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事務所より

明日で大きく変わります(成年年齢のこと)

こんにちは

今回は、いつもと違い、相続のこと会社法人のことではなく、明日、施行される成年年齢が20歳から18歳に引き下げられることを受けて、当事務所ブログでも記したいと思います。

そもそも成人すると何がどう変わるのか?

何がどう変わるのかですが、まず民法の規定の行為能力の制限が解かれます。もうすこし具体的に言うと、親御さん等の親権者・未成年後見人の関与なく、一人で法律行為が行えることです。

もっとも、法律行為とは何ですか?と疑問に持たれる方も、いらっしゃると思います。

法律行為とは?

法律行為とは、簡単に説明すると、契約等において意思表示をし、その締結を完結させることができ、その契約締結をしたことによって、権利を得、義務を負うことの能力のことです。

以前から買い物等で、モノを買ったりしているから問題ないと感じるかもしれませんが、もっともっと高額な取引、例えば、不動産の売買契約についても、親御さん等の関与なしに、締結できてしまうのです。

よく言われていることですが、悪徳商法のターゲットの話があります。うまい話なんてそうそうありません。何だかおかしいなと思ったら、相手と距離を置くようにしましょう。

本人以外のご家族への影響 特に養育費のことは?

 親御さんにとって気になることは、養育費のことでしょうか。養育費については、法務省のホームページの記載を引用します。

A 子の養育費について,「子が成年に達するまで養育費を支払う」との取決めがされていることがあります。成年年齢が引き下げられた場合にこのような取決めがどうなるか心配になるかもしれませんが,取決めがされた時点では成年年齢が20歳であったことからしますと,成年年齢が引き下げられたとしても,従前どおり20歳まで養育費の支払義務を負うことになると考えられます。

  また,養育費は,子が未成熟であって経済的に自立することを期待することができない場合に支払われるものなので,子が成年に達したとしても,経済的に未成熟である場合には,養育費を支払う義務を負うことになります。このため,成年年齢が引き下げられたからといって,養育費の支払期間が当然に「18歳に達するまで」ということになるわけではありません。例えば,子が大学に進学している場合には,大学を卒業するまで養育費の支払義務を負うことも多いと考えられます。

  なお,今後,新たに養育費に関する取決めをする場合には,「22歳に達した後の3月まで」といった形で,明確に支払期間の終期を定めることが望ましいと考えられます。

法務省のホームページより:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00238.html

法務省のwebページにもあるように、実は、画一的に20歳になるまで、という決め方だけではないのです。また既に取り組めがされているのであれば、その取り決めに基づいて、請求し、履行されるべきと解されています。もっとも、家庭裁判所の書記官から、まず第一声は、成年に達成しましたか?就学中ですか?、と問われることことはあります。

養育期間中に立て替えた費用は?

それから、未成年の期間中に、養育費の支払いが滞った期間があれば、他方の親御さんから立て替えた事実に基づいて離婚後の紛争調整調停で、主張することもできないわけではありません。もし不調となったとすれば、訴訟という段取りを踏むと考えられます。

成年年齢と喫煙・飲酒・公営競技場での公共賭博のこと

さて、18歳、19歳の当事者の方を対象に、もう少し記そうと思います。これも言われていることですが、お酒の飲酒、タバコの喫煙については、民法の成年年齢が18歳に引き下げられても,年齢制限は,20歳のまま維持されます。根拠法令が、民法ではなく、飲酒に関しては、「未成年者飲酒禁止法」、喫煙に関しては、「二十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関スル法律(令和4年4月1日で改名)」にあり、制限を受けます。

公営競技と成年年齢のこと

また,公営競技(競馬,競輪,オートレース,モーターボート競走)の年齢制限についても,20歳のまま維持されます。競馬は「競馬法」、競輪は「自転車競技法」、オートレースは「小型自動車競走法」、モーターボートは、「モーターボート競争法」により、制限を受けます。
飲酒、喫煙は,健康被害への懸念や,ギャンブル依存症対策などの観点から,従来の年齢を維持することとされました。

そもそもなぜ成年年齢を引き下げるの?

そもそも、なぜ引き下げるのですか、という疑問が湧いてくるかもしれませんね。そのことも、法務省のページに記されています。引用しますので、見ておきましょう。

我が国における成年年齢は,明治9年以来,20歳とされています。

  近年,憲法改正国民投票の投票権年齢や,公職選挙法の選挙権年齢などが18歳と定められ,国政上の重要な事項の判断に関して,18歳,19歳の方を大人として扱うという政策が進められてきました。こうした政策を踏まえ,市民生活に関する基本法である民法においても,18歳以上の人を大人として取り扱うのが適当ではないかという議論がされるようになりました。世界的にも,成年年齢を18歳とするのが主流です。  成年年齢を18歳に引き下げることは,18歳,19歳の若者の自己決定権を尊重するものであり,その積極的な社会参加を促すことになると考えられます。

法務省のホームページより: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00238.html

憲法改正国民投票権、選挙権年齢が18歳と定められたこと、世界的にも18歳とするのが主流である、とのことのようです。

大事なことは、選挙権の行使

冒頭で、やや怖いこと、何だか面倒なことに巻き込まれるかもしれないと感じるかもしれません。この改正も含めて、18歳からという年齢のことで大事なことは、今回の成年年齢の引き下げとは直接関係ないかもしれませんが、選挙権を行使できることだと思います。年齢が若ければ若いほど、この国家と長く付き合っていかなければならないことを考えると、18歳、19歳の方が高齢者よりも重要だと思います。そうであれば、選挙権が付与された以上、実社会においても、自らが権利義務の主体となり、その法律行為についても、単独で意思表示ができ権利を自ら行使し、義務を真っ当に果たすこと、それが大事だと思うのです。

国家資格(司法書士試験)および職業選択は成年年齢の関係はどうなる?

ついでながらですが、司法書士の年齢制限は、どうなるのか? 実は、法令では、未成年のままです。すなわち、18歳から登録することが可能となります。このことは、国家試験の受験資格のみならず、実務界に、飛び込んで活躍することができることを意味します。もしかしたら、近いうちに、18歳、19歳の司法書士が、簡易裁判所での法廷にて原告席、被告席に立つ日も、近いのかもしれませんね。

司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357

事務所近隣の公園の桜の写真です。春は、いろいろ仕組みが変わる季節なのかなと思います。
事務所から近隣の公園で桜の季節を撮ってみました
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民事信託・遺言・後見・相続

任意後見制度のこと

こんばんは、今回は、任意後見制度のことを記したいと思います。

なぜかマスコミやメディアは、職業後見人の不祥事が明るみに出るたびに、センセーショナルに報道しますが、もちろんそんな不埒な輩は、ごくごく一部です。大多数の職業後見人は、しっかり取り組んでいます。監督する機能は裁判所が担っているので、おかしなことをすれば遅くとも半年後には、明るみに出ます。

後見人の解任は、ダメージが大きく、一度、不祥事があったら、その仕事からは退場そして復活することができない仕組みになっています。故に職業後見人は、思われている以上に緊張感を持って後見業務に当たっています。

さて、今回、紹介する後見制度のカテゴリーの中で、気にして欲しい仕組みは、任意後見人制度のことです。

任意後見人の場合、法定後見人と違い、本人の希望に沿った形で、代理行為を依頼することができます。なぜなら契約だからです。一方、法定後見の場合は、行為能力の制限による取消権はありますが、任意後見には入っていません。もっとも財産管理をする代理権が付与されている以上、詐欺、脅迫による法律行為の取消しは認められています。

法定後見の場合は、本人がすでに判断能力がない事象から、成年後見人を選任、後見開始、業務が始まりますが、任意後見契約では、判断能力が備わっている段階で、契約を締結し、して欲しいことを指定する、自己決定権の余地が残されている制度であります。

任意後見契約ならば、もしも判断能力が低下し、ご自身だけでは生活が立ちいかなくなった場合、ご自身がどのような生活環境を望むのかを正確に伝えることができます。ご自身が思い描いている生活の希望を伝えることができるのです。

法定後見の場合、成年後見人が被後見人の様子を見ながら、場合によっては監督人もしくは裁判所の判断を仰ぎながら、業務遂行することになりますが、任意後見人の場合は、後見監督人の監督を受けながらも、契約に記されている代理権目録に従い、業務を遂行していきます。

家族に頼れる方がいらっしゃれば、家族信託(家族による民事信託)を活用する方法も考えられますが、身寄りがない方に今後のご自身にとって安心する制度として「任意後見制度」の活用を検討されてはいかがでしょうか?

後見・見守りの概要について、当事務所webページでも紹介しています。ぜひご覧ください。

※2021年12月7日に公開した記事ですが、加筆して再掲いたしました。

お年を重ねられた方向けに これからのことの相談を承ります
司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357