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不動産登記申請 事務所より

二、三十年前に依頼すべき事案(それでも否定すべき事案)

こんにちは。問い合わせをいただき、面談に応じると、対応に苦慮することがあります。

もっとも苦慮する事案は、「名義だけ、変えて欲しい。」というものです。

登記名義人の名義が変わったとは?

それでも所有者その人が、「結婚・離婚・養子縁組」により、氏名が変わった事実であれば、それは「名義が変わった事案」であるので、間違いなく名義だけ変えて欲しいという要望に応じることができます。

しかしながら、先の記事にも記しましたが、現在所有権登記名義人を持っていると思わしき方から、「名義だけを変えたい。」と言っているのは、「現在所有権登記名義を持っているが、他の方に、名義だけ替えたい。」というものです。

実体が則しているのか否か?

この「名義だけ替えたい。」という文言ですが、この文言から、想像できることは、「実体も、所有権は、自身から他者に移転したので、(先生は)登記申請手続についてだけ、対応してほしい。」という依頼が考えられます。もう一つは、「実体は、所有権は私のところに留保したまま、登記名義だけ他者に変えてほしい。」というものです。

大昔の話

現行の不動産登記制度は、平成17年3月7日の改正施行によって、運用されているのですが、遅くともそれよりも前の時代では、先に取り上げた後者の事案の「名義だけ替えたい」という要望に対して、もしかしたら当時の専門職も対応していたのかもしれません。もちろん今日の執務上の取り扱いでは、依頼に応じることができない事案となります。なぜなら、登記名義を受ける方の本人確認がなされていないからです。

名義だけ替えて下さいという要望

不動産登記法改正前当時の制度を振り返ると、当時も登記申請時に「原因証書」という書面を添付していました。ただ「原因証書」の添付ができない場合は、申請書副本を換わりに添付しました。この「原因証書」「申請書副本」は「登記済証」を作成するための書面という目的の側面も兼ね合わせていました。もちろん「原因証書」の添付がなされた場合は、原因証書に記載された内容も確認はしていたようですが、原因証書の添付できなければ、「申請書副本」の添付で以って換える仕組みがある以上、書面による審査は、現行制度と比べると緩慢なものだったかもしれないと想像されます。

では、当時の制度において、「名義だけ替えてほしい」という要望について、当時の専門職は、どうしていただろうか?とふと思うことがあります。もしかしたら対応していた専門職もいたのではないかとふと思ってしまうことがあります。なお法務局の照会に対する回答や補正対応での応答で、時折、「登記はとおる」という文言を聞くことがあります。この意味は、書面上(内容も含めて)不備がないため、(真実がわからないが、)登記申請は、受理される。という意味があり、さらに(「後で問題になり、刑事罰(公正証書原本不実記載の罪)の対象となってもしりませんよ。」)という意味も含まれています。

テレビドラマで、トリッキーに登記制度の趣旨を捻じ曲げ、ストーリー展開される作品がありますが、その影響もあるのでしょうが、往年の相談者ほど、「名義を替えたい」という文言をよく用いられているように感じます。

もしかしたら、2,30年前に、上記のような事情でもってして依頼していたら、対応していた専門職は、いたかもしれませんね。当事務所は、先の不動産登記法改正施行後に事務所を開業したので、対応するもなにもありませんが、事実が確認(もちろん本人確認も含む)できなければ、対応は絶対にしないことを執務方針としています。

冒頭に戻りますが、時折「登記名義だけ替えてほしい」という事案について、時代を遡って、他の同業者に依頼されたらどうですか?もしかしたら対応してくださるかもしれませんよと言って、依頼に対し辞退するつもりです。

登記の原因の事実を確認証明する必要があります

現行の不動産登記制度下では、登記の原因の事実を証明する必要があります。先の改正で、この登記原因証明情報は2つの例外を除いて、その証明した書面を添付する必要があります。この登記原因を証明する書面は、事実があったことを当事者が法務局に対して証明する性格を持っています。この書面の義務づけにより、より実体に則して登記が実行されることが担保されて、不実の登記が完全になくなったわけではありませんが、だいぶ減ったのではないかと考えられます。なお、登記原因証明情報の添付が不要である2つの事案は、「所有権保存登記」、「民事保全法に基づく処分禁止の仮処分の登記に遅れる登記の抹消登記」であることを付言しておきます。

次回は、権利証がないときの対応について、記したいと思います。

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