カテゴリー
会社・法人・企業法務

取締役・理事の退任事由(破産・後見開始)

こんにちは
今回は、株式会社、一般社団法人・一般財団法人の取締役・理事の退任事由について、記したいと思います。

会社法等の特別法による退任事由

会社法・一社財団法人法等の特別法で直接退任事由となるのは、任期満了、辞任、解任、欠格事由に該当、法人の解散が該当します。

実務では、任期が長期であるほど忘れられがちですが、任期が存在する以上、その期限が到来すれば退任となります。

 辞任は、確かに民法の規定(委任に関する規定)かもしれませんが、会社法等の特別法の規定では、法令定款による定足数を満たしていない事態に陥った場合は、後任者が就任するまで、役員としての権利義務が課されることとなります。元役員としては、会社・法人に対し、後任者を早急に選任し就任させ、退任登記申請をするよう請求することができるに留まります。

 解任および欠格事由に該当は、イメージが掴みやすいと思いますので、詳細は割愛します。

一般法による退任事由

 それ以外は民法の規定の委任の終了事由が、役員の退任事由となります。それは受任者の死亡、後見開始の審判を受けたこと、破産手続開始の決定を受け復権を得ない者になります。
 なお破産手続開始決定を受け、未だ復権を得ない者とは、平たく言うと、未だに破産手続きが継続中で裁判所から免責の許可決定がされていない状況のある方のことです。

 蛇足ですが、論理的に、法人格が消滅してしまったら、役員の存在意義もありませんので、もちろん退任となります。

破産手続開始決定、後見開始の審判開始による退任とその後の再任

民法上の委任の終了事由でもある、破産開始手続の決定を受け未だ復権を得ない者は、会社法等の特別法では、欠格事由ではありません。すなわち、株主総会、社員総会、評議員が選べば、選任できます。何だか、一般人の社会常識から考えると、不思議な感覚もあるかもしれません。

 もう少し整理して考えると、在任している当該取締役・理事が破産手続開始決定・後見開始の審判を受けた段階で退任します。このことは、特別法に規定がなかったからと言って、在任し続けるわけではなく、民法の適用を受けて退任となるのです。

破産開始決定を受けたが復権を得ない者、被後見人に対し再任できないのか

 それでは、先の事由によって退任すると、役員が一人しか存在しなかった株式会社または法人は、役員が欠けてしまう事態が生じます。

 確かに裁判事務手続きを使えば、仮取締役や職務代行者を選任し、急場を凌げますが、事態が終結したわけではありません。事業の確信たる重大な業務として活かされてきた技能保持者が、当該退任した役員が重要人物であることはありえます。そう考えると、退任したけれども、会社法人にとっては、貴重な人材であることに変わらないと言えます。

また被後見人についても、全てのことに判断能力が欠けているわけでもない被後見人は存在し、全てのことができないわけではなく、これまで精通している業務には、何ら支障がないことや、一部の業務執行は、能力を健常者と同様に発揮できることもあり得ます。見方を変え、多様性を意識したとき、より良い人材を取り入れた方が、会社法人の事業活動は、より有意義なものとなると考えることもできます。

そう考えると、破産者で復権を得ない者も、後見開始の審判を受けた被後見人も、再任を認めても良いのではないかと考えられます。

被後見人が就任するには

なお被後見人の就任する場合、その法律行為は、民法の規定で、後見人の同意という行為では足りず、代理行為もしくは被後見人の行為について追認という形で、有効な法律行為を形成されるのかもしれませんが、会社法では、就任についての意思表示は後見人の関与が必須となりますし、被後見人の同意が必要となります。

会社役員変更登記について知りたい方は、当事務所の公式ホームページ「役員変更登記」をご覧ください。

会社法人役員変更登記の相談を承ります。
司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357

事務所近くの公園の桜並木でした 春といえば出会いと別れ、退任の季節なのかもしれませんね。
事務所近くの公園にて
カテゴリー
民事信託・遺言・後見・相続

受遺者・遺言執行者の催告

今回は、遺言に遺贈の記載があり、その遺贈を受けるのか受けないのか、また遺言の内容を実現する遺言執行者の就職の催告のことを記そうと思います。

そもそも民法の規定は

民法の規定をよく見ると、遺贈に対して応答する等の意思表示は、実は限られた方に向けた規定であることがわかります。

包括受遺者と特定受遺者の違い

まず、整理しておきたいこととして、包括受遺者と特定受遺者の存在があります。

結論から記すと、民法の遺贈に関する規定のいくつかは、特定受遺者に向けられた規定であることがわかります。なぜなら、包括受遺者は、民法の規定上では、相続人と同じ立場として扱われます。すなわち遺贈の効力が生じたことを知ったときから3ヶ月以内に承認するのか、放棄をするのか、熟慮期間内に対応しなければならないこととなるからです。

特定受遺者の遺贈の承認放棄の催告

では、特定受遺者は、どうなのか?
それは民法第987条に規定があります。

第九百八十七条 遺贈義務者(遺贈の履行をする義務を負う者をいう。以下この節において同じ。)その他の利害関係人は、受遺者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨の催告をすることができる。この場合において、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなす

E-Gov より
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20220617_504AC0000000068&keyword=民法#Mp-At_988

とあります。

この規定をよく見ると、催告した結果、何も応答がなかった場合は、「承認したものとみなす。」となっています。


遺言執行者に対する就職の催告について

次に、遺言執行者の就職の催告について、みていきます。

実は、このことも民法に規定があります。

第千八条 相続人その他の利害関係人は、遺言執行者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就職を承諾するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、遺言執行者が、その期間内に相続人に対して確答をしないときは、就職を承諾したものとみなす

E-Gov より
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20220617_504AC0000000068&keyword=民法#Mp-At_1008

とあります。

この遺言執行者の就職のことも、実は、催告したが確答がない場合は、「就職を承諾したものとみなす。」とあります。

私見ですが、やはり、遺言によって定められた遺言執行者にその執行をしてほしいという念いが優先されるべき現れなのだろうと思います。また遺言執行者を指定するというスキーム(民法第1006条)もありますが、その場合も、指定する人物に遺言者が遺言執行者の指定を託した意思を尊重することが重視されているものなのだろうと考えます。

10月の13夜の月でした

遺言に関する相談を承ります。

なお、業務の概要は、事務所ホームページでも紹介しております。是非ご参照ください。

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357
事務所:千葉県白井市冨士185番地の21

カテゴリー
事務所より

問い合わせ(2)

こんばんは、今回は、事業者様からの問い合わせの対応について記します。

直接ご依頼をご検討されている事業者様へ

まず、登記関係、裁判事務関係で直接当事者でいらっしゃる事業者様からの問い合わせは、誠心誠意を以って対応いたします。

いわゆる紹介事業者からの問い合わせ

残念なことですが、他者からの斡旋を受け、当事者に対し、本人確認もすることもなく、事務を取り計らうことはできかねます。

紹介事業者だと言わない事業者が存在する

特に、最近は、具体的な社名はここでは控えますが、電話をしてきた担当者が、あたかも当事者であるかのように言葉を切り出し、具体的に話を進めるために、来所の予約のご案内をしようとすると、ようやく紹介事業者であること、紹介事業者と語ってはいませんが、事業者の従業員の福利厚生の一環として、先生の事務所を紹介してほしいとおっしゃる紹介事業者が少なからず存在します。

お願い

まず紹介事業者様にお願いですが、まずは、日本司法書士会連合会もしくは各司法書士会への問い合わせをお勧めいたします。

事業者様の紹介の趣旨が判然としませんが、もしお持ちになっている理念が、司法書士制度と合致しており、司法書士という存在を社会に広めていきたいという大きな理念をお持ちであるならば、ぜひ組織へ問い合わせをお願いします。

日本司法書士会連合会のホームページ
https://www.shiho-shoshi.or.jp

千葉司法書士会のホームページ
https://chiba.shihoshoshikai.or.jp

そもそも論として

そもそも、なぜ斡旋に対し対価を支払う義務が生じる形の紹介を受けられないのか?

それは、「不当誘致」につながるからです。不当誘致によって事件を受託し、その執務において、公正を保つことができなくなるからです。このことは何も不動産取引の当事者のみならず、当事者と私たち司法書士との間で交わす委任契約(とくに報酬)にも影響を及ぼします。

故に、紹介事業者からの紹介事案は、一切対応してはおりません。

商売のあり方の再考を

 事業者様にとって、商売の仕組みとして成立の足枷となるかもしれませんが、それが現実です。実際に登記について困っている方がいたとしても、紹介事業者様が対応できることは、日本司法書士会連合会もしくは各司法書士会等の組織を紹介することができるくらいであり、一事務所への金員等の対価を求める形での紹介は、司法書士法等の法令規則によって対応することができないことを申し添えます。

徐々にですが紅葉が進んでいます。
カテゴリー
任意後見 民事信託・遺言・後見・相続 法教育 高齢者権利擁護

身元保証と利益相反

今回は、成年後見における身元保証と利益相反のことを記そうと思います。

唐突な題目ですが、想定される事象は、成年後見人と被後見人の関係を主に見ていきます。このことは会社と代表者との関係でも問題視されるかもしれません。

身元保証について

まず、身元保証ですが、病院への入院、高齢者の福祉施設への利用にあたり、身元保証人または身元引受人という名称でもって、親族であれば、医療機関や施設から就任して欲しいと要請があると思います。

この身元保証ですが、もう少し丁寧に考えると、いわば、主たる債務者の身に万が一なことがあったときに、金銭的な保証をして欲しいこと、身元を引き受けることを医療機関もしくは施設に対して保証するための契約の一つと考えることができます。

民法上の保証契約は、まさに書面で以って契約を行うわけですが、その際に、具体的な損害額がもちろん確定はしていませんが、まさか青天井に請求できるとなると酷な話でもあるので、極度額が設定され、限定的な根保証契約を締結することとなります。よく見てみると医療機関や施設へ、主たる債務者の債務や身元の引き取りを行う債務を保証する契約であり、主たる債務者は保証契約においては、当事者ではありません。

保証委託契約について

では、主たる債務者が、医療機関や施設から、身元保証人をお願いしてもらってくださいを言われ、親族等が、保証人となる事象もあるのですが、このときの主たる債務者本人とその身元保証人となる親族の関係は、保証委託契約と考えることができます。

この保証委託契約と先の保証契約の当事者の関係は、明確にしていただきたいと思います。

利益が相反するとは

先の記事で何度か触れています。参考までにブログ内の記事を貼り付けましたので、参考になさってください。



さらに補足しますが、利益が相反する事象とは、具体例をあげると、子が未成年である場合、親子間での取引や相続手続における遺産分割協議において、子の親権者の地位である親御さんと生存配偶者としての相続人が同一人物であった場合、その親御さん一人で、全てが決めることができ、子にとって不利益が生じるかもしれない可能性が孕んでいる権利義務関係であることが言えます。この場合は、家庭裁判所から特別代理人を選任就任し、子の代わりに法律行為を対応することとなります。

付言しますが、会社と代表者間でイレギュラーな(例えば会社が所有していた不動産を代表者個人に売り渡す場合、取引内容いかんいよっては、会社が不利益を被る可能性のある)取引については利益相反となりますが、会社が継続反復して売上単価が固定化されている取引(小売業で代表者が、会社が設定したその商品を定価で購入する事例)は利益相反とはなりません。

身元保証と利益相反のこと

さて基本的な利益相反の事象を見てきたわけですが、身元保証と利益相反のことに注目したいと思います。

身元保証をした人物が、成年後見人等の法定代理人、任意後見契約によって受任者である任意後見人であるとき、以下のような利益が相反すると考えられています。

  1. 保証債務を履行したことにより本人、被後見人に対し求償権を請求することとなった場合
  2. 保証委託契約を任意後見契約発効前に取り付け、その後、任意後見契約が発効したのちに、身元保証委託契約に基づく保証料債権の発生とその債務に基づく弁済が無尽蔵に債権債務が作出される恐れが生じる場合

1については、結果的に債権譲渡があったことを作出することができ、事象によっては、元の債権者に対する弁済よりも高額に、求償債権として回収されてしまう可能性を孕んであります。2については、もはや本人の判断能力が低下している段階で、本人に代わって任意後見人が財産管理を担うわけですが、その反面、身元保証委託契約に基づく保証人である以上、もはや保証料という名目の請求権を無尽蔵に作り出し、本人に代わって任意後見人たる委託を受けた身元保証人が自ら弁済する形となり、本人に不利益が被る可能性が考えられます。

実務上職業後見人が身元保証できない事象

なお、成年後見の事件によっては、身元保証をしたことにより、保証債務の履行をしたが、結局求償権を行使しても回収できる見込みがない場合や、身元を引き受けたとしても、被後見人や任意後見人が付された本人が死去したのちの遺体の引き取りは元来、成年後見人、任意後見人の業務は終了しているはずで、法律上引き取る義務はありません。もっとも実務上は、被後見人等に身寄りのない人であり、緊急避難としてご遺体を預かり、火葬まで対応され、相続人が見つかるまで、遺骨を預かるという事象もあるようです。相続人が見つからなければ、市区町村長が対応することとなります。

利益相反を回避する可能性(任意後見)

なお、私見ですが、任意後見契約である場合は、契約締結時、委任者の判断能力に問題がなく、任意後見人受任者と契約を締結する段階で、身元保証債務履行時に対応するための預託金の設定および任意後見契約が発効した後に、委任者に不利益が生じないよう、身元保証料その他名目いかんを問わず保証料を任意後見人は請求することができない旨の特約を付すことにより、民法代理の規定にある自己契約の禁止の規定に対しもはや債務の履行以外存在しないため、身元保証料債権を無尽蔵に作り出し回収する行為を契約条項上防止するそれなりの工夫が必要であると考えます。

紅葉の季節

生前贈与の相談を承ります。

業務の概要は、事務所公式Webページでも紹介しております。ご参照ください。

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357
千葉県白井市冨士185番地の21

カテゴリー
写真・撮影

9月に出会ったお花たち

こんにちは

たまには、装いを変えて 今月撮ったお花の写真を試験的に、この投稿で公開します。

時折、このような投稿も上げていこうと思います。

なお、業務に関する投稿をご覧になりたい場合、ぜひブログ内の検索機能をご活用ください。

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357