株式会社設立において、発起人が決まったら、まず設立時の会社の基本的な事項である株式の譲渡性と機関構成を考えましょう。
資本の回収と経営権の保全、どちらを優先すべきか?
発起人は、会社成立後は、必ず株主となります。そして、株主は、会社のいわゆる持ち主となるわけですが、この会社の持ち主たる権利を、勝手に譲渡できないようにするため、(おおざっぱに言えば)会社内の誰かしらからの承諾がなければ、会社に対して対抗できない規定を盛り込むことができます。
株式の譲渡について制限を設ける理由
なぜこのような規定を盛り込むのか。それは、持ち主たる株主を限定した方が、経営に圧力が掛らず安定するからです。もっと平たく言えば、経営にいろいろ口出しされることを回避することができます。
投下した資本の回収は、殆どの会社設立では考慮しない
株式の譲渡による取得に制限を設けることは、株主としては、いざ投下資本の回収を図りたくても(基本的に、会社が買い取ることはできないため)、会社等に対してお伺いを立てなければならない不都合が生じますが、株主構成は、設立当初からの殆ど変わることがないので、株主間での紛争は生じにくいと言えます。
設立段階で、発起人間で紛争が生じるのは論外ですが、会社成立後でも、この規定が盛り込まれていれば、株主の変動がほぼなく、業務執行に当たる取締役、代表取締役も変動が生ぜず、安定した経営が来されます。実は、殆どの株式会社はこの規定を置いてます。
株式会社には、様々な態様がある
もっとも皆さんが巷でよく見かける(いわゆる上場)会社はこのような規定があると、株式の流動性がなくなってしまいますし、そもそも上場条件に適合しないため、このような規定はありません。
設立段階で、資金調達をどのようにするのかも、注意すべきところだと思います。それによって、この株式の譲渡制限の規定を活用するのかどうか決まります。
機関設置について
また株式の譲渡性を認めると、より多くの利害関係人が現れるので、取締役会は必須機関となります。またそれに付随して、監査役も必須機関になります。一方、すべての株式について、譲渡による取得に制限を設定すると、原則、必須機関である取締役のみでよく、取締役会や監査役の設置は任意となります。
次回は、株式の譲渡性(2)として記したいと思います。
上記の記事は、旧ブログ「時報」より、記事「会社設立 その2 株式の譲渡性(1)」を改題し、2022年4月18日に、再構成し、本ブログに移植しました。
回想
当時は、勢いもあり、タイトルの論点から少し外れてしまっていたかなと感じるところがありました。もちろん構成し直しました。
ほとんどの株式会社は、株式の譲渡ができません
実のところ、日本の会社の99パーセントが公開会社ではない会社です。なんだかピンとこないですね。もう少し噛み砕いて記すと、株式の譲渡(売ったり、贈与すること)が事実上できない会社が99パーセントもあります。上記にもあるとおり、出資者としては、投下した資本の回収が難しくなりますが、大多数の株式会社では、事業承継のことを考慮するときまで、出資者と経営者がほぼ同一なので問題は顕在化はしません。
会社設立が事業承継のためなのか否か
ただ会社設立段階で、事業承継を考えている事象は、稀なケースです。いわば、既存の会社から一事業を切り離すためのスキームとして会社分割を経て、株式の譲渡を考えなくてはいけないと思われますが、新規事業を立ち上げ、これから会社も設立する段階では、事業者としては、検討材料にも入っていないと思います。
遠い将来のことを考えても良いと思われます
当時のブログ記事も、次の投稿に、続きを預けているようなので、回想および補足はここまでにしますが、遠い将来、事業が成功し引退を考えたとき、株式を全て売却して、リタイアすることも、一つの成功例だと思います。そんな将来を思い描いて、事業を拡張する一つの手段として、会社設立をご検討されてはいかがでしょうか。
株式会社設立の概要について、当事務所Webページでも、紹介しています。ぜひ、ご参照ください。
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