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会社設立 出資の手段(5)

遅くなりました、前投稿からの続きですが、「会社設立 出資の手段(5)」として記します。

(前号の続きより) こうして、定款に記された変態設立事項について、原則裁判所に検査役を申し立てて、調査をしてもらわなければならないのですが、一定の場合に、その検査役の調査が不要であるというのが以前、「会社設立 出資の手段(2)」に記したことです。

 会社を立ち上げたいけれど、元入れの資金についてどうすべきか、金銭出資が一番スムーズだが、今現在個人で事業をしているが今後法人なりしたときに、機械工具備品も会社事業で生かしたいと、悩んでいらっしゃる方は、ぜひ参考にしていただけましたら、幸いです。

次回以降で、会社設立手続の続きを記したいと思います。

珍しい形のトマトが手に入ったので撮影しました

当時の内容を加筆修正して、旧ブログ「時報」より、2022年4月27日に、移植しました。

補足

以前の投稿にも出てきた変態設立事項ですが、現物出資のこと、財産引き受けのことは、先の投稿で見てきましたが、残りの二つを解説します。実務では、中小規模の会社の設立ではまず定款に記載しない事項と言えますが、法令に記載されていることなので、念のため触れます。

再度、会社法第28条を確認

会社法第28条第1項第3号および第4号を確認します。まず第3号です

発起人の報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086_20210301_501AC0000000070&keyword=会社法#Mp-At_28
より抜粋

とあります。先の投稿にも、記しましたが、発起人は、会社が成立すると、株主となります。しかし、当然には役員となるわけではありません。発起人が一人、設立時取締役も同一人物で一人であるならば、最低限の記載事項のみで、設立手続きに挑むことはよくあります。

複数の発起人がいる場合は特に留意

発起人が複数いて、設立前から緊張した関係があり、第3号のような事項を定めた場合、会社が成立した途端、会社は、その元発起人たる株主に対して、債務を追うこととなります。しかも定款作成時に発起人らが決めているので、いわばお手盛りに近いことが、設立過程で行われ、会社として事業を開始するや否や財産が減少し、会社に対する債権者らへの責任財産が確保できないこととなります。故に、手続きを慎重に行う必要があるため、検査役の調査が必要になるのです。

第4号について

続けて第4号をみてみましょう。

株式会社の負担する設立に関する費用(定款の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086_20210301_501AC0000000070&keyword=会社法#Mp-At_28

より抜粋

とあり、会社の設立段階では、発起人らが民法上の組合に準じて、設立に関する費用を立て替えていることとなります。そう考えると、成立後、会社は、費用を立て替えた発起人にその立替金を支払わなければならない義務を負います。そうすると第3号の場合と似たようなことが考えられ、原則検査薬の調査が必要ということになります。

どの会社設立でも想定される設立費用は、検査役の調査は不要

もっとも会社設立時に、当然に発生する費用である「定款の作成認証手数料」、登記申請手続に必要となる「登録免許税の納付」「『代理による申請』で対応した司法書士報酬等」は、大方、見積もれますので、カッコ書きで除かれています。それ以外にかかる設立費用の負担で問題になったことはないことはないですが、いずれにしても、成立後、立ち往生をしないようにしたいものです。

回想

当時、このブログ記事は、文面が短く、また投稿の間隔も長かったと、見返して感じました。当時は、資格試験受験予備校講師業も兼業していたため、準備に追われ、なかなか記せなかったような気がします。設立するための要件が、会社法になって、随分緩和されたという印象を持ちました。私が、司法書士試験受験生だった頃は、会社法という文言は、聞こえてくることはありましたが、法令の公布、施行前に、試験に合格しました。そして資格試験受験予備校で、教鞭をとることとなったわけですが、やはり勉強をし直すような感じで取り組んでいたことをよく覚えています。

株式会社の設立について、当事務所ブログでも概要を示しています。ぜひ、ご覧ください。

司法書士 大山 真 事務所
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