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法務局による自筆証書遺言の保管制度(2)

こんばんは

今回は、法務局による自筆証書遺言の保管制度において、遺言の効力発生後のことを記そうと思います。

これまでは、遺言者が生前にできることと、保管された遺言書の保管期間のことを記してきました。

今回は、遺言の効力が発生した後のことを記そうと思います。

遺言の効力は遺言者の死去によって発生します。さて法務局に保管されている自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認手続は不要となります。
 従来遺言者もしくは誰かが所持している自筆証書遺言は、家庭裁判所で検認手続きを経なければ、具体的な権利の実現は、事実上図ることはできませんでした。ところが、この法務局による自筆証書遺言の保管制度を用いると家庭裁判所の検認手続きは不要です。なぜなら法務局で保管の申請の際に、封印はされていないので、遺言書としての最低限の要件を満たしているのかどうかは法務局で確認します。また受理後、法務局内部で保管もされますし、申請後の審査の工程で、電子データ(PDF)として保管されるため、受理の段階で、遺言書の状態が保全されることになります。すなわち、証明書の発行後、改ざんされたかどうかが容易にわかるようになっています。
付言しますが、遺言書を改ざんした相続人は、相続欠格となり、その人物については相続権を失うこととなり、代襲相続や、次順位の相続人の問題が発生します。

では、遺言の効力が発生した段階で、相続人からどのようなことが法務局にできるのか、請求等の行為を受けた法務局は、どのような反応をするのかを見ていきたいと思います。

まず相続人は、遺言書保管ファイルに記録されている事項を証明した書面(遺言書情報証明書)の交付を、法務局(遺言書保管官)に請求することができます。

正確に言うと、相続人のみならず、以下の人々も請求することができます。

  • 保管の申請をした遺言者の相続人
  • 生前の廃除によってその相続権を失った相続人
  • (裁判上の)相続放棄の申述が受理された相続人
  • 遺言書に書かれた次の者またはその相続人
    • 受遺者
    • 遺言によって認知された子
    • 遺言により認知された子(胎児)の母
    • 遺言によって廃除する意思表示された推定相続人
    • 遺言によって廃除を取り消す意思表示された推定相続人
    • 祭祀主宰者
    • 国家公務員災害補償法または地方公務員災害補償法の規定により遺族補償一時金を受け取ることができる遺族のうち特に指定された者
    • 遺言信託によって、受益者として指定された者、残余財産の帰属すべきものとなるべき者として指定された者または受益者指定権等の行使により受益者となるべき者
    • 保険法による保険金受取人の変更により保険金受取人となるべき者
    • 政令(7つ)、省令(3つ)で定められている者

さて遺言書情報証明書の請求ですが、遺言書を保管されている法務局はもちろん、「情報証明書」ですので、他の法務局でも、請求することができます。

また、遺言書が保管されている法務局に対して、遺言書の閲覧をすることができます。

さて、上記の遺言書情報情報証明書の請求、遺言書の閲覧の請求を受けた法務局は、遺言者の相続人、受遺者、遺言執行者に対して、遺言書を保管している旨を通知します。

それから、誰でもできることとして、法務局に対して、遺言書が保管されているか否かを照会すること、遺言書が保管されているならば、遺言書保管事実証明書の交付を請求することができます。

次回以降は、遺言者が手続きを行う、法務局の自筆証書遺言の保管の申出をする際に具体的に必要なことを掘り下げていこうと思います。

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法務局による遺言書の保管制度のこと(1)

こんばんは

今回は、法務局による遺言書の保管制度について記したいと思います。

対象となる遺言は

まず対象となる遺言は「自筆証書遺言」です。私見ですが、まさか公正証書遺言・秘密証書を保管してほしいと法務局に申し出ても制度上準備されてはいないので対応できないと思いますし、特に公正証書遺言については、原本が公証役場に保管されることとなるので、改めて法務局で保管してもらうことは想定されていません。

費用がかかります

それから、保管を申し出る際に、費用がかかります。はい、無料とはなっていません。誰の権利をという問題はあるかもしれませんが、権利を確固とするために制度を利用するのには、やはり費用がかかるものです。

出頭が前提です

それから、以前のブログで紹介したとおり、出頭主義が大原則です。では例外はあるのかというと、遺言者の住所等の変更があった際に、その変更の届出について、法定代理人ならば、代わって出頭してすることができるというものです。遺言者本人が出頭しなくてよいということにはなりますが、法定代理人が出頭することには変わりがありませんし、弁護士先生や、われわれ司法書士でも委任による代理は、現行法令上認められてはおりません

法務局による自筆証書遺言の保管制度における出頭主義について

いつまで保管してもらえるのか

法務局に保管の申請をした後、いつまで保管されるのか、その保管期限ですが、法律(法第6条代5項)では、抽象的に留められ、具体的には、政令にあります。その期間ですが、

(遺言書の保管期間等)
第五条 法第六条第五項(法第七条第三項において準用する場合を含む。)の政令で定める日は、遺言者の出生の日から起算して百二十年を経過した日とする。
 法第六条第五項の政令で定める期間は五十年とし、法第七条第三項において準用する法第六条第五項の政令で定める期間は百五十年とする。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=501CO0000000178_20200710_501CO0000000183&keyword=遺言書
より引用

とあります。

法第6条の括弧書きにあるのが「日」ということなのですが、「遺言者の生死が明らかでない場合にあっては、これに相当する日として、政令が、『遺言者が、出生してから起算して120年を経過した日』ということとなります。
 すなわち、「“遺言者の生死が明らかでない場合にあっては、出生してから起算して120年を経過した日”から50年間は、その遺言者の遺言書を保管する。」と読み取ることができます。

やや先走りましたが、死亡の事実が、明確である遺言者の場合は、その死亡日から50年間は、遺言書を保管すると読み取ることができます。

さらに、PDF化された遺言書ファイルの存在があり、こちらは、その死亡の日から150年間は、保管し、その後は、廃棄することができる、こととなります。

法律で盛り込まずに、政令によって規定しているわけですが、高齢化、核家族化による諸問題から、わざわざ逐一国会で審議をせずに、政府が変更することができる仕組みとなっています。

次回は、保管された遺言の効力が発生した後にことを記そうと思います。

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出頭主義です(法務局による自筆証書遺言保管制度のこと)

こんにちは

法務局による自筆証書遺言保管制度が始まっていますが、保管の申請および保管の撤回は、遺言者本人が法務局に出頭しなければなりません

そのこと、Youtube動画で解説しています。

法務局による自筆証書遺言の保管の制度(出頭主義)について

気になる方は、ご覧ください。不定期ですが、このことをシリーズ化して、情報発信しようと思います。

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遺留分減殺請求について(2)

こんばんは
前回は、遺留分減殺ができる人や、遺留分の帰属・割合、遺留分減殺請求の算定の基礎について記しました

今回はその続きを記していきたいと思います
では早速

遺留分侵害額の請求

を解説していきたいと思います
 条文では、以下のようになっています。

(遺留分侵害額の請求)
第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
 遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。
 遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額
 第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089#Mp-At_1046

第一項を見てみると、遺留分権利者および遺留分権利者の承継人が、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができる。とあります。今回の改正によって大きく変わったところでもあります。

第二項は、侵害額の計算を言っています。遺留分権利者が主張する遺留分から遺留分権利者その人が遺贈又は特別受益に該当する遺産の価額ならびに法定相続分、代襲相続があった場合のその代襲相続人の法定相続分、遺言による相続分の指定された相続分に応じて取得する遺産の価額を控除し、被相続人が相続開始時までに負っていた債務のうち法定相続分に応じて遺留分権利者が承継して負う債務の額を加算して算定する。

となっています。多少わかりづらいかもしれませんが、遺留分権利者にしても遺贈や生前贈与等による特別受益に該当する財産を取得しているかもしれませんし、法定相続分に基づいて財産を取得しているかもしれませんし、遺言に基づいて指定された相続分に対応する遺産の価額を取得していることもあるかもしれません。故に相続により取得した財産については、その遺留分から控除し、一方で、承継する債務の額は、加算することによって、他の共同相続人との不公平な差を埋め合わせる様にしています。

第二項はややわかりづらいかもしれませんが、具体的なことを記すと、遺贈によって、遺留分の全部について侵害しているケースがほとんどだろうと思います
もちろん 調査を粘り強くしていけば 生前に贈与された不動産も遺品から手がかりが見つかるかもしれません。

次回は、実際に遺留分減殺請求をした際に受遺者と受贈者との負担のことを記したいと思います。

渋谷の宮下公園付近です
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事務所より 民事信託・遺言・後見・相続

YouTube 動画でも解説 不動産の登記申請は年内まで

こんにちは
youtube動画にもアップしてみました
よろしければ ご覧になってみてくださいませ

なぜ不動産の登記申請は、年内までにすることが良いのか解説しています

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