こんにちは、不思議な問い合わせがあったこと、その問い合わせの対応後に感じたことを記しました。
内容は、「不動産登記の名義の変更が義務になったと聞かされました。」とのことでした。なんだか腑に落ちないセリフだなと思い詳細を聞くと、どうも相続することが、あたかも義務であるかの様にある行政庁から指導を受けたように感じました。
なんでも、「滞納処分をするために、相続登記が必要で、そのことが相続人には登記を申請する義務が課されている。」のような指導がされた様に聞き取れました。
もっとも、当事務所に電話で、依頼するか相談したいとのことでしたし、電話だけのことだったので、さらなる詳細は聞くことはできませんでした。そもそも連絡の後、本当に当事務所に訪ねてこられるのかどうかもわかりません。ただ、違和感を覚えたことは事実です。
相続する意思は相続人が決める
相続を(承認)するのかしない(放棄する)のか、それは相続人の自由な意思で決めることができます。被相続人の債権者、相続人の債権者はもちろんのこと、なんらかしらの租税債権をもっている行政庁でさえも、相続することを強要することは許されないものです。
熟慮期間経過の蓋然性のある相続放棄
他の相続人は、裁判上の相続放棄をするとのことでしたが、被相続人が死去して十数年以上経過しているようで、なお一部の共同相続人は同居しているようで、熟慮期間経過の蓋然性がある事案といえます。故に単なる書面による申立ておよび審理ならびに受理という事案では済まないことも容易に想像できます。もしこの事案の場合、裁判所は、申立人を呼び出し、事情を聞くことをします。その上で、受理不受理を決定します。
制度趣旨を履き違えるな
本題に戻りますが、相続をすることと相続登記申請をする義務は、まったく別次元の問題です。相続することは、義務ではありませんし、誰かに言われたからするものでもありません。相続人が自身で決めることです。上記の事案で考えられることですが、おそらく電話をしてきた相談者は、なんらかの事情があり、行政庁に相談したようですが、相続登記申請の義務化に乗じて、滞納処分による差押登記の嘱託をするにあたり、代位による登記嘱託費用を一時的に立て替えることを嫌ったのではないかと考えられます。
依頼者は何を望んでいる?
電話だけだったので、相談者は結局何を望んでいるのか、よくわからないまま、やりとりを終えたのですが、費用をかけて相続登記を完了させても、競売開始決定が下され、売却許可決定がでた場合、ご自身のものにならないことは、容易に想像でき、一体何を望んでいるのか、よくわからない発言でした。
相談者の振る舞いから、おそらく熟慮期間は経過し、法定単純承認事由の事案なのだろうと推測できるわけですが、誰がいつから税金を滞納し、その滞納額によっては任意売却の方法をとるべきことも考えられなくもなく、そうすると、相続登記申請をする価値があると言えますが、その調整ができている様には、思えませんでした。
先月から施行された「相続登記申請の義務化」ですが、この義務化に乗じ、熟慮期間の問題もありますが、相続をすることと相続登記申請をする義務は、全く別物であり、次元の違うことを理解してほしいと思います。
司法書士 大山 真 事務所
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