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昔かし話

 随分前の話を思い出したので記してみたい。

会社設立の相談を電話を受けたが、なんと海外から電話であった。随分日本語が堪能だったので、相談に応ずる返事をして、当事務所で相談を受けた。

 その相談者が言うには、米国で会社を立ち上げ、事業がある程度上昇傾向にあるので、日本でも会社を立ち上げたいとの事、そして日本でも軌道に載れば、中国やアジアにも進出したいと夢を語っていた。

会社は誰のもの?

 会社設立の相談を受けていて、まず初期の出資者をどうするのかと問うたところ、「金は会社にある」と言っていた。そこで「会社は、あなたの物ではありませんよ」といったところ、表情が暗くなり、その後、出資者については自身がなるのか、会社がなるのか検討しますとのことだった。

釈然としない事業のあり方と態度

 そして会社の目的を聞いてみると、釈然としないのである。外国との取引なので、会社が自らの資金で仕入れ、輸出、輸入、そして自国で販売ならば、商社的な取引関係となるので、あまり問題は生じない。ところがその事業とともに、一部では、お客自身が海外で売買契約により買い付けた物を紛れ込ませて、自社で買い取った物と混ぜて輸出、輸入をするというのである。これだと狭義的に、物流の概念が入るので、通関や運送の業務が不可欠ではないかと気になった。何度も調べてみたが、どうも釈然としない。

法の抜け道なのでは?

これでは税関・国内の運送事業の許認可逃れの疑いがあると思ったので、 再度、依頼人に会社の目的のことを聞いたところ、「通関業務はやらない(手続きが面倒なので、業務としたくないのであろう)」そしてしびれを切らしたのか、「先生のスキルが足りないんじゃないの?!」と私を罵り怒りだしてしまう始末だった(笑)。その依頼人は通関士の資格を持っていると言っていたが、そのことを証する書面の提示がなかったので、今となっては持っているという台詞だけで、とても怪しいと今でも思っている。

事業の目的を語るなら簡潔であるべき

そもそも、自身の夢を語るのは結構であるが、自身の業種を聞かれたときに、一言で説明できないのは、結局それだけ、中途半端にしか考えていないのである。もっと目上の方と合うことがあった場合、延々と自社の話をするつもりなのであろうか。随分失礼な話である。
 それにしてもバイタリティがあるなら、なぜ日本でまず会社を設立しないのか不思議に思えた。設立時の出資金がないのは、どんな時代でも言い訳にしかならない。なぜなら、新規事業のためならば、そのビジョンがハッキリしているならば、銀行・金融公庫は快く融資をしてくれる。単純に設立手続きが簡単だから米国で設立したとしか考えられない。
 依頼人は日本にやってきては、名刺を配り歩いていたようである。 きっと依頼人は気がついていないと思われるが、外国会社の経営者として振る舞っているのであるから、詳細は後述するが、幾ら経営者がたとえ日本人であろうと、日本においては外国会社の規定に従わなければならない。

海外の事業者との取引の不確実性(リスク)

 今は、インターネットによって海外とのやり取りは、とてもしやすくなった。ところが注意しなければならないことは、明らかに脱法行為をしている業者を利用する事も考えられる。なにが一番問題か、トラブルに巻き込まれると、海外を相手にするとなると、連絡を付ける術が極端に少なくなる。また日本の裁判権が及ばないことも考えられる。そしてなによりも、もし代金の回収しようと思い、取り立てに行こうとしても、交通費がかかってしまい、費用倒れになるケースも考えられるわけである。

webサイトが日本語表示でも気をつけるべき

 「海外のサイトでも日本語で記されているから安心です」とこんなコピーを散見するが、今一度、日本において外国会社の登記がされているのかを確認してもらいたい。もし登記されていれば、その会社を相手取って、訴訟をすることもできる。もし、登記がされていなければ、基本的に継続的な取引は辞めるべきである。どうしてもならば、一方的に損をすることも覚悟で、自己責任で取引をしていただきたい。

外国会社として登記すべき!

 会社法上では、外国会社は、登記がされていなければ、日本国内に於いて、継続的な取引は禁止されている。また登記に先立ち日本に於ける代表者が日本国内に (日本に在住するという意味で) 住所がなければならない。消費者の方は勿論、あまり海外との取引をされた事がない企業の経営者の方は、注意をする必要がある。ぜひとも外国会社の登記事項証明書を請求していただきたい。

 ちなみに依頼に対して、基本的には耳を傾けなければならないことは確かであるが、法律を逸脱して一儲けする、明らかに違法行為をしようとしている人間に力を貸すことはわれわれはできないし、許されないのである。一緒に毒を食らうつもりもないので、御引き取り頂いた。

イタリア フィレンツェにて

上記記事は、旧ブログ「時報」より、2022年6月18日に、本ブログに移植しました。

回想

会社法および商業登記法の改正があったので、当時の文言のままでは、一部の記載につき、現行法に適用されないことを現時点では、お許し願いたい。なお、登記において、外国会社の代表者住所は、日本国内でなくてもよい取り扱いとなりました。

先のブログ記事の回想にも記したかもしれません。当時のことをこちらの記事でも触れています。

今日の外国会社の取り扱いの強化の報道

2022年の5月6月あたりの報道を見ていると、外国会社の規制を強化しようという動向が見られる。なんと海外のインターネットサービス関連企業は、海外に拠点があり、日本にオフィスがあるものの外国会社の登記がされていないのが実情です。様々な形で、サービスを利用している今日であるにもかかわらず、外国会社の登記さえされていないという実態があります。日本という国家としてしっかり成立している以上会社法を遵守させる必要ですし、日本で継続的に取引をする以上は、登記をしなければならないことをもっと周知させ、罰則を実効性のあるものにしなくてはいけないと考えます。

司法書士 大山 真 事務所
TEL; -047-446-3357