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債権者から見た相続手続

こんにちは 今回は 被相続人の債権者から相続手続と債権回収のことを見つめてみようと思います

債務者がお亡くなりになった場合 法律上「死亡」を原因として契約が終了することもあれば 権利義務関係を相続します

基本的には 相続するものと考えていただいて問題ありません

死亡によって契約が終了する法律関係について 一応触れておくと 借主が死亡した場合の使用貸借契約、委任者・受任者が死亡した場合の委任契約関係(ただし、義務の履行に準ずる登記申請手続の委任による代理の場合は終了しないこともあります。)などが考えられます

相続とは

あまりにも抽象的な 小見出しを記しましたが 相続とは 被相続人が得た資産や権利も負っている債務の一切を引き継ぐことを言います

もっとも相続の制度を貫徹してしまうと 相続人にとって不測の事態に陥りかねないため 単純承認のみならず相続放棄や限定承認の制度も準備されています

限定承認についての詳細はまた別の機会に記そうと思いますが 端的に言えば 被相続人が遺した資産から負債を差し引いて資産が残れば その残った部分を相続するが何も残らなかった場合もしくは負債が残ってしまった場合は 遺産を引き継がない制度です 難しい論点が実はあるのですが 詳細は別の機会に記したいと思います

さて相続人は承認する(引き継ぐ)のか 放棄するのか の2者択一を迫られるわけですが 債権者としては 相続人に承認しろ!とも 放棄しろ!とも強要することはできません。

もっとも 債権者としては 回収を早くしなければならない事情もあるでしょうから 相続人に対して 被相続人が負っていた債務について請求します

相続登記は相続した証

さて ここで不動産登記のことも考慮してみてみましょう

債権者にとって この不動産登記は 実は貴重な情報源となります

このことは 相続のみならず 債務者の財産状態も 不動産登記制度の反射効的におおよそ把握できる仕組みになっています

債務者が所有する不動産に着目すると まず他の金融機関とどのような権利関係が継続しているのか おおよそ 登記簿をみるとわかります
それから 場合によってですが 所有者が過去に離婚歴があり 元配偶者と法律問題があったことも時折伺えることがあります

では被相続人に対し債権を持っている債権者からみた相続登記はどのように見えるのでしょうか

債権者が債務者の生前中に請求できなかった理由が諸々あるかもしれません この被相続人が所有していた不動産に対し強制執行するにしても 抵当権等の担保権を持っているか 債務名義がなければできません

債務名義を得るにしても債務者において相続が開始すると 債権者としては 債務者のどの相続人に対して請求すべきかの問題はあります 実務上の回収業務として 財産をより多く所有している相続人に対して標的として定めたいところです

そこで相続を原因として登記が完了されていれば 債務者のどの相続人が承認したことが明確になり 債権者は 登記を得た相続人に対し効率よく請求することができます

債務者の相続人にとって 熟慮期間中に、債権者が相続人に請求をしたとしても 相続人が被相続人の債権債務関係が明らかになり 資産を引き継がなくても問題なければ 相続放棄という選択がかなり有意義であることが言えます

一番敏感な相続債権者とは

よくありがちな話ですが 実は債務者の相続について一番敏感な債権者は 固定資産税・都市計画税の租税債権をもっている地方自治体でもあります

地方自治体から納税に関するお尋ねと回答書(雛形)の送付があったことで 初めて自身が相続したことを知ったという事象は多いにしてあります もちろん熟慮期間が始まったばかりですので 資産と負債をよく調べ 承認するのか放棄するのか 意思決定し 承認ならば 納税する登記申請する 放棄をするならば 家庭裁判所に申述を申し立て 受理してもらうことが必要です

付言しますが結果的に承認することとなった場合 それまで留保していた納税義務について 納税が遅延していたことが遡って主張されることもありうるため 留意すべきと考えます

結びに

債権者からみた相続登記は どの相続人を相手にして請求すれば良いのか明確になり 効率よく請求することができます

もっとも 登記を得た相続人にとって まさか被相続人が巨額な債務を負っていた・保証人になっていたという事象は 注意していても 気がつかなかった 錯誤(いわゆる勘違い)に基づいて相続してしまったので取り消したい ということがありうるかもしれません もっとも実情によって認められるのか認められないのか かなり難しい問題だと言え あまり登記を得たのちの相続放棄の申述は困難を極めると考えられます

先の記事にも記しましたが 被相続人の資産を調べるのも一苦労ですが 負っていた債務を調べるのは いわゆるないことの証明をすることと同じであり 限定的に情報機関とお付き合いのある業者に対して負債を負っていないという証明?!?にはなるかもしれませんが 世界中に債権者は存在しないという証明は皆無であるので 本当に難しい問題であると感じます

相続手続の相談を承ります
司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357
事務所: 〒270−1432 千葉県白井市冨士185番地の21

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会社・法人・企業法務

公開会社の取締役が2名になって考えるべきこと

こんにちは、今回は、公開会社である株式会社において3名の取締役のうち1名が退任したときに、考えるべきことを記したいと思います。

予備知識として、以前記した記事をご覧になっていただけると、より理解が深まると思います。

現行会社法の株式会社の最小機関統治の形態は、株主総会および取締役1名なんですが、旧商法時代から継続している、所謂、老舗の株式会社は、公開会社が基本的な機関統治構成となっています。

そもそも会社とは?

そもそも会社とは、一つの社団、人々によって構成される集団の一つであると定義づけることができます。この社団ですが、会社のみならず、社団法人や財団法人等も、法律が認めた一人の人格として存在していますが、出資者に対して利益を還元することを目的とするのかそうではないのか、この目的によって、会社なのか他の法人が良いのかという議論もあるにはあります。

社会全体の株式会社の実情

実社会上の日本の株式会社の99パーセントが、株式の譲渡による取得に制限を設けている会社、すなわち 「公開会社ではない株式会社」として存在しています。有名な上場企業は1パーセント前後の存在しかなく、実社会の会社の数では、圧倒的に「公開会社ではない株式会社」が占めています。

旧商法時代からとっても歴史のある株式会社の機関構成

もう一度おさらいすると、旧商法時代から存続する老舗な株式会社は、定款の見直しがなければ、公開会社が基本です。その公開会社は、旧商法時代の株式会社は比較的規模が大きいことを想定していたため、設立時の発起人は7名以上(会社成立直後は株主が7名以上)、取締役は3名以上、監査役1名以上、取締役会を構成し、代表取締役1名以上で構成するものでした。そして株式の譲渡による取得は、原則自由としていました。なお、旧商法の時代でも、現在に近づくにつれて、株式の譲渡制限に関する重要性が認識され、法改正が行われ、社会常識の観点から言えば、謂わば、創立当初から出資をした発起人ではなく外からやって、会社の意思決定に口を出して欲しくない要望もあり、株式の譲渡制限を設定することが当然という認識となりました。

やや話題からそれますが、会社の規模を示す資本金の額や負債の総額が一定の基準よりも上回っていれば、監査という役割を強化しなければ、社会に与える影響が大きいため、監査役は会計監査権のみならず、業務監査権が付与されていますし、会計監査人を設置しなければなりません。しかしながら実務社会上の大多数の株式会社は、資本金の額および負債の総額が大きいわけではないので、大抵の株式会社は、監査役が設置されていたとしても、会計監査権のみが付与され、業務監査権は付与されてはいません。このことは、会社が役員を相手に訴訟等の訴えを提起する際に会社の訴訟代表権に関わってきます

代表者からの相談

さて話を戻しますが、公開会社の代表者から、取締役1名が辞任する意向を受け、受理したのですが、問題はありませんか?という質問でした。

2つの選択肢

取締役会の最低構成員数は、取締役が3名以上存在しなければいけないので、最低員数を欠くこととなります。業務執行や大事なことを決議することができない状態となります。そこで採り得る処置は次の2とおりが考えられます。

  1. 辞任した取締役の後任者を選任し、就任してもらう。
  2. 公開会社を「『公開会社ではない株式会社』(株式の譲渡による取得について制限のある会社)で『取締役会設置会社ではない株式会社』」とし、取締役を2名とする定款変更の手続き

後任者の選任および就任

まず一つ目の後任者を選任し、就任してもらった場合です。

業務執行にしっかり関わる後任者が見つかり、株主総会で選任、被選任者が就任すれば、問題は解決します。

その昔、登記簿を見ると取締役の名前がずらりと並んでいることがよく見受けられたのですが、面談を重ねていくと、実のところ業務執行に携わることもなければ、会社に一度も出てきたことがない、名前だけが記されている(名義)取締役が多かれ少なかれ存在している会社が大分ありました。
 旧商法時代は、それでも法令上の最低員数が欠けてしまわないように、経営者のお身内の方が、随分駆り出されていたこともあるようでした。法令や登記上は頭数は揃いますが、態を為していないため、いざ、会社に不祥事があると、名前だけ記されている取締役にも責任が問われることもあったため、実社会と法令上の要請が噛み合っていないことから不都合がありました。

後任者が見つからず、今後は取締役2名以上を基本とする機関構成としたい要望

問題は、2つ目の後任者が見つからなかった場合です。
 本テーマで取り上げている会社は、公開会社でした。公開会社である以上、取締役会設置会社であり、株式の譲渡による取得に制限が設定されていない株式会社でした。

 取締役会を設置するのかどうかは、取締役員数が3名以上でなければいけないことなので、2名では構成することができないことを先にも記しました。故に取締役会設置会社を廃止することを検討しなければなりません。

 株式の譲渡による取得の制限は、潜在的に会社と株主の関わりを表していると言えます。すなわち経営について、外部から株主として関わって欲しくないことが、この規定から感じ取れるものです。株式会社制度の立法政策上の論点を考えてみると、もはや事業規模が、個人事業主の程度とまでは言わずとも、大きくはないことを想定して、現在の会社法は株式会社を構成するものとして捉えているようです。

公開会社である以上取締役会は必須でしたので、株式の譲渡による取得に制限を設けることを検討します。並行して取締役会設置会社の廃止を検討します。

上記は、今回の論点の核になることを記しましたが、登記申請時に納税する登録免許税について考えてみます。
役員変更に関する事項で、小規模な会社であるので金1万円、取締役会設置会社に関する事項で金3万円、および定款変更に伴うその他の事項に該当する事項で、金3万円が必要であることがわかります。最後に取り上げた、その他の変更区分の登録免許税のことですが、案外、変更事項に対して広く設定されており、この時期を利用して、実態に則す様に、定款の他の規定変更も検討します。

株式の譲渡制限および取締役会の廃止以外に変更する事項

今般同時に定款の規定を変更する典型的な事例として、以下に記しました。なお、各事例の詳細な手続きの解説は、また別の記事で扱います。

  • 株式の譲渡制限に関する規定の設定
  • 取締役会設置会社の廃止
  • 株券の発行に関する規定を不発行とする旨の変更
  • 監査役設置会社の廃止
  • その他

その他と記しましたが、登記申請時の登録免許税の納税額を意識した場合、その他の変更区分に該当するものであれば、変更する事項を増加させたからといって、登録免許税が増額するわけではありませんので、一義的に、法令上の手続きに問題が生じなければ、申請することができると言えます。もっとも他の変更する登記事項との均衡を考えないと、全ての手続きがやり直しとなることも考えられるため、慎重に検討する必要があります。

株式会社の登記申請の相談を承ります
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民事信託・遺言・後見・相続

「裁判上の」相続の放棄

こんにちは 今回は「裁判上の」相続の放棄について 記します

何回か取り扱ってきた事案ですが 大事なことでもあるので 繰り返しの要素が盛り込まれた内容になってしまうかもしれませんが 記したいと思います

遺産の分割協議に応じたことや相続分を譲渡したことでは「相続の放棄」とはならない

なぜか よく勘違いされがちですが 他の相続人から せがまれて 「自身は何も取得できない・もらえない遺産の分割協議に応じたことでもって相続を放棄した」ことや「他の共同相続人に自身の相続分を全部譲渡した」ことで 相続の放棄をしたことにはなりません

もらえるものが何もないのに 相続の放棄にはならないとは どうしたことか?! と訝る方もいらっしゃるかもしれません

「相続」には、二種類の財産を相続する意味が込められている

実は 相続とは「資産」を相続するとともに「負債」も相続します

さて「資産」「負債」とは何なのでしょうか? 会社経営をされてきた方や経理の仕事に関わってきた方にとっては わかるかもしれませんが とってもとっても簡単に言うと

「資産」とは?

プラスの財産のことです わかりやすく言えば 現金、預貯金、不動産、株式(株券)等のことです

この資産については 簡単に想像することができると思います

では

「負債」とは?

マイナスの財産のことです こちらもわかりやすく言えば 被相続人が他人から借りていたお金を支払う義務、どなたかの支払いについて保証する義務(保証人の義務)などです

この債務は被相続人の個性に特化した義務 例えば 債権者の依頼が 被相続人自らが絵を描く義務について 被相続人がその対価を受け取らないままに相続が開始したならば その相続人は義務を負わないこととなります もしも対価を領収していたら 契約の解除等で返金の問題が残りますが 基本的に絵を描く義務は履行できないので 契約は終了します

さて 代替性のある(謂わばあまり債務者の個性にとらわれない)債務は 相続の対象となります

「相続手続」で見落とされがちなもの

それは債務についてです もっとも債務は 資産と違い 何かモノで残っていることは あまりなく 敷いて残っているとすれば 債権証書の写しがあるのかないのかが 関の山だと思います

以前 このブログ記事で取り扱いましたが ある物事について「ない」ことの証明は 悪魔の証明と言われ どれほど証明しようと思っても 困難を極めます
もちろん「債務がない。」ことの証明についてもです

生前の被相続人との交流の有無

被相続人と生前から交流があり 相続開始後も信頼関係が存続するなら 債務は生前の交流から被相続人の素業を推定しながら 心配なら 貸金業者の事案は信用情報を取り扱う機関に確認できるでしょう
一方 資産は 相続開始後 より具体的な資産を知ることとなり 積極的に相続することを前提にして 手続きを行うでしょう

ところが 被相続人との交流が生前から無い相続人にとっては 資産を網羅的に調べることでさえも困難極めます
まして債務は 先に記したとおり貸金業者案件で信用情報を共有している事案であれば 機関を通じて訪ね当たることもできるかもしれませんが 個人間の契約であった場合は さらに困難を極めます
そうすると 被相続人の素性を知らない相続人にって 資産が存在するからと言って いたずらに相続手続をすべきではないほうが無難かもしれません

さて そこで 被相続人の生前の素業を知らない相続人にとって 結果的に他の共同相続人からの要望に応える形で 相続分の譲渡に応じたり 遺産分割の協議に応じるとどのような法律上の効果が生じるのでしょうか?

相続債務を 一部の共同相続人が負うこととしたとしても 債権者に対抗できない

さて 小見出しに記しましたが 今回の「裁判上の」相続の放棄について とってもとっても利点のあることを 記します

冒頭でも記しましたが 何も遺産のもらえなかった相続人であっても 「裁判上の」相続の放棄の申述をしなければ 債権者からの請求に対し 対抗することはできません

このことは「遺産分割協議書」や「相続分の譲渡書」に 被相続人の負っていた負債について特定の共同相続人が義務を負うと合意していたとしても その事実だけでももって債権者からの支払いを拒むことはできないのです

債権者にとって 共同相続人間で協議した内容 特に資産については 債権者が求めるものが特定物ならば話は別ですが 金銭ならば将来的な換価のための資産関係がどうなるかくらいの話であって 問題は その相続人から回収するのが合理的なのかを第一に考えます

裁判上の相続の放棄の有無によって矛先がかわる

ところが この裁判上の相続の放棄の申述を行い受理されていれば 債権者の請求を拒むことができます

被相続人名義の建物で同居してきた相続人は かなり難しい対応を迫られることになりますが 被相続人の生前に交流がなく素業もわからず 遺した資産についてもご興味がない相続人であれば 相続債権者から 不測の請求に対し防御するための予防線を張ることは重要なことであると考えます 

何ももらわなかったから義務を負わない勘違いは危険

繰り返しになりますが 相続によって何ももらう意思がないなら 裁判上の相続放棄の申述をすべきと考えます

熟慮期間を経過してしまったら 相続の放棄の申述はできませんが その熟慮期間は 被相続人が死亡した日付ではなく 相続人にとって相続があったことを知った日 であるため もしかしたら まだ熟慮期間が開始していない可能性もあります

もっとも 他の共同相続人からの連絡を受けてしまった段階で 熟慮期間は開始するので 相続があったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に「相続放棄の申述」申立をしなければなりません

どうか ご留意を

「『裁判上の』相続放棄の申述」について 相談を承ります
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任意後見 民事信託・遺言・後見・相続

任意後見契約について

こんにちは、今回は、任意後見契約のことを記したいと思います

まず はじめに 任意後見契約締結までに それ相応の時間を要します

初回面談終了時に 契約締結は まずありません

初回の面談時に そのまま契約締結はありえませんし皆無です

任意後見は契約を締結したら それでお終いではなく 契約から判断能力が低下し 任意後見が発動し 基本的にご本人様が一生を遂げるまで 関係は続きます

上記のとおり とってもとっても長く続く関係について 一回二回の面談だけで 契約が締結できるとは 到底考えられません 任意後見契約を締結する前に 月々に面談をすることによって 本人様の判断能力を見ていくとともに ご本人様は 見守りをしてくれている人物を信頼して良いだろうか? と吟味する必要があると思います 見守る側も ご本人様との信頼関係をお互いに築きあげられるだろうか 意識していますし 双方確認し合うことになります そうして お互いに納得した段階で 任意後見契約の締結に至ります

以上 任意後見契約に至るまで 簡単に記しましたが 任意後見の相談を希望される前に考えなければいけないこと 意識していただきたいことを記しました

ご相談の前に、意識して頂きたいこと

任意後見のご相談は 相談に来られる前の段階で よくある話ですが お亡くなりになられた後のこと 死後の相続や葬儀 お墓のことで相談される方が大半です
しかしながら 実社会で一番困ることは ご本人様の判断能力が低下した段階で生活をどうするのか そのことがむしろ重要なことです

死後のことより気にしてほしいこと

亡くなられた後のことは ご自身が与り知らないことでもあるので 家族(お子さんやご兄弟)に迷惑をかけるわけにはいかない心境のもとで 不安に感じていらっしゃるのだろうと思われます

それでも 少しだけ立ち止まって考えると 本当に死後に迷惑をかけたくないのであれば 今 しっかりしていらっしゃるときに 予防線を張ることを考えた方が得策です

その予防線とは 何か それは ご自身の判断能力が低下し認知症が始まり その後の余生をどう過ごすのか このことが置き去りにされて相談に来られるケースがよくあります

判断能力が低下して認知症になり亡くなられるまでの人生をどう過ごすのか?

確かに ご自身の死後 遺されたご家族が気になることはよくわかります それでも ご自身の判断能力が低下し 認知症になったときに 頼ることができるご親族がいらっしゃるのかどうか このことは 認知症になってからのご自身の人生について大きな問題となるのです

判断能力が低下しても より良く生きるために

以外にも ご自身の判断能力が低下し認知症となったときのことを想像される方は 今日において ようやく認知されてきたところのようで まだまだ少ないのが現状です

判断能力が低下すると

なぜ、ご自身の判断能力が低下し認知症となったときの対策を考えなければならないのか。それは、判断能力が十分備わっているときと比べ、認知症が進行するとともに、できることが減っていってしまうからです。そして、そのことでさえも、本人は、気がつかず、いざその現場に直面して、立ち往生することが多いにしてあります。立ち往生して一番困るのは、他の誰でもない、ご本人様ご自身です。周囲は、手探りで対策を講じますが、その対策が本人とって望んだものかどうかは置き去りされ、物事がどんどん進んでいきます。

判断能力が低下しても、自身が望んだ生活をする手段として

先に見てきたように、判断能力が低下してしまった段階で、ご自身がどうありたいのか、意思を表示することさえも難しいものです。では、判断能力が低下する前にできることがあるのか?

あります

それは、事前に、ご自身の判断能力が低下した以後、どうしたいのか決めておくことです。その決め事に基づき、任意後見契約締結時に、ライフプランとして財産管理から身上監護までのあり方を、事前に決めておくのです。このことは、法定後見と大きく違うことです。

判断能力が低下し、ご自身では、どうすることもできなくなった段階では、直近におけるしたいこと、そして、先に記したご自身の死後における相続手続き等の事務手続を決めることや、誰かに託すことは、容易なことではないことは想像できると思います。

ゆえに 判断能力が低下する前に 準備をする一環として任意後見契約を締結します

次回は、任意後見契約に向いている人について記したいと思います

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事務所より

言質

こんにちは 今回は「言質」というタイトルを記しました 端的に言うと「権限のある方から『大丈夫 問題ない。』と 言われました。」となど その発言が証拠として質を取っていて問題ないと認識され 事実が進んでいく というものです

先に記したとおり「『大丈夫 問題ない。」』と言われました。」 と面談に応じていて よく聞かされます

ただ その根拠はどこにあるのか を ろくに確認をせず 単に「あの人が言っていたから」とご発言される方が たまにいらっしゃいます

最近では 「市役所の方(おそらく市民課の窓口で対応している職員)から『これで大丈夫です」と言われたんですけど?!」とおっしゃっていたことが印象的でした

昨今 法律専門職には門戸は開かれていないのですが 相続人が被相続人の戸籍を収集する際に ご自身の住所で直系の尊属卑属の関係であれば 戸籍をまとめて交付を受けることができる 広域交付の制度があります

ただ交付した行政庁(例えば被相続人の最後の住所地がA市)でも本籍地が他の行政庁(例えばB 市)だった場合 そのB市を本籍地とする除籍事項証明書(または除籍謄本)についてもA市で入手が可能ではあります ただし A市で交付が可能だったとしても B市が記した戸籍事項に誤りがあった場合 その誤りに対する問い合わせは 交付したA市ではなく 記載し管理しているB市に問い合わせることとなります

その誤りに気がつかず 交付したA市は「大丈夫です」と言い放っているわけですが 万が一 登記申請に対する審査で その誤りの影響で 受理できないと事実認定した場合 上記の言質を取っていたとしても 登記所は認めないこともあります

単なる誤りでは済まされない

その「大丈夫」という発言 その大丈夫な理由・根拠はどちらにあるのでしょうか ご自身で 登記の申請をなさるのであれば そのご自身が責任を負い 結局 その補正のための手続きを踏まなければなりません 先の相続登記申請について言えば 単に相続登記申請1件だけならば良いのですが その後の不動産の売却が控えており 買主となる方が 既に引越し等の準備をしており 予定がずれ込むと 契約条項の違反となり 最悪な場合 契約の解除 損害賠償を請求されることにもつながります

 法律専門職は 「誰かが言ったから」という発言は 基本的に消極的に考えています よほど権限や裁量権を持っていることが明らかで その身分が明らかでない限り あくまでも法令規則通達をよく見た上で 接しています

個人の方が自ら行政手続の申請に挑むときの自己の管理にもとづく注意義務とは違い 法律専門職が業務を扱うときは 善良なる管理者の注意義務が課されている以上 その職責に対して費用報酬にも含まれていると認識を持っていただきたいものです

言質は よほど権限を持っている方の発言でなければ 無価値なものでありますし 言質を保証する書面でもない限り 言った言わないの水掛け論が繰り広げられるわけですが 結局は 法令規則通達にどう記されているのかを拠り所にして処断されることもあります

あくまでも法令規則通達が基準 行政手続は基本的に間違いないことが前提事実の上にして組み立てられている

その昔 某執行保全裁判所のホームページに 手続き案内にかかる書式を掲載していたそうですが その内容に問題があり その書式に基づいて作成された申立書では結局は受け入れることができず 受付担当官は謝ったそうですが 取り下げを促されたということもあります もちろん その誤りに対して 申立をしようとして弁護士 当事者 後方支援に当たった司法書士は 文句を言ったそうですが それでも 法令に違反している以上 受け付けるわけにはいかないといわれ 却下(処分)となったそうです

今一度 根拠を確認すべき

頑張って ご自身で手続きに挑む方について 時折 言質を取ったから大丈夫 と安心していらっしゃる方がいらっしゃいますが そうではなく 今一度 ご自身で なぜ この人は大丈夫と言っているのだろうか と立ち止まって 考えていただきたいと感じます

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