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不自然なこと

こんにちは、数回前に権利証の紛失のことをテーマにブログ記事を記しました。ご興味のある方はその記事をご覧ください

それらの問い合わせで「盗まれた!」という文言を聞くことがあります

確かに、大事なものをその場所に保管していたと強く認識しており、その場所にあったと信じて止まないにも関わらず、いざ確認てみたら、そのものがなかったときの衝撃は、計り知れないことも想像できます。

ですが、住居侵入窃盗であった場合、権利証を主たるターゲットとすることは可能性が低いのではないのか、安直ですが感じます。

地面師という映画(ドラマ)が最近流行りましたが、現実世界では、大手不動産仲介業者が詐欺被害を受け金55億5千900万円の被害額にも及んだ事件がありました。それでも足がつき逮捕されてます。そうやって考えてみると、権利証を盗み出し、買主から金員をだまし取るには、かなり用意周到に計らなければならないことは、単なる住居侵入窃盗犯が不動産取引詐欺に至るのは考えにくいものだと感じます。

もっともその権利証を、より凶悪な反社会的勢力のような輩に譲渡し、詐欺を用意周到に計るには、それなりの準備が必要なことは容易にわかります。一方、単なる住居侵入窃盗の犯人の心理は、大方、金目のものを安直に求めて犯行に及ぶことが多いのだろうと想像できます。

もしかしたら身内がしたことなのでは?

そうすると、見知らぬ輩が住居侵入窃盗において、不動産の権利証のみを盗むことが目的というのは、考えにくいように感じます。そこで立ち止まって考えてみると、権利証のみが盗まれたが、他の場所で金目のものを詮索された痕跡が見られないのであれば、その権利証の存在をよくよく知っていた人物が、窃取したのではないのか、もう少し踏み込んでみると、もしかしたら盗まれた被害者のお身内の方が窃取したのではないのか、その可能性も否定できないわけではありません。

ドラマのようなことが本当にあった話

当職が、経験した事案で、事件に直接巻き込まれたことはありませんが、事件が起きてその数十年後、民事的な後始末のために、関わった事案がありました。

対象物件は、農地でしたが、近隣の都市開発があり、価値が増し、市街化されるという話を、所有者の身内が買主に持ち出し、不動産仲介業者が関与した不動産売買契約書を見かけましたが、所有者が関与しておらず、そもそも市街化はなされることもなく、結局詐欺事件が発生したようです。刑事事件としてどのように扱われたのかは、もはや定かでありませんが、その所有者の身内は、姿をくらまし、本籍地の戸籍の附票は、入手できましたが、肝心の住民票の写しは、除票扱いとなっており、足跡を追いかけることはできませんでした。結局この事案は、その事件後数十年が経過した後、身内の兄弟姉妹が違約金を支払うことで、示談が成立し、農地に付けられていた所有権移転仮登記の抹消がなされました。もっともそのために、身内の兄弟姉妹は、近隣の方から金銭を借り入れ、支払いが始まり、また農地については、事実上の保全のための耕作のために貸し出しをすることによって、話が落ち着いたようです。

権利証が盗まれる事案、確かにないわけではありませんし、他人名義に登記がなされてしまう危険があります。特に気をつけなければいけないのは、無権利者から登記がなされ、その事実について気がついていたにも関わらず、防止の措置をしなかった場合、その後の所有権移転の登記を受けた者に対し、不動産の所有権について、第三者に対応することができないので、民事保全法に基づく仮の地位を定める仮処分を検討しなければなりません。

まだ登記名義がご自身に留まっているなら

権利証のありかがわからなくなったが、未だに登記名義は自身である場合は、法務局によって準備されている、不正登記の防止の措置や登記識別情報の失効制度の活用をご検討ください。

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357
事務所: 千葉県白井市冨士185番地の21

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権利証(登記済証,登記識別情報)のこと

こんにちは、電話による問い合わせがあり、以前から何回か取り上げているテーマだろうと思っていたのですが、どうやらそうでもなかったようなので、注意喚起を促すために改めて記そうと思います。

権利証は再発行されない

はい、「権利証」と俗世間では、言われていますし、時折、法務局内部職員の方からも、「権利証」という言葉が出てくることもあるのですが、この権利証は、平成15年改正前の不動産登記法に基づき不動産の権利に関する登記で、所有権をはじめ、地役権以外の登記することができる制限物権に対して初めて取得したときに交付されてました。なお現行不動産登記法では「登記識別情報」がいわばその役割を引き継ぎましたが、平成15年改正不動産登記法に基づき当該法務局(登記所)がオンライン庁に実施される前に、交付していた書面としての「登記済証」と言われる書面のことを一般的に指しますが、「登記識別情報」も含めて、広義に「権利証」を指していることもあります。

さて、小見出しに記したように、この「登記識別情報」または「登記済証」は再発行はされません。特に登記済証は、世界で一通しか存在しない書面と言え、希少価値?!?という点では、重要なものと言えるかもしれません。やや話が逸れましたが、この「登記済証」「登記識別情報」は、再発行、再交付、再送付を受けることができない大きな理由は、法令に救済措置に当たる規定が存在しないからです。規定が存在しない以上、たとえ真の登記権利者からの申し出があったとしても、その申し出に答えて再交付・再送付する規定の法令が存在しない以上、登記官が、「気の毒な方ですね。」と内心思っていても、再交付・再送付できないのです。

紛失した経緯にご留意

さて、「登記済証」「登記識別情報」を紛失した、在り処も含めて失念してしまったという理由で、よく問い合わせをいただき、「どうしたら良いですか?」、とよく聞かされますが、その紛失した理由がとっても大事なことだと考えられます。

特に、金庫に入れていたのに、ある日、中身を確認したら何も入ってなかったということもあるようです。もしもその金庫について、施錠や鍵や解錠するためのダイヤルの管理が適切にされていたのなら、盗難の可能性も考えられるので、民事上不利に扱われないために、警察に対し盗難被害届および不動産の管轄法務局に対し不正登記の防止の申し出の手続きを行いましょう。
まず、警察への盗難被害届ですが、刑事上の取り扱いを適切に対応してもらうための制度であり、直接不正登記の防止に寄与するものではありません。しかしながら真の所有権登記名義人が、その盗取された権利証を使われて登記申請がなされたとき、被害を被っている蓋然性を持たせ、後に発生するかもしれない民事上の紛争(窃盗犯に対する賠償、所有権を主張する第三者からの否認し、自己への所有権回復のための証拠の一つとして事実を積み上げるため)への対策を講じるためです。
不正登記の防止の申し出は、真の登記名義人の預かり知らないうちに登記申請がなされることを防止するための制度です。詳細は別の記事に記そうと思います。

耳を疑う事実でした

先日、電話で問い合わせを受けた事案は、様子が違っていました。それは、金庫の鍵は、本人にすぐにわかるように金庫の近くに保管し、ダイヤルの設定も、ご自身が備忘的な意味を込めてメモしたものを金庫に貼り付けておいた、とのことでした。
これでは、確かに金庫としては機能を搭載しているのですが、その機能を全く働かせていない貴重品を入れる保管庫に成り下がっているように思いました。この状況では、さすがに盗難被害届を提出する際に、その経緯を尋ねられ、事実を話したところで、被害が出て当然と叱責されることもあるかもしれません。もっとも「権利証」がなくなった事実は変わらないので、おそらく受理されるのだろうと思います。もちろんこの事案でも、先に記したように、警察への盗難被害届および法務局に不正登記の防止の申出をすることをお勧めします。

高齢社会を迎え

この権利証の紛失のこと、実は取引決済でもよく耳にすることがあります。最近では、親子二代に渡って取引に関与する場合、親御さんの名義に関する不動産の権利証について、紛失しているというケースです。特に高齢者となり、認知機能が低下し、判断能力も衰えてきて、大事なものが常に気になる心配性な方や盗られ妄想の傾向のある方だと、大事なものを確認してはその時々に自分にとってその時点で大事な場所に仕舞ってしまい、後にその仕舞った場所を思い出せなくて、紛失してしまう事案があるようです。またそう言った不都合を解消しようと、親族の方が、介助(と親族の方は思っているようです)して、貴重品を保管していたところ、本人の預かり知らないところで紛失していると誤認し、警察に被害として届け出ていたという事案など、笑えるようで笑えない事実もあるようです。

登記識別情報の失効制度

先の記載は、主に「『登記済証」の紛失」に重視して記しましたが、「登記識別情報」については、もう一つ、対処方法があります。その方法は、登記識別情報の効力を失わせてしまう制度である「登記識別情報の失効制度」です。

ただこの失効制度も、一度失効させると再度の登記識別情報の効力を復活させる制度は、準備されてはいません。事前通知制度や資格者代理人による本人確認制度等の代替手段を用いて、対応する必要があります。

ご留意を

くれぐれも、登記済証、登記識別情報について、紛失、失念することがないようご留意願います。

司法書士 大山 真 事務所
事務所: 千葉縣白井市冨士185番地の21
電話: 047-446-3357