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総量規制とおまとめローン

こんにちは、今回は、債務整理のこと、特に総量規制とおまとめローンのことを記そうと思います

まず総量規制ですが、貸金業法の適用を受ける貸金業者からの借り入れは、この総量規制を受けるので、借り入れができる金額に制限を受けます。この根拠法令は、貸金業法第13条の2(過剰貸付等の禁止)にあります。

https://laws.e-gov.go.jp/law/358AC1000000032#Mp-Ch_2-Se_2-At_13_2

リンクだけでは、内容が判然としませんので、そのまま引用します。

第十三条の二 貸金業者は、貸付けの契約を締結しようとする場合において、前条第一項の規定による調査により、当該貸付けの契約が個人過剰貸付契約その他顧客等の返済能力を超える貸付けの契約と認められるときは、当該貸付けの契約を締結してはならない。
2 前項に規定する「個人過剰貸付契約」とは、個人顧客を相手方とする貸付けに係る契約(住宅資金貸付契約その他の内閣府令で定める契約(以下「住宅資金貸付契約等」という。)及び極度方式貸付けに係る契約を除く。)で、当該貸付けに係る契約を締結することにより、当該個人顧客に係る個人顧客合算額(住宅資金貸付契約等に係る貸付けの残高を除く。)が当該個人顧客に係る基準額(その年間の給与及びこれに類する定期的な収入の金額として内閣府令で定めるものを合算した額に三分の一を乗じて得た額をいう。次条第五項において同じ。)を超えることとなるもの(当該個人顧客の利益の保護に支障を生ずることがない契約として内閣府令で定めるものを除く。)をいう。

念の為、引用した貸金業法第13条の2第2項にの基準額については、貸金業法施行規則第十条の二十二(年間の給与に類する定期的な収入の金額等)にあります。

ご興味のある方は、以下のリンク先をご覧ください。なお、原文をそのまま載せようと思いましたが、条文はかなりの長文です。端的に記すと、「複数の貸金業者から借り入れるにしても、その全貸金業者の総借入額は、年収の3分の1までとする。」と規制されています。

https://laws.e-gov.go.jp/law/358M50000040040/#Mp-At_10_22

貸金業法は、あくまで貸金業者に対して適用される法律

ただこの貸金業法は、あくまで貸金業者(およびみなし貸金業)に適用する法律です。銀行等の金融機関には、適用を受けません。例えば、住宅ローンについて銀行等の金銭消費貸借契約は、貸金業法の適用を受けません。もっとも住宅ローンは、実は貸金業法の適用を受ける業者が取り組むつなぎ融資についても例外規定を設けています。

話を総量規制に戻します。銀行等の金融機関が取り組む住宅ローンに限らない金銭消費貸借契約に基づく貸金に関する業務は銀行法の適用を受けますし、農業に従事されている方には身近な存在である農業協同組合が取り組む融資も、農業協同組合法の適用を受けるのであり、貸金業法の適用を受けることはありません。信用金庫、信用組合についても同様に、貸金業法の適用を受けません。

貸金業法の適用を受けない事業者からの借金は、総量規制の適用を受けない

上記のとおり、実のところ、貸金業法の総量規制の適用を受けない事業者が展開している融資・金銭貸付は、意外にも身近に存在しています。では他の法令に基づき金銭の貸付が許されている事業者はなぜ貸金業法の総量規制の適用を受けないのか、それは、他の法令の適用によって融資審査は、適切に行われていると捉えているため、貸金業法の適用は受けないのです。

適切な審査は行われているのか?

では、融資に当たって、審査は適切に行われているのでしょうか?と疑問を持ちますが、そうであると信じたいとしか記しようがありあません。あまりにも酷い実情が存在し、社会に露呈し、立法行政が問題として取り上げられるくらいであれば、なんらかしらの法改正があっても良いのではないかと考えます。

おまとめローンのこと

さて、おまとめローンのことですが、個々の債権額が10万円未満の場合、利息制限法の上限利率が年率20パーセント、10万円から100万円未満の場合は、年率18%ですが、複数の債務を結果的に一本化したことによって、総額100万円以上になった場合、利息制限法の上限利率は15パーセントに縮減することとなるので、論理的には、利率の引き下げにつながるだろうと考えられます。またまとめたことによって、債権額もそれなりにまとまった金額となるため、もしかしたら、利息制限法の上限利率よりも低い利率で借り入れることができるかもしれません。適用する利息は、上限は利息制限法の規定を受けますが、下限は、貸し付ける事業者が自由に決めるので、個々の貸金業の借入時の適用されていた利率よりも低い利率になることもあります。では不利な点は、債権額および貸金業者の確定利息分の返済のための金員は必要であるため、債権額(元金)が、まとめる前の債権額(元金)総額に比べるとその確定利息分が上昇してしまうこと、昔の話かもしれませんが、利息制限法に違反した貸金業法上の上限利息に近い確定利息について、引き直しをすることなく融資し、結果的に元金に組み込まれた形で、債権額が膨れ上がってしまうこともありうること、が考えられます。

まとめ

貸金業法の総量規制は、貸金業者にしか適用されない。銀行、信用金庫、信用組合、農業共同組合等の融資については、総量規制の適用は受けない。結果的に適用を受けないことにより、年収の3分の1以上の借金を背負うことが結果的に生じてしまい、生活が破綻する不確実要素(リスク)が生じる可能性がある

貸金業者から借り入れている方は、おまとめローンを利用するのかどうか、よくよくお考えになっていただきたいものです。

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357
事務所: 千葉県白井市冨士185番地の21

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規制の強化が図られるかもしれません

 とある司法書士が、脱税の疑いで、地検に告発された様ですね。報酬の事と脱税をすることとは、直接繋がるという訳ではありませんが、倫理の面や、会則などの規制がさらに強化されるのかもしれません。
 基本的に報酬は自由化されているので、どの事務所が高いとか、安いとか、相場は幾らなのかという議論は、ここでは控えます。
 一部報道で、手続が形式化しているというコメントがありましたが、多くの司法書士は最適な助言や事件の処理をするために、準備に膨大な時間を費やしています。その努力が報わるために社会からの認知がされるように、日々研鑽していきたいものです。

クリスマスツリー

上記記事は、旧ブログ「時報」より、2022年5月1日、本ブログに移植しました。

回想

当時は、警戒心もあり、あまり詳細にはかけなかったような気がします。この事件は、債務整理事件、特に過払い案件を大量に、しかも工場生産のような方式で、事務処理を手掛けていた事務所が、脱税の疑いで大きな事件として報道された事案でした。他にも報酬額が高額に取り扱われ、結局債務者依頼者には、返還金が戻ってこないという事案も多数散見され、弁護士会、日本司法書士会連合会が債務整理事案について報酬の規制を設ける事態となりました。

歳月が流れましたが

歳月が流れ、既に10年強経過していますが、この多重債務者問題は、いろいろ変化しています。債務整理を手がける事務所と元貸金業者の癒着によるバックマージン問題、それに漬け込むメディア、貸金業法の総量規制および今日の社会経済の動向による、結果的な銀行の消費者金融への乗り入れは、貸金業法の総量規制は、働かないため、個人カードローンが問題視されたりしています。

仕組みを理解し、計画的にと言いますが

コマーシャル等で、「ご利用は計画的に」というメッセージがありますが、計画的に利用しようと検討すればするほど、その金融商品は良くないことがわかってくると思います。もっとも利用される方が、本当に資金繰り等の計画を本当に立てているのかというと、ほとんどの方が計画性を持っておらず、緊急性を要するらしいため、借り入れたという事案がほとんどです。

セフティーネットの周知

では、セフティーネットの周知という観点から、この問題を見つめてみると、できていないことが実情ですが、消費者金融のコマシャル・広告ができるのかというと、基本的に収益性がない取り組みであるので、難しいものがあります。ただ今の時代は、テレビよりもインターネットの時代、ソーシャルメディアを駆使してどうにか周知できるのではないかと思ったりもします。

多重債務者・対応する先生の問題

大きな問題そして解決は困難である最大の理由は、多重債務者自身の問題もないわけでもありません。収入・支出の改善が望まれるところですが、面談していると大抵の方は、失業中であったりします。また流動資産が枯渇しているが固定資産を売却等の処分が困難な事案も多く、家計が行き詰まることもありますが、もっとも大きな問題は、債務整理が終わったとしても、家計の改善をしようとしない債務者本人の気質も大きな原因だろうともいます。

最終手段の行使しても、それでも難しい

多重債務問題の解決方法として最終手段である生活保護というスキームがあるにはあります。今、世間ではベーシックインカムという言葉も注目されていますが、いずれの方法も、保護し支給されている境遇から自立し、自らの所得だけで生活を立て直すまでには、時間と忍耐が必要であり、その忍耐強くなるまでに、相当な精神力が備わらないと難しいです。

また、その支援を真摯に対応する方がとても少ないことも実情であります。確かに支える側にも忍耐強さがなければならず、コンサルタント業務のように、報酬を回収できるのかといえば、実情から考えるととても難しい問題です。故に手続きが終わったら、支援を継続している士業の先生はほとんどいないと言っても過言ではありません。

回想により、多重債務者問題を改めて、見つめ直しました。当事務所では、現在対応を見合わせております。多重債務に関する問い合わせは、各団体にご相談いただければと思います