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事務所より 民事信託・遺言・後見・相続

相続対策よりも考えること

こんにちは、今回は、相続対策よりも考えておくべきことを記します。

唐突ですが、一番の対策は、ご自身の判断能力が低下したときのことを、どれくらい気になさっているのか。それが老後の一番大事なことであり相続対策にもつながると考えます。以下にその理由を記したいと思います。

認知症は他人事ではなく、未来のことかも

ところで認知症の問題は、もはや他人事ではなく、「未来のこと」かも知れないほど、身近な存在となったように思います。

今日においては、もはや割合にして二人に一人は認知症を発症するであろう、と言われています。

こう記している 当職でさえ、自身が高齢者となった場合、そうかも知れないと思ったりしています。

考えなくてはいけないこと

相談で持ち込まれる議題として、相続の問題は確かにあります。確かにご自身亡き後のご家族や事業者であれば、従業員について按ずるお気持ちは、よくわかります。ただその気持ちは、今現在の判断能力がしっかりしている現れなのだろうと思います。しかしながら、その対策は、いわばご自身が他界した後の事であって、ご自身の判断能力が低下し、もはや大きな財産を処分したりする際の意思表示さえもできないことが、相続の問題よりも前に訪れることが多くなってきたように思います。

先日、事業の承継は済んだから、悠々過ごそうと思っているとおっしゃっていた元経営者がいらっしゃいましたが、その後、容体が急変し、病院に入院する運びとなり、その手続きについて、立ち往生したとのことでした。その方は、すでに判断能力が低下し、認知症を患っていたとのことです。

事業承継者は自動的に後見人とはなりません

付き添いで来られた方は、ご親族ではないようで、後見人と語っていたようですが、民法上の法定後見人等でもなければ、任意後見人でもなく、事業においては後継者だったようですが、元経営者の財産を管理したり身上監護する権限も与えられていない、元経営者の事業の元番頭さんだったようです。もちろんその方には、正当な権限がないため、民法上の事務管理(人)になりえますが、あくまで緊急避難的な対応しか許されず、入院契約等の事務処理に時間がかかったようです。

問題とすべきは、他界後ではなく、生存中のこと

先の事例では、事業の引継ぎという観点では、成功されたと思えます。

もっとも相続対策は、何も事業のことだけではなく、ご自身のこと、ご自身が認知症を患い、判断能力が低下し、したいと思っていたことができなくなることだと思います。

人生100年時代と言われる今の時代、晩年に判断能力が低下してしまい認知症を患い、結果的に思ったような暮らしができていないのではないか、そう思える方が、相当数いらっしゃるように思います。

次回以降、ご自身の認知症に備えるための対策、方法について記そうと思います。

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任意後見 民事信託・遺言・後見・相続

任意後見のこと

こんにちは、今回は、任意後見制度のことを記そうと思います。

そもそも後見制度とは

任意後見のことを、あまり聞きなれない方もいらっしゃるかもしれません。では、より大きな枠組みで広く見つめ、後見制度から簡単に記します。

後見制度ですが、認知症や他の精神疾患により判断能力がなくなってしまった、著しく不十分になった、もしくは不十分になった際に、本人に代わって意思表示をしたり、本人を保護する目的から、本人がする意思表示につき、相手方に対し、その意思表示に同意をして、法律行為を完結させる制度です。

もっと簡単に説明すると

さらに噛み砕いて説明すると、法定後見人は、本人に変わって法律行為を行い、保佐人は本人のした法律行為に対し同意する、補助人は裁判所から決められた範囲がありますが、本人がした法律行為に対し同意して、その意思表示を完結させます。

任意後見と法定後見の違い

それでは、任意後見制度をことを、法定後見制度の場合を比較して、記したいと思います。

法定と契約の違い

法定後見は、まさに字のごとく「法定」のとおりです。すなわち、法律に定められたとおりに本人に代わって意思表示をすることとなります。一方任意後見は、契約によって定められた委任事項に基づいて、付与された代理権の範囲に基づいて法律行為を本人に代わって意思表示します。

委任事項の自由と不自由さ

法定後見は、既に本人の判断能力がなくなってしまっているので、法律行為の意思表示の委任事項を本人の意思によって限定させることができません。一方、任意後見は、判断能力が備わっているときに契約を締結させるので、ご自身で任意後見受任者に委任事項を定めることができます。

取消権の有無

本人のした法律行為につき、法定後見の場合は、日常的なことは除きますが、当然に成年後見人に取消権は認められています。一方、任意後見人の場合は、取消権は、当然には認められてはいませんが、委任事項で財産管理権が与えられている場合、詐欺脅迫錯誤による取り消しに基づく、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求の代理は認められることとなります。ただ任意後見の場合、能力による取消権が認められないので、結果的に家計を揺るがすような本人による法律行為が多発した場合、もはや法定後見に切り替えなければならないこととなりうる可能性があります。

もっとも大きな違い

法定後見と任意後見の違いでもっとも大きな違いは、業務の開始時期だと言えます。法定後見の場合は、後見開始の審判があった場合です。一方任意後見の場合は、任意後見契約締結時ではない、任意後見監督人が就任したときに、任意後見が始まります。契約締結時ではないのです。

任意後見と能楽の後見の共通性

この任意後見契約の趣旨は、古典芸能でもある能楽の後見の役割と似ています。能楽の「後見」ですが、通常、演目が始まると舞台の端に座り全体の進行を見守りながら、着付けの直し、道具の運搬・手渡し等、とっても地味なことをして演者演目をフォローアシストしています。

もしものときの代役は同じ

もしも演者(特に主人公を演じているシテ方)が急に体調を崩し、演じることができなくなった際に、代役として後見が立ち振る舞うこととなっています。後見制度では、判断能力に問題があった本人について法律行為を制限するとともに、後見として立ち振る舞う最終的な行為や役割は、法定後見も任意後見も同じかもしれませんが、任意後見では、契約によって将来の判断能力低下に備えた制度であり、判断能力が低下しなければ任意後見受任者が、本人を実質見守り続けることとなり、いざ本人の判断能力が低下したときには、代わって法律行為を行うこととなります。

後見制度のあり方

最後に、私見ですが、後見制度のあり方を記したいと思います。こうして先に見てきた様に、本来の「後見」は、本人が健常で立ち振舞える間は見守り、必要によっては手を添える程度のアシストを行い、本人が、一人では対振る舞うことが難しくなったときに、任意後見人が前に出て、立ち振る舞うことを理想として、「後見」という文言をこの制度の名称に付した、そう思えてなりません。

制度が始まって22年ほどですが、2018年に利用促進に関する法改正等もありましたが、なかなか当時の政策どおりの利用とは程遠いのではないかと、調べれば調べるほど感じます。

ただ、本人のみならず、周囲の親族の負担もあるので、なかなか理想的な運用とはかけ離れてしまった利用もあって、なかなか難しい問題もあると思います。

何れにしても、判断能力が低下してしまう前に、ご自身が判断能力が低下したときにどうありたいのか事前に検討し、予防線を張ることも大事だと考えます。

任意後見の相談を随時対応しています。
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街で
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ご自身らしく過ごすために(2)

こんにちは、先般のブログで、法定後見と任意後見の違いおよびライフプランの存在意義を記しました。
もしご覧になっていない方は、以下にリンクを記しましたので、ご参照ください。

さて、今回は、もう少し内容を掘り下げて、「ライフプラン」について記していきたいと思います。

書籍を見渡して気がつくこと

任意後見に関する書籍を見てみると、制度のこと、手続き利用の準備のこと、注意すべきこと、関連法例や、記載例等が、これでもかというくらい満載に記されています。

ライフプランは、二つの意味を含んでいる

その中に記されている「ライフプラン」のことですが、専門職が、ご本人にいろいろ聞いて、作成されるアンケート結果を「ライフプラン」と呼ぶこともあれば、その聴取した記録をもとに、文章を起案し、最終的に、ご本人様に読み聞かせ、記載された内容に間違いがなければ、書面末尾に署名押印をしてもらって、「ご本人様の『ライフプラン』」という書面のことを指すこともあります。

先のブログでも記した「ライフプラン」の意味は後者の方で、認知症を発症し、もはや詳細な希望を関係者に意思を表示することが難しくなったときに力を発揮する書面と言えます。

任意後見契約書の性格

それでは、任意後見契約書等の契約書はどのような性格を持つのでしょうか。もちろんご本人に代わって法律行為をする委任契約に関する契約書ですが、記載事項は、実は、法令政令省令により、定められています。

事実行為や一審専属権は契約条項に記載できない

特に事実行為や一身専属権についての代理は法令上、任意後見契約の条項には搭載できないため、物理的に一つの書面で作成されたとしても、観念的には切り分ける必要があります。そこで例え切り分けて記したとしても、契約書に詳細なご本人の希望、例えば、毎日コーヒーが飲みたいから提供してほしい等の本人の嗜好に基づく希望等を、契約書に盛り込むことは、実益性がほとんどありません。

契約書は、当事者間のみが確認する書面ではない

物理的に一通の書面に記せたとして、その提示をしようものなら、提示する相手方当事者に対して、必要のない契約内容の全てを逐一目に触れる機会を作ってしまいます。
 故に、「ライフプラン」は、契約書とは別に作成することとなります。

さて、その「ライフプラン」ですが、いざ記そうと思っても、なかなか記せないことが多いようです。なぜなら、普段何気なく過ごしていることを客観的に見つめる習慣がなかなかないですし、普段からできていることに基づいて食事をし、ご自身の嗜好に基づいて過ごしている生活習慣を振り返ってみることは、意識しないと、なかなか気がつかないのかもしれません。

ライフプランを作成する意味

もしものとき、認知症を発症したときに功を奏するための準備をするためですが、それ以外に、ご自身の嗜好に改めて気がつく良い機会になるのかもしれません。

趣味なんて何にもない、興味を持っていることなんて何もないとおっしゃる方が多いものですが、一つ一つを丁寧に一日の行動やご自身にとっての出来事を振り返ってみると、ご自身でも気がつかなかった素晴らしいことがあることを発見すると思います。

司法書士 大山 真 事務所の任意後見アシストサービスでは、ご本人様の「ライフプラン」に合わせたサービスを提供できるように対応しています。

認知症になっても「ライフプラン」によって、これまでどおりの生活がより実現する可能性が広がります。

後見に関する概要は、当事務所Webページでも紹介しております。

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河津桜と北の夜空のタイムラプス動画です
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任意後見制度のこと

こんばんは、今回は、任意後見制度のことを記したいと思います。

なぜかマスコミやメディアは、職業後見人の不祥事が明るみに出るたびに、センセーショナルに報道しますが、もちろんそんな不埒な輩は、ごくごく一部です。大多数の職業後見人は、しっかり取り組んでいます。監督する機能は裁判所が担っているので、おかしなことをすれば遅くとも半年後には、明るみに出ます。

後見人の解任は、ダメージが大きく、一度、不祥事があったら、その仕事からは退場そして復活することができない仕組みになっています。故に職業後見人は、思われている以上に緊張感を持って後見業務に当たっています。

さて、今回、紹介する後見制度のカテゴリーの中で、気にして欲しい仕組みは、任意後見人制度のことです。

任意後見人の場合、法定後見人と違い、本人の希望に沿った形で、代理行為を依頼することができます。なぜなら契約だからです。一方、法定後見の場合は、行為能力の制限による取消権はありますが、任意後見には入っていません。もっとも財産管理をする代理権が付与されている以上、詐欺、脅迫による法律行為の取消しは認められています。

法定後見の場合は、本人がすでに判断能力がない事象から、成年後見人を選任、後見開始、業務が始まりますが、任意後見契約では、判断能力が備わっている段階で、契約を締結し、して欲しいことを指定する、自己決定権の余地が残されている制度であります。

任意後見契約ならば、もしも判断能力が低下し、ご自身だけでは生活が立ちいかなくなった場合、ご自身がどのような生活環境を望むのかを正確に伝えることができます。ご自身が思い描いている生活の希望を伝えることができるのです。

法定後見の場合、成年後見人が被後見人の様子を見ながら、場合によっては監督人もしくは裁判所の判断を仰ぎながら、業務遂行することになりますが、任意後見人の場合は、後見監督人の監督を受けながらも、契約に記されている代理権目録に従い、業務を遂行していきます。

家族に頼れる方がいらっしゃれば、家族信託(家族による民事信託)を活用する方法も考えられますが、身寄りがない方に今後のご自身にとって安心する制度として「任意後見制度」の活用を検討されてはいかがでしょうか?

後見・見守りの概要について、当事務所webページでも紹介しています。ぜひご覧ください。

※2021年12月7日に公開した記事ですが、加筆して再掲いたしました。

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自身らしく過ごすために

認知症を患っても、自身らしく過ごすことは、とても重要なことです。今回は、任意後見制度を活用するにあたって、法定後見との違いも比較して、自身らしく過ごすために注目すべきことを記してみようと思います。

法定後見と違うこと

任意後見が、法定後見と大きく違うことは、契約で後見人を自ら選ぶことができることは、何度か触れてきたと思います。実は、もうひとつ任意後見の方が圧倒的に利点なことがもう一つあります。

それは、認知症が進行し、ご自身の判断能力が不十分になり、意思を表示することが難しくなったときに、事前に記したライフプランによって、よりご自身らしく過ごすことを継続することが期待できます

法定後見人の選任は、高齢者本人ではない。

法定後見の場合、残念なことに、判断能力がない、著しく不十分または不十分という事態になって初めて家庭裁判所に申し立てをし、申立時に一応成年後見人候補者という記載欄があるので、記しますが、選任する主体はあくまで家庭裁判所です。

どう過ごしたいのか、本人は伝えられない

選任された成年後見人が、弁護士、司法書士等の職業後見人の場合は、もちろん成年被後見人のこと(どう自身らしく過ごすのか)を知ろうと努力を試みますが、被後見人(本人)に直接聞くことはもちろんしますが、すでに判断能力に問題があるため、その返事や質問に対する答えが本人の真意に基づくのか、判断が難しいものです。故に親族や場合によっては近隣の方々に、日頃の様子を聞き、ようやく本人(被後見人)のことをなんとか知ることができることになります。もっとも 本人自身の希望を知ることは難しいと言えます。

任意後見なら伝えられる

一方、任意後見では、契約時に代理権目録にどの法律行為について代理権を与えるのかからはじまり、判断能力が衰えたときにどう自身らしく過ごすのかを伝えることができます。任意後見契約書には記すことが難しいことを、別紙にライフプランという形で、記しておくのです。そうすれば、認知症を患い、判断能力が不十分になったとしても、周囲はどうすべきかをすることができるのです。

任意後見等の当事務所の高齢者の見守りサービスについて、当事務所Webページでも紹介しています。

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