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相続人申告登記のこと

こんにちは。今回は、相続人申告登記のこと、特に申し出と法務局の対応について記したいと思います。

この登記は、不動産所有権の相続が対象となります。
以降は所有権に限って記します。

権利関係は公示されない

この「相続人申告登記」ですが、所有者が相続人に移ったことを示す登記ではありません。最近の「登記情報」もみてみると「…権利関係を公示するものではない。」と敢えて記されてます。

これに対し、相続を原因とする「所有権移転登記」、「何某持分全部移転」の登記は、権利関係は公示はされますし、他の相続人を除いた第三者に対して、所有権の主張に対し、対抗することができる法律上の効果が生じます。

今日の法務省民事局からWeb上で公表されている情報ですが、相続人申告登記の申し出があった場合、その申し出が相続人によるものかどうかを審査し、相続人からの申し出と判断できれば、事実上ほぼ例外なく、相続人申告登記をする取り扱いとなっています。なお住所の記載についてですが DV等の被害を受けている場合は、その旨も申し出れば、配慮するようです。

申し出があれば登記する

関連条文の記載をよくみると、「登記官は、…登記することができる。」とあるので、あたかも登記官の裁量に基づいて、登記するしないと読めそうですが、他の公開された情報を見てみると、ほぼ例外なく登記をするように読めます。

「申請」ではなく、「申出」という言葉を使ってます

この相続人申告登記は「申請」ではなく、「申出」という言葉を使っています。このことは権利の変動があった、もしくは権利の主体や権利の客体の内容に変動があった場合に、その旨を公示するために、「申請」することとなります。
「相続」があったが、未だ権利関係が確定していない場合、実のところ、相続人以外の第三者からは、相続による権利関係は見えづらいものであり、故に法務局は、相続登記の申請をするよう「催告書」を送付します。
その送付を受けた場合は、登記申請ができない正当な理由があり、その催告に対して回答して、認められれば、過料の制裁を免れることもあります。

相続人申告登記の申出をすべき相続人は?

過料の制裁を確実に免れたければ、相続登記を申請すべきなのですが、遺産の分割について協議が難航し、喫緊には不動産を取得した相続人が確定しないのであれば、このことも登記申請できない正当な理由に該当します。ただ現に相続財産でもある建物に居住されている相続人や土地を利用している相続人が存在するならば、それらの方々は、相続人申告登記の申し出をすることをお勧めします。なぜなら、他の相続人と比較すると、現に実効支配している相続人であるので、登記申請の義務の履行の効果が生じることは、過料の制裁を免れる利点は大きいと考えます。

気をつけなければいけないことは、不動産について相続手続が完結していない以上、申告人として登記はされていても、所有者として登記がされるわけではない上に、登記上相続人を確認したい第三者に対して知らしめる機能を持っており、その不動産について抱える問題について、第三者から問い合わせ等の照会がありうることも甘受しなければいけないことも付言します。

申告のみでは、相続による共有は解消しない

先にも記しましたが、相続人申告登記の申し出をしただけでは、相続によって共有状態は解消してはおらず、遺産の分割の手続きをする必要があります。そしてこの遺産の分割の協議によって、不動産の所有者が確定した段階で、分割手続によって所有者が確定する前に申告した相続人申告登記の申し出の効果は消滅し、相続登記申請の義務の履行 (遺産分割成立時の追加的義務)が生じます。この「遺産分割成立時の追加的義務」に対する相続人申告登記申し出という仕組みは準備されていないため、遺産の分割の成立した日から3年内に正当な理由がない限り相続登記申請をしなければならないこととなるので、留意が必要です。

多少の考察すべき事象

相続が開始し不動産も相続の対象であったことを知った日から3年内に遺産の分割が成立しそうたが、登記申請は、相続が開始し不動産も相続の対象であったことを知った日から3年を経過する見込みである場合はどう対処すべきか?

この場合、相続が開始し不動産も相続の対象であったことを知った日から3年内に相続人申告登記の申し出をし、その申告登記がされた上で、遺産の分割によって所有者が確定した時点から3年内に登記申請する必要があると考えます。これによって結果的に、申請の時期は、相続が開始し不動産も相続の対象であったことを知った日から3年を超えるが、遺産の分割によって所有者が確定した時点から3年内である期間内に申請することとなるので、過料の制裁は免れる可能性があると言えます。

詳細な情報は今後の法務省民事局の公表に注目

なお正当な理由(のガイドライン)については、現時点で、法務省民事局は公表していないので、今後の公表を待つより他ありません。

ということで、まだ始まって間もない制度ですし、過料の制裁の対象は条文上の抽象的な文言にとどまっていますが、今後、法務省から詳細が公表があるのだろうと思われますが、やはり不動産について取得する相続人が確定しているならば、遅れることなく、登記申請をすべきと考えます。

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