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任意後見 民事信託・遺言・後見・相続

任意後見のこと

こんにちは、今回は、任意後見制度のことを記そうと思います。

そもそも後見制度とは

任意後見のことを、あまり聞きなれない方もいらっしゃるかもしれません。では、より大きな枠組みで広く見つめ、後見制度から簡単に記します。

後見制度ですが、認知症や他の精神疾患により判断能力がなくなってしまった、著しく不十分になった、もしくは不十分になった際に、本人に代わって意思表示をしたり、本人を保護する目的から、本人がする意思表示につき、相手方に対し、その意思表示に同意をして、法律行為を完結させる制度です。

もっと簡単に説明すると

さらに噛み砕いて説明すると、法定後見人は、本人に変わって法律行為を行い、保佐人は本人のした法律行為に対し同意する、補助人は裁判所から決められた範囲がありますが、本人がした法律行為に対し同意して、その意思表示を完結させます。

任意後見と法定後見の違い

それでは、任意後見制度をことを、法定後見制度の場合を比較して、記したいと思います。

法定と契約の違い

法定後見は、まさに字のごとく「法定」のとおりです。すなわち、法律に定められたとおりに本人に代わって意思表示をすることとなります。一方任意後見は、契約によって定められた委任事項に基づいて、付与された代理権の範囲に基づいて法律行為を本人に代わって意思表示します。

委任事項の自由と不自由さ

法定後見は、既に本人の判断能力がなくなってしまっているので、法律行為の意思表示の委任事項を本人の意思によって限定させることができません。一方、任意後見は、判断能力が備わっているときに契約を締結させるので、ご自身で任意後見受任者に委任事項を定めることができます。

取消権の有無

本人のした法律行為につき、法定後見の場合は、日常的なことは除きますが、当然に成年後見人に取消権は認められています。一方、任意後見人の場合は、取消権は、当然には認められてはいませんが、委任事項で財産管理権が与えられている場合、詐欺脅迫錯誤による取り消しに基づく、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求の代理は認められることとなります。ただ任意後見の場合、能力による取消権が認められないので、結果的に家計を揺るがすような本人による法律行為が多発した場合、もはや法定後見に切り替えなければならないこととなりうる可能性があります。

もっとも大きな違い

法定後見と任意後見の違いでもっとも大きな違いは、業務の開始時期だと言えます。法定後見の場合は、後見開始の審判があった場合です。一方任意後見の場合は、任意後見契約締結時ではない、任意後見監督人が就任したときに、任意後見が始まります。契約締結時ではないのです。

任意後見と能楽の後見の共通性

この任意後見契約の趣旨は、古典芸能でもある能楽の後見の役割と似ています。能楽の「後見」ですが、通常、演目が始まると舞台の端に座り全体の進行を見守りながら、着付けの直し、道具の運搬・手渡し等、とっても地味なことをして演者演目をフォローアシストしています。

もしものときの代役は同じ

もしも演者(特に主人公を演じているシテ方)が急に体調を崩し、演じることができなくなった際に、代役として後見が立ち振る舞うこととなっています。後見制度では、判断能力に問題があった本人について法律行為を制限するとともに、後見として立ち振る舞う最終的な行為や役割は、法定後見も任意後見も同じかもしれませんが、任意後見では、契約によって将来の判断能力低下に備えた制度であり、判断能力が低下しなければ任意後見受任者が、本人を実質見守り続けることとなり、いざ本人の判断能力が低下したときには、代わって法律行為を行うこととなります。

後見制度のあり方

最後に、私見ですが、後見制度のあり方を記したいと思います。こうして先に見てきた様に、本来の「後見」は、本人が健常で立ち振舞える間は見守り、必要によっては手を添える程度のアシストを行い、本人が、一人では対振る舞うことが難しくなったときに、任意後見人が前に出て、立ち振る舞うことを理想として、「後見」という文言をこの制度の名称に付した、そう思えてなりません。

制度が始まって22年ほどですが、2018年に利用促進に関する法改正等もありましたが、なかなか当時の政策どおりの利用とは程遠いのではないかと、調べれば調べるほど感じます。

ただ、本人のみならず、周囲の親族の負担もあるので、なかなか理想的な運用とはかけ離れてしまった利用もあって、なかなか難しい問題もあると思います。

何れにしても、判断能力が低下してしまう前に、ご自身が判断能力が低下したときにどうありたいのか事前に検討し、予防線を張ることも大事だと考えます。

任意後見の相談を随時対応しています。
司法書士 大山 真 事務所
TEL: 047-446-3357

街で
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事務所より

職業後見人の不祥事に関する報道をお聞きして…

こんにちは

あまり良くないニュースを耳にします

成年後見の業務に関して 親族後見人のみならず 弁護士等(この等の中に司法書士・行政書士・税理士・社会福祉士等の諸先生方も含まれると思って頂きたいです)の職業後見人の横領事件が、今年は、統計を採り始めてから過去最大であることを耳にしました

なぜこのようなことが起きるのか 答えは 明快です

職業後見人は 確かに 親族後見と違い 報酬という請求権が 被後見人対して 業務をしただけ発生します ただこの報酬が付与されるのは 仕事をしてから大体1年後くらいになります これは 裁判所に対して 報酬付与の申立てをしてその申立てが認められて 漸く報酬を頂く仕組みになっているからです

もっとも 業務に掛かる経費は、立替えた場合は、直ぐに経費計上できるのですが 報酬は そうはなっておりません ズバリ報酬を頂くまでに 時間が掛かるのです

後見は 財産を持っている方だけの制度ではなく 意思表示がうまくできない方のための制度としての性格も有している側面もあり 事案によっては 被後見人から報酬が一切もらえない事案も存在します 確かにそのような事案を取り扱っている後見人に対して 任意団体によっては信託金から付与されるという仕組みもある様ですが 他の事案や他の業務と比べると 報酬は低いとお聞きしております

どうしても勘違いされがちですが たしかに各士業の先生は 社会に貢献したいという気持ちは十分に持っておられますが その前に 公共機関でもなければ ボランティアでもなく 慈善団体でもありません あくまで職業ですし 依頼人の皆様から報酬を頂いて 生計を立てています

少し前にあった 規制緩和や司法改革によって もしかしたら法曹人口は過剰という状態になってしまったのかもしれません 本当に繁盛しているのはごく一部の事務所であり 各士業の先生方は少ない報酬でも社会に貢献したいと 歯を食いしばって事務所を維持しているのが実情です

仕組みである以上 仕方ないじゃないか!?! と言う声が聞こえてきそうですが もっと早く報酬が付与される様に 改正されるべきと感じます
そうすれば 各士業の先生方も 事務所として維持できるだけの経営が少しでも安定し 所持している資格に基づいて より誠意を持って対応できるように思うのです

社会福祉という枠組みで捉えると 隣接する他の業種でもある介護職の方についても 同じような問題が起きていると思いますが ここでは 取り上げません

本当に 身を粉にして 業務に当たられている各士業の先生のことを思うと頭が下がるばかりです 現状の問題を職責だけで片付けるのではなく 社会全体がもっと正面からこの問題を見つめてほしいと 切に願うばかりです

 

司法書士 大山 真

 

熱川にて