相続手続における遺産分割協議において、子の親権者の地位である親御さんと生存配偶者としての相続人が同一人物であった場合、その親御さん一人で、全てが決めることができ、子にとって不利益が生じるかもしれない可能性が孕んでいる権利義務関係であることが言えます。この場合は、家庭裁判所から特別代理人を選任就任し、子の代わりに法律行為を対応することとなります。

付言しますが、会社と代表者間でイレギュラーな(例えば会社が所有していた不動産を代表者個人に売り渡す場合、取引内容いかんいよっては、会社が不利益を被る可能性のある)取引については利益相反となりますが、会社が継続反復して売上単価が固定化されている取引(小売業で代表者が、会社が設定したその商品を定価で購入する事例)は利益相反とはなりません。

身元保証と利益相反のこと

さて基本的な利益相反の事象を見てきたわけですが、身元保証と利益相反のことに注目したいと思います。

身元保証をした人物が、成年後見人等の法定代理人、任意後見契約によって受任者である任意後見人であるとき、以下のような利益が相反すると考えられています。

  1. 保証債務を履行したことにより本人、被後見人に対し求償権を請求することとなった場合
  2. 保証委託契約を任意後見契約発効前に取り付け、その後、任意後見契約が発効したのちに、身元保証委託契約に基づく保証料債権の発生とその債務に基づく弁済が無尽蔵に債権債務が作出される恐れが生じる場合

1については、結果的に債権譲渡があったことを作出することができ、事象によっては、元の債権者に対する弁済よりも高額に、求償債権として回収されてしまう可能性を孕んであります。2については、もはや本人の判断能力が低下している段階で、本人に代わって任意後見人が財産管理を担うわけですが、その反面、身元保証委託契約に基づく保証人である以上、もはや保証料という名目の請求権を無尽蔵に作り出し、本人に代わって任意後見人たる委託を受けた身元保証人が自ら弁済する形となり、本人に不利益が被る可能性が考えられます。

実務上職業後見人が身元保証できない事象

なお、成年後見の事件によっては、身元保証をしたことにより、保証債務の履行をしたが、結局求償権を行使しても回収できる見込みがない場合や、身元を引き受けたとしても、被後見人や任意後見人が付された本人が死去したのちの遺体の引き取りは元来、成年後見人、任意後見人の業務は終了しているはずで、法律上引き取る義務はありません。もっとも実務上は、被後見人等に身寄りのない人であり、緊急避難としてご遺体を預かり、火葬まで対応され、相続人が見つかるまで、遺骨を預かるという事象もあるようです。相続人が見つからなければ、市区町村長が対応することとなります。

利益相反を回避する可能性(任意後見)

なお、私見ですが、任意後見契約である場合は、契約締結時、委任者の判断能力に問題がなく、任意後見人受任者と契約を締結する段階で、身元保証債務履行時に対応するための預託金の設定および任意後見契約が発効した後に、委任者に不利益が生じないよう、身元保証料その他名目いかんを問わず保証料を任意後見人は請求することができない旨の特約を付すことにより、民法代理の規定にある自己契約の禁止の規定に対しもはや債務の履行以外存在しないため、身元保証料債権を無尽蔵に作り出し回収する行為を契約条項上防止するそれなりの工夫が必要であると考えます。

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職業後見人選任を検討されている方へ

こんにちは、久しぶりに、新しい記事を記します。最近、過去記事の移植作業にとらわれ、記すことがおろそかになっていますね。

さて、題目にあるとおり、今回は、職業後見人選任を検討されている方に向けての記事です。もっとも、そうでない方にも、参考になる記事であると思って記しています。

申立段階では、後見・保佐・補助は原則確定しません

まず、どのような経緯で、成年後見人の選任申立を検討されているのかは存じ上げませんが、申立をしようとしているその人が、お身内の方を慮って、成年後見人選任の申立をしたとしても、必ずしも成年後見人として選任されるとは限りません。もっとも、既に寝たきりとなってしまい、意思疎通をどうやっても測ることができないことが明白ならば、成年後見開始の審判を受けることになるはずです。

本人の判断能力を確認する段階的手段

申立をするにしても、準備が必要です。また申立後にも、本人の判断能力は確認されます。以下は、その段階的手段です。

  1. 本人の情報を福祉関係者に取りまとめてもらう。
  2. 取りまとめた情報を元に、医師が診断する。
  3. 申立時に、添付された、本人情報シートと診断書をもとに、裁判所が、鑑定(精神鑑定)をする。(実務的には、裁判所の指示に基づいて医療機関が精神鑑定を行う。)

という確認手段が用いられます。なお申立時には、本人情報シートと診断書が存在するわけですが、その診断書の記載に則して申立の類型がほぼ定まります。もし診断書の記載に基づかない申立をしたとしても却下とはならず、本人保護のために審判手続きは継続します。

思惑と違う場合でも、取り下げは原則不可

時折、申立人の思惑と違っているので取り下げたいと聞きますが、申立をしてしまうと、本人保護の観点から取下げをするには、裁判所の許可が必要となります。この許可は、まず認められない傾向が強く、実務で活躍されている同業者同士の間でも、認められないと言われています。

身元保証の問題

職業後見人は、基本的に身元保証はできません。なぜなら、後見人として本人に代わって法律行為を行うのであり、身元保証をしてしまうと、いざ保証債務に基づき履行した結果、後見人と本人との間で利益が相反することとなります。この利益相反の問題を回避するため、司法書士は、倫理により、身元保証はできないこととしています。そうすると、今まで親族の関与があった以上、選任された後見人はもとより、医療機関や施設関係者からも、身元保証に関することで、親族へ連絡が入ると思われます。

医療行為の同意

職業後見人に同意権は存在しません。医療行為は、手術を受けたり、人工呼吸器を装着することの同意等、様々ですが、職業後見人は、判断能力が不十分になる前の、本人が受ける医療行為についての在り方を知り得るはずもなければ、本人の生き方そのものの意思表示について、代理行為になじまないと考えられています。

なぜ、医療機関は同意を求めるのか

本人に判断能力があれば、本人に同意を求めます。このことは自然なことです。では、なぜ医療機関は、判断能力が低下した本人ではなく、ご家族に同意を求めるのか。深く考えれば考えるほど難しい問題ですが、一つだけ推察すれば、判断能力が低下していることが明白な本人に同意を求めて得られた回答は、信ぴょう性に欠けるとも言えますし、ご家族であれば、判断能力が低下する前の段階から本人と接していたし、ご本人のことをよく知っている推定が働くからだと思われます。

同意を得るもう一つの目的

また施術が成功したとして施術前に想定された障害を負う結果となったり、回復の見込みがこれ以上望めないこととなった場合の負担等を斟酌すると親族に潜在的だったとしても不利益を被る可能性がありうるため、同意を求めていると考えられます。

申立を検討されているご家族の方へ

上記にあるとおり、

  1. 申立が思惑通りになるとは限らない
  2. 身元保証の問題は継続する
  3. 医療行為の同意は、申立前と同様に、問い合わせがある

1は、申立後の特有な問題ですが、2および3は、申立前後では、変わらないことで、後見人が付されたとしても、引き続き本人を取り巻く関係者からの求めは継続します。職業後見人が選任されたからといって、関与から外れるわけではないし、無縁にもあるわけではないのです。

職業後見人を選任する利点は

では、それでも後見人を選任した方が利点があるとことは何か、以下に列挙してみました。

  • 施設・医療機関の契約が法定代理人によりはっきりと意思表示がなされる。
  • 煩わしい財産管理から解放される。
  • 施設との身上監護面でのやりとりから解放される。

が考えられます。本人の容体が安定しているときは、ご家族の方は、しっかり仕事に取り組むことができると思います。

今回は、職業後見の活用するにあたって、留意すべきことを記してきました。またどこかの機会で、親族後見の利用と留意すべきことを記そうと思います。

先日訪れた夕暮れ時の新宿通りでした

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